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デェト(4)
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頰に手を当てて少し熱くなったことを、ほっぺが落ちそうです、とか言ってごまかす。
滉雅さんはそのままパフェも俺の前へと差し出してくる。
優しい。
でもこのあとオムライスが来ると思うと無理して食えない。
プリンは液体だが、パフェにはちゃんと腹に溜まるものが入っている。
しかし……前世のものとは内容が違うな。
下は生クリーム? いや、バニラアイスか?
メロン、と生クリームが混じり合いながら盛られている。一番上にバナナや桃、みかん、バニラアイスとチェリーが載せられトドメに生クリームの盛りつけ。
ほとんどの果物は缶詰のものっぽい。
しかし、これは確実に重いやつだな。
でも、欲望には勝てない……!
「桃、おいひぃ~~~」
「よかったな」
無表情のままにそう言われて、思わず満面の笑顔で「はいっ!」と答えてしまう!
そう、マジで無表情。
普通の女子なら冷たい印象に感じるだろうが、滉雅さんの場合裏表なく言ってる。
少なくとも目許は優しく細められているので、言葉通り、よかったね、って言ってるな。
「お待たせいたしました。オムライスです。ご注文は以上でしょうか?」
「はい。ありがとうございます!」
「ごゆっくりどうぞ」
いやー、可愛いメイドさんも見られたしプリンもパフェも美味しいし、念願のオムライス……!
これ本当に俺一人で食べていいのぉ!?
「こ、滉雅さん、半分くらい食べますか?」
「食べきれなければ」
「そ、そうですか。ではあの、先にいただきますね」
ソワソワが止まらない。
スプーンを手に取り、ワクワクしながらお皿の中を見下ろす。
大変理想的かつ定番の見事な楕円形オムライス。
艶々の黄色い卵の衣を纏うチキンライスに期待が高まり続ける。
上にはこれまた艶々の輝く赤いケチャップ……。
スプーンを赤いケチャップと卵の衣の間に突き立て、掬い上げる。
き……キターーーー!
ほかぁ……と昇り立つささやかな湯気。
その合間から垣間見えるチキーンラーーーイス!
ゴロリと出てくるチキン! 一粒一粒赤く色づいた米! 赤と酸味の中に輝く黄色く甘いコーンの粒!
期待がさらに高まる。
期待しすぎはよくない、わかってるぅ!
だが! 期待せずにはいられないー!
いただきます……………………ん。
「おいひぃ~~~~~♡」
ごめん、舐めてた。
この大正時代っぽい世界のオムライスとか、前世のオムライスと比べたらやっぱり味とか劣るんじゃない、とか思ってた。
断じてでそんなことなかった。
そりゃあそうだよな、素材は昔の方がまだ添加物が少ないから、素材の味わいが強い。
加えて現代に続く変わらぬレシピ。
美味いに決まってるぅーーーー!
「これなら全部食べられそうですっ。美味しい……美味しい! こんな美味しいものが、この世界にあったんですねぇ!」
諦めていた洋食。
今世ではどうせ食べる機会はないだろうと。
でも普通に美味い~!
前世ではまったく興味なかったけれど、今世では料理を作るし……っていうか、滉雅さんに是が非でも作ってあげたいからケチャップの作り方とか教えてもらいたい。
ケチャップってどう作るんだろう?
『君が』
「え? はい?」
『美味しそうに食べるのをみるのは、心があたたかく穏やかになる。形容し難いが、君が人が食べているのを嬉しそうに見ている理由がわかった気がする』
「……あ……あは……はい。特に自分が作ったものを美味しそうに食べてもらえるのは、作った甲斐があるなって思うんですよ。もっと料理の腕を磨こうって。また笑顔で美味しく食べてもらいたいなって。自分の力になるんです!」
「そうか」
側から見れば、俺は突然なんか話し始めた変な女だろうけれど、俺には――俺にだけはこの人が正直な気持ちを吐露してくれたのが聞こえている。
料理のこういうところが楽しくて嬉しい。
前世ももっと、料理してくればよかったよなぁ。
「私もこういうものを作ってみたいですけれど……このソースってどうやって作るんでしょうね? さすがにレシピは教えてもらえませんよねぇ?」
「本屋に寄るか?」
「いいんですか? はい、ぜひ!」
お会計も滉雅さんがさらりと出してくれて、次は本屋。
料理本、カラフルで思った以上に多種多様!
教科書はシンプルに色和紙に黒文字で書かれているものばかりだから、絵柄が古くてもカラフルなものを見るとなんか感動っていうか……なるほどこれは画期的!
ハイカラ、ってこういうことかぁ!
「好きなものを、好きなだけ選べ」
「ほ、ほしいものを選んでもよろしいんですか……!?」
こくり、と頷く滉雅さん。
マ、マジか! いいのか!
じゃあ、この料理本と洋食の料理本と、霊術と霊符の本も買ってもらっちゃおう!
スゲーよ、学校の図書室にない本ばっかり!
特に霊術と霊符の本は学校の初心者向け以外の中級者向け、上級者向けがあってウハウハじゃねーかぁ!
「って、たくさん買いすぎですかね……?」
「いや」
首を横に振られるが、すぐに『思考共有』で『先ほど姉も君の研究には出し惜しみしないと言っていたから、気にしなくていい』と伝えてくれた。
あ、そうか。えへへへへ……。
「じゃ、じゃあ、甘えさせていただきます」
「ああ」
またもこくり、と頷いてから『来週の食事会も楽しみにしている』と『思考共有』でつけ加えてくれる。
そんなこと言われたら、来週も頑張っちゃおうって思うに決まってるじゃん。
滉雅さんはそのままパフェも俺の前へと差し出してくる。
優しい。
でもこのあとオムライスが来ると思うと無理して食えない。
プリンは液体だが、パフェにはちゃんと腹に溜まるものが入っている。
しかし……前世のものとは内容が違うな。
下は生クリーム? いや、バニラアイスか?
