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十八章 代替わりしても夜遊び
438 落胆からの復活
しおりを挟む太上皇の死は瞬く間に帝国中に知れ渡り、帝都に貴族が続々と登城していた。基本的には馬車で優雅に登城する者が多いが、中には馬に跨がり着の身着のままやって来る貴族もいる。
その中にはダンマーク辺境伯の姿もあるが、葬儀にギリギリだった為、ドロドロの姿で参列しているから貴族からの嘲笑の的となっていた。
そういう者ほど優遇するフィリップ。フレドリクとルイーゼが全員に挨拶しているのに、身形が整っていない貴族に走り寄り、太上皇の最後を語って泣かせていた。
ダンマーク辺境伯の場合は、ちょっと脚色。いつまでも頼りにしているようなことを言っていたと付け足して、忠誠心を爆上げしておいた。
貴族たちはフィリップの行為に「馬鹿がなんかしてる」ぐらいにしか思っていない。なんなら「いらんこと言ったな」と馬鹿にして笑っている。
それにフィリップは気付いていたけど、顔は覚えられないから無視。涙をハンカチで拭うペトロネラを発見すると、目の前に立った。
「ネラさんもありがとね。父上の話し相手になってくれて」
「いえ……それぐらいしかできなかったですもの……」
「僕も似たようなモノだよ。ちなみに父上の最後はね……」
「そうだったのですか。私の入る余地はまったくなかったのですね」
ペトロネラには母親が迎えに来て抱き締めて旅立ったと教えてあげたら、信じた模様。ただし、フィリップはロックオンされたような感覚に陥りブルッと来た。
「いい加減、私も本気にならないといけませんね」
「う、うん……その目、やめてくれる? いい人ならいっぱい居るはずだから。ね??」
「フフフフ」
ペトロネラの笑い方はちょっと怖いけど、ちょうど時間が来たらしいので、フレドリクに呼ばれたフィリップは駆け足で逃げて行った。
太上皇の葬儀は神殿で行われ、それはそれは盛大な式典となっている。フィリップも珍しく真面目に太上皇の功績を聞き続け、フレドリクの弔辞には堪え切れなくて涙を流す。
他にも大貴族が弔辞を述べ、夕方が近付くと皇族が眠る代々のお墓に移動する。
ここでフィリップたちは棺に花を添え、軽く土を掛けたら他の貴族が続く。
「家族が2人だけになっちゃったね……」
棺が土で隠れるまであと少し。フィリップはポツリと呟いた。
「直接血の繋がりがある者はな」
その弱々しい声にフレドリクが反応した。
「私にはルイーゼがいる。フィリップにもいい人がすぐに見付かるよ。そして子を生し、父上と母上の血を継ぐ者が増えるのだ。お互い子供を多く作って長生きしようじゃないか」
「うん……そうだね。早く孫の顔を見せてやらないとね」
こうしてフィリップとフレドリクが慰め合うように手を握って喋っていたら、太上皇の棺は完全に見えなくなるのであった……
その後は太上皇を偲ぶパーティーとなったが、騒ぐ人は泣き崩れる人だけ。涙の多いお別れ会だとフレドリクは感謝を述べて終了となった。
それから1週間……
「プーちゃ~ん。今日も起きないの~?」
「ほら、いい天気だよ~?」
フィリップは根城から一歩も出ていなかった。
「眠いんだから、放っておいて」
「夜にもお出掛けしてないんでしょ?」
「私たちもかまってよ~」
それも、太上皇が他界した日から夜遊びもマッサージもナシだ。ビックリだよね?
「もう1週間よ?」
「皇帝陛下も心配してるって」
「忙しいから来れないみたいだけど」
「プーくんと大違いだね」
フィリップは寝てるだけでフレドリクは働いているのだから、2人はついに悪口に変わった。すると、フィリップはムクリ体を起こした。
「プーちゃん?」
「あ、怒った?」
「いや……アレから1週間も経ったの?」
「そうよ」
「なんで知らないのよ~」
「ヤバイ! 出掛ける準備して!!」
「「はあ……」」
急に慌て出したフィリップがどこに向かうかというと、太上皇のお墓。西洋風の世界なのに、フィリップの頭は仏教が詰まっているから二七日に来たみたいだ。
さすがにお経なんて唱えられないので、両手を合わせて「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と心の中で念じるだけ。カイサたちは「みんなこんな作法だっけ?」と首を傾げてマネしてる。
「はぁ~。ヤバかった~」
「「なにが??」」
「え? 父上が化けて出て怒られそうじゃない??」
「高貴な人って化けて出るんだ……」
「それは怖いね……」
「いや、嘘だよ? 冗談だから信じないで」
これが貴族の常識だと2人が怯えていたのでフィリップはカミングアウト。騙された2人は怒ってポコポコ叩いているから、「霊前だから」とフィリップは止めた。
「あぁ~……安心したら、急に……」
「お腹すいた?」
「なんかアソコが……」
「プーくんらしいっちゃらしいけどね~」
「早く帰ってマッサージしよ!」
「「は~い」」
ここからフィリップは通常運転。カイサとオーセも嬉しそうにフィリップの跡を追うのであっ……
「も、もう、無理……ガクッ……」
「「ええ~。もっと~」」
根城に帰ってから、欲求不満気味だった2人に永遠とマッサージを繰り返されたフィリップは、だいぶご無沙汰だったから殺人事件現場みたいな体勢で倒れるのであった。
「やっと来たぁ~ん」
「ちょ、ちょっと待って。ここ数日、散々……いや~~~ん!」
奴隷館ではキャロリーナにも貪り食われて、気絶しては覚醒すると繰り返すのであった。
「おひさ~。10人、早い者勝ちだ~!」
「「「「「キャーーー!!」」」」」
3人の激しいリハビリのおかげで、娼館では爆買い。完全に復活したフィリップであったとさ。
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