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現在
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光のない空間に僕は目を覚ます。目を閉じている時と何ら変わらないくらいに自分は目を覚ましているのか分からない。音だけが頼りに今いる自分の場所を確かめる。ぽちゃんぽちゃんと水が跳ねる音がする。数滴は僕自身にも掛かり、とても冷たい冷水の小雨が降っている事が分かった。
「一体ここはどこなんだろうか……」
どうして僕はここにいるのだろうか。ここに来るまでの記憶は一切ない。ならば、これは…夢なのかもしれない。そうやって僕は僕にこれは夢だと言い聞かせ、平常心を保つ。どうせ歩いてもあまり分からないだろうが、試しにこの場所を歩いてみる。音から大体察していたが、やはり水溜まりのように浅く池のような広い空間が広がっているようだ。
髪の毛と服は濡れて顔や肌にくっつき、冷えて僕の体温は奪われていく。とても気持ちがいとは言えない。
一体何時間こうしてこの場所に立っていたのだろう。地面は水があるから座る訳にはいかないし、それに体力と体温が奪われ、このままでは凍死してしまうかもしれない。暗闇を歩いたところで先に光があるとは思えない。もう右も左も前も後ろも、どこがどこでどこが元にいた場所なのかも分からない。もしかしたら僕は同じ場所をただ永遠に歩いているのかもしれない。
「疲れた……」
もう歩く気力すらない。疲れきった僕はもう一度立ち止まり、座って休みたい気持ちを堪えながら立ち尽くしていた。
夢だと思っていたが、疲れた足や冷えきった体はリアルで生々しい。
僕は1人で歩き続けていると思っていた。だがそれは僕の勘違いで、立ち止まり耳を済ましていると誰かもう1人歩いているかのようにビシャビシャと水が跳ねる音がする。
(誰か…いるのか?)
辺りをキョロキョロと見渡したところで光がない為、全く何も見えない。
音は確実に近づいてきている。後ろか?いや、前?…右、左。どこから聞こえているのだろうか。まるで脳に直接響くような音。一体…なんなんだ。
目の前が急に眩しくなり、思わず目を瞑る。瞑っていても光が溢れてくるように眩しい。
(近づいてくる音がすると思ったら急に眩しくなって…)
「やぁ~っと見つけたよ!勇者くん☆」
薄らと目を開けるとそこは白い空間にでも変わったかのように明るく、暗かった頃のように水溜まり位に浅い池が広がり、目の前にはうさ耳の生えたシルクハットを被ったオッドアイの少年がニッコリと笑っていた。
「あれ~どうしたのかな?あ、もしかして僕に見惚れちゃった?」
「そんな訳あるか」
何をいきなり人の事を勇者くんと呼び、見惚れちゃったとか…頭がアレなのか…。
「じょ・う・だ・ん☆……そう!ジョークジョーク。…ね?ほら、だからそんな目で見ないでよ~」
ジョークでも笑えないつーの。
僕はため息をつき、相手をジトッと見る。
しかしまぁ…この格好はコスプレか何かなのだろうか。
「ところで勇者くん。君にお願いがあって君をこの場所に呼んだんだ。」
「…ちょっと待ってほしい。僕には星空陀璃亜という名前がある。だから勇者くんなんかじゃない。」
「そっか!君は陀璃亜って言うんだね!僕は蕨って言うんだ!宜しくね勇者くん」
「何がそっかだ!結局勇者くんって呼んでいるじゃないか。なんの為に名乗ったと思ってるんだ」
「冗談だよ~陀璃亜くん。そんな顔をしないでよ~」
まったく…。何回茶番を繰り広げないといといけないのだろうか。僕は早く平凡の日々に戻りたいというのに。
「……それで本題は?」
「え?」
「え?って…、僕に用があって呼び出したんだろうに」
「あっ!そうだ、そうだった!」
忘れてたのかよ…
「いや、別に忘れていたわけじゃないよ~。ね?」
「はいはい。際ですか」
「さて。君を呼び出したのは、陀璃亜くんに歪みし世界を救ってほしいんだ!」
最初に僕の事を勇者くんと呼んでいた時点で何となく察していたが…。まさにファンタジーゲームとかにありそうなシナリオだなぁ…。
「うん。無理」
「えぇっ!?」
「いやさ、考えてみ?僕みたいな一般人に世界を救う事なんて出来ないし、第一僕になんのメリットがあるっていうんだよ…。それに救ってほしいなんて事簡単に行ってくれてるけど、金や時間も結構かかると思うけど?」
「うーん。痛いとこ指してくるね。でもね、君に救ってもらう世界は君が言う一般なんてもの通用しないよ?お金なんて必要ないし、時間だって何年かかろうが、君は年老いて死んだりしないようになってるからね。それに、戦った事ないなら仲間を集めて仲間に戦ってもらえばいいんじゃないか?」
それならまぁ……と僕は納得してしまう。
「だがしかし。僕にはメリットなんてないよ?」
「世界を救う事にメリットを求めるなんてなんて奴だ!なーんて言わないよ?君には世界を救ってもらうから…まぁ、それ相応のお礼をしてあげるよ。…うーん。そうだね………君が歪みし世界を救ってくれたら君のお願いを何個でも、なんでも叶えてあげる……っていうのはどうだい?別に君を元の世界に戻してあげるっていう願いは叶えられなくもないんだよ?」
何個でも…なんでも……か。それは確かにおいしいメリット…。世界を救うからそれくらいのメリットぐらいはあってもいいのではないだろうか。
「あんな事や~こんな事~…。うーん、あれも叶えてほしいな~」
「そういうのは救ってから考えようよ」
「ゴホン…。まぁ…、僕へのメリットとしては成り立ってるね」
「それじゃあ救ってくれるんだね?」
「だけど…聞きたい事がある。僕は…、元の世界だと死んでいることになるのか?」
「……それは、答えられない。いや…それはまだ答えては行けない事なんだよ…陀璃亜くん。」
さっきまでふざけていた蕨の顔は冷めたように冷えた顔をしていた。それは、まだ触れてはいけないのだと悟った。それはつまり僕に何かあったという事なのだろうか?
「そう…か。」
「ねぇ陀璃亜くん。これからは君が困ったら君のそばにいてくれる妖精に聞くといいよ。あ、でもさっきの質問はその妖精には答えられないだろうけど。」
「分かった」
「陀璃亜くん。君は僕らの希望だ。だから…お願いだ。歪みし世界を救ってほしい。」
(ん?何だこれは視界が歪んでボヤけて……)
視界が歪み、蕨の姿があやふやになる。目を擦ったところで視界の歪みは戻ることはなく、明るかった場所は暗闇に戻る。もう蕨の姿は見えなくなり、僕は意識がなくなる。
意識がなくなる前、僕は妙にフワッと宙を浮くような感覚と鉄の錆びた匂いがした。
あ。そう言えば聞くのを忘れていたな……
さて、どうやって世界を救えばいいのだろうか。
「一体ここはどこなんだろうか……」
どうして僕はここにいるのだろうか。ここに来るまでの記憶は一切ない。ならば、これは…夢なのかもしれない。そうやって僕は僕にこれは夢だと言い聞かせ、平常心を保つ。どうせ歩いてもあまり分からないだろうが、試しにこの場所を歩いてみる。音から大体察していたが、やはり水溜まりのように浅く池のような広い空間が広がっているようだ。
髪の毛と服は濡れて顔や肌にくっつき、冷えて僕の体温は奪われていく。とても気持ちがいとは言えない。
一体何時間こうしてこの場所に立っていたのだろう。地面は水があるから座る訳にはいかないし、それに体力と体温が奪われ、このままでは凍死してしまうかもしれない。暗闇を歩いたところで先に光があるとは思えない。もう右も左も前も後ろも、どこがどこでどこが元にいた場所なのかも分からない。もしかしたら僕は同じ場所をただ永遠に歩いているのかもしれない。
「疲れた……」
もう歩く気力すらない。疲れきった僕はもう一度立ち止まり、座って休みたい気持ちを堪えながら立ち尽くしていた。
夢だと思っていたが、疲れた足や冷えきった体はリアルで生々しい。
僕は1人で歩き続けていると思っていた。だがそれは僕の勘違いで、立ち止まり耳を済ましていると誰かもう1人歩いているかのようにビシャビシャと水が跳ねる音がする。
(誰か…いるのか?)
