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ヤンデレ監禁エンド
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世話好きの気持ちなんか一生分からないと思っていたのに。
まさかの俺、來我旺征が戸勝祐貴の世話を焼いているこの数日間が、この十七年で一番だと思う。
死ぬまで生きるだけだと思っていたいままでの無気力な日々なんかと比べ物にならないくらい毎日が感情にあふれている。なんといえばいいのか、自分の生を実感しているというか。
戸勝祐貴が利き手を骨折し、今まで散々掃除当番をサボっていたらしい俺は担任に戸勝の介助を任命された。
曰く、罪滅ぼしの一環らしい。罪滅ぼしは、掃除中に骨を折ったからというわけではない。戸勝が暫らく掃除当番を全うできないから俺が今までの分も働くということらしい。
最初は猛反対だった。戸勝が。
俺も面倒くさいからパスしたかったけど、戸勝の骨が折れていても何でもできるから介助なんか必要ないと言う断固拒否の姿勢が面白くて世話をすることにした。それでも折れない戸勝だったけれど俺に世話を焼かせた方が早く飽きて勝手にどっかに行くだろうと思ったらしく、苦渋の決断で頼ることにしたようだ。黒板を書くのも消すのも早い教師の授業が続いたお陰でもあると思うけど。
俺もなんだかんだ飽きるだろうなと思ってたけれど、これが中々飽きなかった。
他人から世話を焼かれる人生だったのに、戸勝というビックバンは想像以上に影響の根が深かったらしい。
甲斐甲斐しく世話を焼くことが楽しくて仕方がない。
だって本当に戸勝は自分のプライドと戦って、苦悩の末に「……く、來我……」って俺の名前を呼んで頼るんだから、かなり可愛い。
最近ちょっと慣れてきて頼る葛藤がないのも良い。俺に対して傲慢な戸勝、すごく可愛い。
プライドが高くて人から助けられることを拒絶していた手負いの獣の戸勝が、こうして俺だけを頼っているのが本当にたまらない。
俺が生まれて来たのは戸勝祐貴の世話を焼くためかと勘違いしそうになった。
でも、他の余計なお節介連中に囲まれて俺に助けを求める戸勝とかスマホの設定がおかしくなったからって無防備に俺にスマホを渡して来る戸勝とかを見て違うと思った。
戸勝が生まれて来たのが俺、來我旺征に世話を焼かれるためなんだと思う。きっとそうに違いない。
「來我、靴くらい自分で履ける。おい、來我。返せって。俺の外履き持って物思いにふけるな」
「だって戸勝もうすぐ骨折終わっちゃうじゃん」
「俺が骨折って喜んでたのお前だけだよ」
「う」
確かに図星だ。言い逃れができない。
戸勝が骨を折らなかったら、俺は戸勝の隣に居るなんて絶対なかっただろう。運命の赤い糸どころか運命の白ギプスな関係だ。でも、そのギプスはもうすぐ外れてしまう。
利き手の骨折は、とても良かった。戸勝はたくさん不便だったから、頼らざるを得なかった。
だから、次は足が良いけど……でも戸勝に傷付いて欲しくないから出来ることなら折りたくはない。
「戸勝って足折る予定ある?」
「お前俺の足の骨狙ってんの?」
「そんなわけ」
戸勝には何の怪我もして欲しくないし毎日健康でハッピーに暮らしてほしい。
でも、それはそれとしてギプスとか一生外れて欲しくないってだけ。
ギプスという弱みが外れた戸勝はもう俺を頼ってくれなくなるし、なんなら関われないんじゃないかと思う。俺は飽きないと思うけど、戸勝はきっと俺が二秒後には世話とか戸勝自体に飽きると思ってるだろうから。こんな風に喋ってくれないと思う。戸勝から他のクラスメイトに相手するみたいに愛想で対応されたら良くないことをしてしまう気がする。
また骨折してほしいけど、俺が戸勝の骨なんて折りたくないし。
でも、他の誰かが戸勝を傷付けるのは絶対に嫌。
「來我、もういいから靴」
「いいよ、履かせてあげるね」
「はあ?」
戸勝の足元で片膝を付いて、戸勝の左手のひらの熱がじんわりと肩に回る。ジャケット着てなくてよかった。
内履きを脱がして、学生靴を履かせる。学生靴なんかダサくて一回も履いたことないけど、戸勝が履いているのは凄く素朴で良い。靴紐があったら靴紐を結んであげられたからそこだけ残念だな。
帰り道はいつも校門まで。
そこから戸勝は迎えが来るから大通りの方に行くけど、俺は裏手側の方だからここまでになっている。
そこまで歩いて、戸勝のカバンを渡せばお役御免。毎日名残惜しい。
家族にでもなったらもっと戸勝の世話ができると思うとかなり悔しい。今の戸勝の俺に向ける警戒とプライドの葛藤による嫌感情もすごく良いけど、家族ならプライド関係なく世話ができるのだろう。まあ、戸勝をお風呂に入れてあげたいとかは流石にやり過ぎだから……シャンプーしてあげて戸勝の頭と俺の手を同じ匂いにしたい。歯磨きとかしてあげたい。服を着せてドライヤーで髪を乾かして梳かしてあげて。ご飯も作って食べさせてやりたい。学校の支度とか代わりにしてやりたいなとか。
そうやって戸勝の家族に嫉妬していたけど……それも、きっと今日までだ。今日は金曜日で、月曜にはもうギプスが取れるのだろうから。
「……おい、カバン返せ」
「戸勝、俺もっと戸勝のお世話がしたい」
「ごっこ遊びくらい自分で卒業しろ」
呆れた目を向ける戸勝。俺のことを見ている戸勝は、すごく可愛い。どんな顔をしていても。
最近、凄く戸勝への感情を持て余している。もう少し、戸勝のギプスが外れなかったら、この感情の名前だとか向き合い方とかが分かる気がするけど。
「大通りまで送ってくよ」
「大通り? なんでまた……いいけど」
嬉しい延長戦。二人で校門から出る足は、なんだか俺だけ浮ついた。
自分でも分からないけどまだ一緒に居たいと思った意味不明な俺を、きっともっと意味不明だと思いながらも戸勝は受け入れてくれた。戸勝はそういうところが優しい。
戸勝のことなんて、なんだかんだで知らないことの方が多い。
トイレの後に洗ってあげた手をちゃんと水気がなくなるまでハンカチで拭かないと嫌そうな顔をするとか、そういう戸勝の世話に必須なことなら何でも知ってるけど。それだけでいいようで、なんだか物足りない。
ああ、そうだ。知らないと言えば。
「戸勝ってさ、なんで骨折したの?」
「え、今更?」
驚く顔を見て、確かに随分と今更な質問をしたことに気が付いた。そういえば、戸勝に興味がなかったとはいえ、普通に一番目について一番軽く聞きそうなところを、俺はどうして聞かなかったんだっけ。
結婚式会場とかで流すビデオならまず『骨折から始まった二人の物語』から始まりそうなのに。
「……ほら、戸勝はプライド高いし聞いても絶対話さないでしょ?」
軽くあしらおうとしたけど、しかし戸勝のことは軽くあしらえなかった。
「絶対嘘だ。お前マジで僕に興味なかっただけだろ」
そう言って、戸勝はちょっと笑った。
「何だそれ可愛い」
「馬鹿にすんな」
可愛い。頭から食べたい。頭からつま先まで俺が丁寧に洗って、乳液を塗ってパウダーシュガーっぽいやつを振りかけて、可愛い可愛いと言って丁寧に食べたい。
柔らかくて、でも筋肉と骨で殆ど食べるところも無くてきっと食べれたもんじゃないくらい美味しくないだろうけど、戸勝だったら絶対に全部美味しく食べてあげたい。
