【完結】夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

ma-no

文字の大きさ
230 / 522
十章 物語が終わっても夜遊び

230 サプライズ

しおりを挟む

 夏休みでお城に帰って来たフィリップは、からかいすぎてボエルがグロッキー状態。ちょっと言い過ぎたと反省し、献身的にマッサージして機嫌を直してもらった。
 次の日のフィリップはどうしたものかと考えて自室でボーッとしていたら、昼食どきに殺気を纏ったボエルが寝室のドアを乱暴に開けた。

「なに~? まだ怒ってるの~??」
「いや、すまん。そっちじゃない……」
「そっちってなに??」
「貴族の馬鹿女どもだ! クッソ……思い出しただけで腹立つ!!」
「なになに~? なんかやられたの~??」

 ボエルがこんなにキレているのに、フィリップはニヤニヤ。しかし愚痴を言う相手はフィリップしかいないので、ボエルは当たり散らすように今日の出来事を語る。

 朝の内はいつもより酷い嫌味を言われまくったボエルは、腹は立つけどいつものことなので聞き流していたら、小石や洗濯物が飛んで来たらしい。
 誰がやったのかと問い詰めても、メイドたちは全員でとぼけて答えは得られない。隙を見せたら死角から何かを投げ付けられ、それがずっと続いたからこんなに怒っているそうだ。

「わ~お。嫌味だけで終わらなかったんだ」
「ガキみたいなことしやがって……」
「ま、貴族子女だもんね。学校でもそんなのばっかりだったでしょ?」
「ああ。ぜんぜん成長しやがらねぇ。身分が上じゃなかったら、絶対ぶん殴ってるぞ。1人になった時を狙ってやろうか……」
「アハハ。そうとう来てるね~……仕方ない。僕が復讐手伝ってあげるよ」
「いいのか? いや、殿下に任せると、なんか嫌な予感がする」

 ボエルの予感は大正解。フィリップは悪い顔で笑ってるもん。

「大丈夫だって~。ちょっと昔の案を採用するだけだよ~」
「その顔やめろ! 絶対ろくなことしねぇだろ~~~!!」

 ボエルが拒否しても、フィリップは第二皇子。身分が違いすぎるので、ボエルの意見は一切通らないのであった……


 この日はボエルに帝都学院の寮に忘れ物を取りに行かせるだけで、できるだけフィリップの部屋に隔離。フィリップも準備があるので1人で動き、翌日、行動に移す。

「誰? あの執事……」
「カッコイイ……」
「あんな人いた??」

 フィリップの作戦は、ボエルの執事デビュー。お城では皇帝やメイド長の目があるからボエルも持ち帰っていなかったから「それが悪いんだよ~」とフィリップは悪い顔でやらせたのだ。
 その結果は、見ての通り。メイドたちは鳩が豆鉄砲食らったような顔をする者や、頬を赤くする者が続出だ。

 そのメイドが固まっている場所に、ボエルはわざと突撃。そこで口を開く。

「フィリップ殿下のお洋服や寝具を取りに来たのだが、そこを開けてくれないか?」
「あ、はい……」
「ちょっと待って。その声……」

 数人は道を開けてくれたが、その中の1人がボエルの声に反応した。

「あんたボエルね! まさか本当に執事の服着て来るなんて……キャハハハハ」
「うわっ! 本当ね!? キャハハハハ」
「なに無様な格好してるのよ! キャハハハハ」

 1人が笑ってからは、集中砲火。全員で服だけでなく「男女」と揶揄やゆして嘲笑あざわらう。
 ボエルはというと、黙って嫌味が終わるのを待っているわけもなく、フィリップの作戦通り一番位の高いヴィンクヴィスト侯爵家の女性、アルフヒルドをロックオンして一気に近付いた。

「な、なに? 私に手を上げたら、あんたの家なんて吹き飛ぶわよ!」
「……」
「なんとか言いなさい!! ……え?」

 怒鳴られてもボエルはお構いなし。アルフヒルドのアゴを掴んでクイッと上げた。

「離しなさ……ンッ……」

 そして、口で口を塞ぐ。いわゆるキッスだ。フィリップにやれと言われた時は抵抗していたけど、実際やってしまうと「こんな美人に……役得」とかボエルは思っている。

「ンンッ! いい加減にしなさい!!」

 数秒、全員の時は止まっていたけど、アルフヒルドは我に返ってボエルを突き飛ばした。

「なんてことするの!?」
「お嬢様があまりにも綺麗で我慢できませんでした。申し訳ありませんでした」

 ここでボエルは、大袈裟なセリフとお辞儀。この行為で、アルフヒルドと過半数のメイドは頬を赤らめた。

「こここ、こんなことしでかして、わかっているのでしょうね!?」
「はい。責任を取って、結婚する所存です」
「けっ……ち、違うわよ! 私をはずかしめたんだから、それ相応の罰を与えるって言ってんのよ! みんな、こいつをこれでもかってぐらい痛め付けるわよ!!」
「「「「「は、はい!!」」」」」

 ちょっとボエルに惚れてもうたアルフヒルドだったが、気を取り直してメイドを焚き付けた。

「え~? もう終わり~? もっとエッチな展開期待してたのにな~??」

 その中心から男の子の声が聞こえて来たので、全員キョロキョロと探し、下を向いたところで金髪パーマの男の子を発見した。

「フィ……フィリップ殿下??」
「うん。第二皇子様だよ~?」
「い、いつからそこに……」
「ボエルが嫌味言われてるところから。第二皇子の従者を攻撃するってことは、全員僕の敵ってことで合ってるよね? 父上とお兄様にチクッちゃおっかな~??」

 フィリップの発言で、アルフヒルドたちは顔を青くし、全員飛び退いて土下座した。

「申し訳ありませ~~~ん!」
「「「「「申し訳ありません!!」」」」」

 さすがは第二皇子の権力は絶大。いや、その後ろにいる皇帝と次期皇帝だ。

「ボエル、これ。切り捨て御免だよ」
「はっ!」
「「「「「え……」」」」」

 謝っているのにフィリップが物騒なことを言ったので、全員顔を上げたらボエルが鞘から剣を抜こうとしていた。

「さっきキスした人からやっちゃって」
「はっ!」
「ま……待ってください!? 殺されるほど酷い仕打ちをした覚えはありません!!」
「僕の従者をリンチしようとしてたの、もう忘れたの?」
「ア、アレは冗談です! ちょっと怖がらせようとしただけなんです!!」
「言い訳は聞きませ~ん。やれ」
「はっ!!」
「助けて~~~!!」

 アルフヒルドが涙ながらに助けを求めるなか、ボエルはついに剣を引き抜いた。

 その瞬間、ポンッと赤いお花が出現。

「はい??」
「サプラ~イズ」

 そして、ボエルが驚くなかフィリップはドッキリ成功の掛け声。フィリップ以外、誰も笑ってないけど……

「アハハハハ。さっきの言葉、そのまま返してあげる。これ、冗談。ちょっと怖がらせようとしただけなの~。アハハハハ」

 ネタバラシしても、全員ポカン。驚きすぎて声も出ないみたいだ。なのでフィリップも気まずくなって、ボエルに撤退しようと歩き出した。

「あ、そうだ。ボエルには帯剣させるから、次からは気を付けてね。父上にも2人までは殺していい許可もらってるから。くれぐれも、ボエルを怒らせないでね~?」
「「「「「はははは、はいっ!!」」」」」

 ラストは最大級の脅し。メイドたちは再び土下座してフィリップとボエルが立ち去るのを待つのであった……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...