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猫歴73年~
猫歴93年その2にゃ~
しおりを挟む我が輩は猫である。名前はシラタマだ。第二世界の地球が滅んでいたなんて信じられない……
UFOを使って第二世界に異世界転移してみたら、青かった地球が土色。よく見なくても地球の中央辺りが抉れているから、これが原因の可能性が高い。
「隕石が落ちたのかにゃ……」
「かもしれないんだよ~。あの規模だと、かなり大きいんだよ~」
ノルンやそれ以外の人と喋っていても答えは得られない。なのでわしは、あの人を呼んでみた。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
「「「「「眩しいにゃ~」」」」」
第二世界を統べるツクヨミノミコトだ。でも、目立ちたいからっていつも以上に眩しいから、全員目をやられて見えません。
ひとまずツクヨミは光量を減らしてくれたと言うので、そこでわしは目を開けたけど、光を消してくれ。光が邪魔なんじゃ。
「これでどうですか?」
「もっと……もうそんにゃもんでいいにゃ。それよりこれは、どういうことにゃ? あの綺麗だった地球はどこに行ったにゃ~」
「これにはソンブレロ銀河より深~~~い理由が……」
船外にいるツクヨミが見れるようになったら、わしは質問してみたけど、ソンブレロって帽子じゃね? じゃあ、浅いような……
それをツッコんで欲しそうな顔をしているツクヨミを無視していたら、やっとこさ真相を語ってくれる。
地球が死の惑星になったのは、およそ500年前。それまではツクヨミが何度も手助けして、第一世界以上に発展した惑星になっていたそうだ。
しかし、ツクヨミがちょっと目を離した隙に、こんな状態になったんだとか……
「ちょっとって、にゃん年にゃ?」
「200……いや、183年??」
「正確にわかってるにゃら噓つくにゃよ~」
神様のちょっとは信じられなかったから聞いてみたらこの始末。やはり神様は時間の感覚は疎いみたい。しかし、何があったかなんてアカシックレコードがあるのだから正確にわかる。
そんなのないって……わしはスサノオから見せてもらったぞ? 情報量が多すぎて、頭、爆発し掛けたけど。
ツクヨミはそこまでバレているなら仕方ねぇと続きを喋ると、これは中国のせいらしい。
その頃の中国は、無限と言ってもいいくらい増えた民に土地が圧迫されていた。それはタワーマンションを何万と建てることでなんとか耐えていたが、どうやっても電力が足りない。
その解決策に、禁断のエネルギーに触れてしまったのだ。
元々ツクヨミの手助けで科学が恐ろしく発展していたのだから、その理論は知っていた。しかし、地球が滅ぶ危険性があったから、世界はそれを禁じていたのだ。
だが、中国は民の不満を解消するために、密かに強行する。
そのエネルギーとは、人工ブラックホール発電。無限にエネルギーが産出されるのだから、成功していたらどの国も人工爆発で困っていたから人類の希望になったであろう。
しかしそうはならなかった。人工ブラックホールは何百kmもの土地を吸い込み、流れ込んだ海水を全て吸い込んだところで止まった。
これで終わりではない。逆流が起こり、吸い込んだエネルギーを何十倍にも増幅して破裂したのだ。
その結果、世界の半分は爆発の余波で吹き飛び、世界中をチリが覆って暗闇と氷河期が訪れる。
残った人類は、中国から離れた場所に国があった極一部。地下にコロニーを作ってなんとか生き延びていたが、海が消失したのだから長くは持たない。
辛うじて作れた一隻の宇宙船で、まずは月を目指す。月や火星から水を確保して、地球の海を復活させる作戦だ。
もちろん乗れる人数も限られているから、残された人類のほうが多い。食料も資源も残り僅か。宇宙に出た人間も人手が足りないから、すぐには戻って来れない。
何十年も待った地球側の人類は、ついに食料も資源も枯渇してあとは滅びを待つしかなかった。
そこに、人類滅亡は避けたいと考えた科学者がいた。疑似人格を作り出して無機物に入れてしまえば、これまで積み上げた知識は残ると……
ただ、資源もほぼない状態ではロボットなど多くは作れない。それに故障も考慮しておかないと、人類は数年で滅んでしまう。
そこで動けるロボット以外は故障の少ない形にして人類存亡を願い、今日に至るらしい……
ツクヨミは話し終えたみたいだけど、わしたちは全員絶句。過程がどうであれ、地球が滅んでいる現実がショック過ぎて声が出ないのだ。
そうして立ち尽くしていたら、痺れを切らしたツクヨミはUFOのハッチを勝手に開けて入って来て、わしの頭を撫で出した。
ここで我に返って声を掛けようとしたら、その顔がウザかったので、わしは手を叩き落とそうとしたけどそれは悪手。ツクヨミの腕が硬すぎて、ジーンッと痺れた~。
「つ~……神様なの忘れてたにゃ……」
「フフン♪ シラタマさんも、なかなかの力持ちですよ。腕がちょっと動きましたもの」
「一回、本気で殴っていいにゃ?」
「……神様を??」
「し、失礼しましたにゃ~~~」
こんなに刃が立たない相手は久し振りだったからわしも興味が出たけど、また神様だと忘れていたので平謝り。神様を殴ろうと思うとは、脳筋組と長く一緒にいたからわしも洗脳されていたのかもしれないな。
「それで~……月や火星に人類は残ってないにゃ?」
「残念ながら……どちらも地下に住み着いていたのですが、100年後には全滅していました。人類の体では、重力や空気の違う環境では子孫を残すことが難しかったみたいです」
「そうにゃんだ……てか、ツクヨミ様はけっこう介入してたんにゃろ? その気になったら助けられたんじゃないにゃ??」