なんて猟奇じみた願望を抱いていることなんか知らない戸勝は軽く「まあ、來我なら良いか」なんて言って。
「僕の兄弟が受験うつだから今の時期だけ。しょうもない話」
「は」
折られたのか。
そう、理解した瞬間に。もう駄目だった。
戸勝の声が雨みたいに体に溶けていく。
戸勝祐貴。同じ戸勝から骨を折られたの、お前。
プライドが高い君は、骨が折られた時きっと泣かなかったんだろうな。歯を食いしばって、痛みに耐えて。
そして、プライドが高いからどんなクズのせいだろうが、ムカついても恨むことはなかったんだろう。
俺だったら絶対祐貴に恨まれたいけど、でも俺だったら絶対怪我なんか負わせたくない。
きっと俺が両の足の骨を折って上書きしても、祐貴は俺を恨むことはない。俺が足を折るほどの恨めしい愛情を、ムカつくと思うだけの軽い感情で消化する。
可哀想な祐貴。
……俺に、行動力と理由をあげちゃったね。
「來我、もう大通りだけど」
「そうだね」
学校近くの大通り。
車で迎えに来るならここ。でも勝手に俺が迎えに来るんだろうなと思っていただけ。
きっと迎えは来ない。
「兄弟って何人?」
「來我? なんか、お前……」
「あは、まあいいか」
だって、俺が一番祐貴のこと愛してるんだから。
「なんかキモイけど……僕は帰るから」
「うん。また明日」
「また来週な。あとカバン返せ」
ああ、そうだった。君のカバンはとても重いから持たせたくないけれど仕方がない。
カバンを左肩に通す來我に「ばいばい」なんて声をかけて。気付かれないように後ろをついていくなんて簡単なこと。
家の場所は分かった。
明日にでも攫ってしまおう。だって早いほうが良い。俺より先に骨を折る奴がいるんだから、先に殺されてしまうかもしれない。祐貴のことを愛しても居ないやつにそんなことされるなんて。俺は祐貴も自分も許せなくなってしまう。
家に持ち帰って、うんと愛して世話をしてあげよう。
ゆっくり侵食したから祐貴は気付いてないかもしれなけど、祐貴は俺が祐貴のことを馬鹿にしていないことをもう知っているから、もうきっと本気で拒めないのを俺は知っている。
……骨を折る前に分かってよかった。
俺は、祐貴のことが……きっと、すごく好きなんだ。
視点:戸勝祐貴
いつも通りの土曜日になるはずだった。
なのに、どうして來我がいるのか。
世話好きだという訳ではないし、尽くすのが好きなわけではないが、そうしなければならない環境だからやるしかない。
いつもの土曜日は、朝起きて、兄の犬の散歩。
朝ごはんを作って、運動部たちを起こして朝ごはんを食わせる。両親が起きたらコーヒーを淹れる。受験うつの兄はもう頼まれても起こしたりしない。
受験うつの兄から朝指定の時間に起こせと言われて起こしたら殴られて、ムカついたから正論を言ったらエグめに刺さったらしい。気付いたら僕の腕は折れていた。
受験うつの兄に正論パンチをしてはいけない。
両親には怒られたし病院に行くのも面倒くさいし、日常生活も面倒なので、やばい奴に正論こそ浴びせてはいけないことを学んだ。
骨が折れて学習しただけで終わりだったらよかったのに、骨折に引き寄せられたヤバいクラスメイトの來我旺征がもしかしたら一番ヤバいかもしれない。
世話好きでもないだろうから、叩いたら音が鳴る玩具程度に遊ばれているとしか思えない。そもそも弱っている人間に付け込もうとするのはろくな奴じゃない。
だから拒絶一択だったけれど。ちょっと、しつこかった。
兄がいつだったか犬を飼いたいと駄々を捏ねたときに飼い与えられたうちの犬。兄は三日世話をしただけで満足し、無関心になって……それは今も変わっていない。二度と犬を撫でたりはしないんだろうけど、蹴らないだけまだマシ。
よくあることじゃないかもしれないけど、來我もそのタイプなんじゃないかと思った。
だから少し世話をさせたら満足するだろうというのが僕の作戦。
でも、どうにも人から施されるとかは好きじゃない。親切心っていうのはいつでも上から与えられる。それが馬鹿にされた気がして腹が立つ。
お前には出来ないから代わりにやってやったと言われているみたいで、ムカつく。
利き腕が折れても家事をさせられているんだ。学校生活が十全に送れないわけがない。
という、クソくだらねぇ僕のプライドという虚栄心が人の親切心を信じきれないことに問題があることくらい、知ってる。
だから、來我を受け入れるのも時間がかかった。
來我は案外兄ではなかった。けれど、頭からペロリと食べようとしているような。タイミングを虎視眈々と狙っているような気がして、友達とはとてもじゃないけど呼べる相手では無い。
でも、人に施し慣れてないせいか來我が本当にやりたくてやっているように思えるときがあったのも事実。
僕らの関係性をなんと言おうか。
けれど所詮、ギプスが外れでもすれば明確に僕は來我の施しを拒絶出来るのだから。関係性に名前なんかつける必要はない。
でも、來我が僕と関わることを本当に少しでも惜しいと思っているなら……そしたら、骨折が治ったら改めて親友にでもなる可能性くらいあるかもしれない。
そう思っていたのに。
いつも通りの土曜日。朝起きて、犬の散歩をして。
犬のブラッシングをして足を洗って、犬を家に入れてから記憶がブツリと途絶えている。
目を覚ましたら、まず來我が視界に飛び込んできて、辺りを見渡すまでもなく知らない部屋にいるのが分かった。どうやらいつも通りの土曜日では無いらしい
「……來我」
「なに?」
甘ったるい目で甘い声を出す來我に、僕の目付きが細くなる。
「來我旺征。これで、僕らの関係性に明確に名前がついたな。誘拐犯と被害者だ」
「ごめんね」
動じることなく、へらりと笑う來我がなんとも気色悪い。ついに足でも折られるんだろうか。折りたそうにしていたし。
でも、そうでもなさそうだな。
來我はすぐ顔に出る。
基本的に面倒かダルいかが顔に出てるから、わかりやすいのに。この笑顔がなんなのか分からない。
「祐貴のことを一番大切に大事にしたい。祐貴は、何も出来なくなって、俺から施される全てで息をして生きてしまえばいいんだ」
ああ、こいつは頭がおかしいのか。
「お前、馬鹿じゃないだろ? そんなんじゃ僕は靡かないぞ」
「……お前って呼ぶよね、祐貴って。旺征って呼べよ」
「旺征。お前は頭がおかしい」
「え? 今更?」
昨日のお返しのように言う來我に、自分の失言に気が付いた。
ずっとこいつは自分勝手だ。自分勝手に、僕の世話を焼く。僕が紙で指の腹を切った時なんか、すぐに自然治癒して傷口すら見えない所に絆創膏を貼った。
だから、今更ながら僕の骨が折れたことに腹を立てているように見える。
しかし、失言に気がついたからといってすぐに弁明することは叶わず、僕の意識は暗転した。
「おやすみ、祐貴」
その穏やかな声に、來我の人間性が分からなくなった。
攫った時の薬が抜けてないらしい。
僕は度々起きては眠りを繰り返した。
起きてすぐに「説明が面倒臭くて省いたせいで僕が被害者だと思ってるのかもしれないけど、受験うつの兄弟に僕が酷い正論を言ったから折られただけだからしょうもない話なんだ」弁明したけれど……あまり分かって貰えなかった?
