12 / 70
黄金の草原
しおりを挟む馬は木漏れ日の中をゆっくりと進んだ。
蹄が落ち葉を踏み締めるごとに、振動が体に伝わってくる。
スカートのフレアがたっぷりあり助かったが、股はすっかり開いている。
足が鎧に届くわけもないので、変に股に力が入ってしまう。
(なんだか揺れのせいか、あの人にされたことを思い出しちゃう……中も濡れたままだし)
淫らな事を考えて馬から転げ落ちでもしたら大変だと、背筋を伸ばし、手綱を握る手に力が入った。
すると、
「もっと……僕に背中を預けてください」
耳元で囁かれ、心臓が跳ねた。
そして騎士様の力強い手で腰をぐっと引き寄せられて、思わず変な声が出てしまうところだった。
「重心が安定している方が馬も歩きやすいのです。エマさんももっと力を抜いて楽にしてください」
「はい……うまくできなくてすみません」
「気にしないで。こうやって体をくっつけて……二人で同じ揺れを感じるようにしたら……とても気持ちいいですよ。僕がしっかり支えているので、全身で感じてくださいね」
腰を抱えられ、逞しい胸板にすっかり包み込まれてしまう。
その上、汗をかいていたはずなのに騎士様からは華やかな良い香りがする。
ユーテルからもこんないい匂いがするし、美人はみな纏う香りすらも美しいのかもしれない。
それに引き換え、さっきまで男の部屋でまぐわうような行為をしていた自分からは、淫乱な匂いでもしないかと気が気ではなかった。
(騎士様はこんなにも純粋に親切にしてくださるのに、私ったら変なことばっかり考えてる……いつの間にこんな子になったのかしら。おばあちゃんにも、本当に騎士だった勇敢なおじいちゃんにも顔向けできないわ)
情けなさに落ち込んでいると、
「ほら、見えてきました」
顔を上げると、目の前が光で満ち溢れている。
木立の向こうに輝く、眩しいほどの黄金の草原。
目の前には、傾いた太陽の光を浴びて、一面、眩しいほどの黄金の草原が広がっていた。
「わあ……すごいです……! 全部、金色……まるで天国みたい……綺麗ですね……」
「……貴女もとても美しいですよ」
突然、囁かれた甘い言葉に、なんと反応したらいいのかも解らずに顔が真っ赤に染まる。
「そろそろ馬にも慣れてきたでしょうから、少し走らせましょう。泉はあの丘の向こうなので」
そういうと騎士様は、馬の腹を軽く鎧で蹴った。
馬は少しずつ闊歩を早め、しだいにぐんぐんと加速していく。
騎士様の胸がのしかかり、体が少し前傾しになる。
あまりのスピードに初めは恐ろしかったが、慣れてくると風を切っていく感じがとても気持ちよかった。
「どうですか、速度を落とした方が良ければそうしましょう。急いでいるわけでもないので」
「びっくりしましたが、楽しいです……! 馬ってこんなに速く走るんですね。この子も楽しそうです」
「ハハハ、その通りです。主人が楽しいと馬にも伝わるものですから。それにこいつは姉から貰った馬で、とても賢いですし」
「まぁ……騎士様には、お姉様がいらっしゃるのですね」
ふとエリーの事を思い出したが、出会ったばかりなのに家族の事をあれこれと聞くわけにはいかなかった。
「随分と前に異国に嫁ぎましたけど。我が家は僕以外、とても優秀なもので……家にいても僕は肩身が狭いのです」
「ふふ、きょうだいがいるとそういう悩みもあるのですね。でも、こんな素晴らしい馬を贈られるのですから、騎士様がとても愛されている証拠ですよ」
そう答えると、なぜか腰に回された手が強くなる。
「……もうすぐ泉です。そこで少し休みましょう」
「あの森でしょうか? 本当にあっという間でしたね。とても速くて力強くて、格好良かったです。この子って男の子……」
ふと空気が湿ってきたような気がして、何気なく後ろを振り返る。
「大変……騎士様、向こうの空が曇ってきたみたいです」
「あぁ、本当だね。聖水で水浴びさせたあと、早めに発ったほうがよさそうだ」
「ええ……そう、ですね」
内心、すぐにでも引き返した方が良いのではと思ったが、遠征帰りで馬が疲れているのかもしれない。
一乙女が騎馬隊の副隊長に意見できるわけもなく、雨が降らないことを願うしかなかった。
13
あなたにおすすめの小説
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる