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猫歴73年~
猫歴94年その4にゃ~
しおりを挟む我が輩は猫である。名前はシラタマだ。理事長が大学のことで知らないことはない。
「猫祭ってにゃに!?」
いや、白状するといっぱいあるし、これも本当に知らない。わしの顔みたいになっている門から校内に連れ込まれたわしは、ミテナの腕を優しく振り払った。
「猫の国大学学園祭の略よ。中学や高校でやってたでしょ?」
「それは知ってるんにゃ~。猫大ではそんにゃ催し、言い出すヤツがいないからやってなかったんにゃ~」
「だから私が言い出したのよ」
「にゃんですと??」
「まぁまぁ。とりあえず歩こっ。口の前にいたら通行の邪魔になっちゃうから」
「この口もなんなんにゃ~~~」
わしがテコでも動かないから、ミテナは後ろから抱っこして強制連行。ミテナが道を歩くと、出店をしてる学生や仮装している学生から声を掛けられているから何がなんだかわからない。
わしのことはぬいぐるみと思われているのか、ちょっと動いただけでビックリする人や二度見する人が続出。
そうしてミテナは、「猫カフェ」とかいう看板が出されているお店にわしを連れ込んだけど、思っていたのと全然違う。猫の着ぐるみの人が接客してるもん。
「んで……どういうことにゃ?」
席に着いて飲み物が来たら、わしは切り出した。
「えっと……どこから話そうか……そうそう。シラタマちゃん、私に猫大の変革を望んでいたよね?」
「まぁ……できたらいいにゃぐらいには思っていたにゃ」
「猫祭はその延長線の副産物だから待ってね。というか、私もなんでこうなってるか謎なのよね~」
ミテナから語られる猫大生活。1回生の頃は真面目に勉強していたけど、話し相手が少ないからいまいち楽しくなかったんだとか。
だから後半は裾野を広げようと、1回生は各授業に行ける特性を使って、本で読んだマインドコントロールをしまくったんだとか……
「ストーップにゃ!」
「いや、たいしたことしてないから心配しないで。シラタマちゃんの花柄を褒めさせたり、横の繋がりを作れるように、出会い系サイトを宣伝してサークルを勧めただけだから」
「わしの柄、関係なくにゃい?」
わしのツッコミは軽くいなされて、続き。どうやら猫大生は、1人で勉強ばかりする集団だから、全員コミュ症なんじゃないかとミテナは悟った。
だから技術部門から落とし、出会い系サイトのような物を作らせて、猫大のあちこちにバーコードを貼って回った。すると、同じ趣味の人がチラホラと集まって喋り始めたんだとか。
そこにミテナが近付いて「どうせならサークル作らな~い?」と唆した。その集団は野郎ばかりだったから、かなり落としやすかったそうだ……
そういう人間を裏から操って、2回生はサークルを乱立。調子に乗って作りまくったから、コミュ症だった学生も普通に話せるようになったそうだ。
「にゃるほどにゃ~……中にいないと気付かないことだにゃ」
「そそ。ちょっとシラタマちゃんのこと恨んだわよ。んで、サークルを作らせたまではよかったんだけどね~……」
「にゃんか問題あったにゃ?」
「シラタマちゃんって、猫大生のこといつも変態って言ってるじゃない? 趣味も変態だったの~」
「ありゃりゃ」
猫大生の趣味は、マニアックな物ばかり。この猫カフェで働く学生を見てわかる通り、猫を愛でるサークルではなく、猫になりたい変態揃いだとのこと。
これがまだマシなほう。人目を憚るようなマニアックな研究をしている者もいれば、アイドルオタクやアニメオタク、鉄道オタクもいるみたいだけど、アイドルオタクからは許してやってくれ。