來我が僕を誘拐拉致監禁するほどのことでなくて申し訳ない。けれど、本当に力の加減を間違えただけのようなことなのだ。僕じゃなくて犬や一番下の兄弟に手を出して無いから兄はまだ理性的だと思う。
こういうのが全く通じない辺り、來我は一人っ子でペットもいないのだろう。
「祐貴が他人から折られた骨の話なんか聞きたくない。そう刺激しないで、折りたくなるから」
「お前……」
ぞっとして足を縮める。
無駄な抵抗だろうけど、できるだけ胎児のように丸まって寝た。
何日もたっているようで、たっていないらしい。
來我は僕を風呂に入れたがったが、当然断固拒否。介護される気は無い。
代わりにドライヤーをされて、歯磨きまでされたけれど。ブレーカーが落ちる可能性があるから戸勝家ではドライヤーがない。久しぶりにドライヤーをされて、気持ちよくて寝てしまったのが屈辱的だった。誘拐されているんだからもっと危機感を持ちたい。
会話も大した話をしていないのもいい加減にした方がいい。
まるで帰りたくないみたいな自分にゾッとした。まさか。家に帰りたいにきまってる。学校だって、これから文化祭だとか修学旅行だとか忙しくなるのに。
起きたら、來我が朝ごはんを作ってくれた。
「作れるイメージないけど」
「俺大抵の事はなんでも出来るよ。やる気ないだけ」
「うざ」
「でも、料理は人から施される中で一番危険だから身につけたかな」
自分が施している相手の前でよく言えたもんだ。
警戒しながら食べろということなのか。よく分からなかったが、箸を止めると來我がここぞとばかりに食べさせて来るので考えるのをやめて全部食べた。
人の料理は腹が立つほど、美味しかった。
「ふふ、苦手な食べ物ある?」
「馬鹿にしてんのか」
「思ってもないくせに。でも祐貴ってなんでも食べれるように躾られてそう」
「……今のは本当に馬鹿にしただろ」
図星だけど。なんでも食べれる方がいい。こだわりとか、好き嫌いとか無い方がいいんだ。
でも、來我の料理を食べ続けると舌が肥えそうだと初めて人の料理を食べて思った。
初めて來我の買い出しがあったので、脱出を試みたけれど変に鍵が多いしトイレまでしか伸びない鎖のついた足枷では無理だろう。窓は締め切られているし。
結局その日は歯磨きをされて、寝た。誘拐されたストレスか、疲れが溜まっているのかもしれない。
骨折している相手をよくも拉致できたなと思っていたら、トイレに行く時以外片時も離れなかった來我が知らない人間を連れてきた。
「これ義兄。医者」
シンプルな説明に、納得する。
そういえば來我病院ってあった。來我の病院だとは知らなかったけど。
來我が僕を囲える程度に広い部屋に一人暮らできるくらいには、ちょっと家庭事情は複雑なんだろう。
來我がギプスを外したがり、見事に僕はギプスが外された。
「正常に治癒してるからそのまま大丈夫そう。リハビリして」
弟が男を監禁していることに全く触れず、シンプルにそう言って來我の義兄は帰って行った。
「あの人のママが再婚相手よりその息子の方を溺愛して、あの人が嫉妬したせいで俺は家からここに追い出されてると思ってんの。あれでもまともだから俺に罪悪感を抱いてんのか従順」
「マトモなら通報するだろ」
「じゃあイカれてる方かも。だって、俺が祐貴に夢中でいてくれれば、大好きなママを俺に取られずに済むもんね」
來我の家庭環境は恐らく、うちと真逆。
仲良し大家族と崩壊した家庭か……相容れないだろ。
ギプスが外れてから、リハビリ用の道具や運動用のゲームが置かれるようになって。
來我は学生服を着て学校に通い始めた。
怪しまれるからね、と言っていたけど……もしかしたら罪の意識はあるようで。クラスメイトを拉致監禁するのは一応犯罪なので自覚して欲しい。
普通に來我が付きまとってた僕が失踪したら怪しいのは來我しかいないけど。
じゃあ昼は自分で作ろうとしたら來我が用意したハンバーグが冷蔵庫にあった。レンジで温めて食べると、かなり美味しかった。
……監禁って、こんな感じだっけ。
いまのところ、足枷を見なければ同居だ。僕が悪いのか。でも來我が監禁した側なんだから來我手動で進めて貰わないと困る。
いまのところ僕が引きこもりの息子で來我が束縛系の母親だ。
そもそも、目的が不明瞭過ぎる。監禁して一体どういうつもりなんだ。
帰ってきた來我に聞くと、來我は僕に頬擦りしようとしたので頭突いた。
「ごほ、祐貴を傷付けたいわけじゃないって言ったでしょ。真綿で包んでゆっくり沈めて……そうやって俺が全部優しくするから一生ここにいて欲しい、祐貴の世話は全部俺がしたいだけなんだから」
聞くんじゃなかった。
なんて気色の悪い独占欲。美しい蝶にピンを刺して標本にして飾りたいと言っているような、子供じみた夢。
それを、きっと叶えてしまえる力があるから厄介だ。
「それは、無理だろ……來我」
「無理じゃないよ。本気でそう思ってる」
來我のことを疑ってるわけじゃない。でも無理だ。
本当にそう思っているんだろうけど……兄だって犬を飼う前までは本気だった。本気で犬を世話する気満々だったのだ。三日間、それはもう楽しそうに世話をしていた。散歩が楽しい、犬が可愛い、ブラッシングが楽しいと言って飽きる余地なんかなかったはずなのに。それでも飽きた。無責任に簡単に飽きていた
來我と兄が違うなんて分かっているのに。
飽きるか飽きないかなんて、飽きるまで分るわけがないってことを僕は知っている。
僕は、犬になりたくない。兄に見向きもされないのに、未だに兄の足元にじゃれつく馬鹿で小さな命みたいになりたくない。
ほら、一生なんて約束できないのは來我の方だ。
「……寝る」
「おやすみ」
僕を撫で付ける來我の手付きはとても優しかった。
來我はとことん僕を甘やかしたいと言っているのは本当で、それは僕が起きている時とは限らない。
「……ん」
來我はいつからか、寝ている僕に唇を重ねてくるようになった。
乾燥するからと寝ている僕にリップクリームを塗ってくれたのが始まりだったような気もする。
とにかく、唇を重ねるだけ。それもちょっとしつこい。
柔らかくて、くすぐったい。
こんな施しに生理的嫌悪を抱けないのは、どうしてだろうか。
「……旺征って、僕のどこが好きなの」
「俺に甘やかされるのが、本当は大好きなところ」
そんなわけ。
だって、ずっと僕は來我のごっこ遊びに付き合ってるだけ。來我が飽きるまで、そうしてやってるだけじゃん。
……あれ。
なんで、僕はずっと。
