アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

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第十五章 日ノ本編其の一 異文化交流にゃ~

423 江戸に行くにゃ~

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 三ツ鳥居が開通したお昼過ぎ、ミニ玉藻から双子王女が戻ると聞いたので、書類仕事を投げ出して「ひゃっほ~」と駆け出した。ミニ玉藻に喜んでいるところをバカにされたけど……
 しかし着くのが早すぎたので、三ツ鳥居の前でゴロゴロ。リータ達は役場に置き去りにしたから、わしを怒る者はいない。ミニ玉藻がため息を吐いているぐらいだ。

 そうこう待っていたら三ツ鳥居が開いて、双子王女が飛び出して来た。どうやら御所見学は楽しかったらしく、興奮してわしに感謝の撫で回しをしている模様。よっぽど異文化を見れて嬉しかったのだろう。
 そんな事をしていたら、三ツ鳥居はいつの間にか閉じていた。まぁビッグ玉藻は向こうに残ると聞いていたし、ミニ玉藻もいるから何も問題ない。なので、また魔力の補充をしながら双子王女から感想を聞く。

 御所の中の庭や建物を玉藻に案内してもらい、昼食の席でちびっこ天皇にも会ったらしいが、いきなり求婚されたとのこと。双子王女の見た目なら、そんな男は多数いるので、慣れた対応で断って来たそうだ。
 だけど、わしが失礼は無かったか聞いたら目を逸らされた。なのでミニ玉藻に聞いたところ、胸を何度も触られそうになって、その都度、ちびっこ天皇の手を叩き落とし、ゴミクズを見る目で見て、泣かしたそうだ。

 それは仕方がない。双子王女は叱るでなく、褒めておいた。あのエロガキが悪いんじゃからな!

 玉藻も双子王女に謝っていたらしいし、両国間に亀裂は生じないだろう。

 とりあえず、双子王女はわしの運転する車で送り届ける。これでわしの今日の仕事は終了。ちょっと早いが、我が家でゴロゴロ……

 ダメ? かなり魔力を使ったから倦怠感けんたいかんが……働いて来ま~す!!

 わしの言い訳は聞く耳持たず。リータとメイバイに睨まれたので、時計工房に逃げ込んだ。ここでなら、わしの趣味を楽しむだけだが、仕事をしていると思われるはずだ。

「また王らしからぬ事を……」

 ミニ玉藻は、わしの頭に乗って離れないので耳元でうるさい。なんでも、わしのそばが一番安全だから離れたくないようだ。

 だけど、小言がうるさいから、ミスしたとか言って叩き潰してやろうか……

 まぁまだ連絡役が必要なので、それまでは生かしてやるつもりだ。


 時計工房に来た理由は、リータ達へのアリバイ作りと暇潰し。時計作りをボーッと見学していたら、ミニ玉藻に車の件はどうなったか聞かれたので、ソファーを作っている工房に移動する。
 そこで天皇陛下用、徳川用、共に内装に必要な物は完成していたので、支払いをしてから時計工房の庭に移動して車製作。足回りは完成していたので、内装をちょちょいと配置して、外装に取り掛かる。
 ハイエースにしようかと考えていたが、ちょっと変更。ちょっと狭くなるが、リムジンにしてみた。

 カクカクしててかっこいい! わしのVIP専用車も作り替えてやろうか?

 ひとまず、ミニ玉藻にこれでいいかと聞いてみたら太鼓判を押された。なので、色を少しいじる。工房で出た灰を集めて、土魔法でリムジンをコーティング。黒光りして、ますますかっこよくなったので、ミニ玉藻も大満足だ。
 いちおう徳川の車もこれにするかと聞いたら、ハイエースでいいと言われた。なので、自分だけ高級感のある物に乗るのかとミニ玉藻を悪く言ってみたら、現在の将軍はけっこう大きいらしい。
 それにタヌキはキツネと違って横にも大きいので、広い空間があるほうが好むようだ。

 ミニ玉藻は、意外とタヌキ思いで言っていたようだけど、「コンコン」悪い顔で笑っている姿から信じられないんじゃよな~。

 とりあえずミニ玉藻を信用し、徳川車はハイエースとなって、色だけ黒塗りに仕立ててあげた。


 これで夕方まで暇は潰せたので、役場に帰ってわいわい就寝するわしであった。


 翌日は、ミニ玉藻と一緒にエルフの里へ出向き、三ツ鳥居のパーツを受け取ると、ここでゴロゴロとランチ。

 魔力の回復を待っているんですから、玉藻さんはチクろうとしないでくださ~い。

 魔力が回復すると日ノ本へ転移。伏見稲荷にて、三ツ鳥居パーツの三分の二を吐き出すと、ここでムシャムシャ。

 三時のおやつぐらい、ゆっくり食べさせてくださ~い。

 今日はここで一泊。日ノ本は吸収魔法での、魔力の回復が遅いから仕方がないのだ。ミニ玉藻は連日の分身で疲れているだろうと思い、御所に投げ捨てると、わしはスキップで厳昭みねあきの店に入る。

「さあ! わしを夜の娯楽に連れ出してくれにゃ~!!」

 わしは日ノ本で羽を伸ばそうと、そんな事を言うが、急に来てそんな事を言われても準備が間に合わないとのこと。それに、新店の準備と輸出品の選別に、めちゃくちゃ忙しいんだって。
 なのでこの日は場末の居酒屋でしこたま飲んで、荒れた。

 こんなチャンス、滅多にないのに……ちっきしょ~~~!!


