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第二章 さらば愛しき日々
第24話 逃亡失敗~失墜~
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ヤツは三日間、俺を拘束したまま犯し続けた。俺はヤツに貫かれ淫らな声を上げながら、だが意識は全く別なものに囚われていた。
自分の中で渦巻く拭いきれない不可解さと疑問の数々がヤツに堕とされた事よりもなお深く俺を苦しめていた。
ーなぜ、ヤツが知っていた?......いや、それ以前に『命じた』...てどういう意味だ?ー
少なくとも俺達がいるのはリアルな現実社会だ。異世界転移やら転生やらが当たり前に出てくるラノベの世界じゃない。当然、魔法使いなんてものはいない。
ヤツの二つ名は『魔王』だが、あくまでも人間だ。いや、もしかしたら黒いデカイ羽根と角だの牙が生えているかもしれないが、素っ裸になったヤツの身体にはそんなものは無い。
色素の少ない北方ロシアの人間らしく、雪花石膏のような真っ白な肌をしていて、背中には、それは見事にキレイな筋肉が乗り、ミケランジェロの彫像のようだ。
『あんたは、タトゥーは入れないのか?』
俺が何の気なしに訊くとヤツは不快そうに眉をひそめた。
『私はチンピラではない。好んでタトゥーなど入れたがるのは軽薄な連中だ』
『悪かったな.....』
かつての俺の身体には刺青があった。チンピラだったかもしれないが、背中には大空に翼を拡げて飛翔する鷲がいた。だが、その翼は今はない。ヤツはそっぽを向く俺を取りなすように、付け加えた。
『日本の刺青と西洋のタトゥーは別なものだ。日本の刺青は実に芸術的で、人間の皮膚に描かれた絵画そのものだ。かつてのお前の刺青も見事なものだったが。そうだな、お前のこの象牙のような肌には、カンノンなんぞ似合いそうだな....』
ヤツの指先が背中をすべり、俺は全身の粟立つ感覚に身を竦ませた。
『やめろ.....! 』
俺はヤツの手を振り払い睨み付けた。
.
『これは俺の身体じゃない ! 』
『お前の身体じゃない?.....今さら何を言ってるんだ?』
ヤツがやんわりとその手に俺のモノを包み込んだ。捏ねるように扱かれ、俺は背筋を震わせた。
『あっ.....あぁっ.....くぅっ...』
『私の手の中であれだけ可愛く乱れて、よがり啼いていたのは、誰かな?』
背後から含み笑いながら揶揄する艶めいた声に俺は顔をしかめ、吐き捨てた。
『やめろ ! ......そうじゃねぇ!.....こいつは......この身体の持ち主だったガキは堅気だろうが ! 』
俺は元々、裏稼業のならず者の悴だった。やさぐれても、悪い仲間とつるんでも、それは当たり前の結果でしかなかった。
ーだが、こいつは違う。多分、品の良い家庭に育って、両親から大事にされて......ー
本来、俺とは違う清らかな世界に棲んでいた筈だ。あんなふうに身内に騙され堕とされさえしなければ......。
ヤツが、あぁ...と小さく呟いた。
『善良なだけが取り柄の、非力な男だったな。お前が入れ替わる前の彼は.....』
ヤツは俺の耳にカリリ...と噛みついて言った。
『気にするな。あいつがこの身体に戻ることはない。お前があの身体を取り戻すこともない....この世はお伽噺ではないのだからな』
ヤツに揺すぶられながら、俺は突きつけられた言葉に絶望していた。拭うことの出来ない喪失感がシミのように俺の中にひろがっていった。
そして、ある疑問だけが、チカチカと俺の中で点滅し続けていた。
ーなぜ、俺達は、俺とあのガキが入れ替わったんだ?......なぜミハイルが俺達を入れ替えることができたんだ.....?ー
ヤツは人間だ。そして、ここは魔法使いのいない現実世界だ。
だがそれ以上に、ヤツがなぜ俺とあのガキを入れ替えたのか......俺にはそれが最大の謎だった。
ヤツは俺の混乱を愉しむようにうっすらと笑みを浮かべ、一層激しく俺を突き上げた。背中がしなり、俺は無意識にヤツの腕に縋り、身を捩る。
「ラウル、今のお前は実に魅力的だ.....」
唇が重ねられ、ヤツの囁きが毒のように注がれる。
「お前は俺のものだ。......逃がしはしない」
