猫王様の千年股旅

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猫歴73年~

猫歴91年その1にゃ~

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 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。獣仲間が増えてちょっと嬉しい。

 猫クラン研修で秀忠の獣バージョンも伸ばしてやろうと思ったら、あら大変。猫ファミリーが大きな四本のタヌキ尻尾を毎日モフるモフる。
 しかしこれも訓練。獣バージョンに慣れないことには戦うこともできないので、その姿を維持させる。まぁ王妃様方の超絶技巧の撫で回しとブラッシングは気に入っているから、いっか。

「浮気にゃ……」

 いや、よくありません。女性の玉藻前ならまだしも、男をモフりまくっているのだから、わしも心穏やかではない。

「も~う、仕方ないですね~」
「シラタマ殿もこっち来るニャー」
「にゃ、にゃにも言ってないですにゃ~」
「「「「「よいではにゃいかよいではにゃいか」」」」」
「いにゃ~~~ん! ゴロゴロゴロゴロ~」

 ちょっと嫉妬心を見せたせいで、わしにもモフり被害。死ぬほどモフられたので、この件は目をつぶるわしであったとさ。


 それからも秀忠の猫クラン研修を続けていたら、年は替わり猫歴91年になった。今年も玉藻前と秀忠がいるから、神社で何もない年を祈ることを諦めてダラダラお昼寝。
 そんなことをしていたら1月半ばに、ミテナが猫クランに羽ばたいて来た。

「またにゃ~? 入学したんにゃから諦めて大学行けにゃ~」

 いや、数年に一度の猫クラン入りたい病だ。

「いや~。大学って、なんか難しくて……」
「それが大学にゃ。まだ始まったばかりにゃんだから、ギブアップするのは早すぎるにゃ~」
「わかってるけど~~~」

 ミテナは泣きそうな顔をするので、わしは少し心配になる。

「大学でにゃんかあったにゃ?」
「ううん……ただ……」
「ただにゃ??」
「変人ばかりで話について行けないの~~~」
「あぁ~~~……」

 ミテナが辞めたい理由は、まともな人がいないから。生徒もそうだが、私立猫の国大学の講師陣はもっと変人だから、常識人のミテナには耐えられないみたいだ。

「まぁにゃ~……まともにゃ人が多い文系は、国立大学に持って行かれちゃったからにゃ~……」

 私立猫の国大学が変人だらけになったのは、そういうこと。国立大学設立に目処が立った頃に、どんな学校にしたいのかと話し合うと、市役所の仕事や経済面に強い人材を育てたいとなって、文系が根刮ぎ持って行かれたのだ。
 もちろんわしは反対したよ? そんなヤツらだけでは私立が崩壊してしまうと。でも、議会の多数決で決まってしまったから、何も言えなかったの。

 いまはちょっとでもマシな変人や外部から引き抜いた人を経営陣に入れて、なんとか回しているのだ。

「なにそれ!? 私、文系が得意なのよ!? なんで受験の時に言ってくれないのよ!!」
「みっちゃんは私立のほうがいいと思いにゃして……というか、みっちゃんにゃらアイツらも従えちゃうんじゃないかと淡い期待をにゃ……」
「はあ~?? だから大学行け大学行けって言ってたの!? ふざけるな~~~!!」

 そう。ミテナを私立猫の国大学に入れたのは、最近さらにカオスとなっている猫大の救世主になってもらうため。
 ぶっちゃけ、ミテナの小論文は文系の内容だったから普通は不合格だけど、他の点数が1位と2位ばかりだから、それを説得材料にしてわしが捻じ込みました。じゃなかったら、完全に裏口になっていたからウロ様々だ。

「ま、まぁ、小論文でも民を導くようにゃ話を書いてたにゃろ? 私立には国立と違って、秘密図書館があるから、そこでいくらでも学び放題にゃ~」
「なんで小論文の内容知ってるの? ま、まさか……私を絶対に逃がしたくないからって、権力を使ったわね!?」
「滅相もないですにゃ~。みっちゃんの実力ですにゃ~」
「もうイヤ! 大学辞める~~~!!」

 こうしてミテナは、たった2週間で大学を辞める決断に至って駄々っ子みたいになるのであったとさ。


 ミテナに大学を辞められては、わしの計画が狂う。なのであの手この手で引き留めて、ミテナから「もう少しだけなら行ってもいい」と引き出した。

「プププ。黒いシラタマちゃんは新鮮ね~」

 その方法は、一緒に大学に通うこと。あの手この手を使ったのは、王妃様方から許可をもらうことのほうが多かったかも?

「どうせなら、ちょっとメイクしない?」
「わし、男子大学生のつもりにゃんだけど……」
「えぇ~……大学楽しくな~い」
「せめて男の子として扱ってくれにゃ~」

 いや、ミテナのほうがやっぱり大変。一緒に通えと言われて、さらにメイクなんてわしの人権が踏みにじられてるもん。
 ちなみにわしが黒猫になっている理由は、王様だとバレないため。私立猫大には現在、わしの子供や孫が数人ウロついているから、カモフラージュになると思われる。

「ヒョウ柄にゃ? 派手すぎにゃい??」
「ダイジョブダイジョブ。かわいいよ?」
「イヤだにゃ~……」
「かわいくないと楽しくな~い」
「わかったにゃ~」

 とりあえずミテナから受け取った作画をトイレに持ち込み、変身魔法。カラーリング魔法では後頭部に色が付けられないから苦肉の策だ。
 あと、前面だけやってミテナが気に入ってしまったら、そんな恥ずかしい姿でキャンパスを歩かなくてはいけなくなるから、そんなネタは与えてはならないのだ~!

