神様に愛されるということ

かゐこ

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ー私の口の中を、私のものではない舌が這い回っている。ひたひたと水音を立てながら、玉藻の舌は私の舌先を探り、絡め合い、きつく吸う。最後にチュッと音を立てて口を離すと、2人の間には銀の糸が伝う。その輝く糸すら綺麗に舐めとると、今度は首筋から鎖骨にかけて、唇を何度も落とし始めた。それと同時に、きっちりと合わされていた浴衣の襟に手をかけ、合わせ目から胸元へと手を差し込んだ。

「やめ……っやぁっ」

胸を優しく揉まれる。
下着を見た玉藻は意地悪そうに笑う。

「…へぇ、エロいの着けてるやん。そそる。」

どうせあんたがこれ用意したんでしょーが!!!!

身をよじって抵抗を試みるがやっぱり無理そうだ。それに暴れたせいで帯がほどけかかり、ほとんど帯の役目を果たさなくなってしまっている。はだけた裾からすかさず玉藻のもう一方の手が入り込み、内腿を辿って上へ上へと移動する。

「…やんっ」

白い手が敏感な部分に触れると、それだけで体に甘い電流が走り体が仰け反る。下腹部が熱くなってとろりと蜜が流れるのを自分でも感じた。

「…優陽、君の声もっと聞かせてーや…僕だけに、もっと」

低い声音で耳元に囁かれる。たったそれだけのことでも、全身が敏感になっている自分はいちいち反応してしまう。

「…嫌ぁ…」

ギュッと目を瞑る。
ああ、今日自信満々に3年間貞操を守りぬきます!なんて言い切ったのに…。開始初日でもうこんなことになっちゃうなんて…。私はもうこのまま家族や友達の元に帰ることができなくなってしまうんだ…。
優陽の腕からクタッと力が抜けた。
それを見た玉藻が、優陽から下着を取り去ろうと手をかけたその時。

ガラガラガッシャーン!!!

何かが音を立てて壊れる激しい音が遠くから聞こえてきた。それからなにやら複数人が言い争う様な声も聞こえてきた。
何事かと玉藻も一瞬動きを止めて音がした方向へ顔を向けた。

「…!まさか…いや、そんなはずは…」

ドタドタという足音がこちらに近づいてきた。そして。

バァン!!!

繊細な作りの障子が吹き飛ばされた。

「…へぇぇ。お楽しみ中でしたか、エロ狐よぉ。」

そこに居たのは、真っ黒な僧衣に身を包んで高下駄を履いた、どこまでも深い深い藍色の目と髪の持ち主。

「ー鬼道丸…」

烏天狗の黒い翼がバサリと夜風に吹かれた。
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