來我が飽きることを前提に考えてしまうほど、來我から飽きられるのを怯えているんだろう。
この部屋から出たい理由だって、それしかない。
修学旅行も文化祭も学校の友達も兄が受験に成功したら家族旅行に行くのもどうでもいい。僕の抜けた穴を埋めれないなんてことはない。
でも來我がそうするのは許せない。
來我がこの世話好きごっこ遊びに飽きる前に出ていかないといけないと思ってたけど、來我が……旺征が飽きたら僕は許せない。
いつの間に、僕の中で來我旺征が中心になってたんだろ。
ああムカつくな。
僕の中で一番大事なのは僕だけだったのに。
調子に乗った旺征が舌を舐めて、僕の口を開くのを甘受すると舌が入り込んで唾液が交わる。
もう少し欲しくなるところで唇を離して、僕から呼ばれるのを待ってるのが分かる。そんなの、誘拐犯が攫った相手に求めることじゃないだろうに。
勝手なやつだ。僕のためにキスをしたとでも言いそうな旺征が憎たらしい。
足枷に繋がれた鎖を、ジャラりと音を立たせて旺征の首に回す。
「飽きたら、殺すから」
「可愛いね祐貴」
「……馬鹿にしてるだろ」
「愛おしいって言ってるんだよ」
旺征は嬉しそうに僕の左手を両手で包んだ。
きっと、來我と呼べばキスをしてくるんだろうけど。
どうしようかな。
視点:來我旺征
多分、祐貴は少しおかしい。
監禁をするにあたって、滅茶苦茶怒るか泣くか、前提として嫌われるだろうなとは思っていた。俺を嫌う祐貴は可愛いので良いし、怒っても泣いても俺の手中なのだと思うとかなり嬉しいから。
監禁する前にはそういうのを楽しみにしていたのに。
「……祐貴? え、嘘でしょ。寝た?」
遂に、ドライヤーをしてあげている最中に寝た。今までも、うつらうつらとしていてかなり心地良いんだろうなとは思っていたがまさか寝るとは。……無防備にもほどがある。
まだ監禁歴が浅いということもあるのか、主婦の家事休暇みたいな感じになってる気がするのは俺だけじゃない。
祐貴があまりにも泣きも怒りもしなければ「帰りたい」も言わないから、俺は快適に祐貴をお世話ができるけど。
プライドが高くすぐ噛み付くイメージが強くてそうは思えないだけで、実際は寛容であまり怒らないのかもしれない。それか、身の危険が本当に無いと思っているのか。
今日なんか、監禁なんかして何がしたいのか分からない、同居でしかないなんて言われたっけ。歴代の彼女に恋人になったけど何したいのか分からない、こんなの友達と変わらないと言われたのをふいに思い出した。
でも、歴代の彼女たちと祐貴は明確に違うのは明らかで。
祐貴は、真綿より柔らかでふわふわしたものに優しくくるんでゆっくりゆっくり何十年かかけて締めてあげたいような感情がどうしても強い。
俺の欲が、奉仕欲に偏り過ぎているのが悪いのだろうけど。
こんなに無防備な寝顔を見せられたら、手を出してあげた方がいいかも知れない。
もしかしたら祐貴は、初めて俺からの助けを受け入れる時みたいに、どうせ飽きるから下手に抵抗するより付き合ってやったほうが良いだろうとでも思っているのだろうか。一週間以内に解放されるとでも思っていそうだ。
そんなわけないのに。
祐貴は知らなくてもいいけれど、祐貴はちゃんと月曜日に捜索願が出されて捜されていて。祐貴が家庭内暴力を受けているって誰にも言わなかったお陰で、家出しそうにもないとみんな思っているらしく、ちょっとした大事件になって。顔写真が広まっている。それも、君のネットリテラシーの低い兄弟のどれかがSNSで祐貴の顔写真付きで捜しているものだから腹が立つ。俺は正直、祐貴の顔写真見た奴全員にムカついている。その写真も捜索に使われているのも異様に古くて、今の祐貴よりかなり幼い。恐らく家族写真を抜粋しているようなもので腹が立った。本当に祐貴は愛されているのか、いないのか。そんな世界に祐貴を解放する訳がないだろう。祐貴のことを愛しているのは俺だけで十分。今も昔もこの先も、一番が俺だなんて陳腐な話じゃなくて俺だけが祐貴を愛したい。
そんなこと祐貴は想像もしていないだろう。
そういう、見通しが甘いところも好きだけど……。
ちょっと、今日は同居と変わらないとか言われてしまったので。そういうことではなくてゆくゆくはちゃんと抱くから、多少警戒してもらいたい。
性的な目で見られていることを自覚する祐貴が見たい。
まあ、今抱くのは腕の状態的にも万全な抵抗が出来ないだろうから、抱くのは腕が治ってからにするとして。
これくらいはやってしまおう。
祐貴の唇を親指でなぞると、ちょっと嫌そうなのが面白くて塗ったリップクリームが親指に移った。
唇を重ねる。
一回じゃ足りないな。もう一度、もう一度と口付けて……目が合った。
「……なに、なんで」
「好きだから」
「好きなら何やっても良いと思ってんのか?」
「そんなわけないじゃん」
笑うと祐貴が顔をそむけたので思い切り頬を吸うと、ちゃんと嫌がった祐貴が頭突きをしたので、これが俺の夢や妄想じゃないことが分かって、なんだか安心した。
祐貴が、飽きたら殺すと言った。
祐貴に付けてあげた足枷の鎖を首に巻かれた時、信じられないくらい興奮した。俺は祐貴のものだって、祐貴が認めてくれて嬉しい。
どうか祐貴への罪悪感が俺を殺さないように、祐貴はそうやって俺のことを鎖で縛っていて欲しい。
そして。とりあえず、俺は祐貴を養うために親の後を継ぐわけじゃないけど医者にでもなろうかな。
まさかの俺、來我旺征が戸勝祐貴の世話を焼いているこの数日間が、この十七年で一番だと思う。
死ぬまで生きるだけだと思っていたいままでの無気力な日々なんかと比べ物にならないくらい毎日が感情にあふれている。なんといえばいいのか、自分の生を実感しているというか。
戸勝祐貴が利き手を骨折し、今まで散々掃除当番をサボっていたらしい俺は担任に戸勝の介助を任命された。
曰く、罪滅ぼしの一環らしい。罪滅ぼしは、掃除中に骨を折ったからというわけではない。戸勝が暫らく掃除当番を全うできないから俺が今までの分も働くということらしい。
最初は猛反対だった。戸勝が。
俺も面倒くさいからパスしたかったけど、戸勝の骨が折れていても何でもできるから介助なんか必要ないと言う断固拒否の姿勢が面白くて世話をすることにした。それでも折れない戸勝だったけれど俺に世話を焼かせた方が早く飽きて勝手にどっかに行くだろうと思ったらしく、苦渋の決断で頼ることにしたようだ。黒板を書くのも消すのも早い教師の授業が続いたお陰でもあると思うけど。
俺もなんだかんだ飽きるだろうなと思ってたけれど、これが中々飽きなかった。