「どうかにゃ?」
「う~ん……なんか違うな。帰ったら、ベティちゃんにやってもらおう」
「どう違うんにゃ~~~」

 そこそこカッコよくできたと思ったけど、手直しが必要みたい。でも、今日のところはこれで我慢するらしいので、手を繋いで教室に向かい、授業の開始を待つ。

「このカリキュラムもよくわからないのよね~……」
「にゃにがわからないにゃ?」
「ほら? 1年生はどの授業を受けてもいいことになってるじゃない? 出席した授業で確認の用紙を提出しただけで、進級できちゃうのも謎。普通、1教科ずつテストで評価するものでしょ?」
「高校まではそうだにゃ。国立もそうなってるにゃ。私立猫大の場合は、自主性を重んじてるだけにゃ~」
「それが私には難しいのよね~。特にやりたい授業ないもん」
「まぁ文系だもんにゃ~……先生来たにゃ。続きはあとで喋ろうにゃ~」

 喋っていたら、講師が入って来て出席確認の紙が配られたので、わしはどうしようかと悩む。とりあえずわしは、質問があるとか言って講師に近付いて「理事長の視察」と耳打ち。
 写真入りのカードキーも見せたから、たぶん大丈夫だろう。めっちゃ緊張し始めたから、確実に大丈夫だな。

 そうこう真面目に聞いてノートを取っていたら、90分が過ぎてチャイムが鳴る。それと同時にミテナはわしの頭を撫で撫でし出した。

「やっぱり面白くない……シラタマちゃんはノートまで取ってたけど、面白かったの?」
「ボチボチかにゃ? 技術系の話だったから勉強になったにゃ~」
「ふ~ん……この教室、まだまだ技術系の授業が続くけど、このままここにいる?」
「みっちゃんが面白くないにゃら、違う教室に移動しようにゃ。それが、猫大の醍醐味だからにゃ」

 移動しながら私立猫の国大学のカリキュラムを説明。基本的に猫大の新入生は小論文で、大学でやりたいこととその熱量が採用基準になっているから、授業の選択なんて決まりきっている。
 そのままひとつのことを極めるのもいいが、講師や研究員として大学に残れる人数は極僅か。ならば他の研究も見せて、自分の研究に役立たせるか、合わせてさらに面白い研究を発見しないかと考えて、こういうカリキュラムになっているのだ。

「それでいい研究の論文を提出したら、卒業ってこと?」
「いんにゃ。卒業資格を持つだけにゃ。てか、入学式のあとに説明あったにゃろ?」
「なんか聞いたことのない授業ばかりだったから、頭がいっぱいいっぱいだったの~。隣の女子に聞いたら、ずっとワケわからないこと言うし……」
「うんにゃ。ちゃんと説明してやるにゃ~」

 ミテナには前情報が足りなかったので、2限目はさっそくサボリ。猫大内にあるカフェでお喋りする。これも大学生の醍醐味だから、わしはちょっと楽しい。

「卒業するには、講師、研究員になれるだけの研究論文を提出する必要があるにゃ。もしくは、ふたつの異なる研究論文を提出だにゃ。学生のほとんどは、滑り止めで2本の研究論文を用意しているにゃ」
「ああ~……落第したら困るもんね」
「いや、落第はないにゃ。卒論で失敗したら、退学にゃ」
「え? 一発で? それは酷くない??」
「だってこいつら、好きにゃ研究がしたいからって、死ぬまで落第し続けるんにゃも~ん」
「そうだった!? 変人揃いだった!?」

 わしの苦労がすぐに伝わってよかった。そんなヤツらにタダで勉強させるワケにはいかないもん。

「厳しいけど、それは仕方がないわね。でも、卒論で合格しても、卒業資格だけってのはどういうこと?」
「職業訓練を1ヶ月ちょい受けてから、晴れて卒業にゃ。理由は言わなくてもわかるにゃろ?」
「うん。こんな社会不適合者をそのまま世に放っちゃダメだね」

 昔は取り合いだった大卒は、いまでは各市にも大学があるからけっこうな人数がいるので、そこまで人気ではない。
 しかし、パソコンが必須の会社や技術系の会社からは相変わらずオファーが多いから粗相があっては後輩が困るから、職業訓練を設けたのだ。

 というか、何十人もやらかしやがったから、職業訓練をもうけたというのが正しい。翌年の就活シーズン前には、わしも各社に出向いて頭を下げまくったんだよ?


「みっちゃんはにゃにを選考するかだよにゃ~……」

 一通り猫大のシステムを説明したわしは、振り出しに戻った。

「虫とか好きにゃ?」
「好きな人いるの?」
「ウロ君とニナにゃ」
「いた!? あの仲には入れないよ~」
「技術系もダメにゃろ~……ひとつはファシズムとかを独学で学ぶとして、もうひとつは魔法科学ってのがあるから、そこ見に行こうにゃ」

 わしがブツブツ言って勝手に決めると、ミテナは頭を捻る。

「うん……どっちも知らない学問ね……なんでシラタマちゃん、そんなこと知ってるのよ~」
「理事長にゃもん」
「見えないから賢いこと言わないでよ~」
「理事長にゃもん」
「ブハッ! 笑うからやめて」
「理事長にゃもん」
「アハハハハハ」

 こんな簡単な言葉で大笑いを取れるなんて、わしはしてやったり……なワケねぇ!

 頑張って理事長してるのに、こんなに笑われると悲しくなっちゃうわしであったとさ。
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