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光の季節のお茶会で(2)
パーティーに参加するのはまだ早いので、招待状にはお断りのお手紙を書いた。
何度も書き損じたし、オラヴィさんとシニッカさんにダメ出しされながらなんとかオーケーをもらい、出してもらうことに。
私に来たパーティーの招待状は三枚。
シニッカさんが招待状の名前を見て「ああ、これは……」と渋い顔をされる。
なんですか、と聞くと、この家名は未婚の若いご令嬢がいるそうで、目的はソラウ様なのだそうだ。
結婚適齢期はとっくに過ぎてはいるけれど、女性と違って男性のソラウ様は何歳になっても嫁入り希望者があとを絶たない。
ソラウ様は結婚に興味がない方なので、こういった”社交”を目的にしたパーティーの招待状には基本的にお断りのお手紙を出している。
だから、ソラウ様の弟子である私に正体が来たのだろう――とのこと。
な、なるほどな~。
「奥様達へのお手紙も、これでよろしいですか?」
「はい。問題なく書けていると思います。こちらでお出ししますね」
「光の季節なのに、お茶会を開催しても大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。王都には聖女様の巨大祝石が設置してありますから、魔物は入ってこれないのです」
「祝石が?」
祝石にそんな力があるんだ、と驚いていると、シニッカさんが「王都、王城に設置してある巨大祝石は元々巨大ドラゴンの魔石であり、それを『聖女の里』の聖女様が祝石にして王都を覆う結界を張っているのですよ」と教えてくれた。
しかも、そのような巨大祝石は各国の王都にもあり、定期的に『聖女の里』より派遣される聖女様により[祝福]の浄化が行われ保たれる。
だからこそ、聖女様は各国で尊敬され、求められるのだ。
その聖女様と同等の【聖人】に認定されているソラウ様も、定期的に各国王都の巨大祝石を[祝福]で浄化するお仕事をしている。
数年前に浄化したばかりなので、次は派遣された聖女様がやるかもしれない――ということみたいだけれど……。
「聖女様は、派遣されて来られるのですか?」
「そうです。いつも五十年に一度『聖女の里』から聖女様が派遣されてくるのです。前の聖女様は約五十年前ですので、そろそろいらっしゃる頃なのですよ。世界中を巡礼されるので、お姿を拝見するだけでもご利益がありそうですわよね」
「そうなのですね……」
聖女様。
存在はそういうものがある、という感じで知ってはいたけれど……なんだかやっぱりお伽噺の登場人物の話みたい。
今の私には目の前の奥様達とのお茶会の方が重要。
「あの、ちなみに奥様達はどのようなものがお好きなのですか?」
「ジェシー奥様はお菓子や刺繍がお好きですね。ハンナ奥様は絵画か観劇鑑賞がお好きです。特にハンナ奥様はお喋り好きで、社交界シーズンは積極的にお茶会や夜会によくお出かけされますね。ですので、リーディエ様にはぜひ指輪やイヤリング、ネックレスを作ってほしいとおっしゃっておりました」
「え!」
私の仕事を知っておられる?
そういう意味で見上げたら、オラヴィさんとシニッカさんはニコニコと頷いてくれた。
私の仕事……祝石細工師としての仕事に興味を持っておられるんだ?
どうしよう、嬉しい。
お会いするのが一気に楽しみになった。
「……あれ? でも、旦那様には奥様が三人いらっしゃるとお聞きしていたのですが……」
マルチェが私を詰る時、旦那様は女好きで奥様が三人もいるお盛ん爺さん……なんて言っていたけれど……。
そう聞くと、シニッカさんが困ったように眉尻を下げた。
「第三夫人のソラン様ですね。ソラン様はソラウ様を産んですぐ、肥立ちが悪くてお亡くなりになっております」
「え……!?」
ソラウ様のお母様。
ソラウ様は確かに身内に甘やかされてきたと聞いていたけれど――その”甘やかし”の中にはお母様がお亡くなりになっていたことも関係していたのか。
私も実の親の顔を知らない。
ソラウ様もお母様のお顔を知らないんですね。
ああ、まずい。
それでなくともソラウ様を可愛いと思ってしまうようになっているのに、帰ってきたらソラウ様をヨシヨシ撫で撫でして甘やかしてあげたくなる~~~!
「そう、なのですね。またソラウ様を可愛いと甘やかさないように気をつけなきゃいけませんね」
「「そうなんですよね~~~」」
私と同じくオラヴィさんとシニッカさんが困った顔で完全同意。
ですよね~~~!!
「でも、ということは第三夫人とはお会いできないのですね」
「ええ。第一夫人のジェシー様は旦那様と同い年ですし、第二夫人のハンナ様も現公爵のルディ様より一回りほど年上です。リーディエ様の考えているような怖いことにはなりませんから、大丈夫ですよ」
「あ……あははは……。って、えええ!? ……あ、ああ、でも、そ、そうか……それもそうですよね……!?」
旦那様は確か七十代。
その最初の奥様と二番目の奥様だもの。
そのくらい年が離れているに決まっている。
勝手にものすごくお若いきつめのご婦人を考えていたけれど、そんなわけがなかった。
実家のお養母様のようなイメージを抱いていたけれど、オラヴィさんとシニッカさんの話す第一夫人と第二夫人の印象は大変穏やかで優しい老婦人と初老の女性――らしい。
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