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中学校である
096 無事到達である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。お金はお金持ちの元へ寄って来るって、迷信じゃなかったんだね……
中学生にしていきなり億万長者になっていたのでビビりまくった私が「全額寄付したい」と言ったら、母親にめっちゃ止められた。寄付したところで税金は丸々残るんだとか……だから日本はダメなんだよ!
それに諸々の手続きはやってしまったし、ジュマルの口座にもお金は入っているから、下手に動かすとマルサが「悪い子はいねがぁ~?」と押し寄せるらしい。それはナマハゲだよね……私、もう中2だよ? 騙せると思ったの??
そこまで言われては私もどうしていいかわからないので、口座のことは考えないことにした。ドキドキが止まらないんだもん。最悪、ジュマルにあげよう。
そんなドキドキの春休みが終わったら、私は2年生。ジュマルは3年生となった。
新学期は感染症対策が少しは緩和されていたので、いつも通り挨拶回りはしていたけど握手は禁止。ジュマルはわかってくれたのに女子が「握手して~」とうるさいので、隠れて見ていた私がクラスに乱入した。
「広瀬ジュマルの妹です。お兄ちゃんを応援してくれてありがとうございます」
そこでペコリとお辞儀して、マスクを取ってからニッコリ微笑んでみたら、全員、眩しいのか目を手で覆っていた。私の笑顔、閃光弾みたいだな!
「お兄ちゃんはサッカーの予選の最中です。さらに野球の予選が待っています。もしもお兄ちゃんがOM1ウィルスに感染してしまったら、そこで最後の大会はおしまいです。いえ、部員や生徒が感染しても終わるかもしれません。どうか皆様、節度を持った行動を心掛けてください。お兄ちゃんのために、お願いします」
マスクを付け直して喋り終えた私が再びお辞儀をすると、各部活のメンバーが両隣に走って来て無言で頭を下げた。その光景に、女子たちは声を出さずに拍手で応えてくれたのであった……
なんとかジュマルに群がる女子は退治できたが全員が聞いていたわけではないので、校長先生にお願いして、お昼には同じような放送をしておいた。
これで学校は一丸となって、OM1ウイルスに立ち向かってくれたので一安心。夏まではなんとかなりそうだ。
それから私は野球部に顔を出したら、監督が尻尾を振って走って来たから「それ以上近付くな!」と言ってから話をする。
「いや~。ありがとな。お母さんのおかけで、店は潰れなかったよ。妹ちゃんには足向けて寝られないわ~」
どうやら補助金やらなんやらを母親が手伝ったから、礼を言いたかったみたいだ。
「私は何も……ママに伝えておきますね」
「いやいや。本当はプロを雇おうとしてたのを、妹ちゃんが止めたって聞いたぞ。このパンデミックの最中、監督の給料が無かったらヤバかった~」
「それはたまたま監督が運が良かったからだよ。その強運、大会で発揮してくださいね」
「ジュマルがいて、運なんていらないだろ。わははは」
私は単純に資金を掛けすぎだから両親を止めただけなので、監督に感謝される筋合いはない。とりあえず話を逸らしたら、監督は自信満々に笑っている。
なので皆の調子を聞いてみたら、県大会レベルには育っているみたいだ。
「あの弱小だった野球部が?」
「正確に言うと、全体のレベルが下がっているからってのもある。まぁ、みんなジュマルに夢を見て、個人練習を疎かにせずに頑張った結果でもあるな。我ながらいいチームに育てたもんだ」
「いまの話だと、監督の出番がなかったような……」
「練習メニュー考えてるの俺だって!」
ちょっとおちょくってみたら、監督はマスク越しでもってツバが飛びそうなツッコミをするので私は距離を取った。
「てことは、優勝は確実ってことですね?」
「感染者が出なければな」
「ホント、それだけが心配ですよね~。私なんて、小学校時代のほうが中学校生活を満喫してた感じですもん」
「ああ。あの時は毎日来てたもんな~。アレから3年か~」
野球部の練習を見ながら、しばし思い出話をする私と監督であった……
それからもマスク生活は続き、政府の不甲斐なさに愚痴りまくり、動画配信はジュマルの無観客試合を遠巻きに録画した物と、私が応援している姿だけを流していたら野球部は勝ち進み、ついに全中の決勝戦となった。
私もいちおうマネージャーで登録しているので、無観客試合でも会場どころか控え室にまで入れる。でも、戦術とかはよくわからないので、壁際で監督たちのミーティングを聞いているだけだ。
「正直いうとな~。このチームはジュマル頼みのチームだ。不甲斐ない監督で申し訳ない!」
「「「「「ブッ! あはははは」」」」」
監督の第一声は、自虐。おそらく、緊張している皆を笑わせようとしたのだろう。まさかここまで笑われるとは思ってなかったって顔をしてるけど……
その笑いが収まると、キャプテンにまで昇格した大翔君が前に出た。
「それを言ったら全員そうですよ。ジュマルさんがいなければ、県大会も2回戦、勝てたかどうかです」
「ちげえねぇ」
「「「「「あはははは」」」」」
大翔君まで自虐すると、誰かが合いの手を入れてまた笑い。ジュマルは暇そうにしてる。私もそっち側だ。
「まぁなんだ。こんなこと大声で言うのもなんだが、ジュマルがいるから絶対に負けない! お前たちも、気楽にやって実力を出し切れ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
監督の言葉に、本当に大声で言うことでもないなと私が思っていたら、監督は私に右手を差し出した。
「妹ちゃんからも一言!」
「え? あ、はい。みんな~。ファイトだお」
「「「「「うおおおお~~~!!」」」」」
「行くぞ~~~!!」
「「「「「うおおおお~~~!!」」」」」
私がちょっと応援しただけで、さっきより気合い入ってない? 噛んで照れてるのがかわいかったのかな??
こうして野球部は、やたら気合いを入れて最後の戦いに挑むのであったとさ。
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