 翌日は、徹夜で作業をしていたキツネ店主に昼頃起こされ、「酒くさっ! デッカイ奈良漬けかと思いましたわ!」って言われた。頭がガンガン痛いから、大声を出さないでくれ。
 二日酔いで体調は不良だが、猫の国に送る物を受け取って、キツネ店主と御所へ向かう。そこで玉藻と面談するのだが、昨夜の行動は忍者が見ていたようだ。

 別に悪い事はしていないので、リータ達にチクらないでくださ~い。ストレス発散で飲んでただけなんで~す。

 とりあえず、本当にたいした事はしていないので、報告はしないでくれるようだ。

 御所へ来た理由は、ミニ玉藻の合流と三ツ鳥居の受け取り。それと、車の納品と大蚕おおかいこの布も出来ている物は持って来た。
 もちろん請求書も持って来た。金額は金貨価格で書かれており、枚数がかなり多いので玉藻は驚いていた。どうやら数字ぐらいは完璧に読めるようになっていたようだ。せっかく日本語に翻訳したのも持って来たのに……

 猫の国でのお金と、日ノ本のお金の成分分析表もホウジツから受け取って来ていたので、小判価格の請求書と共に提出する。わしが翻訳したていの、分析の仕方も丁寧に載っているので、平賀家にでもやらせたらすぐにわかるだろう。

 とりあえず、質屋は口を開くな。わしが翻訳したんじゃろ? わしが苦労したんじゃろ? これだけあれば、喋らないでくれる?

 キツネ店主には袖の下を渡して、無事、わしがやった事になったので、玉藻から感謝の言葉をもらった。これでリータ達にも伝わるだろうから、褒めてくれるはずだ。

 支払いは分析待ちなので、ミニ玉藻とキツネ店主を連れて、ソウの街に転移。キツネ店主と日ノ本の商品は、ここでお別れ。商品説明に時間が掛かる事と、厳昭からの指示があったので、数日残るようだ。
 なので、ミニ玉藻と空を行く。戦闘機に乗って、わしの華麗な操縦を見せてやった。本体が無いのを悔しがっていたが、日ノ本での操縦に役立つだろう。

 出張から戻ったわしは、リータとメイバイに揉みくちゃにされる。たった一日なのに、寂しかったそうだ。ミニ玉藻がわしがサボっていたと言っても、優しく撫でてくれた。

 で、でも、もうそろそろ……

「ゴロゴロゴロゴロ~~~」

 この日は、リータとメイバイの激しい撫で回しを受けて、わしは気絶したのであった。


 それから二日後、エルフの里への三ツ鳥居と、日ノ本との三ツ鳥居がもうひとつ開通したので、わし達は日ノ本への三つ鳥居の前に立つ。
 今日のお出掛けは、猫パーティ改め、猫ファミリーの、わし、リータ、メイバイ、コリス、オニヒメだけ。見た目は、猫、エルフ、猫耳娘、巨大リス、鬼だ。猫要素が薄く、バラエティーに富んでいるけど気にしない。

 あ! それとミニ玉藻。胸元に入れて、忘れてませんよ~。

 三ツ鳥居にコリスとメイバイが詰まるというトラブルはあったが、無事、日ノ本に着いた。並んで通るなと言ったのに、焦りやがって……
 御所ではちびっこ天皇に謁見し、車等の支払いと、感謝の言葉を受け取る儀式みたいな事をやらされた。
 そんな仰々しくやらなくても玉藻から受け取ればよかったのだが、他国の王とのやり取りだから、一回目ぐらいちびっこ天皇もしっかりと仕事がしたかったらしい。
 なので、有り難く小判を受け取ると、完全体玉藻と共に御所をあとにする。

 御所を出て、バスで京を抜けると飛行機に乗り継ぎ、江戸に向かう線路を手繰るように空を行く。その機内では、リータとメイバイがわしに質問する姿があった。

「そう言えば、お金の価値は、どうなっていたのですか?」
「私も気になるニャー。教えてニャー」
「にゃ? 二人も興味あったんにゃ。前回は気にしてなかったから、勝手に知りたくないと思っていたにゃ~」
「あの時は、他でいっぱいいっぱいでしたから……」

 レートの話は、第一回猫会議の場での話じゃったか。いろいろ難しい話が多かったし、二人も何やら画策していたもんな。

「もったいぶってないで教えてニャー」
「ああ。日ノ本の小判は、だいたい価値が一緒で、うちがちょっと低かったから、小銅貨三枚足して、同価値にする事でお互い納得する事になったにゃ」
「そんなちょびっとニャ!?」
「もう、一緒でもいいんじゃないですか?」
「わしもそう言ってみたんだけどにゃ~」

 わしがリータ達と喋っていると、後部座席に座っていた玉藻が前にやって来た。

「嘘を言うでない。そちがきっちり分けろと言ったんじゃろ」
「そうだったかにゃ?」
「妾は計算が面倒じゃから、いいと言ったのにのう。多くの取引をすると、損害が出るぞと脅されたんじゃ」
「シラタマさんらしいですね」
「本当ニャー」

 そりゃわしだって利益が増えるのはいい事だとは思うけど、玉藻達がどんぶり勘定すぎるんじゃ。質屋なら、絶対に首を縦に振らんぞ。
 他の国の者も入って来るのに、大元がこれでは日ノ本が先細りしてしまう。公家ってのは、こうも金に無頓着だと、わしが守ってやるしかないんじゃ。
 だから褒めるのはいいんじゃけど、撫で回さないでください。玉藻も尻尾でわしゃわしゃしないでください。墜落しま~す。

 玉藻が尻尾で目隠しするので墜落し掛けたが、飛行時間が一時間ほどになると、江戸が見えて来た。
 わしははやる気持ちを抑えきれずに、建物が増える場所ギリギリに飛行機を降ろす。これは、玉藻から許可をもらっていたから出来る技だ。

 こうしてわし達は飛行機から降りて、花のお江戸に到着したのであった。
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