他人から世話を焼かれる人生だったのに、戸勝というビックバンは想像以上に影響の根が深かったらしい。
甲斐甲斐しく世話を焼くことが楽しくて仕方がない。
だって本当に戸勝は自分のプライドと戦って、苦悩の末に「……く、來我……」って俺の名前を呼んで頼るんだから、かなり可愛い。
最近ちょっと慣れてきて頼る葛藤がないのも良い。俺に対して傲慢な戸勝、すごく可愛い。
プライドが高くて人から助けられることを拒絶していた手負いの獣の戸勝が、こうして俺だけを頼っているのが本当にたまらない。
俺が生まれて来たのは戸勝祐貴の世話を焼くためかと勘違いしそうになった。
でも、他の余計なお節介連中に囲まれて俺に助けを求める戸勝とかスマホの設定がおかしくなったからって無防備に俺にスマホを渡して来る戸勝とかを見て違うと思った。
戸勝が生まれて来たのが俺、來我旺征に世話を焼かれるためなんだと思う。きっとそうに違いない。
「來我、靴くらい自分で履ける。おい、來我。返せって。俺の外履き持って物思いにふけるな」
「だって戸勝もうすぐ骨折終わっちゃうじゃん」
「俺が骨折って喜んでたのお前だけだよ」
「う」
確かに図星だ。言い逃れができない。
戸勝が骨を折らなかったら、俺は戸勝の隣に居るなんて絶対なかっただろう。運命の赤い糸どころか運命の白ギプスな関係だ。でも、そのギプスはもうすぐ外れてしまう。
利き手の骨折は、とても良かった。戸勝はたくさん不便だったから、頼らざるを得なかった。
だから、次は足が良いけど……でも戸勝に傷付いて欲しくないから出来ることなら折りたくはない。
「戸勝って足折る予定ある?」
「お前俺の足の骨狙ってんの?」
「そんなわけ」
戸勝には何の怪我もして欲しくないし毎日健康でハッピーに暮らしてほしい。
でも、それはそれとしてギプスとか一生外れて欲しくないってだけ。
ギプスという弱みが外れた戸勝はもう俺を頼ってくれなくなるし、なんなら関われないんじゃないかと思う。俺は飽きないと思うけど、戸勝はきっと俺が二秒後には世話とか戸勝自体に飽きると思ってるだろうから。こんな風に喋ってくれないと思う。戸勝から他のクラスメイトに相手するみたいに愛想で対応されたら良くないことをしてしまう気がする。
また骨折してほしいけど、俺が戸勝の骨なんて折りたくないし。
でも、他の誰かが戸勝を傷付けるのは絶対に嫌。
「來我、もういいから靴」
「いいよ、履かせてあげるね」
「はあ?」
戸勝の足元で片膝を付いて、戸勝の左手のひらの熱がじんわりと肩に回る。ジャケット着てなくてよかった。
内履きを脱がして、学生靴を履かせる。学生靴なんかダサくて一回も履いたことないけど、戸勝が履いているのは凄く素朴で良い。靴紐があったら靴紐を結んであげられたからそこだけ残念だな。
帰り道はいつも校門まで。
そこから戸勝は迎えが来るから大通りの方に行くけど、俺は裏手側の方だからここまでになっている。
そこまで歩いて、戸勝のカバンを渡せばお役御免。毎日名残惜しい。
家族にでもなったらもっと戸勝の世話ができると思うとかなり悔しい。今の戸勝の俺に向ける警戒とプライドの葛藤による嫌感情もすごく良いけど、家族ならプライド関係なく世話ができるのだろう。まあ、戸勝をお風呂に入れてあげたいとかは流石にやり過ぎだから……シャンプーしてあげて戸勝の頭と俺の手を同じ匂いにしたい。歯磨きとかしてあげたい。服を着せてドライヤーで髪を乾かして梳かしてあげて。ご飯も作って食べさせてやりたい。学校の支度とか代わりにしてやりたいなとか。
そうやって戸勝の家族に嫉妬していたけど……それも、きっと今日までだ。今日は金曜日で、月曜にはもうギプスが取れるのだろうから。
「……おい、カバン返せ」
「戸勝、俺もっと戸勝のお世話がしたい」
「ごっこ遊びくらい自分で卒業しろ」
呆れた目を向ける戸勝。俺のことを見ている戸勝は、すごく可愛い。どんな顔をしていても。
最近、凄く戸勝への感情を持て余している。もう少し、戸勝のギプスが外れなかったら、この感情の名前だとか向き合い方とかが分かる気がするけど。
「大通りまで送ってくよ」
「大通り? なんでまた……いいけど」
嬉しい延長戦。二人で校門から出る足は、なんだか俺だけ浮ついた。
自分でも分からないけどまだ一緒に居たいと思った意味不明な俺を、きっともっと意味不明だと思いながらも戸勝は受け入れてくれた。戸勝はそういうところが優しい。
戸勝のことなんて、なんだかんだで知らないことの方が多い。
トイレの後に洗ってあげた手をちゃんと水気がなくなるまでハンカチで拭かないと嫌そうな顔をするとか、そういう戸勝の世話に必須なことなら何でも知ってるけど。それだけでいいようで、なんだか物足りない。
ああ、そうだ。知らないと言えば。
「戸勝ってさ、なんで骨折したの?」
「え、今更?」
驚く顔を見て、確かに随分と今更な質問をしたことに気が付いた。そういえば、戸勝に興味がなかったとはいえ、普通に一番目について一番軽く聞きそうなところを、俺はどうして聞かなかったんだっけ。
結婚式会場とかで流すビデオならまず『骨折から始まった二人の物語』から始まりそうなのに。
「……ほら、戸勝はプライド高いし聞いても絶対話さないでしょ?」
軽くあしらおうとしたけど、しかし戸勝のことは軽くあしらえなかった。
「絶対嘘だ。お前マジで僕に興味なかっただけだろ」
そう言って、戸勝はちょっと笑った。
「何だそれ可愛い」
「馬鹿にすんな」
可愛い。頭から食べたい。頭からつま先まで俺が丁寧に洗って、乳液を塗ってパウダーシュガーっぽいやつを振りかけて、可愛い可愛いと言って丁寧に食べたい。
柔らかくて、でも筋肉と骨で殆ど食べるところも無くてきっと食べれたもんじゃないくらい美味しくないだろうけど、戸勝だったら絶対に全部美味しく食べてあげたい。
なんて猟奇じみた願望を抱いていることなんか知らない戸勝は軽く「まあ、來我なら良いか」なんて言って。
「僕の兄弟が受験うつだから今の時期だけ。しょうもない話」
「は」
折られたのか。
そう、理解した瞬間に。もう駄目だった。
戸勝の声が雨みたいに体に溶けていく。
戸勝祐貴。同じ戸勝から骨を折られたの、お前。
プライドが高い君は、骨が折られた時きっと泣かなかったんだろうな。歯を食いしばって、痛みに耐えて。
そして、プライドが高いからどんなクズのせいだろうが、ムカついても恨むことはなかったんだろう。
俺だったら絶対祐貴に恨まれたいけど、でも俺だったら絶対怪我なんか負わせたくない。