メロン、と生クリームが混じり合いながら盛られている。一番上にバナナや桃、みかん、バニラアイスとチェリーが載せられトドメに生クリームの盛りつけ。
ほとんどの果物は缶詰のものっぽい。
しかし、これは確実に重いやつだな。
でも、欲望には勝てない……!
「桃、おいひぃ~~~」
「よかったな」
無表情のままにそう言われて、思わず満面の笑顔で「はいっ!」と答えてしまう!
そう、マジで無表情。
普通の女子なら冷たい印象に感じるだろうが、滉雅さんの場合裏表なく言ってる。
少なくとも目許は優しく細められているので、言葉通り、よかったね、って言ってるな。
「お待たせいたしました。オムライスです。ご注文は以上でしょうか?」
「はい。ありがとうございます!」
「ごゆっくりどうぞ」
いやー、可愛いメイドさんも見られたしプリンもパフェも美味しいし、念願のオムライス……!
これ本当に俺一人で食べていいのぉ!?
「こ、滉雅さん、半分くらい食べますか?」
「食べきれなければ」
「そ、そうですか。ではあの、先にいただきますね」
ソワソワが止まらない。
スプーンを手に取り、ワクワクしながらお皿の中を見下ろす。
大変理想的かつ定番の見事な楕円形オムライス。
艶々の黄色い卵の衣を纏うチキンライスに期待が高まり続ける。
上にはこれまた艶々の輝く赤いケチャップ……。
スプーンを赤いケチャップと卵の衣の間に突き立て、掬い上げる。
き……キターーーー!
ほかぁ……と昇り立つささやかな湯気。
その合間から垣間見えるチキーンラーーーイス!
ゴロリと出てくるチキン! 一粒一粒赤く色づいた米! 赤と酸味の中に輝く黄色く甘いコーンの粒!
期待がさらに高まる。
期待しすぎはよくない、わかってるぅ!
だが! 期待せずにはいられないー!
いただきます……………………ん。
「おいひぃ~~~~~♡」
ごめん、舐めてた。
この大正時代っぽい世界のオムライスとか、前世のオムライスと比べたらやっぱり味とか劣るんじゃない、とか思ってた。
断じてでそんなことなかった。
そりゃあそうだよな、素材は昔の方がまだ添加物が少ないから、素材の味わいが強い。
加えて現代に続く変わらぬレシピ。
美味いに決まってるぅーーーー!
「これなら全部食べられそうですっ。美味しい……美味しい! こんな美味しいものが、この世界にあったんですねぇ!」
諦めていた洋食。
今世ではどうせ食べる機会はないだろうと。
でも普通に美味い~!
前世ではまったく興味なかったけれど、今世では料理を作るし……っていうか、滉雅さんに是が非でも作ってあげたいからケチャップの作り方とか教えてもらいたい。
ケチャップってどう作るんだろう?
『君が』
「え? はい?」
『美味しそうに食べるのをみるのは、心があたたかく穏やかになる。形容し難いが、君が人が食べているのを嬉しそうに見ている理由がわかった気がする』
「……あ……あは……はい。特に自分が作ったものを美味しそうに食べてもらえるのは、作った甲斐があるなって思うんですよ。もっと料理の腕を磨こうって。また笑顔で美味しく食べてもらいたいなって。自分の力になるんです!」
「そうか」
側から見れば、俺は突然なんか話し始めた変な女だろうけれど、俺には――俺にだけはこの人が正直な気持ちを吐露してくれたのが聞こえている。
料理のこういうところが楽しくて嬉しい。
前世ももっと、料理してくればよかったよなぁ。
「私もこういうものを作ってみたいですけれど……このソースってどうやって作るんでしょうね? さすがにレシピは教えてもらえませんよねぇ?」
「本屋に寄るか?」
「いいんですか? はい、ぜひ!」
お会計も滉雅さんがさらりと出してくれて、次は本屋。
料理本、カラフルで思った以上に多種多様!
教科書はシンプルに色和紙に黒文字で書かれているものばかりだから、絵柄が古くてもカラフルなものを見るとなんか感動っていうか……なるほどこれは画期的!
ハイカラ、ってこういうことかぁ!
「好きなものを、好きなだけ選べ」
「ほ、ほしいものを選んでもよろしいんですか……!?」
こくり、と頷く滉雅さん。
マ、マジか! いいのか!
じゃあ、この料理本と洋食の料理本と、霊術と霊符の本も買ってもらっちゃおう!
スゲーよ、学校の図書室にない本ばっかり!
特に霊術と霊符の本は学校の初心者向け以外の中級者向け、上級者向けがあってウハウハじゃねーかぁ!
「って、たくさん買いすぎですかね……?」
「いや」
首を横に振られるが、すぐに『思考共有』で『先ほど姉も君の研究には出し惜しみしないと言っていたから、気にしなくていい』と伝えてくれた。
あ、そうか。えへへへへ……。
「じゃ、じゃあ、甘えさせていただきます」
「ああ」
またもこくり、と頷いてから『来週の食事会も楽しみにしている』と『思考共有』でつけ加えてくれる。
そんなこと言われたら、来週も頑張っちゃおうって思うに決まってるじゃん。
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