ミテナの変態判定は厳しいのは置いておいて、これではサークル活動は大学側から潰され兼ねないから、徐々にマイルドになるように洗脳して行ったそうだ……
「まぁ……苦労したのはわかったにゃ。それでにゃんで学祭になったにゃ?」
「まだ早い……」
ここで副次的効果。猫大生が横の繋がりを持つことで、卒論を書くに当たって相談し合うようになったらしい。
「ああ~……いい卒論書けたり落第生が出なかったのは、そのおかげだったんにゃ~」
「そそ。私はシラタマちゃんとかがいるからいいけど、先輩とかは誰にも相談してなかったのよ。やっぱり、誰かに出し抜かれたくないから自分のネタを喋るのは嫌なんだろうね。でも、仲間内なら相談できたみたい」
「みっちゃんを送り込んだのは、わしのファインプレーだったんだにゃ~」
「人にやらせておいて、手柄取らないでよ」
ミテナに睨まれたので、わしはお口チャック。ようやく猫祭の話だ。
「卒論の発表があった次の日から、各企業のお偉いさんが見に来るんでしょ?」
「うんにゃ。猫大生は性格はアレにゃけど、天才揃いだからにゃ。卒論の内容を見て、使える人材を確保しに来るにゃ。言わば、スカウトの場だにゃ」
「その人たちの対応で、一部の生徒を使って出店を出すじゃない? だったら、学祭にしたら面白そうって言ったら、アレよアレよと話が進んで……」
ミテナの話はおかしい。どうしてこうなったかは謎と言っていたはずだ。
「みっちゃんが言い出しっぺにゃ~」
「確かに言ったよ? 友達に……でもでも、4回生は卒論で忙しいじゃない? それなのに後輩に準備を全てやらせるとは思ってなかったの~」
「それって、みっちゃんのマインドコントロールが残っていたから、みんにゃ忖度したのでは……」
「やっぱり? それしかないよね~……」
「卒論のタイトルってにゃんだっけ? 独裁者がどうのこうの……」
「違うの~~~。私は楽しい大学生活を送りたかっただけなの~~~」
ミテナ、猫大の独裁者になっていた模様。だから皆が忖度して、ミテナを楽しませようとこんな大掛かりな祭りを開催したのであったとさ。
「ところでにゃんだけど……お金ってどうなってるにゃ??」
ミテナが独裁者になっているのは、この際もうどうでもいい。こんな祭りがタダで出来るワケがないからそのことを聞いてみたら、ミテナはギクッと肩を揺らした。
「お金はね。猫王様を喜ばせるってテイで学長から借りて、出店の利益から返すことになってるの……」
「もうわしのこともいいにゃ。概算は出てるんにゃろ? みっちゃんは女王様をやってたんだから、それぐらいの考えはできる子にゃ」
「概算は算出してみたけど……どんだけ頑張っても2、3割の赤字? てへ」
「わしの持ち出しにゃ~~~……」
猫大の収支は、技術使用料、国からの補助金、わしの寄付金で成り立っているのに、そのバランスを崩されたらわしが出すしかない。
ミテナもそれを見込んで計画を立てていやがったので、わしは顔を両手で塞いで項垂れてる。
「学力上がったんだから、結果オーライじゃない? ヨシヨシ」
ミテナは全然反省してないし、わしの頭を撫で回すからギロッと睨んだ。
「まぁ成果はあげてるんにゃから、お金のことはわしがにゃんとかするにゃ。とりあえず学長に会って来るにゃ~」
「さすがシラタマちゃ~ん。でも、まずは遊ぼう!」
「友達と遊べにゃ~~~」
胸のつかえが下りたミテナは満面の笑顔。わしを連れ回して猫際を楽しむのであった……
猫祭の期間は3日。ちょっとでも赤字を減らそうと、猫ファミリーを召喚したから、飲食店は連日ラストには売り切れだ。なんか変な人形とかも大量に買って来ていたけど、何に使うんじゃろ?