きっと俺が両の足の骨を折って上書きしても、祐貴は俺を恨むことはない。俺が足を折るほどの恨めしい愛情を、ムカつくと思うだけの軽い感情で消化する。
可哀想な祐貴。
……俺に、行動力と理由をあげちゃったね。
「來我、もう大通りだけど」
「そうだね」
学校近くの大通り。
車で迎えに来るならここ。でも勝手に俺が迎えに来るんだろうなと思っていただけ。
きっと迎えは来ない。
「兄弟って何人?」
「來我? なんか、お前……」
「あは、まあいいか」
だって、俺が一番祐貴のこと愛してるんだから。
「なんかキモイけど……僕は帰るから」
「うん。また明日」
「また来週な。あとカバン返せ」
ああ、そうだった。君のカバンはとても重いから持たせたくないけれど仕方がない。
カバンを左肩に通す來我に「ばいばい」なんて声をかけて。気付かれないように後ろをついていくなんて簡単なこと。
家の場所は分かった。
明日にでも攫ってしまおう。だって早いほうが良い。俺より先に骨を折る奴がいるんだから、先に殺されてしまうかもしれない。祐貴のことを愛しても居ないやつにそんなことされるなんて。俺は祐貴も自分も許せなくなってしまう。
家に持ち帰って、うんと愛して世話をしてあげよう。
ゆっくり侵食したから祐貴は気付いてないかもしれなけど、祐貴は俺が祐貴のことを馬鹿にしていないことをもう知っているから、もうきっと本気で拒めないのを俺は知っている。
……骨を折る前に分かってよかった。
俺は、祐貴のことが……きっと、すごく好きなんだ。
視点:戸勝祐貴
いつも通りの土曜日になるはずだった。
なのに、どうして來我がいるのか。
世話好きだという訳ではないし、尽くすのが好きなわけではないが、そうしなければならない環境だからやるしかない。
いつもの土曜日は、朝起きて、兄の犬の散歩。
朝ごはんを作って、運動部たちを起こして朝ごはんを食わせる。両親が起きたらコーヒーを淹れる。受験うつの兄はもう頼まれても起こしたりしない。
受験うつの兄から朝指定の時間に起こせと言われて起こしたら殴られて、ムカついたから正論を言ったらエグめに刺さったらしい。気付いたら僕の腕は折れていた。
受験うつの兄に正論パンチをしてはいけない。
両親には怒られたし病院に行くのも面倒くさいし、日常生活も面倒なので、やばい奴に正論こそ浴びせてはいけないことを学んだ。
骨が折れて学習しただけで終わりだったらよかったのに、骨折に引き寄せられたヤバいクラスメイトの來我旺征がもしかしたら一番ヤバいかもしれない。
世話好きでもないだろうから、叩いたら音が鳴る玩具程度に遊ばれているとしか思えない。そもそも弱っている人間に付け込もうとするのはろくな奴じゃない。
だから拒絶一択だったけれど。ちょっと、しつこかった。
兄がいつだったか犬を飼いたいと駄々を捏ねたときに飼い与えられたうちの犬。兄は三日世話をしただけで満足し、無関心になって……それは今も変わっていない。二度と犬を撫でたりはしないんだろうけど、蹴らないだけまだマシ。
よくあることじゃないかもしれないけど、來我もそのタイプなんじゃないかと思った。
だから少し世話をさせたら満足するだろうというのが僕の作戦。
でも、どうにも人から施されるとかは好きじゃない。親切心っていうのはいつでも上から与えられる。それが馬鹿にされた気がして腹が立つ。
お前には出来ないから代わりにやってやったと言われているみたいで、ムカつく。
利き腕が折れても家事をさせられているんだ。学校生活が十全に送れないわけがない。
という、クソくだらねぇ僕のプライドという虚栄心が人の親切心を信じきれないことに問題があることくらい、知ってる。
だから、來我を受け入れるのも時間がかかった。
來我は案外兄ではなかった。けれど、頭からペロリと食べようとしているような。タイミングを虎視眈々と狙っているような気がして、友達とはとてもじゃないけど呼べる相手では無い。
でも、人に施し慣れてないせいか來我が本当にやりたくてやっているように思えるときがあったのも事実。
僕らの関係性をなんと言おうか。
けれど所詮、ギプスが外れでもすれば明確に僕は來我の施しを拒絶出来るのだから。関係性に名前なんかつける必要はない。
でも、來我が僕と関わることを本当に少しでも惜しいと思っているなら……そしたら、骨折が治ったら改めて親友にでもなる可能性くらいあるかもしれない。
そう思っていたのに。
いつも通りの土曜日。朝起きて、犬の散歩をして。
犬のブラッシングをして足を洗って、犬を家に入れてから記憶がブツリと途絶えている。
目を覚ましたら、まず來我が視界に飛び込んできて、辺りを見渡すまでもなく知らない部屋にいるのが分かった。どうやらいつも通りの土曜日では無いらしい
「……來我」
「なに?」
甘ったるい目で甘い声を出す來我に、僕の目付きが細くなる。
「來我旺征。これで、僕らの関係性に明確に名前がついたな。誘拐犯と被害者だ」
「ごめんね」
動じることなく、へらりと笑う來我がなんとも気色悪い。ついに足でも折られるんだろうか。折りたそうにしていたし。
でも、そうでもなさそうだな。
來我はすぐ顔に出る。
基本的に面倒かダルいかが顔に出てるから、わかりやすいのに。この笑顔がなんなのか分からない。
「祐貴のことを一番大切に大事にしたい。祐貴は、何も出来なくなって、俺から施される全てで息をして生きてしまえばいいんだ」
ああ、こいつは頭がおかしいのか。
「お前、馬鹿じゃないだろ? そんなんじゃ僕は靡かないぞ」
「……お前って呼ぶよね、祐貴って。旺征って呼べよ」
「旺征。お前は頭がおかしい」
「え? 今更?」
昨日のお返しのように言う來我に、自分の失言に気が付いた。
ずっとこいつは自分勝手だ。自分勝手に、僕の世話を焼く。僕が紙で指の腹を切った時なんか、すぐに自然治癒して傷口すら見えない所に絆創膏を貼った。
だから、今更ながら僕の骨が折れたことに腹を立てているように見える。
しかし、失言に気がついたからといってすぐに弁明することは叶わず、僕の意識は暗転した。
「おやすみ、祐貴」
その穏やかな声に、來我の人間性が分からなくなった。
攫った時の薬が抜けてないらしい。
僕は度々起きては眠りを繰り返した。
起きてすぐに「説明が面倒臭くて省いたせいで僕が被害者だと思ってるのかもしれないけど、受験うつの兄弟に僕が酷い正論を言ったから折られただけだからしょうもない話なんだ」弁明したけれど……あまり分かって貰えなかった?
