67 / 192
猫歴15年~49年
猫歴40年その3にゃ~
しおりを挟む我が輩は猫である。名前はシラタマだ。けっこう賢いんじゃよ?
世界金融会議はホウジツの説明の元、淡々と進んでいるのだが、各国の王は話についていけないのかずっとわしを見ている。ノートパソコンが気になるのかな?
わしもホウジツの指示通りパソコンを使ってプロジェクターに映像を映していたらお昼の時間になったので、ランチタイム。出席者のほとんどは、大きなため息を吐いて出て行った。
わしたちは、主催者控え室で豪華なランチ。さっちゃんも元気がなかったので、何事かと聞いてみたら……
「シラタマちゃんに負けた……」
「にゃ? にゃんのこと??」
「なんでそんなアホそうな顔なのに賢いのよ~~~」
「アホそうにゃ顔はいらなくにゃい?」
どうやらみんな元気がなかったのは、わしがこんなとぼけた顔なのに賢すぎたから。だから夢でも見ているのかと、王様たちはずっとわしの顔を見ていたのだ。
「それでホウジツの説明でわかったにゃ?」
「いいとこ半分ぐらい……」
「さっちゃんがそれじゃあ、他はそれ以下だにゃ~……ちょっと急ぎすぎたかにゃ?」
「だね……これじゃあ誰もついて来れないよ。もうちょっとわかりやすくできないの?」
「う~ん……午後からはわしがやってみるにゃ~」
「それはそれでダメージが酷いんだけど……」
「顔は一旦忘れてくれにゃ~」
さっちゃんはどうしてもわしのとぼけた顔に引っ掛かるみたいだけど、ホウジツにやらせても難しいことを言うだけなので、会議を成立させるためにわしは立ち上がるのであった。
「まぁ午前は小難しいこと言ったけど、わしの提案はこういうことにゃ」
午後はホウジツにパソコンをイジらせて、わしがプレゼン。
「金貨や銀貨をやめて、紙で代用することにゃ。これはわかるにゃろ?」
わしのプレゼンは超簡単なので、出席者は大きく頷いてくれた。
「デザインはこんにゃ感じで、偽札を作れないように……にゃ? それ、間違ってにゃい? デザインのフォルダの1番にゃ」
「1番ですけど……ちょっと待ってください」
大画面に映し出されたのは、わしの顔のネコ札。開発部はこんな短期間ではいいデザインが作れないと言っていたから、ポンド紙幣や硬貨を図書館の本からスキャンしたはずなのに、ホウジツが探してもどこにも入っていなかった……
「えっと……リータさんたちですにゃ??」
なので、王妃として同行していたリータとメイバイに質問してみたら笑顔で頭の上に丸を作っていたから、してやられた。
あとで話を聞いたところ、世界通貨をわしの顔にしたいからって、ギョクロとナツに協力してもらって仕込んでおいたらしい……わしの時は手伝ってくれなかったのに、なんでじゃ!?
