バックレそびれた(元)悪役令息の冒険日記

葛城 惶

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違和感がいっぱい......

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 とりあえず、なんか微妙にイヤな感じだったので、ケヴィンの実家、辺境伯の屋敷を早々に後にして、俺達はダンジョンに向かった。
 
 そう、もうひとつ変だったのはケヴィンだった。
 ケヴィンは弓の名手で、狙ったものはほぼ外すことは無いんだけど......。

 ダンジョンへ向かう森の中、狼の群れに出くわしたんだけど、そいつらを狙ったはずのケヴィンの矢が、危うくアントーレに当たりそうになった。

 俺達のフォーメーションの基本は、前方でアントーレとマグリット、エメルさんが剣を振るい、ケヴィンが援護射撃に回る。...俺も物理攻撃は出来るから前に出ることもあるんだけど、後ろで防御魔法をかけてることが多い。
 ルードヴィヒは魔法での遠距離攻撃が主なんだけど、狼の群れが退散した後、ルードヴィヒが俺の耳許で、すごく怪訝そうに言った。

ーケヴィンは、狼じゃなくてアントーレを狙ってたーって。

 ルードヴィヒはケヴィンの斜め後ろくらいにいたから、絶対見間違いは無いと言うし、ケヴィンが矢を放とうとした時、その手に石礫みたいなのが飛んできて当たって、僅かに狙いが逸れた....って言うんだ。石を投げたのはエメルさんだって......。

『放った矢がアントーレの側を掠めて木に刺さったのは、偶然のミスじゃない。』

 ルードヴィヒは眉をひそめて言った。

『エメルさんが石を投げなかったら危ないとこだった』

 エメルさんはその直後、ケヴィンの側に寄って、襟首を掴んで何か言ってたらしい、ってルードヴィヒは言った。前衛にいたはずのエメルさん、移動速すぎない?

ーでも、なぜケヴィンが........。ー

 不安を隠しきれない様子の俺達に気づいたのか、エメルさんがツカツカと寄ってきた。その後には真っ青になって項垂れたケヴィン。

「心配しなくていい。コイツはもう大丈夫だ。一応、俺が見張っとくけどな」

 訳は訊くな、と言われたんで訊きません。聞くの怖いし。嫌な予感にはまだ蓋をしておきたい。ヘタレだもん、俺。

 それにしても頼もしいです、エメルさん。本当、男前。俺達が狼一匹倒す間に軽く二、三匹いってる。
 スリムなのに、めっちゃ強い。二刀流でスパスパ行けちゃう、その強さはなんなの?

「キャリアが違うよ、キャリアが」

って、見た目に似合わず豪快に笑うエメルさん。年はアラサーあたりらしい。十代の頃から武者修行にいろんな国を回ってたって。
 でもアントーレの旧友ってことは結構偉い人だよね?見えないけど。



「私は彼に剣術を習ったことがあるんだ」

 アントーレ曰く、あまりの厳しさに寝込んだんだって、三日くらい。でもそのお陰で騎士試験に合格できたんだから文句は言えないよね。

 それとアントーレが俺との経緯を話したら、無言で頭を殴られたって。

「絶対無理だから諦めろって、ひどいんだ、エメルは。でも、私は絶対諦めないから。いつか必ず、イエスって言わせてみせるから」

 いや、諦めて下さい。
 エメルさん正しいです。俺、ポンコツ無理っす。まぁ最近かなりマシになってきたけど、ストーカーは嫌です。ボコッてくれてありがとう。



「でも、俺には惚れるなよ」

 ってエメルさん、大丈夫です。惚れません。男前は嫌いじゃないですけど。
 どうもその.......仕草とか話し方とか、若いわりにオッサン臭いキャラとかが何故かビミョーに既視感があって......。
 何気に前世のトラウマ抉られるんで、止めときます。


 だってマジ怖かったんだもん、宮下女史......。転生したはずなのに、叱り飛ばされる夢見ちゃったよ、昨夜ゆうべ


 

 
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