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捌 助け
50 レポートの巻き
しおりを挟む半荘が電子機器を金属製の箱に入れてしばらく経った頃、全世界で忍チューバーの動画が更新された。
「忍チューバー服部半荘。ただいま参上! ニンニン」
煙の中から半荘が現れるいつものオープニング。
ただ、カメラアングルと場所が違った。
「さて、拙者が居るのは、ここ!」
カメラは半荘から、韓国と書かれた岩肌をズームする。
「こないだも説明した通り、日本では竹島と呼ばれ、韓国からは独島と呼ばれている島だ」
カメラが半荘のアップに変わると、次の台本を読み上げる。
「その島からライブ中継を……したいんだけど、録画で放送しています。だから、大砲を撃って止めようとしても、無駄ですよ~?」
わざとらしく説明すると、映像は西の海の絵となる。
「ああ。あの大艦隊は、韓国艦隊だ。俺ひとりに、あんなに必要なのかな~?」
半荘の質問に、カメラは横に二度振られる。
「まぁ韓国の攻撃は全部撃退しているから必要かも? そうそう! 新しい映像が撮れたんだ。まずはこちらをどうぞ~」
半荘が手を前に振ると、映像が変わる。
その映像とは、韓国の高速船が港に到着し、韓国兵と半荘が派手に戦う映像だ。
その中には、韓国からしたら、映ってはいけないモノが映っていた。
映像が元に戻ると、半荘は補足する。
「ひっどいだろ~? 日本の船になら乗って帰ると言ってるのに、銃を撃ちまくるんだぜ? まぁそれよりもっと酷い事を言ってたな」
半荘は、一息吸って愚痴を言う。
「人質を乗せてくれと頼んだのに、断るんだぜ。なんで? ってなるよ。予想だけど、俺がレイプしてるだとか、殺してるだとか、人質がいるから島を取り返せないとか言いたいんだろうな。あ、現場の判断とかやめてくれよ? そんな言い訳、誰が信じるんだ、大統領?」
カメラは上に下にと振られ、頷いているように見える。
「ほら、俺に人質に取られていると言われてる人も頷いているぞ。ちなみに、脅してこの映像を撮らしているわけでもない。な?」
カメラはまた二度ほど上下する。
「『うん』だってさ。とりあえず、人質さんの名前は言えないからクノイチとしておくな。ちなみに撮影を担当しているのはクノイチ。もちろん韓国人。それも、めっちゃ美人だ!」
「ちょ! 何を……あ!!」
「あはは。音声、入っちゃったな。まぁ一度出演してるし、いまさらか」
ジヨンの声が入ったが、半荘は笑いながら続ける。
「俺達の目的は、生きて祖国に帰る事だ。韓国のほうは、クノイチの家族に攻撃している人もいるみたいだけど、やめてください。彼女は被害者で、事件に巻き込まれただけだからな。しいて犯人を上げるとするならば、俺では無く、門大統領。お前だ! お前のせいで、彼女は韓国に居場所が無くなったんだからな!!」
カメラに指を差して怒鳴り付ける半荘。
軽く咳払いをすると、もうひとつ文句を言う。
「それと韓国艦隊の人! レーダー照射は海自の人が迷惑って言ってたからやめろ! アメリカなら、間違いなく撃ってるぞ? それだけで宣戦布告だって、前にもやったのにまだわからないのか!!」
半荘の怒声に、カメラは動かない。
ジヨンは賛同してしまうと、立場が悪くなると思っての行動だ。
「ふぅ……急に大声を出してすみません。次の映像を流すから、クールダウンしときます」
次の映像は、半荘が機関砲や爆撃を受けるシーン。
CGなんて使っていないのに、大迫力の戦闘が映し出されている。
「どう? 凄かっただろ? 俺も死ぬかと思った~。この映像は、あとで単発で更新するから、待っておいてね」
おちゃらけた言い方をした半荘は歩き出し、映像はその背中を映しながら進む。
「百歩譲って、韓国の立場で言うと、島を取り返すための正当な攻撃なんだろうけど、日本からしたら、領土に大砲を撃ち込まれた事になるんだよね~。そこんとこ、門大統領はわかってやっているのかな?」
喋りながら坂を登る半荘が頂上に立つと、映像は東側の海の絵となる。
「日本艦隊のみなさ~ん! これって、宣戦布告じゃないですか~~~!!」
半荘が耳に手を当てる仕草をするが、返事が来るわけがない。
「まぁここで戦争になると、俺達が戦禍に巻き込まれるから、やめてほしいんだけどね」
ここで半荘は、軽く愚痴を言う。
「なんか総理大臣は戦争を回避しようと頑張っているみたいだけど、結局、何もできないんなら、国連に早く連絡してくんない? 日本に頼るより、そっちのほうが断然早く帰れそうだからな」
カメラは数度上下したので、ジヨンも大賛成のようだ。
「あはは。クノイチも賛成だってさ。そりゃ、引き取りを断られた船に乗りたくないか」
カメラがまた上下して止まると、半荘は締めに入る。
「阿保総理、門大統領。二人で解決できないなら、早い決断をお願いします。では、レポーター、服部半荘。カメラマン……カメラウーマン?」
半荘のどうでもいい質問に、ジヨンは呆れて口を挟む。
「どっちでもいいわよ」
「あ、そう。カメラマン、クノイチでした。以上、戦場になりそうな係争地からの放送でした! ニンニン」
こうして忍チューバーの動画が終了すると、世界はどよめくのであった。
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