辺りをキョロキョロと見渡したところで光がない為、全く何も見えない。
音は確実に近づいてきている。後ろか?いや、前?…右、左。どこから聞こえているのだろうか。まるで脳に直接響くような音。一体…なんなんだ。
目の前が急に眩しくなり、思わず目を瞑る。瞑っていても光が溢れてくるように眩しい。
(近づいてくる音がすると思ったら急に眩しくなって…)
「やぁ~っと見つけたよ!勇者くん☆」
薄らと目を開けるとそこは白い空間にでも変わったかのように明るく、暗かった頃のように水溜まり位に浅い池が広がり、目の前にはうさ耳の生えたシルクハットを被ったオッドアイの少年がニッコリと笑っていた。
「あれ~どうしたのかな?あ、もしかして僕に見惚れちゃった?」
「そんな訳あるか」
何をいきなり人の事を勇者くんと呼び、見惚れちゃったとか…頭がアレなのか…。
「じょ・う・だ・ん☆……そう!ジョークジョーク。…ね?ほら、だからそんな目で見ないでよ~」
ジョークでも笑えないつーの。
僕はため息をつき、相手をジトッと見る。
しかしまぁ…この格好はコスプレか何かなのだろうか。
「ところで勇者くん。君にお願いがあって君をこの場所に呼んだんだ。」
「…ちょっと待ってほしい。僕には星空陀璃亜という名前がある。だから勇者くんなんかじゃない。」
「そっか!君は陀璃亜って言うんだね!僕は蕨って言うんだ!宜しくね勇者くん」
「何がそっかだ!結局勇者くんって呼んでいるじゃないか。なんの為に名乗ったと思ってるんだ」
「冗談だよ~陀璃亜くん。そんな顔をしないでよ~」
まったく…。何回茶番を繰り広げないといといけないのだろうか。僕は早く平凡の日々に戻りたいというのに。
「……それで本題は?」
「え?」
「え?って…、僕に用があって呼び出したんだろうに」
「あっ!そうだ、そうだった!」
忘れてたのかよ…
「いや、別に忘れていたわけじゃないよ~。ね?」
「はいはい。際ですか」
「さて。君を呼び出したのは、陀璃亜くんに歪みし世界を救ってほしいんだ!」
最初に僕の事を勇者くんと呼んでいた時点で何となく察していたが…。まさにファンタジーゲームとかにありそうなシナリオだなぁ…。
「うん。無理」
「えぇっ!?」
「いやさ、考えてみ?僕みたいな一般人に世界を救う事なんて出来ないし、第一僕になんのメリットがあるっていうんだよ…。それに救ってほしいなんて事簡単に行ってくれてるけど、金や時間も結構かかると思うけど?」
「うーん。痛いとこ指してくるね。でもね、君に救ってもらう世界は君が言う一般なんてもの通用しないよ?お金なんて必要ないし、時間だって何年かかろうが、君は年老いて死んだりしないようになってるからね。それに、戦った事ないなら仲間を集めて仲間に戦ってもらえばいいんじゃないか?」
それならまぁ……と僕は納得してしまう。
「だがしかし。僕にはメリットなんてないよ?」
「世界を救う事にメリットを求めるなんてなんて奴だ!なーんて言わないよ?君には世界を救ってもらうから…まぁ、それ相応のお礼をしてあげるよ。…うーん。そうだね………君が歪みし世界を救ってくれたら君のお願いを何個でも、なんでも叶えてあげる……っていうのはどうだい?別に君を元の世界に戻してあげるっていう願いは叶えられなくもないんだよ?」
何個でも…なんでも……か。それは確かにおいしいメリット…。世界を救うからそれくらいのメリットぐらいはあってもいいのではないだろうか。
「あんな事や~こんな事~…。うーん、あれも叶えてほしいな~」
「そういうのは救ってから考えようよ」
「ゴホン…。まぁ…、僕へのメリットとしては成り立ってるね」
「それじゃあ救ってくれるんだね?」
「だけど…聞きたい事がある。僕は…、元の世界だと死んでいることになるのか?」
「……それは、答えられない。いや…それはまだ答えては行けない事なんだよ…陀璃亜くん。」
さっきまでふざけていた蕨の顔は冷めたように冷えた顔をしていた。それは、まだ触れてはいけないのだと悟った。それはつまり僕に何かあったという事なのだろうか?
「そう…か。」
「ねぇ陀璃亜くん。これからは君が困ったら君のそばにいてくれる妖精に聞くといいよ。あ、でもさっきの質問はその妖精には答えられないだろうけど。」
「分かった」
「陀璃亜くん。君は僕らの希望だ。だから…お願いだ。歪みし世界を救ってほしい。」
(ん?何だこれは視界が歪んでボヤけて……)
視界が歪み、蕨の姿があやふやになる。目を擦ったところで視界の歪みは戻ることはなく、明るかった場所は暗闇に戻る。もう蕨の姿は見えなくなり、僕は意識がなくなる。
意識がなくなる前、僕は妙にフワッと宙を浮くような感覚と鉄の錆びた匂いがした。
あ。そう言えば聞くのを忘れていたな……
さて、どうやって世界を救えばいいのだろうか。
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