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十四章 新居に移っても夜遊び
339 化粧品の入手
しおりを挟むカイサとオーセがいるのにフィリップが向かった夜遊び先は、奴隷館。久し振りだったので、キャロリーナに長い時間貪り食われて、フィリップもグロッキー状態だ。
「また長いこと来なかったわねぇ。何かあったのぉ?」
「引っ越しでバタバタしてただけだよ」
「ああ。あの牢獄のぉ……幽霊が出るって話だけどぉ、もうご挨拶したのぉ?」
「出ないからしてないよ……え? アソコに入る人、幽霊に挨拶はマストなの?」
「ただの噂よぉ~……固い筋の……」
「その人紹介して~~~!」
キャロリーナの言い方が妙に怖かったフィリップは、誰がそんなこと言ってるのかと聞いたら、貴族と神殿関係者。貴族はどうでもいいが、神殿といえば御祓いをする人がチラホラいるらしいので、もっと怖くなっていた。
「他には面白い話ない? 怖くない話で」
なので、楽しい話を求む!
「そうねぇ……殿下以外となるとぉ……」
「そんなに噂されてるんだ……」
「あ、聖女様関連が多いのよねぇ……」
フィリップの噂は多く流れているらしいけど、キャロリーナは思い出したほうを先に処理する。
「貴族の客がねぇ、聖女様の悪口をよく言うらしいのよぉ。それでぇ、お店の子が怒って他で喋ってねぇ。けっこう広まってるらしいのよねぇ」
「それは~……マズイ傾向だね……」
フィリップは少し考えてから策を提出する。
「貴族が聖女ちゃんを陥れようとしているような噂を流せない? いや、それだと貴族憎しで傷口は広がるか……お兄様を盗られて嫉妬した子が吹聴してるというマイルドなニュアンスがいいかな?」
「そうねぇ……貴族を敵に回すのはウチとしても避けたいしぃ、そっちのほうがよさそうねぇ。あたしもぉ、いい手を考えておくわぁ」
民が貴族を襲う未来は、どちらも避けたい模様。フィリップは帝国が乱れることを心配して。キャロリーナは系列店の売り上げに関わるからだ。
もう一度というか何回かマッサージしたらフィリップはオネムになったので、今日は早めに撤退する。
「あ、そうだ」
そこで話忘れがあったのでキャロリーナにお願いだ。
「化粧品って譲ってもらえない?」
「化粧品? まさかあの噂ってぇ本当だったのぉ??」
「僕ってまだなんか言われてるの?」
「女装に目覚めたとぉ、チラホラ言われてるのよぉ……似合いそうねぇ。ペロッ」
「ショタだけで我慢して!?」
キャロリーナの下には、帝都学院の情報も入っているらしい。だから男の子だけじゃなく男の娘も食べたくなって舌舐めずりしてるよ。
「こないだの2人用に欲しいだけだよ。服も、2人のために学生から買い取ったのが、変に噂されてるだけ」
「そういうことねぇ。殿下なら似合いそうなのにぃ残念……一回だけでいいから私にやらせてくれない?」
「早口で言ってもやらないよ? 僕、いまのままでもかわいすぎるから嫌なんだよ~~~」
どうしても男の娘にしたいキャロリーナであったが、フィリップが泣きそうな顔で拒否するので諦めるのであった。その顔がかわいいとか言って抱き締めていたけど……
翌日のフィリップは、昼型なのに夜遊びしたので大お寝坊。何をしても起きなかったので、ボエルがカイサたちのメイド訓練を見ていた。
お昼にはフィリップもなんとか起きたけど、ランチをしたらまた寝室に引っ込んだ。ボエルは彼女のところに飛んで行ったので、カイサとオーセは暇潰しのお掃除。
掃除も終わると、2人はフィリップが何をしているのかと気になって寝室に入って行った。
「また寝てるわね……」
「これはアレじゃない? 殿下取り扱い説明書の、20時間寝ないとダメっての」
「あ……ボエルさん、そんなこと言ってたね。でも、それって嘘じゃない?」
「嘘? じゃあ……体調不良っての??」
「それも違う。昨日、夜に出掛けるって言ってたじゃない? 寝てないだけよ」
「そっか! 朝まで遊んでるから、20時間寝ないとダメとか言ってるんだ!!」
フィリップの嘘、初めて人にバレる。ボエルは薄々感じてたけど、確信は持てなかったからセーフだ。
「私たち、とんでもない人のところに来ちゃったね」
「だね。でも、こんなに面白い人、初めて。あのまま食堂で働いていても、つまらない人生だったんじゃないかな~?」
「そうね。毎日同じことの繰り返し。お給金も少ない……だったら楽しくいっぱいお給金貰ったほうがいいわよね」
「そそ。殿下~。起きて~」
「うっ!?」
「あなたって、けっこう怖い物知らずよね?」
カイサよりオーセのほうが順応が早い。ただ、オーセが寝ているフィリップの胸辺りに飛び込んで息を止めたので、カイサは引くのであったとさ。
フィリップは強制的に起こされたけど、「ボディプレスはやめて」ぐらいしか言わずにオーセの頭を撫でる。
カイサはホッと胸を撫で下ろし、フィリップの隣へ。オーセが始めたので、カイサも加わってマッサージ。仲間外れは嫌らしい。
マッサージが終わってお喋りしていたらボエルが帰って来たのでお着替え。フィリップは口笛を吹きながら寝室から出たけど、ボエルに一瞬でバレていた。女の匂いがプンプンしてるもん。
「そうだ! ボエル、2人に化粧してあげて!!」
ボエルが羨ましいとうるさかったので、フィリップは強引に話を変えた。
「化粧??」
「うん。ボエルだって……したとこ見たことないかも……」
「まぁ……必要なかったし……」
「そんなことないよね? メイドのみんな、してるよ? メイド教育でも習わなかったの??」
「習うには習いました……でも、面倒くさくって……」
「ダメだこりゃ」
せっかく化粧品を手に入れたのに、先輩がこれでは化粧もままならない。いまさらながら、よく第二皇子専属メイドになれたなと、フィリップは苦言を呈するのであったとさ。
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