ヤツの眼差しがわずかに熱を帯びて、見つめていた。やがて俺の思考は焼き切れ、深い闇の中に呑み込まれていった。いつ果てるとも知れない煉獄の中にゆっくりと堕ちていった。
自分の中で渦巻く拭いきれない不可解さと疑問の数々がヤツに堕とされた事よりもなお深く俺を苦しめていた。
ーなぜ、ヤツが知っていた?......いや、それ以前に『命じた』...てどういう意味だ?ー
少なくとも俺達がいるのはリアルな現実社会だ。異世界転移やら転生やらが当たり前に出てくるラノベの世界じゃない。当然、魔法使いなんてものはいない。
ヤツの二つ名は『魔王』だが、あくまでも人間だ。いや、もしかしたら黒いデカイ羽根と角だの牙が生えているかもしれないが、素っ裸になったヤツの身体にはそんなものは無い。
色素の少ない北方ロシアの人間らしく、雪花石膏のような真っ白な肌をしていて、背中には、それは見事にキレイな筋肉が乗り、ミケランジェロの彫像のようだ。
『あんたは、タトゥーは入れないのか?』
俺が何の気なしに訊くとヤツは不快そうに眉をひそめた。
『私はチンピラではない。好んでタトゥーなど入れたがるのは軽薄な連中だ』
『悪かったな.....』
かつての俺の身体には刺青があった。チンピラだったかもしれないが、背中には大空に翼を拡げて飛翔する鷲がいた。だが、その翼は今はない。ヤツはそっぽを向く俺を取りなすように、付け加えた。
『日本の刺青と西洋のタトゥーは別なものだ。日本の刺青は実に芸術的で、人間の皮膚に描かれた絵画そのものだ。かつてのお前の刺青も見事なものだったが。そうだな、お前のこの象牙のような肌には、カンノンなんぞ似合いそうだな....』
ヤツの指先が背中をすべり、俺は全身の粟立つ感覚に身を竦ませた。
『やめろ.....! 』
俺はヤツの手を振り払い睨み付けた。
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『これは俺の身体じゃない ! 』
『お前の身体じゃない?.....今さら何を言ってるんだ?』
ヤツがやんわりとその手に俺のモノを包み込んだ。捏ねるように扱かれ、俺は背筋を震わせた。
『あっ.....あぁっ.....くぅっ...』
『私の手の中であれだけ可愛く乱れて、よがり啼いていたのは、誰かな?』
背後から含み笑いながら揶揄する艶めいた声に俺は顔をしかめ、吐き捨てた。
『やめろ ! ......そうじゃねぇ!.....こいつは......この身体の持ち主だったガキは堅気だろうが ! 』
俺は元々、裏稼業のならず者の悴だった。やさぐれても、悪い仲間とつるんでも、それは当たり前の結果でしかなかった。
ーだが、こいつは違う。多分、品の良い家庭に育って、両親から大事にされて......ー
本来、俺とは違う清らかな世界に棲んでいた筈だ。あんなふうに身内に騙され堕とされさえしなければ......。
ヤツが、あぁ...と小さく呟いた。
『善良なだけが取り柄の、非力な男だったな。お前が入れ替わる前の彼は.....』
ヤツは俺の耳にカリリ...と噛みついて言った。
『気にするな。あいつがこの身体に戻ることはない。お前があの身体を取り戻すこともない....この世はお伽噺ではないのだからな』
ヤツに揺すぶられながら、俺は突きつけられた言葉に絶望していた。拭うことの出来ない喪失感がシミのように俺の中にひろがっていった。
そして、ある疑問だけが、チカチカと俺の中で点滅し続けていた。
ーなぜ、俺達は、俺とあのガキが入れ替わったんだ?......なぜミハイルが俺達を入れ替えることができたんだ.....?ー
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だがそれ以上に、ヤツがなぜ俺とあのガキを入れ替えたのか......俺にはそれが最大の謎だった。
ヤツは俺の混乱を愉しむようにうっすらと笑みを浮かべ、一層激しく俺を突き上げた。背中がしなり、俺は無意識にヤツの腕に縋り、身を捩る。
「ラウル、今のお前は実に魅力的だ.....」
唇が重ねられ、ヤツの囁きが毒のように注がれる。
「お前は俺のものだ。......逃がしはしない」
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