猫王様の千年股旅

ma-no

文字の大きさ
88 / 192
猫歴50年~72年

猫歴56年その1にゃ~

しおりを挟む

 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。安眠グッズではない。

「「「「「ズルイにゃ~」」」」」

 何もズルくない。苦情ならリータに言ってくれ。

 ネコチューブに動画をあげたのはリータなのに、お昼寝を無断アップロードされたわしが子供たちから非難轟々。
 いちおうリータに何故そんなことをしたのかと聞いたら、何をアップロードしたらいいかわからなかったので、「みんな王様の日常が見たいのでは?」と思ってこんなことをしでかしたらしい。

 なのでその日から、子供たちがわしを隠し撮りするのでいい加減にしてくれ。

「トイレ中はやめてにゃ~~~!!」

 落ち落ちトイレにも行けなくなったので、黒モフ組に頼んでわしもBAN対象にしてもらうのであったとさ。


 そんなこともあったので、ネコチューブは王様みずから規制。生き物の殺害動画、イジメ動画、暴力的な動画、性的な動画、フェイク動画、王族の動画、映画などの無断アップロードなんかは規制対象。
 ちょっと規制を先取りしまくっているが、早くやっておいたほうが無難だろう。でも、わしのお昼寝動画消去はネコチューブに恐ろしいほどの苦情が来たらしく、規制対象から外されてしまいました。どこがいいんじゃろう?

 そのせいで、王族の規制は撤廃しろとうるさい子供たち。ストライキまでし出したので、わしを隠し撮りしないことを条件に、動画配信は許可するのであった。


 猫歴55年はそんな感じで平和な年で、子供たちの視聴回数がぜんぜん伸びないなか月日は流れて猫歴56年となった。
 今年はなんと、わしの孫娘が猫パーティに羽ばたいて来た。

「「「「「アリスちゃん、猫パーティにようこそにゃ~」」」」」
「皆さん、よろしくお願いします!」

 オニタ加入から、歓迎会は必須要項。ソウの地下空間で猫パーティは笑顔で出迎えた。
 このさっちゃんの面影が少しある金髪猫耳女性アリスは、サクラとエティエンヌの第一子。東の国の王子様、エティエンヌの教育の賜物たまものか礼儀正しく育ったいい子ちゃんだ。
 大学に入学して喜んでいたのに、卒業後は猫パーティを進路にしたので少しわしは残念だ。

 しかし来てしまったモノは仕方がない。歓迎会の次の日から、わしの研修が始まる。

「やっぱり、あの考古学者のセクハラが酷かったにゃ? 追放するから、後釜に入らにゃ~い??」
「もう! 先生は優しくていい先生です! ここまで来てゴネないでくださ~~~い!!」

 でも、孫娘にこんな危険な仕事をしてほしくない。わしより考古学者のジジイがアリスと仲良く喋っていたことは関係ない。やっぱある……

「まぁ訓練の結果しだいでは、連れて行けないこともあるからにゃ」
「まだ言ってる……頑張るから大丈夫です!」
「んじゃ、わしの教えは甘いから、頑張るんにゃよ~?」
「はい! ……甘いんですか??」

 こうして久し振りの猫パーティ研修は、首を傾げるアリスの質問を無視して、いつも通りゆる~っくランニングから始まったのであった。


「アリスはどうにゃ~?」
「見ての通りにゃ」

 猫パーティ研修初日は、お母さんのサクラが心配してわしの下へやって来たので、走っているアリスを指差した。

「にゃにあの走り方……」

 アリスの走り方は、女の子走りがさらに酷くなった感じ。一緒に走っててちょっと気持ち悪くなったから、わしは離れてどこが悪いか探していたけど、いいところがないので悪いところも見付からないよ。

