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第二十四章 アメリカ大陸編其の三 南米で遺跡発掘にゃ~
683 ファンの圧力にゃ~
しおりを挟む「え~。たくさんの読者のみにゃさんに見送られて出発できるにゃんて、感無量ですにゃ~」
「「「「「キャーーー!!」」」」」
「この旅の小説は二巻後に発売されると思うので、楽しみに待っていてくださいにゃ。では、いってきにゃ~す」
「「「「「いってらっしゃいにゃ~」」」」」
こうして大勢の小説のファンに見送られ、わしたち猫パーティを乗せた戦闘機は、猫の街飛行場から飛び立つのであった……
……て、何故いきなりの出発式かと言うと、ここ数日大変だったのだ。
なんだかキャットタワーの外が騒がしいと思ったら、小説のファンが大量に押し掛けていた。
前々からわしに会いに猫の街に来ていたファンは居たのだが、こんな大量のファンは初めての事なので何事かと双子王女に聞いたところ、「猫王様の北極探検記」が発売されたからではないかとのこと。
小説家の猫耳娘も呼び出して、この騒ぎの原因を話し合ったら、わしが書くなと言った阿修羅に殺され掛けたシーンを書いてしまったから、心配したファンが集まったんじゃないかと言う結論に至った……
まぁ原因はわかったので放置したら、次から次にファンが集まってしまい、双子王女からも「ウサギ族がモフられているからなんとかしろ」と言われて、ファンの前に顔を出さなくてはならない事態になってしまった。
元気な姿を見せて握手会も開いたが、ファンが一向に猫の街から出て行かないどころか増えて行くので、宿屋稼働率が200%超え。どうしようもなくなって逃げるように冒険に出発させられたと言うのが、事の顛末なのだ。
大袈裟に戦闘機で旅立ったから、ファンの口コミでわしの無事と、猫の街に来ても会えない事はすぐに広まるだろう。猫の街に居るファンもすぐに出て行くだろう。
でも、ウサギ族が痴漢にあっていたと聞いたけど、大丈夫かな~?
冒険を終えて聞いた話だと、しばらくしたらファンの来襲は止まったらしいが、立って歩くウサギがお金持ち以外にも周知されたらしく、猫の街に旅行者が増えたらしい。
あと、ウサギ族をお持ち帰りしようとしたファンが逮捕されたらしい……わしのファンじゃなかったのか……
そんな騒ぎが起こっているとは予想していたが、わしたち猫パーティはしばらく空を行き、適当な所で着陸。そこからアメリヤ王国の城に転移した。
急いで出発したのでアメリカ大陸は夜だったから、リータ達は庭に出したキャットハウスに待機させ、わしは城をウロウロ。国王のジョージ13世はギリギリ起きていたので面会となった。
「こんにゃ夜遅くにゴメンにゃ~」
「いえ、シラタマさんには頼りっきりなので、いつでも会いますよ」
「軽く晩酌ってことでいいかにゃ?」
ジョージは物欲しそうに見ていたので、つまみと最近作ったバーボンを出してみた。
「これこれ~。うまい! こっちのお酒は……うっ。強いけどなかなか」
やはり、食べ物が目的で歓迎してくれたっぽい。しかし、礼節を欠いたわしは強く言えないので、世間話に変える。
「バーボンは水割りにしたほうが飲みやすいんにゃよ?」
「あ、じゃあ、そんな感じで。でも、これも輸入できないですか?」
「いまは研究段階だからにゃ~……販売段階になったら、喜んで輸出してやるにゃ~」
商談しながらバーボンに水を注ぎ、マドラーで混ぜたら飲ませ、感想を聞いて世間話は続く。
現在のアメリヤ王国は、議員の悪事が全てストップしているので、ジョージの評判はかなりいいそうだ。
仕事も増え税金も下がり、民も暮らしが楽になったとのこと。反対派も全て排除しているのでジョージを襲う者も居ないから、治安も良くなったらしい。
「シラタマさんの不平等条約様々です。最初は酷いことをされると思っていましたけど、経済は回りますし、不満はシラタマさんに逸らせますから凄く助かっていますよ」
「まぁうちにも利益があるからにゃ。それはお互い様にゃ~」
「利益? なんのことですか??」
「気付いてないにゃ? じゃあ教えてあげないにゃ~。にゃははは」
人材と技術を奪い取ったけど、それが花開くのは未来の話。べティの料理はすでに役立っているけど、ジョージは実力を知らないのでわかるわけがない。ケラハー博士達の研究も新技術の事だから、気付くのは計算機を売った時だろう。
「あ、そうにゃ。仏教と神道の派遣にゃんだけど、諸事情でわしが連れて来れなくなっちゃったにゃ」
「あ~……そっちは早いほうがよかったんですが」
「にゃんか問題が出てるにゃ?」
「はい。キルスト教信者が脱退続出で、その者達は何を信じていいのか困っていまして」
「あらら。思ったより見限るのが早いにゃ~」
「庶民からもお布施を強要していたら、そりゃすぐに信仰も薄れますって。変な宗教から騙されたって言う人も出ているので取り締まりを強化しているところです」
「稼ぎ時なんにゃ~」
宗教問題はわしにはどうしていいかわからないが、出発前に日ノ本には手紙を送っているのでその話をしてあげる。
「わしが連れて来れないんにゃけど、違う人が近々連れて来てくれるから安心してくれにゃ」
