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第二十五章 アメリカ大陸編其の四
707 モンスターの魔法にゃ~
しおりを挟むノルンによる心無い言葉を受けて、わしは大ダメージ。リータに抱きついてグスグス言っていたら、メイバイも頭を撫でてくれた。
「ふむふむ。シラタマは精神攻撃に弱いんだよ」
当の汚い言葉でわしを罵ったノルンはと言うと、わしのデータをマザーに送信中。ムカッと来て手が出そうになったが、心の広いわしはリータとメイバイに撫でられながら先程の疑問を考える。
設定の答えの選択肢のひとつは酷い暴言とはわかったが、もうひとつのロックが掛かっていて答えられないとは、なんぞや?
もしかして、こいつを仲間に入れるイベントでもあるのかのう。ま、こんな口の悪いヤツはノーサンキューじゃ。仲間になりたい目を向けられても絶対に無視してやろう。
わしがノルンに泣かされたり考え事をしていたら夕食は終了。ノルンに聞いたらシャワールームはあったので、今日はそこで揉み洗い。
奇麗さっぱりになったら、バスを出してその中の布団で眠りに就く。
「ねえねえだよ~? シラタマはどこからこんなに大きな物を取り出してるんだよ~??」
「もう寝てくれにゃ~」
質問攻めして来るノルンと戦いながら……
そして翌日……
わし達は第5フロアに到着した。
「ここからはモンスターも魔法を使って来るんだよ。そろそろ疲れも出て来た頃合いだから、一人ぐらい死人が出るはずなんだよ。じゃあ、張り切って行ってみるんだよ~!」
「張り切れにゃいわ!」
朝からネガティブな事を言われたら、わしもイライラ。昨夜はノルンに睡眠を邪魔されて寝不足たから当然だ。そうしてイラつきながら数歩進んだら、イサベレから待ったが掛かる。
「あ、そこ、落とし穴」
「また入口に付けやがったにゃ!?」
「おしい、だよ」
わしなら落ちても大丈夫だろうが、寝不足で機嫌が悪いので腹が立つ。
「てか、槍まであるにゃ!」
「あ、言い忘れてたんだよ。このフロアから、致死性のある罠になってるんだよ」
「おい、お前……入口の罠で一人殺そうとしてたにゃろ?」
「ノルンちゃんだよ」
「うっにゃああぁぁ~~~!!」
わし、ご乱心。たしかにノルンをお前呼ばわりしたら訂正が入るのはいつも通りだからわしのミスでもあるのだが、いまはそれは火に油。怒りのあまり奇声をあげてしまった。
ただし、見た目が幼女の妖精では強く当たれないので、わしは頭をボリボリ掻きむしるしかないのであった。
「よしよし。少し眠ろうニャー」
「ゴロゴロ~」
あまりにもわしがキレているので、メイバイは優しく抱っこ。このフロアは寝ていていいそうだ。
しかし、モンスターが魔法を使って来ると聞いているので、そこだけは確かめておかなくてはならない。
わし抜きの配置は、先頭は白メガロドン製の巨大盾を持つコリス。猫パーティのNo.2なので、どんな奇襲もコリスには通じないだろう。
さらに後ろにイサベレが控えているので、罠や奇襲があってもすぐに気付くから、コリスを盾にしたら何が起きても即死には至らない。
後方はいちおう防御力の高いリータ。今までバックアタックは無いのだが、ノルンが協力的ではなくなって来たので、念の為の配置だ。
その前にオニヒメ。さっきイサベレと同じくらいの危険察知能力になったと言っていたから、危険があれば教えてくれるだろう。
ド真ん中にはメイバイに抱かれたわし。ノルンからの質問攻撃が来なくなっているので眠気と戦っている。
しばし歩いていたら、アイアンスライムが現れたとの報告。オニヒメが時々探知魔法を飛ばしているので、遠くのモンスターでも早期発見できるようだ。
そうして戦闘の準備をしながら歩いていたら、皆はアイアンスライムが見えると騒ぎ出した。
「わしにも見せてにゃ~」
メイバイに高い高いしてもらったら、確かにアイアンスライムの輪郭がわしにも確認できた。これは、三日もこの真っ白な空間に居るから、目が慣れて来たのだろう。
嬉しい誤算があって、魔法の【泥】をぶっかける必要は無くなったので、そのまま皆で前進して戦闘に突入した。
