【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

ma-no

文字の大きさ
65 / 142
三章 引きこもり皇子、働く

065 抜き打ち査察2

しおりを挟む

 査察は2日目に突入。予告通り朝早くからやって来たヨーセフ宰相一行を応接室に通し、エステルは優雅にティータイム。フィリップは屋根裏部屋で懲りずにゴニョゴニョ。
 そんなことをしていたら、お昼には帳簿の確認は8割方終了。ここからは残りを仲間に任せ、ヨーセフは発見した武器を持ってエステルと相対する。

「凄い税収ですね。例年のおよそ2倍もありますよ。これなら豪遊し放題ですね」
「はぁ~……どこを見ておっしゃっていますの? 我が家が贅沢しているように見えまして? 高価な品はほとんど売り払ったのですわよ」
「フッ……想定通りの答えですね」

 ヨーセフはニヤリと笑い、立ち上がってウロウロと歩きながら喋る。

「その金は、全て軍備に注ぎ込んだのでしょう。そしてお前たちがやろうとしていることは……」

 ヨーセフは急に振り返ってエステルを指差す。

「辺境伯軍で帝都に攻め込むつもりだ~~~!!」

 エコーでもかかりそうな大声に、エステルはキョトン。屋根裏部屋では、フィリップが「何か聞こえた?」とかベッドでキョロキョロしてる。

「プッ……オホホホホホホ~」

 その数秒後、エステルの大笑い。たまたま部屋にいたメイドや執事もクスクス笑っている。

「何がおかしいのですか!!」

 なので、ヨーセフは激怒。

「フフ……これを笑わずにいられますか。飛躍しすぎですわよ。フフフフ」
「どこがです!!」
「ちゃんと帳簿読まれました? 武器など一切購入しておりませんわ。そもそも元奴隷に給金を払うのにギリギリですのに、どこに武器を買う余裕がありまして? 帳簿でも我が家の苦労がわかりますでしょう」
「軍とは、人です。攻め込む人を集めているのでしょう」
「ですから、ちゃんと帳簿をお読みになってください。女も子供も等しく集めているのに、どうやって戦なんてできるのですの? やるなら男だけにしないと、食料がまったく足りなくなるのは明白ですわ」
「なるほど、あくまでもとぼけるつもりですね」
「とぼけるも何も、いま言ったことが全てですわ。証拠は帳簿に書いてありますわ。逆に聞きますけど、その突拍子のない話は、どの証拠を元にお話ししていますの? 見せてくれません??」
「フッ……」

 エステルの反撃に、ヨーセフは笑みを浮かべながら席に戻る。

「それは置いておいて、次です」
「ないのですわね……」

 強心臓のヨーセフは、エステルに痛いところを突かれたけど続ける。

「ここでは、いつまで経っても元奴隷の移動禁止令を無視していますね。これはどう申し開きするのですか?」
「帝都から帰って来た兄からは、命を救っているのだから不問となったと聞いていますが……皇后様からも褒められたと喜んでいましたわ。宰相閣下も同席して聞いていたのではないですの?」
「私は、それ以降も続いていることが問題だと言っているのです」
「そうですわね……」

 エステルが考える仕草をすると、ヨーセフは「勝った!」とか思っている。

「他領でも続いているのですから、領主、代官、全員を裁くべきですわね」
「え……」
「知りませんの? いまも領主や代官は元奴隷の押し付け合いをしていますのよ。ああ、近衛騎士長が仲裁に出たから、秘密裏にやるようになったからわからないのですわね。それに元奴隷は、正確に数が把握できないのですから、どこに誰が移動したなんてわからないのでしょうね」
「そんな報告、聞いてませんよ!」
「当たり前ですわ。報告したら罪になるのですから、わざわざ親切に言う者はいませんわ。うちぐらいですわよ? 他領からも受け入れた元奴隷を正確に報告しているのわ」

 エステルの話は、考えられるシナリオなのでヨーセフも考え込んでしまう。

「そもそもですわよ。お父様が何もしなければ、元奴隷は押し付け合いされ続けてどこかで野垂れ死んでいましたわ。お父様は、それは帝国の弱体化に繋がるからと、無理をして受け入れ続けていますのよ。それが罪だと言うのなら、自分は死を受け入れると言っていましたわ。これほど忠誠心のある人物は、この帝国に他にいまして?」
「そ、それは……」
「それに元奴隷の移動なんて、お優しい皇后様ならやっているのではありませんこと?」
「ど、どういうことですか??」
「収穫後、元奴隷が大量に解雇されましたでしょう……ただでさえ冬は死者が増えますわ。自分たちで動けないなら誰かが運んでやらねば、その場で死ぬと言っているのですわ。残念ながらお父様の手が届くのは、帝国の半分にも及びませんわ」
「……」

 エステルの話を聞いて、ヨーセフは顔が真っ青。その他も聞こえていたのか、書類を捲る手が止まって同じような顔をしている。

「まさか……何も手を打ってないのですの? 他領でも元奴隷の死者が多いと報告がありますのに、これでは帝国の東側は、相当な数の死者が出ていそうですわね……皇后様、さぞ悲しむことでしょうね」

 ルイーゼ皇后が悲しむと聞いて、ヨーセフは飛び跳ねるように立ち上がった。

「か……帰る! もうここはいいです! それよりも急いで帰らないと!!」
「あら? もう帰りますの? まだ少し残っているのですから、お父様の疑いが晴れたわけではないのですわよね? それでは謝罪もしてもらえないではないですか」
「謝る! 辺境伯には謝罪していたと言っておいてください。後日、正式に謝罪文も送るから、今日のところはこれで失礼します!!」

 偉そうにやって来て、とんでもなく焦って帰るヨーセフ。

「はぁ~……片付けもしていかないなんて、宰相閣下の品位も最悪ですことね。オ~ッホッホッホッホッホッホッホ~」

 エステルはその顔を見れただけで大満足。ため息や嫌味を言っていても、悪い笑みは止まらないのであった……
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...