悪役令嬢扱いされて婚約破棄&国外追放された私ですが、最強種に見初められたので世界を統べる覇王を目指します

倉橋 玲

文字の大きさ
27 / 59

令嬢とザクスハウル国の異変 3

しおりを挟む
「……さすがですね。先ほどの話だけで、そこまでお考えになるとは。ええ、仰る通り、私もシェルモニカ帝国での件は、大規模な実験だったのではないかと考えています」
「あの事件が起こったのが、およそひと月前。……あのとき魔物にされた人々の中で、自我を保っていた者はいないと聞いているわ。ということは、まだ秘術は完成していない可能性が高い」
 勿論、ひと月の間に劇的な成果が上げられていることも考えられはするけれど、と付け加えたアルマニアに、ノイゼが首を横に振った。
「いいえ、アルマニア嬢が初めに仰った通り、現時点で秘術は未完成のままだと思います。もしも完成していたならば、リッツェリーナ王国の戦力がこれ以上増える前に叩くため、すぐさま戦争の準備がされる筈ですから。……ですので、実験はまだ行われ続け、これからもきっと多くの犠牲者が生まれてしまう。これ以上民を失わないためにも、一刻も早く実験を止めなければ」
 膝の上で組んだ手に力を込めたノイゼを見て、アルマニアがひとつ瞬きをした。
「……さっき貴方は賢人たちの力は拮抗しているって言ったけれど、一対一ならどうにかならないかしら? なんとか彼らを分断して、一人ずつ相手取ることができれば……」
 その言葉に、しかしノイゼは苦い顔をして首を横に振った。
「いいえ、それは難しいでしょう。大前提として、彼らが一人きりになることはまずありません。貴女の仰る通り、一対一ならばやり合えてしまいますからね。賢人の誰か一人でも良からぬことを企んだ場合を考えると、一人行動は百害あって一利なしなのです。なので、賢人たちは常にツーマンセル以上で行動するのが基本です。これを崩して誰かを一人きりにするのは、かなり至難の業だと思いますよ。それからもう一つ、魔法にはある程度相性というものがあります。たとえば私が得意とする幻惑魔法は、相手を惑わせ混乱させる点においては優れていますが、攻撃性能や防御性能は皆無の魔法です。そのため、広範囲に渡る攻撃魔法などを展開されると防ぎようがない。賢人たちから逃げる際に負った傷も、鋭牙えいがの賢人が放った広域攻撃魔法によるものです。彼らも賢人なので、魔法の知識や対処法について非常に詳しく、幻惑魔法の弱点もよく把握しているのですよ」
「……それじゃあ、逆に貴方はどの賢人となら相性が良いのかしら」
 アルマニアの問いに、ノイゼがすぐさま言葉を出す。
「それぞれ現在と過去の情報を司る現見うつしみの賢人と昔歳せきさいの賢人相手ならば、対等以上に渡り合えるでしょう。実際、幻惑魔法で彼らの目を欺き続けられなければ、私がこうして生き続けることは不可能ですから」
 その回答に、アルマニアは少しだけ考えこむように黙ってから、後ろにいるヴィレクセストを振り返った。
「貴方はどう?」
「俺? 俺はまあ、ここの魔法はなんでも扱えるし、複数属性の同時展開もできるし、向かうところ敵なしって感じだけど」
「それは知っているわ。私は現実的な話をしているの」
 言われ、その意図を正確に読み取ったヴィレクセストが、にやりと笑った。
「そうだなぁ、よっぽどのことがなけりゃあ、道理に乗っ取るつもりだよ。で、俺の身体はひとつしかない」
 つまり、この件においてはこの世界の魔法のみの使用に限る上、それも常識的な範囲での運用に留める、ということだ。彼がそう明言した以上、アルマニアはそれを前提に策を練らなければならない。
「ノイゼ、さっき貴方はツーマンセル以上が基本と言ったけれど、逆に最大何人までという決まりはある?」
「ええ、基本的には、どんなに多くても四人までと定められています。といっても、そんなに大人数で行動することは極稀ですね。ほとんどの場合はツーマンセルで、ときどきスリーマンセルになることがあるという程度だと認識していただければ良いかと」
「……そう」
 ということは、ヴィレクセストが相手取れるのは多くて三人だと考えておくのが妥当だろう。
(ヴィレクセストが三人で、ノイゼが無理をして相性の良い相手を二人……。……単純計算でも、あと二人分は足りないことになるわね)
 レジスタンスの面子を充てたところで歯が立たないのは火を見るよりも明らかだし、そもそも彼らには賢人の配下にいる魔法師団を任せる可能性が高い。それですら荷が重いかもしれないのだから、間違っても賢人戦に使用できるような戦力ではないだろう。
「……議会のときであれば、賢人たちは一堂に会しているのよね?」
「はい、その通りです。……しかし、議会の場は強力な結界魔法で覆われている上、それを破ったとしても、その瞬間に界従の賢人による空間魔法で味方側が散り散りにされる可能性が高いでしょう。そしてその際に、十中八九賢人側も二人ないし三人ずつに分かれることが予想されます。戦闘の際に賢人全員がひとところに集まるのは、それだけ規格外の脅威を前にしたとき以外には有り得ません」
 その言葉に、アルマニアは内心で唸った。
 ヴィレクセストがその脅威に該当する可能性はあるが、接触と同時に分断されるのであれば、事前に彼がそれだけの力を持っていることを知らしめる必要がある。だが、戦う前から持てるカードを見せてしまうのは、あまり良い手だとは思えなかった。
「……ヴィレクセスト、結界を破った直後に、貴方の逆算で界従の賢人の空間魔法を無効化することは可能?」
 その問いにぱちぱちと瞬きをしたヴィレクセストは、次いでノイゼの方を見て首を傾げた。
「可能なもんなのか?」
「……その場で構築された魔法を逆算するならともかく、会議の場で起こる魔法はそのほとんどが既に構築されたもの、いわば事前設置型の罠のようなものです。条件を満たすと同時に自動発動するそれを逆算するとなると、人間技とは言えないでしょうね」
 何故自分に訊くのか、という顔をしながらもそう答えたノイゼに、ヴィレクセストはそうかと言ってからアルマニアに視線を戻してにこりと笑った。
「じゃあ無理だな」
 その場にいたアルマニア以外の全員が、何がじゃあなんだ、と思ったが、今それを口にすべきではないことは判っていたので、誰も何も言わなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

悪役令嬢を断罪したくせに、今さら溺愛とか都合が良すぎますわ!

nacat
恋愛
侯爵令嬢リディアは、無実の罪で婚約者の王太子に断罪された。 冷笑を浮かべ、すべてを捨てて国外へ去った彼女が、数年後、驚くべき姿で帰ってくる。 誰もが羨む天才魔導師として──。 今さら後悔する王太子、ざまぁを噛みしめる貴族令嬢たち。 そして、リディアをひそかに守ってきた公爵の青年が、ようやく想いを告げる時が来た。 これは、不当な断罪を受けた少女が、自分の誇りと愛を取り戻す溺愛系ロマンス。 すべての「裏切られた少女」たちに捧ぐ、痛快で甘く切ない逆転劇。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)

ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」  王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。  ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。

処理中です...