私が思うこと。

瑪瑙

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本当に?

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私は幼い頃、母親に殺されかけた。

 まだ5歳だった頃、私を可愛がってくれていた母親はだんだん私を嫌うようになりいつの間にか私が視界に入るとヒストリックになるようになっていた。

「あなたなんて生まれてくなければよかったのに」

たびたび言われるこの言葉に酷く傷ついた心は自衛のために周囲への人への門を閉ざした。
何も期待しない。そうすれば失望もしない。

 7歳になっても何も変わらない、そんなある日、突然母親に優しく揺り起こされた。

「起きて、起きて,お母さんよ。」

「…?」

トントン、トントンとリズム良くお腹に振動を感じ、目を覚まして布団から顔を出す。

「お母さ……ん?」

そう呼んでいいのか分からず戸惑った。

「ね、こっちきて」

目蓋を擦った手を取られ、私は惹かれるようにしてリビングまで連れてこられた。

真夜中だというのに父はお昼の時のようなしっかりしたスーツを着込んでいて、良く見ると母もおしゃれをしていた。

「あなたも早くこれに着替えなさい。」

指された方向に目線をやると、ソファーに私のお気に入りのワンピースがきっちり畳まれて置いてあった。

「?どうして?お母さん、お父さん。」

ただならぬ雰囲気に私は両親に心から恐怖した。
何かがおかしい。

「お父さんももう限界。
一緒に楽しいところへ行かない?」

初めて見る父の疲弊した表情に思わずコクリと頷いた。

「いいよ」

そう言わなければいけない気がした。
じゃあと言って父は何かを書き残すと車に行ってるねと言い残し家を出た。

「あなたもほら、早く着替えて」

母に促され、ワンピースに着替える。

「行くわよ」

「あっ、少し待ってください」

私は急いで自分の部屋へ戻ると、いつもの持ち物

・家の鍵 ・住所の書いてある手帳
・お財布 

を小さな鞄に詰めて持って降りた。

「あら何も持って行かなくてもいいのに。」

なんて母は顔を歪めたが、私は笑ってごまかし,母と一緒に家を出た。そういえば久々に母親と話したな。なんて思いながら真っ暗な真夜中の景色を眺めていた。雲なんて見えやしないのに、母は雨が降りそうね。と言った。

そうして車で私達は海が見える崖についた。

「ここどこ?」

車から出ると強い風に思わず体を固くする。

父親は私を崖の先端まで来させると何故か優しい笑みを浮かべた。
父親の笑みなんて初めて見たので私は嬉しくなって思わずお母さんを振り返った。



その瞬間

私の体は宙に浮いていた。


何が起こったのかわからなかったが、理解するまもなく体が水面に叩きつけられた。

「っ!」

かなりの衝撃にようやく起こっていることを理解した。

必死に水面に上がろうとかえる泳ぎをする。

しばらくしてから、奥の方から大きな音と共に強い波が襲ってきた。
自分たちがいた崖からどんどん遠のいていく。

小さい鞄を離さないように握りしめて私は必死に呼吸をしつつ、近くの岩場まで泳いだ。
 しかし,7歳だ。体力は長くは持たず、だんだん呼吸が苦しくなる。

あっ これ私 死ぬのかな

そんな事が脳裏をよぎった。

体はだんだん重くなっていき、呼吸もできない。

苦しい苦しい

最後の息を吐くと共に私の意識は遠のいていった。

ーー

「…ちゃん!柚ちゃん!」

意識がだんだん鮮明になってくると同時にガヤガヤした雑音と透き通った友人の声が鼓膜を振動させる。

「もう柚ちゃんったらすぐに寝ちゃうんだから。もう移動の時間だよ。行こう?」

「……そうだっけ?」

「えー、次科学の実験だよ。」

「ごめんごめん!今準備するからちょっと待って」

呆れ顔の友達に勢いよく謝ると急いで準備に取り掛かる。
 それにしても懐かしい夢を見た。いや早もう10年も経つのか。確かあの後は…

私は偶然通りかかったお兄さんによって助けられた。
両親はその後も行方知れずだが、あの二人が車のまま突っ込んだおかげで私は気づかれたそうな。

そのあと警察に行って住所見せて、親戚に連絡が入って…

結局私はいとこのお家に引き取られることになった。ここには6つ下の弟と12こ下の妹がいる。二人とも私を慕ってくれている。
私にとったら二人とも天使である。

今はまだ授業中だ。集中しないと…
そう思って真剣に聞けば聞くほど先生が時折混ぜてくる冗談が何故か面白おかしく感じる。

最近席替えしたばかりなのに、もう隣男の子は呆れ顔をしながらこちらを見ている。

「なーに?」

「いやー別に。ただ森下って人生楽しそうだなと思って」

「…そう見える?」

「うん、見える見える。何にも悩みなさそうで、いいよなぁ」

「えー?」

どうだろうね、なんて笑いながら心の底で心が悲鳴を上げる。そっと蓋をして見て見ぬふりをする。


何回私が生まれてこなければと思ったか。


何回私が自殺しようとしたか。


何回後悔したか


私は両親を自殺に追い込んでまで生きてる

と何回思ったことか。



「人ってみんな何かしらに悩んでんじゃない?私にだって悩みくらいあるよ。」

「そうかぁ?」

隣の男の子はまぁそうだよなぁと言いながらだるそうに先生の方へ視線を戻した。

授業が終わると、みんな自分の友達のところへ行く。私も例のように声の綺麗な女の子のところへ行く。

「結衣ー、一緒に教室戻ろ」

「柚ちゃん片付けは早いのねー、ちょっと待ってね。」

ゆいが急いで片付けをしてる最中、他の人の会話が聞こえてくる。

「お前また忘れたの?あれ,俺の教科書なんだけど」

「まじごめん!明日絶対忘れない!」

「明日忘れたらまじ殺すからな」

「おう!」

はたまた別の場所では

「ごめん!今、足踏んじゃった!」

「いった!折れたかも。」

「えーごめんごめん」

「そんな謝り方で許されると思ってるの?ぶっ飛ばす!」

「いや、まじごめん」

など。

なんでみんなそんなに簡単に「死」にまつわる単語を使えるのだろうか。
死を間近に感じてないから?

突然日常が崩れた私はみんなに聞いてみたい。

本当に?本当にそう思ってますか?

人を傷つけているかも知れないのに。
私の親みたいに限界が来るかも知れないのに。

私はそんな単語を軽々人に使ってはいけないと思う。

一度心を閉ざさせてしまったら、開けるのには相当な勇気と努力がいる。
私と同じことにはなって欲しくない。

言葉って人を簡単に殺める。

無自覚,無知は時にざんこくだなと私は思う。
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