來我が僕を誘拐拉致監禁するほどのことでなくて申し訳ない。けれど、本当に力の加減を間違えただけのようなことなのだ。僕じゃなくて犬や一番下の兄弟に手を出して無いから兄はまだ理性的だと思う。
こういうのが全く通じない辺り、來我は一人っ子でペットもいないのだろう。
「祐貴が他人から折られた骨の話なんか聞きたくない。そう刺激しないで、折りたくなるから」
「お前……」
ぞっとして足を縮める。
無駄な抵抗だろうけど、できるだけ胎児のように丸まって寝た。
何日もたっているようで、たっていないらしい。
來我は僕を風呂に入れたがったが、当然断固拒否。介護される気は無い。
代わりにドライヤーをされて、歯磨きまでされたけれど。ブレーカーが落ちる可能性があるから戸勝家ではドライヤーがない。久しぶりにドライヤーをされて、気持ちよくて寝てしまったのが屈辱的だった。誘拐されているんだからもっと危機感を持ちたい。
会話も大した話をしていないのもいい加減にした方がいい。
まるで帰りたくないみたいな自分にゾッとした。まさか。家に帰りたいにきまってる。学校だって、これから文化祭だとか修学旅行だとか忙しくなるのに。
起きたら、來我が朝ごはんを作ってくれた。
「作れるイメージないけど」
「俺大抵の事はなんでも出来るよ。やる気ないだけ」
「うざ」
「でも、料理は人から施される中で一番危険だから身につけたかな」
自分が施している相手の前でよく言えたもんだ。
警戒しながら食べろということなのか。よく分からなかったが、箸を止めると來我がここぞとばかりに食べさせて来るので考えるのをやめて全部食べた。
人の料理は腹が立つほど、美味しかった。
「ふふ、苦手な食べ物ある?」
「馬鹿にしてんのか」
「思ってもないくせに。でも祐貴ってなんでも食べれるように躾られてそう」
「……今のは本当に馬鹿にしただろ」
図星だけど。なんでも食べれる方がいい。こだわりとか、好き嫌いとか無い方がいいんだ。
でも、來我の料理を食べ続けると舌が肥えそうだと初めて人の料理を食べて思った。
初めて來我の買い出しがあったので、脱出を試みたけれど変に鍵が多いしトイレまでしか伸びない鎖のついた足枷では無理だろう。窓は締め切られているし。
結局その日は歯磨きをされて、寝た。誘拐されたストレスか、疲れが溜まっているのかもしれない。
骨折している相手をよくも拉致できたなと思っていたら、トイレに行く時以外片時も離れなかった來我が知らない人間を連れてきた。
「これ義兄。医者」
シンプルな説明に、納得する。
そういえば來我病院ってあった。來我の病院だとは知らなかったけど。
來我が僕を囲える程度に広い部屋に一人暮らできるくらいには、ちょっと家庭事情は複雑なんだろう。
來我がギプスを外したがり、見事に僕はギプスが外された。
「正常に治癒してるからそのまま大丈夫そう。リハビリして」
弟が男を監禁していることに全く触れず、シンプルにそう言って來我の義兄は帰って行った。
「あの人のママが再婚相手よりその息子の方を溺愛して、あの人が嫉妬したせいで俺は家からここに追い出されてると思ってんの。あれでもまともだから俺に罪悪感を抱いてんのか従順」
「マトモなら通報するだろ」
「じゃあイカれてる方かも。だって、俺が祐貴に夢中でいてくれれば、大好きなママを俺に取られずに済むもんね」
來我の家庭環境は恐らく、うちと真逆。
仲良し大家族と崩壊した家庭か……相容れないだろ。
ギプスが外れてから、リハビリ用の道具や運動用のゲームが置かれるようになって。
來我は学生服を着て学校に通い始めた。
怪しまれるからね、と言っていたけど……もしかしたら罪の意識はあるようで。クラスメイトを拉致監禁するのは一応犯罪なので自覚して欲しい。
普通に來我が付きまとってた僕が失踪したら怪しいのは來我しかいないけど。
じゃあ昼は自分で作ろうとしたら來我が用意したハンバーグが冷蔵庫にあった。レンジで温めて食べると、かなり美味しかった。
……監禁って、こんな感じだっけ。
いまのところ、足枷を見なければ同居だ。僕が悪いのか。でも來我が監禁した側なんだから來我手動で進めて貰わないと困る。
いまのところ僕が引きこもりの息子で來我が束縛系の母親だ。
そもそも、目的が不明瞭過ぎる。監禁して一体どういうつもりなんだ。
帰ってきた來我に聞くと、來我は僕に頬擦りしようとしたので頭突いた。
「ごほ、祐貴を傷付けたいわけじゃないって言ったでしょ。真綿で包んでゆっくり沈めて……そうやって俺が全部優しくするから一生ここにいて欲しい、祐貴の世話は全部俺がしたいだけなんだから」
聞くんじゃなかった。
なんて気色の悪い独占欲。美しい蝶にピンを刺して標本にして飾りたいと言っているような、子供じみた夢。
それを、きっと叶えてしまえる力があるから厄介だ。
「それは、無理だろ……來我」
「無理じゃないよ。本気でそう思ってる」
來我のことを疑ってるわけじゃない。でも無理だ。
本当にそう思っているんだろうけど……兄だって犬を飼う前までは本気だった。本気で犬を世話する気満々だったのだ。三日間、それはもう楽しそうに世話をしていた。散歩が楽しい、犬が可愛い、ブラッシングが楽しいと言って飽きる余地なんかなかったはずなのに。それでも飽きた。無責任に簡単に飽きていた
來我と兄が違うなんて分かっているのに。
飽きるか飽きないかなんて、飽きるまで分るわけがないってことを僕は知っている。
僕は、犬になりたくない。兄に見向きもされないのに、未だに兄の足元にじゃれつく馬鹿で小さな命みたいになりたくない。
ほら、一生なんて約束できないのは來我の方だ。
「……寝る」
「おやすみ」
僕を撫で付ける來我の手付きはとても優しかった。
來我はとことん僕を甘やかしたいと言っているのは本当で、それは僕が起きている時とは限らない。
「……ん」
來我はいつからか、寝ている僕に唇を重ねてくるようになった。
乾燥するからと寝ている僕にリップクリームを塗ってくれたのが始まりだったような気もする。
