悪役令嬢扱いされて婚約破棄&国外追放された私ですが、最強種に見初められたので世界を統べる覇王を目指します

倉橋 玲

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令嬢と作戦会議 4

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「さて、貴方の発言のお陰で、大分あの情報の見方と貴方の使い方というものが判ってきたわ。その上で、改めていくつか質問をさせてちょうだいね。……そうね、まずは、今回の情報を収集をするにあたって、貴方が想定した条件を教えて貰いましょうか」
「……知ってたことなんだが、あんた頭良いなぁ」
「茶化さないで質問に答えて」
 感嘆の声を無慈悲にも切り捨てられたヴィレクセストは、褒めただけなのにと小さく文句を洩らしつつも、アルマニアの問いに答えるべく口を開いた。
「俺が決めた条件は、“この世界でも指折りの諜報員が、現実的に必要十分とされる人数できっかり一年間、各国のありとあらゆる情報を得ようとした場合”だ。これで答えになってるか?」
「ええ、十分よ。つまり、三国間で、情報収集にかけた時間や派遣した諜報員の数や質などに差はない、と考えて良いということね」
「そういうことになるな」
 そこで少しだけ黙ったアルマニアは、僅かに迷いを見せたあとで再び口を開いた。
「これは私のただの興味本位なのだけれど、……貴方なら・・・・、知ろうと思えばもっと多くを知ることができるの?」
 その問いに、ヴィレクセストが目を細めて笑う。
「ああ。まあやらないし、やったとしても教えねーけどな。しかし、こんなの訊いたって何にもならないだろ?」
「だからただの興味本位だと言ったでしょう。でもお陰で、貴方が腹の立つ男だってことを改めて実感したわ」
「ええ……」
 仕方ないことなんだから怒るなよぉ、と言ったヴィレクセストを無視して、アルマニアは話を続ける。
「それじゃあもう一つ。あの情報の山、貴方は何日で調べて何日で纏めたのかしら?」
「ああ、んー……、まあ、それくらいなら答えても良いか。調べたのは一日で、纏めるのに三日かね。さすがにあれだけの量を纏めるのには時間がかかったわ」
 あっけらかんと出された答えに、アルマニアは呆気に取られてしまった。
(彼なら半年くらいでやってのけてもおかしくない、とは、思っていたけれど、まさか全部併せて一週間もかかっていないなんて……)
 アルマニアが驚きのあまり何も言えずにいると、それを見て取ったヴィレクセストは、悪戯っぽい顔をして笑った。
「おいおい、こんなんで驚いてたら身が保たねぇぞー? つっても、今回は特別中の特別だ。こっから馬鹿正直に一年かけて情報を集めてじっくり纏めて、なーんてやってたら、スタートがいつになるか判ったもんじゃねぇからな。この世界の人間の限界を考えるとかなりの反則技だが、王道を歩み始めるあんたへ贈るささやかな激励ってことにしとこう」
 そう言ったヴィレクセストの言葉に、アルマニアは僅かな引っ掛かりを覚える。だが、それが具体的にどういう種類の引っ掛かりなのかを掴み切る前に、彼女が抱いたその違和感は、続くヴィレクセストの言葉によって散らされた。
「で? ここまで聞いて、何か掴めたことはあったか?」
「……ええ、そうね。大体の方針は決まりそうよ。でもその前に、もうひとつ。……さっき貴方は特別中の特別だって言ったけれど、その特別、これからもう一度発揮する気はない?」
 真面目な顔でそう言ったアルマニアに、ヴィレクセストはにやりと笑った。
「頼まれる内容と、それを頼もうと決めた経緯によるな」
 ヴィレクセストの返答に、アルマニアは僅かに顔を顰めた。
 つまり、彼はアルマニアを試すと言うのだ。アルマニアの指示が、彼の能力を発揮するに相応しいものであれば、考えてやらないこともないと、そういうことだろう。
 アルマニアは、正直に言ってあまり気分が良いものではないと思ったが、気持ちを落ち着けるように紅茶で喉を潤してから、ヴィレクセストを真っ直ぐに見つめて口を開いた。
「魔石の採掘と病について、調べて欲しいことがあるの」
「ほう?」
「貴方も言った通り、あの病と見られる症状は魔石のせいである可能性が高いと私も思うわ。だとしたら、その事実をリッツェリーナが知らない筈がない。恐らくだけれど、敢えてシェルモニカ帝国には言わずにいるんじゃないかしら。それで帝国が勝手に倒れてくれたら、儲けものですもの。……だから、リッツェリーナで過去に似たような病が問題になったことがないかを調べて欲しいの。そしてそこから、この病の全貌と、リッツェリーナがどういう手段を用いて病を克服したのかも」
 リッツェリーナでは、今も変わらず魔石の採掘が続けられている。そして、魔石が原因で病になるという話を、アルマニアは聞いたことがない。ということは、リッツェリーナがこの病を克服している可能性は非常に高い。
 実は今も病が蔓延していて、ただそれを隠して採掘を続けているだけ、という可能性もないわけではないが、その場合、三国が互いに潜り込ませているだろう諜報員を通じて、必ずどこかから情報が洩れるはずだ。それがないということは、あの国は病を克服したのだと考える方が自然だろう。
 そんなアルマニアの考えを理解したのか、ヴィレクセストは面白そうな顔をして、なるほどと言った。
「俺に頼みたいことは、それだけか?」
 そう言って首を傾げたヴィレクセストに、アルマニアがいいえと返す。
「もう一つあるわ。そして、こちらの方がより重要よ」
 静かに言い置いてから、アルマニアは強い眼差しでヴィレクセストを見た。
「ザクスハウル国で噂されているというレジスタンスの真偽を確かめて」
「ははぁ、レジスタンスときたか。ありゃあ、資料の最後の方の隅っこに参考情報程度に書いたもんだったと思うんだが、……なんでわざわざそれを引っ張り出してきた?」
「もしもそういう組織が存在するのであれば、そこから切り崩すのが一番早いと思ったのよ」
「ほう?」
 面白そうな顔をしたヴィレクセストに、アルマニアは言葉を続ける。
「いつまでも私と貴方の二人きりで国盗りをするわけにもいかないし、味方にしても良いと思える程度にレジスタンスが優秀なら、味方にしたいわ。お粗末な組織だったとしても、情報源として利用するくらいはできるでしょう。まあその場合、私が直接出向くわけにはいかないかもしれないけれど。杜撰な組織にほいほい関わったせいで私たちの存在が八賢人にバレでもしたら、目も当てられないもの」
「つまり公爵令嬢は、ザクスハウルが一番国盗りしやすいって思ったわけか?」
「いいえ」
 ヴィレクセストの言葉を否定したアルマニアが、僅かな逡巡もなく次の言葉を告げる。
「私が王にならないと一番危ういと思ったのが、ザクスハウルだっただけよ」
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