リータの指示で、今回は様子見から。巨大盾を構えたコリスを前進させていたら、アイアンスライムが筒上の物を伸ばした。
「にゃあにゃあ? これって威力が強すぎにゃい??」
「シラタマ達に対しては、設定マックスだよ」
「マックスはいいんにゃけど……」
筒から発射した物は、雷ボール。それも音速に近い速度で飛んで来たから、どう考えても威力があり過ぎる。Cランクハンターでも即死クラス。猫パーティだから対応できるのだ。
その事をノルンに言っても通じない。この施設が千年間魔力を吸い続けてレベルアップしているので、マザーもノルンもその知識が入力されていないからわからないのだろう。
「強い攻撃ですけど、三発で撃ち止めみたいですね。イサベレさん、やっちゃってください」
「んっ!」
雷ボールを撃ち尽くしたアイアンスライムは、頭頂部から出したムチをペチペチしながら進んでいたので、リータの指示でイサベレが走り、あっけなく斬られて終了となったのであった。
「ゴロゴロ~」
「まだ寝ないニャー?」
「もう一戦見てから寝るにゃ。ゴロゴロ~」
皆が気を付けて進んでいる中、わしがメイバイに抱っこされて眠気に耐えていたら、杖を持ったアイアンゴブリンが現れた。
「今度はさっきみたいにちょっと感電する程度じゃないんだよ。腸撒き散らして燃やされたらいいんだよ」
ノルンが勝ち誇ったように怖い事を言うので、わしは引き気味。
「アレのどこがちょっとなんにゃ……」
「本当に……魔法を使い始めて、ようやく戦い甲斐のある敵になりましたね」
「それは同意できにゃいけど……風魔法と火魔法辺りを使いそうにゃから気を付けるんにゃよ?」
「わかってますよ」
リータのやる気も怖いので、ノルンの言葉から何をして来るか予想を教えてあげたが、意外と冷静。リータも気付いていたようだ。
ここは盾を構えたリータとコリスがジリジリ前進して、ゴブリンメイジの魔法を全て使わせようとしている。ゴブリンメイジが杖から風の刃や火の玉を出しているところを見ると、杖に魔道具でも仕込まれているのだろう。
ゴブリンメイジの攻撃はかなり強いのだが、両者の盾は崩せない。しかしこれしか攻撃手段がないようなので、ずっと無駄撃ちしている。
「思った通り、普通の魔法使いよりデカイにゃ~」
「うんニャー。でも、使い手がアレじゃあニャー」
「たしかにメイバイにゃら、次を発射する前におしまいだにゃ~」
「あ、終わったニャー」
ゴブリンメイジの持ち玉は10発。魔法を撃ち尽くしたと察したリータはコリスを走らせて、気功リスパンチで胸を砕いて終わりとなった。
「これにゃら余裕だにゃ。ボス戦になったら起こしてにゃ~」
モンスターの強さを確認したら、わしは当初の予定通り爆睡。皆は危なげなくダンジョン攻略を続け、出会ったモンスターはぶち壊す。新しいモンスターが出た場合は、泥をぶっかけてメイバイが写真を撮っていたみたいだ。
わしの抱き手は時々代わっていたらしく、目覚めた時にはイサベレがわしを抱いていた……
「どこ触ってるにゃ……」
「チ……」
「場所は聞いてないにゃ~!!」
卑猥な言葉は言わせねぇよ! ぶっちゃけ卑猥な所を触るから目が覚めたので、わしは強引にイサベレの腕を抜け出してコリスのモフモフに隠れるのであった。
「ふむふむ。シラタマの弱点は、チ……」
「シャーーー!!」
ついでにマザーに報告するノルンにも威嚇して言わさねぇわしであったとさ。
完全に目が覚めてしまったが、もう一度寝ようかと考えていたら、ボス部屋についたとのこと。これはわしも参加したいのでお願いしてみたら、寝ていた人には出番はないらしい……
「メイバイが寝ろって言ったんにゃろ~」
「だって眠そうにしてたニャー……」
「メイバイさんはシラタマさんの体を気遣っていたんですよ。最近お昼寝もしてなかったじゃない」
「そうにゃけど……まぁいいにゃ。任せたにゃ~」
今回はメイバイの優しさに免じて譲るけど、「イエーイ」って二人でハイタッチしてるのは、なんでですか? わしを騙すなら、最後まで騙して欲しかったな~?
