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猫歴15年~49年
猫歴23年その2にゃ~
しおりを挟む我が輩は猫である。名前はシラタマだ。王様には見えないし、貴族にも見えない。
東の国のお城で行われた戴冠式は、1日では終わらずに2日目に突入。昨夜は遅くなったので、お昼からの開始だ。
今日の予定は、国民に新女王のお披露目。さっちゃんとイケメン旦那のクリストフが乗ったオープンカーが王都中をノロノロ走り回るらしい。
先代女王や王族もオープンカーに乗って後ろからついて行くらしいので、わしたちはカメラマンをやらされている。それも、徒歩だ……
「にゃんだかにゃ~……」
「まぁいいじゃないですか。サンドリーヌ女王様の勇姿を一番前で見られますし」
「そうニャー。ずっと特等席ニャー」
「それはいいんにゃけど、わしに手を振る人も多くにゃい?」
「「確かに邪魔かも……」」
そう。初日は貴族ばかりだったから、わしを撫でたい人も式典中にそんなことをしたら無礼にあたるから我慢できていたのだが、民衆は別。さっちゃんが通る前に民衆がわしに押し寄せるから、警備が大変そうだ。
なので、ぬいぐるみ作戦。リータの腕の中でわしはカメラを回し、メイバイと共にさっちゃんたちを撮る。たまに前後に分かれたり、わしが屋根の上から撮ったり。
トイレ休憩を挟み、「まだ撮るのか……」とさすがに飽きて来たので、わしはペトロニーヌの乗るオープンカーに飛び乗って交渉。
その結果、充分撮れ高があるからあとはお城前だけでよくなったので、3人で戦線離脱。からのお祭りに繰り出して買い食い。ちょっとだけお祭り気分を楽しんだら、お城の正門に早めに陣取ってその時を待つ。
「さっちゃ~ん! おめでとうにゃ~!!」
「「おめでとうございま~す!」」
ラストは超特等席からの撮影なので、わしたちは笑顔で出迎え、さっちゃんも笑顔で手を振ってくれたのであった……
戴冠式2日目は、夜になったら花火大会。いい加減、わしの顔の花火はやめてくれ。誰の式典なんじゃ……
今日は立食パティーだけだったのだが、今回は各国の要人も参加しているので、またわしたちはカメラマンとして忍び込んでいる。さっちゃんの前もお祝いの長蛇の列ができているので、話し掛けられずに2日目も終わった。
そして翌日は戴冠式最終日。といっても、他国の要人と1対1で対話するだけらしいので、わしは帰ろうとしたけどペトロニーヌに捕まった。
「あなた、猫の国の国王でしょ?」
「カメラマンにゃ~」
「まだサティとちゃんと話をしてないでしょ! 祝言ぐらいして行きなさい!!」
「ホンマにゃ!?」
わし、うっかりミス。てか、この2日間カメラマンをやらされていたから完全に忘れていた。これは、ペトロニーヌのせいでもあるが、怒っているみたいだから口にはしない。
そうして順番待ちの部屋にわしは放り込まれ、数人見たことがある人がいると思ったら、他国の王様。わしの元へ寄って来て、ゴマすり。新しい技術があったら融通してほしいそうだ。
そんなことを言われても、国政はセンジ首相に丸投げしたので口出ししたくない。やんわりと権力がないと断っていたら、皆も首相や議員制に食い付いた。楽ができると思ったのかも?