「ちにゃみに体育の成績って、いつもどれぐらいだったにゃ?」
「えっと……悪かったと記憶してますにゃ」
「だからにゃ~~~」

 サクラが敬語になるぐらい酷いなら、わしも皆まで聞かない。その渦中のアリスは、コースを一周走っただけでヘロヘロになって、わしたちの前に辿り着けずに倒れた。

「えっと……にゃにしてるにゃ?」
「ゼェーゼェー……し、死にます……ゼェーゼェー」
「どんだけ運動して来なかったんにゃ~」

 ここまで運動オンチな生徒、猫パーティ初。わしの訓練は甘々とか言われていたけど、それすらついて来れないのでは、どうしていいかわからなくなるのであった。

 ひとまずアリスは縁側に運んで、風魔法で冷やしつつ水を飲ませる。

「大丈夫にゃ?」
「はい……いえ、足つった! お腹つった! エ~~~ン!!」
「ちょ、動くにゃ~」

 運動不足がたたって、アリスは連鎖り。それで疲れ果てて、完全に動かなくなってしまった。

「立てるにゃ?」
「攣りそうで怖いです……」
「今日はここまでにゃ~」

 ダメだこりゃ。アリスの猫パーティ研修は、甘々と名高いわしの訓練初日すら乗り切れないのであったとさ。


 アリスをマッサージしまくって疲れを取った翌日、わしは説得していた。

「やっぱり無理じゃにゃい?」
「大丈夫です! 今日はこの筋肉痛さえなければ動けますから!!」
「無理って言ってるように聞こえるんにゃけど……」
「なんとかしておじい様~~~」
「にゃんとかと言われても……仕方ないにゃ~」

 わしは孫にも甘いので、特別メニュー。特にこの「おじい様」ってワード、ニヒルなわしにピッタリだもん。
 今日のところはランニングはやめて、急遽魔法で作ったプールでのウォーキングから初めてみた。

「ゆっくりでいいにゃよ~? 太もも上げて、いちにゃ1、2~。いちにゃ~。いちにゃ~」
「いちにゃ~。いちにゃ~。いちにゃ~……」
「腕も振ってみようにゃ~。はい、いちにゃ~」
「いちにゃ~。いちにゃ~。いちにゃ~……」

 ここまで来ると老人介護にしか見えないので、他で訓練していた皆が集まって来て半笑いだ。わしはシッシッて追い払ったが、リータだけ残って微笑ましく見ている。

「なんだか懐かしいことしてますね~」
「にゃ? あぁ~……リータと初めて仕事した時のことかにゃ??」
「あの時は、ホント、すみませんでした」
「アリスを見ながら謝るのはやめてあげてにゃ~」

 リータも出会った頃は運動オンチだったので、アリスのことは他人事と思えず謝っちゃった。外から見たら、こんなに酷かったのかとヘコンでいるな。

「まぁリータでも普通に走れるようになったんにゃから、時間を掛ければなんとかなるにゃろ」
「はい……私にも手伝わせてください……」
「暗いにゃ~。リータのほうがスタミナある分、遙かにマシだったにゃ~」

 過去がフラッシュバックするリータを励ましていたら、アリスが消えていたので慌てて救出。腰ぐらいしかないのに溺れるなよ……
 スタミナもかなり減ったように見えるので、次は魔法の授業に移行する。

「魔法はどうにゃの?」
「得意ですよ。風魔法は、空気の元素を……」

 ちょっと質問したら、アリスはペラペラ喋っているけど長すぎる。

「んじゃ、使ってくれにゃ」
「えっと……使う??」
「筆記が得意だったんだにゃ……」
「はい。満点でした。てへ」

 アリスがかわいく笑っても、わしは天を仰いで頭が痛い。徹底的なデスクワークに育っていたんだもん。

「ふたつだけ。まずはふたつだけ魔法を覚えてくれにゃ」
「はいは~い」
「はぁ~……」

 「はいは1回だけ」と言う気力のないわしは、風魔法と吸収魔法をアリスに教え込むのであった。


 それからというもの、アリスの訓練の激化はまだまだ先。プールウォーキングをして、次の日は普通のウォーキング。リータと一緒に軍隊式行進をさせて、わしがダメ出しする毎日。
 休憩兼、魔法の訓練は、地頭がいいのでわりと早くにマスター。しかし魔力量が少ないので、風魔法と吸収魔法のエンドレスだ。

