猫王様の千年股旅

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猫歴73年~

猫歴95年その2にゃ~

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 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。まだボケていません。

 猫クラン研修のためにミテナをソウ市の秘密地下施設に連れて来たのに、訓練場にも顔を出さないで「にゃ~にゃ~」騒いでいたら、リータにボケ老人扱いされてしまった。

「だよね~? シラタマちゃん、ボケボケで行く場所忘れてたのよ~」

 いや、これはミテナのせい。遅刻のこともあったから、全てわしのせいにしようとしてやがるのだ。

「みっちゃん! 元はと言うと、みっちゃんがここを東の国に売ろうとしたから悪いんにゃろ!?」
「売る??」
「ち、違うわよ!? シラタマちゃんがくれるって言ったんでしょ!!」
「「誰がそんにゃこと言うにゃ~」」

 ミテナ、墓穴を掘る。猫の国の最重要施設をわしがタダでやるはずがないのはリータだってわかること。
 ミテナがそんなことを言うモノだから、笑顔なのになんか怖いリータに首根っこを掴まれて連行されるのであったとさ。


「え~……みっちゃんの訓練を担当するシラタマにゃ。わしの訓練は……」
「あ~あ。もうちょっとでこの施設は東の国の物になっていたのにな~」
「どのへんがちょっとなんにゃ~~~」

 始まりは大事。ミテナに邪魔されたので、テイク2だ。

「わしの訓練は死ぬほど厳しいから、覚悟してついて来るんにゃよ?」
「えぇ~。甘くしてよ~」
「みっちゃんにはビシバシ行くと決めてたんにゃ。はい! ランニングにゃ~!!」
「えぇ~……シラタマちゃんが厳しい~~~」

 今回ばかりはわしも猫になる。間違えた。鬼になる。ついさっきワガママを言われまくってわしの顔も馬鹿にされたことは関係ない。いや、ちょっとある。
 わしの開始の挨拶はいつも甘いことを言っていたから、猫クランメンバーの半分以上が聞き耳を立てていたのでヒソヒソ話が止まらない。わしのことだから、ミテナには超甘くすると思っていたみたいだ。

 もちろんわしは、有言実行。ミテナと一緒に走り、疲れたと言ったら休憩。飲み物とスイーツを与え、疲れが取れたら再開。そして疲れたら休憩とスイーツを与えると繰り返す。

「ねえ? どこが厳しいの??」
「わしの訓練にゃ~」
「どこが!? 疲れたらもっと頑張れって言うもんでしょ!?」
「「「「「甘々にゃ~」」」」」

 しかし、言葉とは裏腹に甘やかしていたみたいなので、全員からツッコまれるわしであったとさ。


 ミテナはわしのことが信じられないとか言うから、今日のところは猫クラン研修の教官はメイバイが担当するらしいので、それならばわしも自分の修行に精を出す。
 でも、座禅を組んで集中していたら、ミテナに「起きてよ~」とワシャワシャ撫でられて邪魔された。

「にゃに~? いまいいところにゃったのに~」
「何がいいところだったの?」
「鍛練に決まってるにゃろ。侍の極地に踏み込めそうだったんにゃ~」
「へ~……鼻提灯ピーピー鳴らしてたのは、鍛練だったんだ~。へ~……リータに聞いて来よっと」
「お、おでぇかん様~。ちょっと待っておくんにゃせ~~~」

 いつも皆をこれで騙していたのに、今日に限ってこの言い訳は不発。まさか寝ているのがバレるとは……
 バレてしまっては仕方がねぇ。わしは年貢を無理矢理持って行かれそうになる農民のようにミテナの足にしがみついてスリスリしたら、なんとか踏み留まってくれた。

「それで~……にゃんの御用でしょうかにゃ?」
「あのね……みんな厳しいの~~~」
「ああ~……」

 どうやらミテナがチクリに行かなかったのは、わしの訓練が受けたいから。いちおう誰にしごかれたと聞いてみたら、リータ、メイバイ、イサベレの王妃スリートップだった。

「あの3人は、手加減下手だからにゃ~。ウロ君だったら優しくしてくれると思うにゃよ?」
「そう思ってウロ君に寄って行ったら、ニナちゃんが『フシャーッ!』って」
「ああ~……彼氏取られると思ったんにゃ。美人さんになったもんにゃ~」
「エへ? 私、美人??」
「う、うんにゃ。とりあえずわしが訓練見たらいいってことかにゃ?」
「もっと気持ち込めて言ってよ~~~」

 ミテナがクネクネポージングしてたけど、わしは立ち上がって走り出したのであったとさ。


 それからのミテナは、冗談でも疲れたと言うとわしが休憩すると思ったのか、限界まで走っては止まると繰り返す。わしは止まったらタオルで汗を拭い、水を飲ませ、休憩を勧めたら睨まれる。いまは休むべきでは……
 そして夜になるとミテナの歓迎会。猫クランだけじゃなく猫ファミリーもいるから、「いつもの夕食では?」とか言われてしまった。

 その翌日は、筋肉痛のミテナも連れて南半球の狩り場へ転移。猫クランはみんな狩りに向かったので、わしはミテナを背負って最後尾を走っていた。

「ねえ? もう実践訓練するの??」
「いんにゃ。今日は狩りの日だったからにゃ。みっちゃんには見学してもらおうと思って連れて来たにゃ」
「そんなのいいのに~。たまにシラタマちゃんの狩り見てたし」
「あ、そうだったにゃ。獣の殺害現場にゃんて、けっこう見てたにゃ。それじゃあ自分で殺しても、心に負担は少ないかもにゃ~」
「たぶんね。罪人の命を何百と背負って来たから大丈夫だと思うよ」

 ミテナにはここ最近の猫クラン研修では新人がトラウマにならないように、心のケアをしていることを教えてあげる。
 ただ、学校のハンター育成コースでも同じことをしていたらしいので、パクリ扱いされてしまった。わしがカリキュラムに入れたのに、信じられないんだって。

 そうこう無駄話をしていたら、猫クランが話し合っていたのでわしも参加したけど、みんな散り散りに動き出した。

「プププ。シラタマちゃんがリーダーじゃなかったの~?」
「いまは教育係だからいいんにゃ。それよりアレ、どう思うにゃ?」
「プッ……話逸らした。うわっ……え? あわわわわわわ」

 ミテナ、笑っていたクセに猫クランの戦闘を見て二度恐怖。人間を裁けても、大量の巨大な獣とそれを笑って殺す猫クランの姿は怖いみたいだ。

「どっちが怖いにゃ?」
「猫クラン……」
「だろうにゃ。わしも怖いにゃ~」
「シラタマちゃんが作ったんだよね?」

 確かに猫クランの創立者はわしだけど、こんなことになると思ってなかったの。子供や孫が増えるのは想定していたけど、アンクルチームの笑みが移るとはこれっぽっちも思ってなかったのだ。

「ま、これが、わしのクランに入るってことにゃ。やって行く自信がないにゃら、早いとこ諦めたほうがいいにゃ」
「ちょっと驚いただけでしょ。覚悟は決まってるわ」
「にゃはは。さすがは元女王様にゃ。いい顔するにゃ~」
「シラタマちゃんは、そのとぼけた顔は直したほうがいいわよ? プッ」
「いま、不治の病とか思ったにゃろ?」
「アハハハハハ」

 せっかく褒めてあげたのに、ミテナはネコ様の顔を指差して笑うので、褒めて損したと思うわしであったとさ。


 猫クランの恐怖映像はなんとか耐えられそうなので、わしは個々の戦い方を説明しながら皆の跡を追う。ミテナは真面目に聞いていたが、皆の動きが速すぎていまいちついていけなかったそうだ。
 しかし、そんなモノ、訓練すればいいだけ。翌日からミテナは気合いを入れて訓練していたけど、基礎訓練ばかりだからいつもブーブー言ってた。

