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第十一章 王様編其の二 外遊にゃ~
310 お義母さんの仕事にゃ~
しおりを挟むソウの街でのキャバクラ通いがバレて、怒られながら猫の街に帰ると、オッサンは双子王女と最後の夜を迎える。何やら酒を飲みながら泣いていたが、嫁に出すわけでもないのに大袈裟な奴だ。
なので、オッサンのキャバクラ通いと、指名していたシュェランの容姿をチクッてやった。
は? 何を言ってるじゃと? わしの事は見捨てておいて、何を言っておるんじゃ!
オッサンは双子王女にゴミクズを見る目で見られ、涙が引っ込んだようだ。おそらく、帰ったら女王にも話が行っているだろうから、怒られるだろう。ざまぁみろ!!
わしはあっかんべをしながらその場をあとにして、リータとメイバイにスリスリしながら眠りに就こうとしたら、イサベレまで布団に潜り込んで来た。
わしは貞操の危険を感じ、リータとメイバイに泣き付いてみたが、姉妹なので一緒に寝ようと言われた。
わし達は夫婦ですよ? 追い出さなくていいのですか? 恋愛指南書の話はいいですから、早く寝ませんか? もうちょっとですか。そうですか。
結局イサベレ先生に、リータとメイバイは何やら教わっていたので、眠るのは怖くて一睡も出来なかった。
翌朝は、皆より早く布団から抜け出し、ブラックコーヒーで眠気を飛ばす。それから皆が起きて来ると二階の食堂でエミリの朝食をいただき、東の国に向けて飛行機を飛ばす。
同乗者は、わし達夫婦とコリス。それと、オッサンとイサベレと鍛冶職人だけ。今回はワンヂェンも誘ってあげたけど、騒がれたのが堪えたのか、しばらく行きたくないとのこと。
飛行機の山越えなのでオッサンが少しうるさかったが、昼前には王都に到着した。ここでもバスのまま城に直行し、オッサン達を送り届ける。
そして、さっちゃんと女王に撫でられながら食事を食べ、近況を報告する。やはり双子王女からオッサンのキャバクラ通いが伝わっていたらしく、女王のオッサンを見る目が怖かった。
間違いなく怒られるのだろう。いい気味じゃ!!
その後、お茶までご馳走になり、ハンターギルドが込み合う前に歩いて向かう。コリスが少し驚かれたけど、前回より好意的な言葉が多かった。
ギルドに入ると、巨象の一部の買い取りをしてもらう。その時、おっちゃんがもっと安い獲物はないのか聞いて来たから、大蟻ならまだまだあったので、百匹ほど売ってあげた。
大蟻を売ると報告書が発行されたので、今か今かと待っていたティーサに提出する。また一週間ほど静かだったらしく、撫でられながら軽く愚痴を聞いて、苦笑いでギルドをあとにする。
そこから広場に向かい、目立つコリスと買い食いしながら我が家に帰る。
今日はここでお泊まり。アダルトフォーに、次元倉庫に入れていたエミリの料理を振る舞い、酒を飲んでいたら眠気に負けて、そのまま眠ってしまった。
朝起きると、素っ裸でリータとメイバイに抱かれて眠っていた。どうやら、アダルトフォーにおもちゃにされていたところを救出してくれたようだ。
服を着せてくれてもいいのにと思ったけど、感謝の言葉を述べ、二人の撫で回しを受けてから食卓を囲む。それからアダルトフォーを仕事に送り出すと、魔道具のチェックをして王都を出る。
飛行機で帰ろうかと考えていたが、よく考えたら今のメンバーは転移魔法を知っていたので、人気のない場所で猫の街近辺に転移。
帰宅後は双子王女から各種報告を聞き、少し仕事をしてから眠りに就く。
そして翌朝……
コリスの事は皆に任せ、ソウの街に向かう。
ガシッ!
残念ながら、リータとメイバイに尻尾を掴まれたので、コリスと追いかけっこしながらソウに向かう。
リータとメイバイを担ぎながらだが、肉体強化魔法を使って走ったので、飛行機より少し遅いぐらいで辿り着いた。
街に入ると、たまには歩いて向かってみるかと歩いていたら、ソウの街の住人は、コリスを見るのは初めてだったので、けっこうな騒ぎが起きてしまった。
なので、住民に危険は無いと説明しながら宮殿まで進み、ホウジツの仕事をしている場所まで案内してもらった。
「もうかりにゃっか?」
「ボチボチでんにゃ~」
「さっそくにゃけど、例の件はどうなっているにゃ?」
「まだ実験は続いていますが、お猫様の作った物の形は出来ました!」
「おお~! よくやったにゃ」
「お褒めの言葉は、鍛治職人に掛けてやってください」
「いやいや。東の国の、王の目を盗んでやってくれたんにゃ。ホウジツの手柄にゃ」
「はは~。もったいないお言葉」
わしとホウジツがにこやかに会話をしていると、にこやかでないリータとメイバイが質問して来る。
「例の件って、なんですか?」
「女の匂いの件ニャ?」
「断じて違うにゃ~!」
「怪しいです……」
「怪しいニャー!」
「う~ん……」
「私達に言えない事をやっているのですか!」
「違うにゃ。双子王女に秘密で作業をしているから、二人に言ってなかっただけにゃ。双子王女に知られると、東の国に話が行ってしまいそうだからにゃ」
「なんで私達に言わないニャ?」
「敵を欺くには、味方からにゃ。双子王女に悟られない為に黙っていたんにゃ」
「私達も気付かれないようにしますから、教えてください」
「わかったにゃ~」
わしは、二人に今まで行っていた実験の内容を伝える。すると二人は、そんな事が出来るのかと驚いて顔を見合わせていた。
「まぁまだ実験段階だけどにゃ。それを知られたくにゃいから、オッサンの油断を誘う為に、女性の居る酒場に連れ出してもらっていたんにゃ」
