神様に愛されるということ

かゐこ

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今私は、貴船と八瀬と一緒に東の市へ来ている。

「いいですか優陽様、あなたは今神の世界に半分以上引きずり込まれているとはいえ、まだ人間の体は残しています。北から出たら、正体に気づかれ無いように気を付けてるください。ーそうですね、出自を問われたら私、貴船の眷属の水妖だとでも答えてください。いいですね?」

真剣な様子で貴船にそう言われ、私はこくこくと頷いた。

出発する前には市女笠という顔を隠すための長い布が付いた笠を被せられ、人間の臭い消しにと香油を塗られた。
こうして私は、貴船の眷属の水妖、「由布」として街に出た。




「っぷっはー!!!!やっぱ外で飲む酒は美味いわああ!!」

そして今。まだ日も高いというのに私たちは買い物を手早く済ませ、妖の飲み街と呼ばれる場所の中の「飲み屋 赤提灯」に来ている。

「…貴船飲み過ぎ。」

八瀬が顔を少ししかめて貴船をたしなめる。八瀬はさっきから白神酒を頼んでお猪口でチビチビ飲んでいた。うーん、みるからに度数高そう…。

「てんちょー、あたし黒濁酒おかわりいいいい~」

「はいはい。ーそちらのお嬢さんは?あら、見ない顔やねぇ」

ここの店長は一つ目提灯お化け。今は人型を取っているが、目は一つのままだ。

「あ、貴船様の眷属の由布と申します…」

顔を見られないように注意しながら会釈をした。

「そそ、あたしの部下よー。今回この子昇進したからお祝いに連れてきちゃったー」

一応建前上は貴船より立場は下になっているので言葉遣いも自然とこうなる。

「由布、あんたも何か頼みなさいなー」

「ああ…はい、そうですね…」

と言われても実はあんまりお酒には強くない。たまにビール一缶を空けるくらいだ。だから八瀬が飲んでる様な日本酒は無理、だと思う。
お品書きを見ながら悩んでいると、店長が

「貴船の飲んでるやつと同じのにしたら?甘酒みたいな感じで女の子は好きだと思うよー」

ほう、甘酒ですか。それならいけるかも。

「あ、じゃあそれで…」

大根炊きと小豆の煮物を口に運ぶ。あ、意外と美味しい。横の貴船をちらりと見やると、他の客と飲み比べを始めていた。すでに空になったコップが山積みになっている。見た目年齢こそ若いが、かなりの酒豪の様だ。

そうしているうちに、さっき頼んだ黒濁酒が運ばれてきた。

「ーはい、黒濁酒ね!おまっとさん!!」

ー見た目は黒い甘酒って感じでどろっとしてる。黒いのは…黒ゴマかな?
そう思いながらコップを口に運ぶ。

「…!!???っ!?」

ー予想してた味とだいぶ違った。めちゃくちゃ甘い。そして濃い。そして何より…これだいぶアルコール度数高くない!?一口飲んだだけで体が燃えそうだ。

「…あ、それ俺の飲んでる白神酒よりだいぶ強いですよ」

コソッと八瀬が教えてくれた。

ーそれもっと早く言ってよ!!

「え、何由布黒濁酒無理やった?ゴメンゴメン、じゃーあたしにちょーだい!!」

貴船にコップを奪いとられた。
即座に空くコップ。

ー酒豪怖っ
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