「ま、まぁ、これはあくまでも仮のデザインだからにゃ? 偽札を簡単に作れないように、凝ったデザインとか透かしとか、イロイロしないといけないってことだけわかってくれたらいいからにゃ? ネコ札のことは忘れてくれにゃ~」
リータたちのせいで、わしの心証がめちゃくちゃ悪くなりかけたので言い訳したら、出席者もなんとか睨むのはやめてくれた。リータとメイバイは殺気放ってるけど……
「え~……にゃんだったかにゃ? あ、そうそう。この貨幣から紙幣に変えるにあたって、個別の国でやるか、地域、もしくは世界で統一するかってのが、この会議の最大の議題なんにゃ」
わしが議題を提出すると、各国はザワザワとし出したので、ちょっとだけ補足するために静かにしてもらった。
「個別でやるメリットは、自国でいくらでもお金を作れることだにゃ。デメリットは、バカにゃヤツがトップに立ったらハイパーインフレってのが起こって、国が破綻するってことにゃ。あと、各国で使う通貨に価値が生まれて、信用度によって価値が上下するから、輸入とかする時に高くなったり安くなったりするにゃ」
「為替ですね! このホウジツに説明を任せてください!!」
「お前は為替相場をやりたかったんだにゃ!? 黙ってろにゃ!!」
いきなりテンションの上がったホウジツを一喝して、わしは続きの説明。
「統一するメリットは、輸入とかが楽になるってことだにゃ。いま、東の国周辺でやってるから、そのままってことにゃ。デメリットは、他国が勝手にお金を大量に刷って、ハイパーインフレに巻き込まれる可能性があるにゃ。
不景気にゃんかも巻き込まれるだろうにゃ。それを阻止するためには、国の資産を全てオープンにして皆で見張らなくちゃいけないにゃ。たぶん、それが1番のネックになるだろうにゃ~」
資産公開している国なんて、議会制を取っている国のみ。それも極々一部だし、国民には伝えていない国もあるので、思った通り各国の出席者は唸りまくってる。
「ま、思うことはあるだろうにゃ~。うちはフルオープンにゃから、資料の後半に載ってるから参考にしてくれにゃ。とりあえず1時間の休憩を入れるから、そのあとに質疑応答するにゃ。一旦解散にゃ~」
わしが解散と言っても、各国の出席者は誰もその場から動かず話し合っている。その場でいいのならと、給仕に飲み物を配るように指示を出したら、わしたちは控え室に下がるのであった。
「東の国はどうするにゃ?」
控え室では、さっちゃんがわしをヒザの上に乗せてずっとわしゃわしゃしているので、質問を投げかけてみた。
「最初は今まで通り、紙幣の管理は3ヶ国でって考えてたんだけどね~……紙ならではの問題があんなに多くあると知って、考え中」
「あんにゃの序の口にゃ。時代が進むと、もっと複雑になっていくんにゃよ」
「まだあるの~? 考えるの大変なの~」
「わしゃわしゃしてるだけじゃにゃいの?」
考えるならわしで遊んでほしくないけど、さっちゃんは手放してくれないのでそのままお昼寝。気付いたら会場に戻っていたので、質疑応答を開始する。
「えっと……どこからわからないにゃ??」
しかし、何を質問をしていいかもわからない事態。なんだか同じことばかり質問されるので、時間の無駄なような気がする。
そんな中、西にある小国のテレンス王子ってヤツが、まったく関係ない質問をしやがった。
「シラタマ王は、頭が悪そうに見えるのに、どうしてそんなに賢いのですか?」
失礼なヤツだなとイラッと来たけど、出席者は「そうだそうだ!」と八つ当たりみたいな騒ぎになったので、怒鳴って黙らせた。誰がアホ面なんじゃ!
「え~。さっきの質問の答えにゃんだけど、うちは教育に力を入れているからにゃ。小中高と12年間、希望者にはプラス4年、歳に見合った教育をしているから、高校の卒業生にゃら今日説明したこともわかってくれると思うにゃ。まぁ卒業生はまだ少ないけどにゃ」
出席者は一気に血の気が引いた。これはわしに怒られたからではなく、猫の国が天才を量産していることに世界中が気付いたからだ。
「あの、その……私もそこに行くことは可能でしょうか……」
「可能にゃけど、外国人は無償にできないから高いにゃよ?」
「無償!? 猫の国はそんな高度な教育をタダでやってるのですか!?」
「卒業生は国力を上げてくれるんにゃから、安いもんにゃ~。だからこそ、これほどの経済力の差が生まれたんにゃ。いいにゃろ~?」
