【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

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三章 引きこもり皇子、働く

065 抜き打ち査察2


 査察は2日目に突入。予告通り朝早くからやって来たヨーセフ宰相一行を応接室に通し、エステルは優雅にティータイム。フィリップは屋根裏部屋で懲りずにゴニョゴニョ。
 そんなことをしていたら、お昼には帳簿の確認は8割方終了。ここからは残りを仲間に任せ、ヨーセフは発見した武器を持ってエステルと相対する。

「凄い税収ですね。例年のおよそ2倍もありますよ。これなら豪遊し放題ですね」
「はぁ~……どこを見ておっしゃっていますの? 我が家が贅沢しているように見えまして? 高価な品はほとんど売り払ったのですわよ」
「フッ……想定通りの答えですね」

 ヨーセフはニヤリと笑い、立ち上がってウロウロと歩きながら喋る。

「その金は、全て軍備に注ぎ込んだのでしょう。そしてお前たちがやろうとしていることは……」

 ヨーセフは急に振り返ってエステルを指差す。

「辺境伯軍で帝都に攻め込むつもりだ~~~!!」

 エコーでもかかりそうな大声に、エステルはキョトン。屋根裏部屋では、フィリップが「何か聞こえた?」とかベッドでキョロキョロしてる。

「プッ……オホホホホホホ~」

 その数秒後、エステルの大笑い。たまたま部屋にいたメイドや執事もクスクス笑っている。

「何がおかしいのですか!!」

 なので、ヨーセフは激怒。

「フフ……これを笑わずにいられますか。飛躍しすぎですわよ。フフフフ」
「どこがです!!」
「ちゃんと帳簿読まれました? 武器など一切購入しておりませんわ。そもそも元奴隷に給金を払うのにギリギリですのに、どこに武器を買う余裕がありまして? 帳簿でも我が家の苦労がわかりますでしょう」
「軍とは、人です。攻め込む人を集めているのでしょう」
「ですから、ちゃんと帳簿をお読みになってください。女も子供も等しく集めているのに、どうやって戦なんてできるのですの? やるなら男だけにしないと、食料がまったく足りなくなるのは明白ですわ」
「なるほど、あくまでもとぼけるつもりですね」
「とぼけるも何も、いま言ったことが全てですわ。証拠は帳簿に書いてありますわ。逆に聞きますけど、その突拍子のない話は、どの証拠を元にお話ししていますの? 見せてくれません??」
「フッ……」

 エステルの反撃に、ヨーセフは笑みを浮かべながら席に戻る。

「それは置いておいて、次です」
「ないのですわね……」

 強心臓のヨーセフは、エステルに痛いところを突かれたけど続ける。

「ここでは、いつまで経っても元奴隷の移動禁止令を無視していますね。これはどう申し開きするのですか?」
「帝都から帰って来た兄からは、命を救っているのだから不問となったと聞いていますが……皇后様からも褒められたと喜んでいましたわ。宰相閣下も同席して聞いていたのではないですの?」
「私は、それ以降も続いていることが問題だと言っているのです」
「そうですわね……」

 エステルが考える仕草をすると、ヨーセフは「勝った!」とか思っている。

「他領でも続いているのですから、領主、代官、全員を裁くべきですわね」
「え……」
「知りませんの? いまも領主や代官は元奴隷の押し付け合いをしていますのよ。ああ、近衛騎士長が仲裁に出たから、秘密裏にやるようになったからわからないのですわね。それに元奴隷は、正確に数が把握できないのですから、どこに誰が移動したなんてわからないのでしょうね」
「そんな報告、聞いてませんよ!」
「当たり前ですわ。報告したら罪になるのですから、わざわざ親切に言う者はいませんわ。うちぐらいですわよ? 他領からも受け入れた元奴隷を正確に報告しているのわ」

 エステルの話は、考えられるシナリオなのでヨーセフも考え込んでしまう。

「そもそもですわよ。お父様が何もしなければ、元奴隷は押し付け合いされ続けてどこかで野垂れ死んでいましたわ。お父様は、それは帝国の弱体化に繋がるからと、無理をして受け入れ続けていますのよ。それが罪だと言うのなら、自分は死を受け入れると言っていましたわ。これほど忠誠心のある人物は、この帝国に他にいまして?」
「そ、それは……」
「それに元奴隷の移動なんて、お優しい皇后様ならやっているのではありませんこと?」
「ど、どういうことですか??」
「収穫後、元奴隷が大量に解雇されましたでしょう……ただでさえ冬は死者が増えますわ。自分たちで動けないなら誰かが運んでやらねば、その場で死ぬと言っているのですわ。残念ながらお父様の手が届くのは、帝国の半分にも及びませんわ」
「……」

 エステルの話を聞いて、ヨーセフは顔が真っ青。その他も聞こえていたのか、書類を捲る手が止まって同じような顔をしている。

「まさか……何も手を打ってないのですの? 他領でも元奴隷の死者が多いと報告がありますのに、これでは帝国の東側は、相当な数の死者が出ていそうですわね……皇后様、さぞ悲しむことでしょうね」

 ルイーゼ皇后が悲しむと聞いて、ヨーセフは飛び跳ねるように立ち上がった。

「か……帰る! もうここはいいです! それよりも急いで帰らないと!!」
「あら? もう帰りますの? まだ少し残っているのですから、お父様の疑いが晴れたわけではないのですわよね? それでは謝罪もしてもらえないではないですか」
「謝る! 辺境伯には謝罪していたと言っておいてください。後日、正式に謝罪文も送るから、今日のところはこれで失礼します!!」

 偉そうにやって来て、とんでもなく焦って帰るヨーセフ。

「はぁ~……片付けもしていかないなんて、宰相閣下の品位も最悪ですことね。オ~ッホッホッホッホッホッホッホ~」

 エステルはその顔を見れただけで大満足。ため息や嫌味を言っていても、悪い笑みは止まらないのであった……
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