とにかく、唇を重ねるだけ。それもちょっとしつこい。
柔らかくて、くすぐったい。
こんな施しに生理的嫌悪を抱けないのは、どうしてだろうか。
「……旺征って、僕のどこが好きなの」
「俺に甘やかされるのが、本当は大好きなところ」
そんなわけ。
だって、ずっと僕は來我のごっこ遊びに付き合ってるだけ。來我が飽きるまで、そうしてやってるだけじゃん。
……あれ。
なんで、僕はずっと。
來我が飽きることを前提に考えてしまうほど、來我から飽きられるのを怯えているんだろう。
この部屋から出たい理由だって、それしかない。
修学旅行も文化祭も学校の友達も兄が受験に成功したら家族旅行に行くのもどうでもいい。僕の抜けた穴を埋めれないなんてことはない。
でも來我がそうするのは許せない。
來我がこの世話好きごっこ遊びに飽きる前に出ていかないといけないと思ってたけど、來我が……旺征が飽きたら僕は許せない。
いつの間に、僕の中で來我旺征が中心になってたんだろ。
ああムカつくな。
僕の中で一番大事なのは僕だけだったのに。
調子に乗った旺征が舌を舐めて、僕の口を開くのを甘受すると舌が入り込んで唾液が交わる。
もう少し欲しくなるところで唇を離して、僕から呼ばれるのを待ってるのが分かる。そんなの、誘拐犯が攫った相手に求めることじゃないだろうに。
勝手なやつだ。僕のためにキスをしたとでも言いそうな旺征が憎たらしい。
足枷に繋がれた鎖を、ジャラりと音を立たせて旺征の首に回す。
「飽きたら、殺すから」
「可愛いね祐貴」
「……馬鹿にしてるだろ」
「愛おしいって言ってるんだよ」
旺征は嬉しそうに僕の左手を両手で包んだ。
きっと、來我と呼べばキスをしてくるんだろうけど。
どうしようかな。
視点:來我旺征
多分、祐貴は少しおかしい。
監禁をするにあたって、滅茶苦茶怒るか泣くか、前提として嫌われるだろうなとは思っていた。俺を嫌う祐貴は可愛いので良いし、怒っても泣いても俺の手中なのだと思うとかなり嬉しいから。
監禁する前にはそういうのを楽しみにしていたのに。
「……祐貴? え、嘘でしょ。寝た?」
遂に、ドライヤーをしてあげている最中に寝た。今までも、うつらうつらとしていてかなり心地良いんだろうなとは思っていたがまさか寝るとは。……無防備にもほどがある。
まだ監禁歴が浅いということもあるのか、主婦の家事休暇みたいな感じになってる気がするのは俺だけじゃない。
祐貴があまりにも泣きも怒りもしなければ「帰りたい」も言わないから、俺は快適に祐貴をお世話ができるけど。
プライドが高くすぐ噛み付くイメージが強くてそうは思えないだけで、実際は寛容であまり怒らないのかもしれない。それか、身の危険が本当に無いと思っているのか。
今日なんか、監禁なんかして何がしたいのか分からない、同居でしかないなんて言われたっけ。歴代の彼女に恋人になったけど何したいのか分からない、こんなの友達と変わらないと言われたのをふいに思い出した。
でも、歴代の彼女たちと祐貴は明確に違うのは明らかで。
祐貴は、真綿より柔らかでふわふわしたものに優しくくるんでゆっくりゆっくり何十年かかけて締めてあげたいような感情がどうしても強い。
俺の欲が、奉仕欲に偏り過ぎているのが悪いのだろうけど。
こんなに無防備な寝顔を見せられたら、手を出してあげた方がいいかも知れない。
もしかしたら祐貴は、初めて俺からの助けを受け入れる時みたいに、どうせ飽きるから下手に抵抗するより付き合ってやったほうが良いだろうとでも思っているのだろうか。一週間以内に解放されるとでも思っていそうだ。
そんなわけないのに。
祐貴は知らなくてもいいけれど、祐貴はちゃんと月曜日に捜索願が出されて捜されていて。祐貴が家庭内暴力を受けているって誰にも言わなかったお陰で、家出しそうにもないとみんな思っているらしく、ちょっとした大事件になって。顔写真が広まっている。それも、君のネットリテラシーの低い兄弟のどれかがSNSで祐貴の顔写真付きで捜しているものだから腹が立つ。俺は正直、祐貴の顔写真見た奴全員にムカついている。その写真も捜索に使われているのも異様に古くて、今の祐貴よりかなり幼い。恐らく家族写真を抜粋しているようなもので腹が立った。本当に祐貴は愛されているのか、いないのか。そんな世界に祐貴を解放する訳がないだろう。祐貴のことを愛しているのは俺だけで十分。今も昔もこの先も、一番が俺だなんて陳腐な話じゃなくて俺だけが祐貴を愛したい。
そんなこと祐貴は想像もしていないだろう。
そういう、見通しが甘いところも好きだけど……。
ちょっと、今日は同居と変わらないとか言われてしまったので。そういうことではなくてゆくゆくはちゃんと抱くから、多少警戒してもらいたい。
性的な目で見られていることを自覚する祐貴が見たい。
まあ、今抱くのは腕の状態的にも万全な抵抗が出来ないだろうから、抱くのは腕が治ってからにするとして。
これくらいはやってしまおう。
祐貴の唇を親指でなぞると、ちょっと嫌そうなのが面白くて塗ったリップクリームが親指に移った。
唇を重ねる。
一回じゃ足りないな。もう一度、もう一度と口付けて……目が合った。
「……なに、なんで」
「好きだから」
「好きなら何やっても良いと思ってんのか?」
「そんなわけないじゃん」
笑うと祐貴が顔をそむけたので思い切り頬を吸うと、ちゃんと嫌がった祐貴が頭突きをしたので、これが俺の夢や妄想じゃないことが分かって、なんだか安心した。
祐貴が、飽きたら殺すと言った。
祐貴に付けてあげた足枷の鎖を首に巻かれた時、信じられないくらい興奮した。俺は祐貴のものだって、祐貴が認めてくれて嬉しい。
どうか祐貴への罪悪感が俺を殺さないように、祐貴はそうやって俺のことを鎖で縛っていて欲しい。
そして。とりあえず、俺は祐貴を養うために親の後を継ぐわけじゃないけど医者にでもなろうかな。
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