猫ファミリーが連日遊びに来ていることは、ミテナがネットにアップしたから、連日満員御礼。これで赤字は回避されたと思ったのに、2割の赤字ってどゆこと? 何をしても赤字だったんか~い。
いちおうサークル事の活動報告みたいなのもやっていたから、シーシ学長を誘って一緒に見学。かなりマニアックな研究内容ばかりだが、第三世界のイグノーベル賞みたいでめっちゃ面白い。学長も笑って見ているから、感触は良さそうだ。
なのでわしは追加の寄付金をドーンと献上。イグノーベル賞にも何本か懸賞金を設けて、来年のやる気もアップだ。
猫祭の期間は企業人がスカウトにやって来ていたので、イグノーベル賞にも興味津々。個人の研究がパッとしなくても、サークルの発表がよければスカウトされそうだ。
ちなみにミテナは、引く手数多。過去最高のスカウト数だったけど、わしが握り潰しました。王様案件で処理したから、誰も逆らわなかったよ。
「ねえ? 私、どこからもスカウトがないんだけど、シラタマちゃんが何かしたの?」
「うんにゃ。全部、断っておいたにゃ」
「ちょっと! そういうの先に言っておいてよ! みんなに哀れな目で見られたんだからね!!」
「わしも、みっちゃんのせいで大変な目にあったからおあいこにゃ~」
ミテナには秘密にしていたのがバレてしまったので、「にゃ~にゃ~」ケンカ。しかし、学生はスカウト企業から職業訓練の内容を決めるから、わしはやりすぎたので平謝りだ。
「もう残りの期間はサボッちゃおっかな~?」
「ゴメンにゃ~。てか、職業訓練受けないと退学になっちゃうから、絶対にサボッちゃダメにゃ~」
「理事長がイジワルするんだも~ん。裁判所に訴えたら勝てるよね??」
「ゴメンって言ってるにゃ~。そんにゃことしたら、わしも損害賠償請求するからにゃ~」
「うっ……おあいこにしておいてあげるわ」
「額は全然違うからにゃ?」
謝っても通じないなら、脅すしかない。わしが何千万ネコを使ったか、耳の穴をかっぽじって聞きやがれ。
これでミテナも真面目に職業訓練に出ているのかと思ったが、覗きに行ったらたまたまだと思うけど、クラスメイトをこき使ってる。
何をしていたのかと聞いたら、上司の立場の訓練とか言ってたけど、そんな授業はないと思う。てか、なかった。
まぁミテナはハンターになるのだから、必要のない授業。楽しみを見付けてやっているなら、わしも目を瞑る。
ミテナにばかり構ってられないわしは、南半球で狩りをしたりお昼寝していたら、もう年の瀬。そろそろ猫大の卒業式だと思っていたら、前日の夜にミテナから呼び出された。
「またにゃんかやらかしたにゃ~?」
「なんでタキシード着てるの?」
「みっちゃんがドレス着るなら、正装しにゃいとわしも締まらないにゃろ」
「なんで前夜祭の情報知ってるのよ~~~」
「出資者にゃもん」
ミテナが他にも何かやらかしていないか、調べるのは当たり前。だから前夜祭の情報はシーシ学長から手に入れていたけど、まったく関係ない人が企画してたんじゃよな~?
「ところでみっちゃんにゃ。大学側には、みっちゃんがイロイロやっていたことを知ってる人がいないんにゃけど、これってどういうことにゃ?」
「さ、行こっか。エスコートしてちょうだい」
「影の独裁者だったんだにゃ……」
ミテナ、恐ろしい子。自分の名は表に出さず、学祭やらなんやらを成功させるなんて、独裁者より凄いことをやってのけてるよ。
こうしてわしは、ミテナには国の要職に就いている人を近付けさせないと心に誓ったのであった。
「にゃあ? その王冠と玉座はにゃに??」
「ミ、ミス猫大??」
「ミスコンにゃんてやってなかったにゃろ!? みんにゃ跪いてるにゃ~~~!!」
前夜祭では、ミテナが女王に返り咲いてる姿をまざまざと見せられたわしであったとさ。
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