「違う人って、どのような人ですか?」
「たぶん日ノ本の国の元お偉いさんにゃ。いまも力を持ってる玉藻って美人さんが連れて来てくれると思うにゃ」
「美人さんですか……ムフフ」
「言っておくけど、玉藻は九本の尻尾を持つキツネだからにゃ」
「はい??」
「わしと同等の化け物にゃから、変にゃことしたら滅ぼされるからにゃ~」
「どうしてそんな人に頼むんですか!!」
どうしてと言われても、玉藻は一番の適任者だからだ。アメリカに行きたそうにしていたから、頼めばひょいひょい乗って来ると信じている。
それに神職の者は大人数になるとちびっこ天皇から聞いていたので、護衛が一人で済むからお得だろう。
「ま、女王と同じくらいに扱っておけば、満足してくれるにゃ。くれぐれも怒らせるにゃよ?」
「うっ……あのペトロニーヌ陛下と同格にですか。最大限の配慮を考えなくては……」
「あ、そうにゃ。小説の新刊が出てたからあげるにゃ~」
「やった! 次はどんな敵と戦っているのかな~??」
「おもてなしは考えなくていいにゃ?」
ジョージが大変そうに見えたからストレス発散のために渡してみたけど、おもてなしの件はもう忘れて小説に没頭している。わしの質問にも答えてくれなくなったので書き置きを残し、リータ達の元へ戻って時間を潰すわしであった。
翌日の昼過ぎ、そろそろ起きようかとリータ達にモフられていたら、キャットハウスにノックの音が響いたので顔を出すと、目を血走らせたジョージが立っていた。
「体は大丈夫ですか!?」
「いつの話をしてるんにゃ~」
どうやらジョージはアレから夜通し小説を読んで読破したから、わしの体を気遣ってくれているようだ。いちおう書き置きに昼まで起こすなとなっていたから、この時間まで我慢したそうだ。
読んでしまったものは仕方がないので、料理とコーヒーを振る舞って感想を聞いてみたら、圧がめっちゃ強い。ジョージは小説のコアなファンとなってしまったらしい。
角を出せと言われても、アレはフィクションじゃ。阿修羅との戦闘シーンはフィクションと書いてあるじゃろ? 阿修羅は実在するぞ。はい、ドーン!
うっとおしいジョージには、火葬しようか悩んでいてすっかり存在を忘れていた阿修羅の現物を見せてやったら腰を抜かしてチビっていた。
その情けない姿をカメラで激写。しつこく質問して来ると、次のアメリカ編の附録で写真を付けるぞと脅しておいた。
これでゆっくりと世間話が出来るようになったので、原住民の現状を聞いてから、ジョージと一度別れる。
わし達の向かった先は、原住民の静養地である公爵邸。皆、美味しい物をいっぱい食べて健康的に暮らしている。
近々一部の部族は元の暮らしていた場所を見に行くそうで、アメリヤ軍が車を出してくれるとのこと。故郷に帰るかどうかは、そこを見てから考えるそうだ。
そんな中、オオカミ族の人狼が四人近付いて来たので、名前を呼んでビジジルを炙り出した。見た目でわからないから返事をした者がビジジルで間違いないはずだ。
「オオカミ族はどうすることに決まったにゃ?」
「俺達は三ツ鳥居の補充する仕事を任されているから、半数はここで暮らすことになった」
「そりゃジョージ君は助かるだろうにゃ~……それにゃら、うちから魔法の先生を派遣しようかにゃ? そしたらみんにゃ帰れるにゃ~」
「大丈夫だ。アメリヤの見張りの為に残る意味合いもある。それに他の部族も心配だからな」
「にゃるほど……あんまり気張らなくても、うちにゃら部族の支援をしてあげるからにゃ。困ったら手紙を送るんにゃよ?」
「その為には英語を把握できないとな。字を覚えるのは大変だ」
「にゃはは。それは大変だにゃ~」
責任感の強いビジジルに頼りっぱなしなので、美味しいお酒のプレゼント。ただ、あまりオオカミ族ばかり優遇すると、わしの事を神だと勘違いしている部族の者から嫉妬されそうなので、他の部族にもお酒を配っておいた。
それからビジジルの元へ戻ったら、人狼はリータ達の魔の手に掛かってノックダウン。至高のブラッシングと撫で回しで倒されたようだ。
わしが大丈夫かと聞いたら、腰がガクガクで立てないとのこと。なんだか卑猥な表現だが、わしもそれぐらい撫でられるので、被害状況と受け取った。
「にゃ? 猫の国に行ってみたいにゃ??」
人狼四人が復活したら、何故かそんな事を言われたのでビジジルから詳しく聞いてみる。
「ここは国と言う場所なんだろ? 他の国と言う場所も見て、どんな違いがあるか知りたいんだ」
「勉強と言うわけにゃ~……ま、いいにゃよ。うちもオオカミ族を見たいって人が居るから手配してあげるにゃ~」
オオカミ族の猫の国旅行は決定したが、いまは時期がマズイので先送り。こんなモフモフを猫の街に送ったら、小説のファンに確実にモフられる。
モフられるだけならまだしも、オオカミ族が噛み付いたら大事だ。ハンターまで出動してオオカミ狩りに発展するかもしれない。
ここはこの旅が終わって猫の街が落ち着いたら、オオカミ族を連れて行く約束をするわしであった。
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