「秘密を守る為に、そこまでしていたのですか!?」
「てっきり、好きで行ってたと思っていたニャー」
「ひどいにゃ~!」
わしが「にゃ~にゃ~」文句を言うと、二人で撫でながら謝って来たが、「もしも好きで行っていたら、わかっているな?」と、脅すのはやめて欲しい。
ホウジツと一緒に恐怖で震えながら実験を見学し、わしも様々な案を出したら、お昼休憩。
コリスは話が難しかったから寝ていたが、食事を出すと機嫌良く目覚めた。餌付けはリータとメイバイに任せ、ホウジツと商売の話。
スプリング搭載馬車はどうなったかと聞くと、数台できていたので、何台か買い取る。これは猫の街とラサの街、猫耳の里に均等に納品する。
支払いは帝国金貨。馬車は高価だが、城から没収していたお金と、各地で買って来た調味料や塩、その他を売ったお金、ラサでジャガイモを売った収益でたんまり持っているから即金で払える。
現在は、東の国の金貨のほうが価値が高いが、東の国からの来訪者が来るまでは、同価値で進める予定だ。その後は使えなくするので、金貨が出来しだい交換していけば、すぐに東の国の金貨に変わるだろう。
ソウでの用事が済めば、また来ると言って猫の街に戻る。帰りはコリスがお腹いっぱいで寝てしまったので転移魔法。この日もわいわいと眠りに就いた。
翌日からは、猫の街でも生産業や農業を見て回り、ラサや猫耳の里にお出掛けしたりして数日が過ぎると、ついに麦が実ったとリータのお母さんから報告が入った。
「麦の収穫はわかったけど、お義父さんはどうしたにゃ?」
「それがあの人は数字に目を回してしまい、体を動かす作業をしたいと言い出しまして、畑に出ています」
「もうギブアップにゃ!? まだ数日にゃ~」
「ごめんなさい! その分、私が頑張るので許してあげてください」
「う~ん。お義母さん一人で大変になるかもしれないし、猫耳族から補佐をつけるにゃ」
「わかりました」
「それで……」
お父さんが居なかったから話が逸れたが、麦の話になると、問題があったようだ。単純な話、人手が足りないとのこと。
麦は主食、備蓄と使えるから多く植えたので、農地が広大となっている。刈り取るだけなら一日で出来るが、新たに植える作業と乾燥作業もあるので、どうしても人手が足りないようだ。
米の収穫も迫っているらしいので、ここはワンヂェン率いる魔法部隊の出番。と言っても、ほとんどが狩りや別の仕事をしているので、十人程度しか残っていない。なので、わしも作業に加わる事になってしまった。
麦の収穫当日。街の者の前で、わしは宣言する。
『え~……みにゃさん。残念にゃお知らせがありにゃす。今回の麦は食べられませんにゃ~』
「「「「「え~~~!!」」」」」
『すまないにゃ~。この麦を払わないと、隣の国と仲良く出来ないにゃ。裏を返せば、君達のおかげで隣の国と仲良く出来て、安心して豊かに暮らせるようになるにゃ。今回は我慢してくれにゃ~』
わしの説明を聞いた皆は、それならばと納得してくれたようだ。
『それじゃあ、第一回、麦収穫大会を開始しにゃ~す!』
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
わしの宣言で、農業組の皆は動き出す。
先陣は、わし達魔法部隊。地面すれすれに風の刃を放ち、麦を刈り取る。わし達だけでやってしまうと次回からの作業に支障が出るので、初心者講習用の畑は残す。
ほどほどに麦が倒れると子供達が蟻が群がるように突入し、麦が運び出される。それを、持ちやすいように束ねて、乾燥させる場所へと運ばれる。
その作業を繰り返すが広い麦畑なので、魔法部隊に次々と限界が来る。なので、お昼休憩まで作業をしていたのは、わしとワンヂェンとコリスだけ。
お昼休憩では次の作業の班分けをしなくてはいけないのだが、お母さんがバタバタと走り回っていたので、わしも手伝う事となる。
と言っても、お母さんの手伝いはリータとメイバイに任せ、わしは明日の作業のプログラム。今日は収穫で終わってしまうので、植える作業は明日になってしまう。
せめて耕す者がいれば、明日の作業が楽になるので、シユウ率いる牛軍団を召喚する。
昼食が終われば作業の再開。わしとワンヂェンとコリスは刈り取りを続け、シユウは土魔法で耕し、黒牛やその他の牛は、牛鍬で畑を耕す。
麦が刈り終われば、ワンヂェンとコリスは休憩。わしも耕し組に入る。
そうこうしていると手が空く者が現れるので、お母さんの指示で耕し組の増援がやって来る。日が暮れる前には刈り取りも終わり、明日の準備も半分は終わる事となった。
明日の作業は残っているものの、収穫大会は終わったので、今日は大宴会だ。
麦は食べられないので労いの為に、大量に取って来た白タコの触手を振る舞う。皆、嬉しそうに串を頬張り、笑顔になってくれた。
そんな中、お母さんが書類と格闘して、串に手をつけないので声を掛ける。
「お義母さんも食べるにゃ~」
「いえ。もう少ししてから……」
「そんにゃの食べてからすればいいにゃ。わし達も手伝うから、いまは食べてくれにゃ」
「は、はあ……何これ!?」
お母さんに串を食べさせると仕事を忘れ、貪り食べ出した。わしとリータは顔を見合わせて、よかったと笑い合い、メイバイも喜んでくれた。
宴会が終われば、夜遅くまで仕事だ。リータのお父さんは蚊帳の外に出されて寂しそうな顔をしていたけど……
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