「全滅の前でしたら……」
どうやらツクヨミは人類に介入していたと言っても、そこまでたいしたことはしてなかったらしい。
その方法は、有名な科学者や天才的な子供の夢にお邪魔して、画期的な技術や数式のヒントを教えるだけ。それだけでも、世界はとんでもなく早く進化したとのこと。
その時、布教活動は忘れない。夢から覚めた者は光のせいで顔とかはわからないが、ツクヨミの名前は覚えていた。
そのおかげでインタビューに必ずツクヨミの名前が挙がり、画期的な技術を発表した者は同じことを言うので、この第二世界ではアマテラスや各種宗教の神を超える大人気の神様になったらしい……えげつない布教活動してるな。
そんなことになってる地球なのだから、ツクヨミだって助けられるなら助けたい。しかし、ある制約があって、終わってからでは何もできなかったそうだ。
「全滅してなかったら、遺伝子イジって宇宙空間でも生きられるようにしたんですけどね~」
「その前に止めてやれにゃ~……いや、神様にゃんだから、時間とか戻せないにゃ? 確か魔法書に、そんにゃ魔法があったにゃろ??」
「やりたいのは山々だったのですが……」
「あ、さっき言ってた制約ってヤツにゃ??」
「はい。時間魔法での介入は、確実に世界が分岐してしまうのです。そうなってしまうと、他の管理者が激怒するので……というか、2回もやっちゃったから、次は殺すと……てへ」
「懲りないヤツだにゃ……」
ツクヨミのヤツ、アマテラスやスサノオの出番を奪おうと、時間魔法で時を戻したんだって。
つまり第三世界と第四世界があるのはツクヨミのせい。兄弟の不手際ってことで、アマテラスとスサノオが責任を取って管理することになったそうだ。
ただし、これは重罪らしく、次やったら本当に死刑になるから、ツクヨミも夢に出るぐらいしか手助けはしてなかったんだとか……
ツクヨミ談を聞いたわしたちは、今度は呆れ顔。「もう帰ろっか?」とかヒソヒソやっていたらツクヨミも焦り出した。
「頼み事! 頼み事があったんです!!」
「神様の頼み事って、面倒なんだよにゃ~。時間も掛かるしにゃ……」
「すぐ終わりますって! それにリータさんも里帰りしたいですよね??」
「私ですか? 里帰りと言われましても、私、なんにも思い出ありませんよ??」
「ちょ、ちょっと待ったにゃ……」
ツクヨミがリータの名前を出したことで、わしの中で何かが繋がった。
「地球側の人類は、無機物に人格を移したと言ってたよにゃ? もしかして岩になってたんじゃ……」
「シラタマさん……当ったり~。パフパフ」
「「「「「もう少し重く言ってくれにゃい?」」」」」
新事実発覚。しかしツクヨミがラッパを吹いて軽すぎたので、わしたちは冷たい目と低い声で怒りを表すのであったとさ。
反省して正座になったツクヨミの操縦でUFOは地球に降下。とりあえずリータ岩バージョンが亡くなったという、クレーターに着陸する。
空気はかなり薄いらしいから、ツクヨミがUFOの機能を使って結界を広げてくれたので、いつもより遠くに行けるけどみんな恐る恐る降りて来た。ツクヨミが信じられないらしい。
「にゃんか覚えてるにゃ?」
「まったく……」
「だよにゃ~」
リータに質問してみたら、当たり前の答え。隕石の衝突現場なのだから、思い出の景色もひとつも残っているワケがない。あるのは、水溜まりとコケだけだ。
「てか、これがリータが残した功績じゃにゃい?」
「そうなのですか? 確かに元の世界では見たことがありませんが……」
「シラタマさんの言う通りです」
ツクヨミ曰く、この水溜まりとコケは、リータ岩バージョンと隕石が衝突したことで化学変化が起こり、発生した物らしい。
「こんな物、なんの足しになるのですかね~?」
「いや、凄いことにゃよ? たった100年で生命まで生まれてるんだからにゃ」
「そうですよ。ここまで転がって来てくれてありがとうございました。これでまた、地球は再スタートできたんですからね」
「え、えっと……役に立てたなら何よりです……」
わしたちがベタ褒めしても、リータにはあまり伝わっているように思えない。ツクヨミに聞いたところ、異世界転生する時にもこのことを説明したらしいけど、まったく伝わらなかったんだって。岩だもん。
「ところで……わしにこれを見せたってことは、ここに何か要素を足せってことかにゃ?」
「シラタマさんは話が早くて助かります~。アミノ酸をプリーズ」
「栄養がある物にゃら、にゃんでもいいってことだにゃ……」
ツクヨミの言い方が軽すぎるからムカつくが、ここはリータの前世の墓標だ。水溜まりには弱い獣をそのまま寝かせ、その周りに円を描くように白い巨大魚を小間切れにしてバラ撒き、水魔法で血を薄めておく。
皆にも協力してもらい、そこにシロツメグサの種を蒔けば、数分後には水溜まりはお花畑に囲まれる。
するとリータの目には涙が浮かんだ。
「フフフ。綺麗ですね……こんな景色、死ぬ前に見たかったです」
「にゃ? 死ぬ前にも綺麗な景色を見たと言ってなかったにゃ??」
「はい。この辺りは円状にキラキラしていたのです。空の光と合わさって、キラキラの中に私1人がいて、すっごく幸せな気持ちになれたんです」
「そりゃいい景色だっただろうにゃ~。いまも空は、星が落ちて来たようにキラキラしてるにゃ~」
「はい。はい……グスッ」
ようやくリータの目から涙が落ちる。故郷に帰って来たのだと実感が持てたのだろう。その涙を見たメイバイたちはリータに抱きつき、一緒に涙するのであった……
わしとベティとツクヨミ以外……
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