 やっとランニングができるぐらい体力がついたら筋トレもプラス。上半身を鍛えた次の日は下半身という科学的なトレーニングで、毎日筋肉をいじめ抜く。
 なかなかハードトレーニングになって来たが、アリスはブーブー文句を言うことはあるけど必ずメニューをこなすので、本当に猫パーティに加入したかったみたいだ。

「今日はここまでにゃ~」
「あぁ~……疲れました。でも、そろそろ戦闘訓練ですよね?」
「それはまだまだにゃ~」
「えぇ~! どれだけ走ればいいのですか~~~」
「いま、やっと、常人並みなんにゃ……」
「私が悪う御座いました……」

 猫パーティ入りは、常人では不可能。これまでの勉強一筋が重く伸し掛かるアリスであった。


 月日が流れ、アリスが真面目に訓練に励むなか、サクラが心配そうに近付いて来た。

「アリス、猫パーティに入れそうにゃ?」
「ま、時間は掛かったけど、にゃんとかなりそうにゃ」
「アレでにゃ??」

 アリスは相変わらず走るのが遅いから、サクラに諦めが見える。

「最近は重力魔道具を使い出したから遅いだけにゃ。それに、アリスの魔法はなかなかいいんにゃよ」
「そうにゃの? よかったにゃ~」

 サクラは自分の訓練で忙しかったからか、毎日見てないから知らなかったようなので、魔法の訓練の時間になったらアリス得意の風魔法を見せてあげた。

「本当にゃ~。パパの【鎌鼬】にゃ~」
「いや、アレはハンターが使う【風の刃】にゃ」
「にゃ? 威力は高いし無詠唱だったじゃにゃい??」
「昔教えたにゃろ? 魔法は属性を深く知ることで威力が上がるってにゃ。アリスの場合、その部分が突出してるから、相応の威力を出せるんにゃ~」
「にゃ! アリスは魔法の天才だったんにゃ!?」
「う~ん……どちらかというと、座学の天才かにゃ~??」

 興奮しているサクラには悪いけど、【風の刃】を覚えるのは時間が掛かったので、天才とは言い難い。そう説明したら、サクラも残念そうな顔になった。

「それじゃあ、一緒に仕事するのはまだまだ先になるんにゃ~。後衛だったら早く行けると思ったのににゃ~」

 魔法の天才なら、ある程度の体力があればついて来るのは許可が出るかもと、サクラは期待したからだ。

「そうだにゃ~。魔法の天才だったらにゃ~……いや、いけるかもにゃ……」
「いけるにゃ??」
「うんにゃ! 凡人を天才にできるかもしれないにゃ!!」
「にゃ~~~??」

 今度はわしが大興奮。アリスを呼び寄せて一冊の本を手渡し、先生を紹介する。

「ノルンちゃんだよ~~~!!」
「「はい??」」

 でも、ノルンがブンブン飛び回るので、鬱陶うっとうしそうにしてるな。

「おじい様。どうしてノルンちゃん??」
「その本を開いてみろにゃ」
「本? あ、魔法陣です……綺麗……」
「それは時の賢者が残した本の写しにゃ。わしには必要が無かったし、読み取るのも難しいから、みんにゃもサジ投げてにゃ~。アリスが綺麗と感じるにゃら、相性がいいかもにゃ」
「はい……やってみたいかも……」

 アリスが本を開いて熟視するなか、飛び回っていたノルンがわしたちの間に入った。

「そこでノルンちゃんの出番なんだよ~。ノルンちゃんは高性能だから、ある程度説明できるんだよ。マスターとは違うんだよ。マスターとは」
「にゃんで2回言ったにゃ?」
「高度なギャグすらマスターはわからないんだよ~」
「第三世界の孫が言ってたから、元ネタが知りたいんにゃ~」

 孫の「こんな時に言いたいセリフ集」を思い出したわしであったが、ノルンの説明は正解なのかよくわからない。

 ザリとは違うのだよ。ザリとは……って、そのザリってニホンザリガニのことって本当??

 時の賢者の世界とは、元ネタから違っていたので混乱するわしであったとさ。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

処理中です...