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15 勇者誕生にゃ~
しおりを挟む「はい? 勇者ってどういうことですか??」
白い大型犬を連れて頭に妖精を乗せたモブっぽい少年は、わしが勇者と叫んでもピンと来ていない。
「にゃ……ああ。ちょっと熱くなっちゃったにゃ。時間を取らせて悪いんにゃけど、少しだけわしに付き合ってくれないかにゃ?」
「えっと……夜ではダメですか? お金にあまり余裕が無いので仕事をしないわけには……」
「急ぎなんにゃ。今日の稼ぎはわしが出すから、にゃにとぞ!!」
わしが頭を下げると、少年は困っているようだが承諾してくれる。
「わかりましたから、頭を上げてください。一日ぐらいならなんとかなりますので、お金も結構です」
「それはダメにゃ。前金にゃけど、これで十分にゃろ」
「金貨!? こここ、こんなの貰えません!!」
「とりあえず、ここじゃ邪魔になるから向こう行こうにゃ~」
こんな場所でお金の押し付け合いなんかしていたら町の外に出る冒険者の邪魔になるので、わしは少年の手を引いて列から離れる。その時、少年のポケットにこっそり金貨を入れたので、押し付け合いはわしが引いて終わりにしてあげた。
「そんじゃあ、改めにゃして……わしはシラタマと申すにゃ~」
「僕はハルトです。この子は妖精族のモカで、こっちは白狼種のレオです」
16歳になったばかりというハルトが緑色の髪をした妖精と大型犬だと思っていた白いオオカミも紹介してくれたので、わしもパーティメンバーを紹介しようとべティ達を呼び寄せた。
「チェッ……なんで今まで気付いてなかったのに、今日に限って気付くのよ……」
皆の紹介が終わったらべティがグチグチ言っていたので、わしは質問してみる。
「今まで気付いてにゃいって……どういうことにゃ??」
「この子達、何度もすれ違ってたよ?」
「そうにゃの? ……にゃっ!!」
「あっ! また電球出た!!」
「ホンマにゃ!?」
べティに指摘されたことを思い出したらわしの頭の上に電球が浮かんだらしいので、慌てて上を向いて確認。しかし、これに時間を掛けると思い出したことを忘れそうなので、慌てて回想にふける。
ハルトと初めてすれ違ったのは、冒険者の登録が終わってギルドを出た時。次は教会から帰る時。その次が魔王城から帰って来た日の町の門。その全てにべティは気付いていたから、いつも遅れていたのだ。
「にゃんでそのとき教えてくれないんにゃ~」
「だって~。あたしが勇者やりたかったんだも~ん」
「せめて反省しろにゃ~」
どうしてもべティは勇者役をやりたかったようで報告する気はなかったとのこと。わしが見付けたことに対して文句まで言いやがる。
「にゃ~にゃ~」文句を言いたいところであったが、ハルトがキョロキョロして困っているので、先ほど紹介したアオイを前に立たせる。
「わしに勇者とか言われても信じられないだろうにゃ。このアオイさんはお城で働いている人にゃから、王女様が神託で聞いた勇者の特徴を教えてくれるにゃ~」
「え? 詳しい特徴は聞いてないんですけど……」
「にゃんで聞いてないにゃ!?」
サトミは勢い余って勇者を探しに出たので、誰にも特徴を説明してなかったっぽい。わしが苦情を言った時に居た執事と武闘王ぐらいしか知らないと思われる。
「まぁいいにゃ。王女様に会いにお城に行くにゃ~」
「おおお、お城ですか!?」
「大丈夫にゃ。金貨もう一枚あげるからにゃ?」
「お金の問題じゃないんですぅぅ」
予定変更。勇者を拾ったならば、お城に届けるのが筋だろう。ハルトは庶民だから慌てているが、わしはまた金貨をポケットに押し込み、城に連行するのであった。
「「「魔王討伐は??」」」
「キャンセルにゃ~!」
「「「そんな~~~」」」
落胆するべティ&ノルンとアオイも、コリスに拘束させて連行するわしであったとさ。
何度も「首、刎ねられません?」と心配するハルトを「わし、他国の王様だから」と宥めて歩いていたら、ハルトはわしに対しても緊張。白狼種のレオはハルトにスリ寄ってアニマルセラピーをしていると思われる。
「あなた、見掛けない顔ね」
「あなたじゃなくて、ノルンちゃんだよ」
「あなたも人族と一緒に暮らしてるの?」
「あなたじゃなくて、ノルンちゃんだよ」
偽物妖精ノルンと本物の妖精モカは、なんか会話が噛み合っていない。てか、ノルンは自立式ゴーレムなんだから、妖精に知り合いが居るわけがない。
そうこう各々喋っていたら、城に到着。門兵にアオイの顔を見せて王女との面会を要望してみたら、アポイントを取れとのこと。
緊急事態だと何度も念を押し、アオイをこの場で殺すと脅したら、なんとか人を走らせてくれた。
「なんで戻って来てるんですか!?」
わしの名前を聞いたであろうサトミは息を絶え絶え走って来て怒鳴るので、耳がキーンと来た。
「勇者を見付けたからにゃ~」
「はい??」
簡潔に説明してもサトミはとぼけた声を出すだけなので、ハルト、レオ、モカを見せて説明する。
「ハルト君は、東からやって来たと言っていたにゃ。王女様の言っていたパーティ編成にゃし、間違いないにゃろ?」
「たしかにそうですけど……魔王と戦いたくないが為に嘘を言っているのでは?」
「にゃんでわしが嘘つかなくちゃいけないにゃ~」