 その都度わしは「強くなってる強くなってる」と宥めるが、こんな言い方だと信じられないんだとか。でも、風魔法を使わせたら一発だ。

「うそ……いつもの倍は大きかった……」
「だから言ってるにゃろ。魔力濃度の高い場所で訓練したら、外のにゃん倍も早く強くなれるってにゃ。魔力もちょびっとしか減ってないはずにゃ」
「うん……凄い効果……ますます猫の国が独占していることが許せない……」
「だから兵士には推奨してないにゃろ~」

 ミテナが怒りの表情で見て来るので、わしは「そろそろ戦闘訓練やろうか」と言ってみたら嬉しそうに飛び跳ねた。相変わらずチョロイのう……

「みっちゃんはどんにゃスタイルで戦いたいにゃ?」
「そうね~……やっぱり魔法で戦うスタイルね」
「うんにゃ。今まで魔法の勉強頑張ってたもんにゃ。後衛の訓練して行こうにゃ」
「ん? 誰が後衛専門って言ったのよ??」
「にゃ~??」

 わしが首を傾げると、ミテナはビシッと指を差す。

「魔法職で前衛よ!」
「わしみたいにってことにゃ?」
「シラタマちゃんは……猫じゃない? 私が言いたいのは、こういうこと!」
「にゃ~~??」

 わしの戦闘スタイルは猫と言われたからますます首を傾げていたら、ミテナは手に魔力を集めて光の剣を作り出した。

「おお~」
「どうどう? 凄くない? 昔シラタマちゃんが作って東の国にくれた魔道具を自力で再現したのよ??」
「うんにゃ。上手いことできてるにゃ~」

 ミテナがわしの光魔法【光一閃】を独学でパクッたのはシンプルに拍手だ。

「でっしょ~? これでズバッと敵を斬り裂くの。カッコイイと思わな~い??」
「う~ん……まぁ……」
「何その反応? シラタマちゃんだって自慢げにやってたじゃない?」
「そ、そんにゃことしてないにゃ~」

 確かにあの当時は重宝していた魔法で、確かにちょっとカッコイイとも思っていたけど、いまはあまり多用していないからミテナの言葉に反論だ。
 ミテナには光の剣を維持してもらい、わしは黒魔鉱製の刀を装備。見えやすいようにゆっくり振ったら、光の剣は真っ二つだ。

「へ? アレ??」
「というように、黒魔鉱の剣のほうが強度は強いんにゃ」
「うっそだ~。シラタマちゃん、これで白い獣もバッサリいってたじゃな~い」
「そりゃ魔力を込めたら強度は上がるにゃよ? みっちゃんの魔力量じゃ足りないだけにゃ。そんにゃ無駄な魔力を使うよりは、剣を持ったほうが効率的って話にゃ」
「えぇ~……その剣が強いだけじゃないの~?」

 ミテナはなかなか信じてくれないので刀の説明。この黒魔鉱製の刀は日ノ本の刀鍛冶の匠に依頼してカッコよく作ってもらっただけなので、実用性に欠ける。
 そもそも【光一閃】を使っていた頃は、黒魔鉱や白魔鉱が簡単に手に入れられなかったから、現在、供給先が確保されているわしならもっと強い武器が作れるようになってしまったから過去の遺物になったのだ。

「そういえば猫の国って、白魔鉱の輸出量が安定していたわね……チェクチ市の白魔鉱は枯渇したって言ってたのに……また私に隠し事してたの!?」
「いちいち女王様に戻るにゃよ~」

 猫クランに所属してたった数週間で、猫の国の秘密が出るわ出るわ。東の国ファーストのミテナはその都度、女王の顔になるので訓練に集中できないのであったとさ。
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