ちょっと面白いことになりそうなので、民主主義や議員制、選挙についても講義していたら、わしの周りに各国の要人が全て集まっていた。
そこを割って入る強者は、さっちゃんの王配クリストフ。誰かを呼びに来たみたいだけど、わしの順番が来たらしい。聞いてた順番と違う気がするんじゃけど……
クリストフは静かにするようなジェスチャーをしながらわしを連れて歩き、さっちゃんの待つ部屋に押し込んで、さっちゃんに耳打ちしたら去って行った。
「さっちゃん、おめでとうにゃ~」
「ええ。そこに座ってくれる? あなたたちも外してちょうだい」
わしが声を掛けても、さっちゃんは凛々しい表情を崩さずソファーを指差し、侍女とメイドウサギを部屋から追い払った。
「疲れた~~~」
2人が外に出た瞬間、さっちゃんはぐで~ん。テーブルに突っ伏して顔もだらしなくなった。
「にゃはは。お疲れ様にゃ~」
「もう、女王の顔を維持するのも大変よ~」
「大変なのはわかるけど、わしにもさっちゃんの凛々しい顔を見せてにゃ~」
「ムリ。その顔見たらムリムリ。完全に気が抜けたわ」
「わしのせいにするにゃよ~」
さっちゃんの素はこれなんだから、わしのとぼけた顔のせいではないはずだ。大親友の顔を見たせいってことにしておこう。
「ところでさっき旦那さんは、さっちゃんににゃにを吹き込んでたにゃ?」
「ああ。シラタマちゃんが控室で大人気だったから、順番を先にして早く追い出そうって言われたの」
「わし、さっちゃんを祝いに来たんにゃけど……」
「その主役が取って代わられそうだと思ったみたい。パレードでも人気あったらしいし……」
「だからわしのせいにするにゃ~」
さっちゃんの愚痴が始まってしまったが、たぶんそんなに時間はないはずなので、カットイン。
「てか、こういう場合、にゃにを話し合うにゃ?」
「だいたい用意した長ったるい祝辞を述べるか、お互いの揉めてること、もしくは協力を求めたり求められたりね」
「祝いの言葉にゃんだから、長ったるいは酷くにゃい?」
「だいたい一緒なんだも~ん。お母様もこれだけは辛かったって言ってたも~ん」
「まぁわしもそんにゃの聞いてられにゃいか。じゃあ、制限時間まで愚痴に付き合ってやるにゃ~」
「それもありがたいけど……」
さっちゃんを助けてやろうと思ったが、どうやら話したいことがあったみたいだ。
「第三世界で手に入れた絵画や楽譜とかって、東の国に回してくれない?」
「にゃんで~?」
「だって、芸術面はぜんぜん手を付けていないでしょ? 東の国のほうがアーティストの人口が多いから、手伝ってあげると言ってるのよ」
「それはありがたいにゃ~……ちにゃみに取り分はどうなってるにゃ?」
「それは……ゴニョゴニョ……」
「やっぱり手伝うとか言ってうちの利権を奪うつもりにゃろ!?」
「だって~。あんなに新技術があるんだから、ちょっとぐらい、いいじゃな~い。シラタマちゃんだけズルイ~~~」
「揺らすにゃ~~~!!」
さっちゃんが女王からさっちゃんに戻っては仕方がない。わしが折れてあげる。
「芸術関連は、出た利益の2%を払ってくれたら全て譲ってあげるにゃ。あ、日本語の物は日ノ本に譲るけど、それは了承してくれにゃ」
「それはかまわないけど、そんなに安くていいの??」
「まぁ女王就任のお祝いってことでにゃ。東の国を芸術大国にしてやれにゃ~」
「やった! さすがシラタマちゃん! だ~い好き~。チュチュチュ」
「チュ~するにゃ~」
さっちゃんがわしをオモチャにしたところで、ちょうどタイムリミット。クリストフが部屋に入って来て、わしとさっちゃんの浮気現場を見られてしまった……
「違うからにゃ!? そんにゃ関係じゃないからにゃ!?」
「そうよ! ペットにキスぐらいするでしょ!?」
「誰がペットにゃ~~~!!」
さっちゃんは女王になってもわしをペットにしようとしてやがったので、「にゃ~にゃ~」ケンカ。その大人気ないケンカのおかげで浮気疑惑は払拭されたけど、わしはクリストフに首根っこを掴まれて、窓から投げ捨てられたのであった。
次が差し迫っているとか言ってたけど、扱い酷くない?
やや納得がいかないことがあったけど、3回転して着地。リータたちと合流しようとお花の綺麗な庭園をトコトコと歩いていたら、わしの通信魔道具に緊急連絡が入ったのでダッシュ。
ペトロニーヌに帰る旨を伝え、リータたちと合流したら、慌ててソウの地下空洞に転移した。
「オニヒメ!?」
「「オニヒメちゃん!?」」
緊急連絡とはオニヒメの出産だったのだが……
「にゃにこれ……どうなってるにゃ……」
別宅の寝室ではワンヂェンたちに見守られ、髪の毛が真っ黒になったオニヒメが、いまにも事切れそうなぐらい弱っていたのであった。
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