せっかく勇者を連れて来てあげたのに、サトミは信じてくれない。わしが勇者じゃなかったから、騙された被害者意識があるのかもしれないが、簡単な解決方法はある。
「勇者の剣を抜いたら本物だとわかるにゃろ?」
「はあ……もう一度シラタマ様も試してくれません?」
「だから勇者はこっちにゃ~」
サトミはまだわしを勇者だと疑っているので、ハルトの次にわしが挑戦することで納得させ、用意してもらった馬車に乗り込む……が、人数制限に引っ掛かったので、わしの畳敷きバスに全員を乗せてあげた。
「和の国の畳、いいですよね~。うちにもひと部屋あるんですよ~」
「王女様がコロコロ転がるにゃ~。みんにゃ迷惑してるにゃ~」
サトミが傍若無人に振る舞うと、べティやコリスはいつも通りなんだが、ハルトがヤバイ。
ハルトはバスの一番奥に突っ立って、ローリング王女アタックに当たらないようにしているので、急ブレーキを掛けたらサトミにエルボードロップしてしまいそうだ。
もうここはコリスにモフモフロックをしてもらい、サトミを拘束してハルトに座るように促すわしであった。
バスはノロノロ走り、教会に着いたら今にも吐きそうなハルトから下ろす。アオイに水筒を渡して看病させている間に皆を降ろし、バスは次元倉庫へ。
ハルトはまだ少し気持ち悪そうだが、規制線の張られている教会の裏庭に連れて行った。
「今度こそ抜いてやるわ!」
「べティは引っ込んでろにゃ~」
往生際の悪いべティは、ハルトに勇者の座を譲りたくないと言わんばかりに勇者の剣を抜きに行って「ふんぬ~!」とか言っているけど抜ける素振りがない。なので、わしが羽交い締めにしてべティを排除。
べティをコリスに預けたらハルトを呼び寄せるが、岩には登ったがなかなか勇者の剣を握ろうとしないので、わしは緊張を解こうとする。
「こにゃいだここまで来てたらしいんにゃから、ちょっとは興味あるにゃろ?」
「はい……挑戦は自由と聞いていましたので、記念に挑戦しようかと……でも、しばらくは立ち入り禁止と言われましたので諦めました」
「それはわしがやらかしたからにゃ。本当はその日の内にハルト君が勇者になっていたのに、わしのせいですまないにゃ~」
「そ、そんな……僕なんて……」
「軽い気持ちで挑戦してくれたらいいだけにゃ。ダメでも、誰も文句は言わないからにゃ」
わしの言葉にハルトは頷いたけど、サトミを見たら首を横に振っていたので、ハルトに見せないようにした。だって、文句言いそうな顔してたんだもん。
「次はわしが挑戦するから、ちゃちゃっとやっちゃってにゃ~」
「はあ……いきます!」
わしがわざと順番を出して急かすと、ハルトはようやく勇者の剣に手を掛け、力を込めた。
「「「「「お、おお……」」」」」
すると、岩に刺さっていた勇者の剣は、まるでプリンにでも刺さっていたかのように抵抗なくスッと抜け、その刀身は光り輝いた……
「にゃはは。勇者ハルトの誕生にゃ~。にゃはははは」
皆が感嘆の声を出す中、この記念すべき勇者ハルトの誕生を、わしは笑いながらカメラに収めるのであった。
「にゃ~? わしが言っていた通りにゃろ~??」
辺りがざわざわしている中、わしはハルトを連れてサトミの前に移動したら……
「ゆ、勇者様……お待ちしておりました!」
「にゃっ!?」
「おっふ……」
サトミはわしを押し退けてハルトにハグ。さすがにサトミの胸に顔を埋められては、ハルトは力が抜けたのか勇者の剣を落とした。
「にゃったく……」
蚊帳の外に置かれたわしは、サトミが落ち着くのを待たないといけないのかとやれやれって仕草をしていたら、べティがそうっと二人に近付いていた。
「勇者の剣を盗もうとするにゃ~」
「ち、ちがっ!? 落ちてたから拾った人の物かと思って……」
「そんにゃわけないにゃろ~」
「間違えた! ちょっと持ってみたいと思っただけよ!!」
「もう遅いにゃ~」
「ふんぬ~!!」
わしが止めているのにべティは勇者の剣に触れて持ち上げようとしているが、うんともすんとも言わないようだ。
「ゼーゼー……何これ? あの子、こんなに重たい物を振れるの??」
「振れるから勇者なんにゃろ。勇者以外には振れない魔法でも掛かってるんじゃにゃい?」
「くっそ~! てか、こんなの誰が作ったのよ!!」
「さあにゃ~? 神様かもにゃ~??」
たしかに製作者は気になるので、わしは勇者の剣をひょいっと持ち上げて魔力視という魔法でよく見てみる。すると、膨大な量の漢文が勇者の剣に浮かび上がったので、すぐに解除した。
UFOにもこれに似た漢文が無数に浮き上がるのだから、勇者の剣の製作者は間違いなく神様。勇者にしか持てないってことは、何か目的があってここに突き刺されていたのだろう。
ちなみにあとで刺さっていた場所も見てみたら、同じように漢文が浮かんでいたから、わしの馬鹿力でも抜けなかったのだと納得した。
「つぅ~……やっぱり神様の落とし物にゃ。UFOと一緒で漢文が浮かび上がっているにゃ~」
わしは勇者の剣の情報の多さで頭に痛みが走ったが、頭痛を我慢してべティに教えてあげているのに口をパクパクしてる。
「お魚さんのマネしてるにゃ?」
「なっなっなっ……」
「だからにゃに~??」
「なに簡単に持ち上げてるのよ!!」
どうやら勇者以外誰に持てない剣を、わしが力業で強引に持ち上げているのがべティは納得いかないのであったとさ。
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