どうやらリータとメイバイは、ボス戦にわしを参加させない為に優しくしてくれていたようだ。それがバレたらそそくさと戦闘に向かって行きやがった。
今回のフロアボスは、3メートル以上あるオーガキング、アイアンゴブリンが三体、ゴブリンメイジも三体だ。攻守のバランスが良く数も多いので、強敵だと思われる。猫パーティ以外なら……
魔法さえ気を付ければいいので、リータとコリスの盾で守りながら前進。メイバイ達の射程範囲に入ったら、すぐに決着するだろう。
「にゃあにゃあ? ここまでのモンスターの種類と、どんにゃ感じで倒したか覚えてにゃい?」
「今まで出て来たモンスターと、新種は二種類だよ」
ノルン曰く、新種はトカゲとリザードマン。トカゲは水魔法を使い、リザードマンは水魔法と槍を使うとのこと。どっちもトカゲ、てか、ゴーレムなので、種類を聞いても意味が無かったかもしれない。
リータ達はどうやって倒したのかも教えてくれたけど、ノルンがキレてめっちゃ口が悪いので割愛。モンスターが魔法を使った直後に壊されたことはわかったから、それでいい。
そんな会話をしている間も、盾を構えてジリジリ前進しているリータとコリスに向けて、後衛のゴブリンメイジの魔法が放たれ続けている。
そのままゆっくり前進し、前衛のアイアンゴブリンの攻撃範囲に二人が入ったと同時に、イサベレ、メイバイ、オニヒメが散り散りに飛び出して、ゴブリンメイジを破壊した。
魔法使いさえ倒せば、あとは烏合の集。リータとコリスの気功パンチでアイアンゴブリンはノックダウン。最後に取っておいたオーガキングは、皆にサンドバッグにされてバラバラになるのであった。
「ありゃりゃ。もう終わっちゃったにゃ」
「ムキー! 一人も死なないんだよ!!」
ノルンはどうしてもわし達を殺したいようだが、時の賢者が人間を殺したかったのかは計りかねる。たぶん、そういう設定なのだろうと信用するしかない。
キレるノルンを無視して、わし達は宝箱部屋へと入るのであった。
「シラタマさん、どうぞ」
「おいしいところ譲ってあげるニャー」
白い宝箱の前では、リータとメイバイがニコニコしているが、どうも信用できない。
「これ開けても、次のボス戦、参加させてくれるにゃ~??」
「「………」」
「にゃんか言ってにゃ~」
やはり、手柄を譲る事でわしがボスと戦わない布石。目も合わせてくれないし、無言で押して来るから確実だ。しかし「にゃ~にゃ~」言っていたら、オニヒメが早く開けろと言って来たので、娘に弱いわしは開けてしまう。
「よっ……鎧兜にゃ」
「わあ~。綺麗ですね~」
「シラタマ殿の好きな鎧ニャー」
「まぁ……そうにゃんだけど……」
宝箱の中には、日ノ本製の鎧兜。千年前の物が綺麗に残っていたのは素晴らしい事なのだが、喜び過ぎるとボス戦に参加できないと思い、素直に喜べないわしであったとさ。
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