「か、勝てない……」
わしが笑顔を向けたら、テレンス王子はドサッと腰を落として俯いた。その他の出席者は驚きすぎて、天を仰いじゃったよ。
「そうだにゃ~……レベルが違いすぎて議論にもならにゃいし、まずは経済の教育からやろうかにゃ? 各国から2人、留学生を送れにゃ。猫の国の教育を受けたいって人もいるだろうから、2、3人から受け入れて行こうかにゃ~? もちろんタダではないからにゃ? 割増価格でも来たいって人は受け付けるにゃ~」
ここまで話ができないのでは、一歩後退するしかない。担当者だけでも教育してわかってもらえないと、先に進まないだろう。
わしが留学生を受け付けると言ったら出席者は群がりそうになったので、用紙を配るから座っているように促すのであった……
小休憩を挟み、わしはもう一度壇上に現れると、もうひとつの議題を話し合う。
「各国に打診した通り、金貨が猫の国に集まりすぎてるんだよにゃ~……かといって、正統に稼いだモノにゃから返すなんてことはできないんにゃ。わし、間違ったこと言ってないよにゃ??」
そう。儲かりすぎ問題だ。わしが確認を取ると唸っている人ばかりだから、タダで取り返したいんじゃろうな~。
「本当はみんにゃで話し合って、早期に紙幣に移れたら解決できたんにゃけど、いまのままではにゃん年かかるかわからないにゃ。そうにゃったら、小国から破綻して行くのは目に見えてるにゃ。だから、金貨がなくて困っている国には、猫の国から融資という形で金貨を送るにゃ~」
わしの案に、小国の王は目を輝かせたけど「お高いんでしょ~?」と、ガッカリしたような顔に変わった。
「普通は利子を取るんにゃけど、うちが混乱を招いたのは事実にゃから、無利子、返済は3年後からの分割払いで融資するにゃ。これにゃら、紙幣に代わるまでにゃんとかなるにゃろ? もしもそれでも足りない場合は、利子有りの融資プランも用意する予定にゃ~」
利子無しと聞いて、小国は息を吹き返した。
「でも、返さなかったら、どうなるかわからないにゃよ?」
「「「「「あぁ~~~……」」」」」
「くれぐれも、返せる額にしとけにゃ~」
でも、返せなかった場合を考えて、意気消沈。猫の国にケンカを売ることになるし、元本どころか全て奪い取られる未来が見えてしまったのだろう。
こう見えて、猫の国の軍事力は世界最強じゃもん。わし、1人で……
「さってと……こんにゃもんかにゃ?」
世界金融会議は、ほとんど先送りになってしまって留学生と融資の話ばかりになってしまったけど、取り急ぎの要件は決まったので、あとは個別でやり合うことに。質問も来ないみたいなので、わしは締めに入る。
「では……にゃに?」
しかしその時、さっちゃんにマイクを奪い取られてしまった。
「次回開催は追って伝える。本日の議題はこれで終了だ。それでは、第1回『世界金融会議』を閉幕する」
「いいところだけ持って行くにゃよ~~~」
こうして世界金融会議は、さっちゃんの開始の挨拶と終わりの挨拶で、拍手のなか幕を閉じたのであった……
世界金融会議が終わると各国の者は去って行き、まだ喋りたい人のためにわしは2日ほど残ってから、ヘトヘトになって帰宅。
子供たちに癒されようと居間に入ったら、何故か全員半笑いでわしのことを見ている。
「にゃに? わしの顔ににゃんか付いてるにゃ??」
「「「「「いや~……パパって賢かったんだにゃ~」」」」」
「みんにゃの勉強見てたんにゃから、知ってるにゃろ?」
「「「「「そういうことじゃないにゃ~。にゃはははは」」」」」
「にゃんで笑ってるにゃ??」
子供たちの笑いが意味不明なので、お留守番していたエミリに聞いてみたところ、世界金融会議の模様は、ニュース番組でけっこうな尺を取って流してたんだって。
タイトルは「猫王様、各国の王を知能で圧倒」ってなっていたけど、わしの顔から出て来ない賢い言葉がつらつらと出て来たから、子供たちのツボに入って大爆笑になったらしい……
「猫王様~!」
「「「「「あはははは」」」」」
「にゃんで笑ってるにゃ!?」
そのせいで、わしが猫市を歩いていたら子供たちにめっちゃ笑われる事態に。記録係にと、テレビクルーを同行させたことを死ぬほど後悔したわしであったとさ。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる