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猫歴50年~72年
猫歴67年その5にゃ~
しおりを挟む我が輩は猫である。名前はシラタマだ。仕事って何したらいいんじゃろ?
第三世界の天皇陛下が異世界転生して来たから、わしも一緒に猫の国観光を楽しくしていたけど、仕事をツッコまれてからおかしな方向に。
今までリータとメイバイもわしの仕事しなさを諦めていたのに、天皇家の御公務はいっぱいあると聞いて「仕事しろ病」が再発したのでやろうと思ったけど、仕事がない。
君臨すれども統治せず。わしはこれを目指して国作りをしていたのだから、王様の仕事なんてほとんどないのだ。
というわけで、猫大に引きこもろうかと思ったけど、リータとメイバイが張り込みしている。サボるとしたらここだとバレていたみたい。
なので次の候補、猫会議事堂にでも行こうかとダラダラ歩いていたら、頭になんか落ちて来た。
「と、鳥のウンコにゃ……」
「ノルンちゃんだよ! 失礼なんだよ~~~!!」
どうやらノルンは、猫会議事堂に行こうとしたらわしを発見したから頭に乗ったらしい。それを鳥の糞扱いされたから怒ってわしの頭をポコポコ叩いてる。
ビックリしたけど鳥の糞ではなかったので、わしも胸を撫で下ろして「ゴメンゴメン」と謝罪してから移動。猫会議事堂にある王様専用観覧場にコッソリ入って2人で傍聴する。
ちなみに猫会議事堂とは、日本でいうところの国会議事堂。見た目もそれに似せて作ったのに、所々わしの石像があるのでファンシーな建物になっちゃった。
わしが作ったのは建物だけじゃぞ? リータたちが勝手に足して、こんな変な名前を付けてくれやがったの。ニュースキャスターが真面目な顔で連呼するから笑ってしまいそうじゃ。
「しっかし、第三世界の国会に似て来たにゃ~……」
王様専用観覧場は2階にあり、議員が丸見えだから何をしているかよくわかる。寝てるヤツ、ヤジを入れるヤツ、スマホをイジってるヤツ、質問してるヤツ……こいつは普通か。
「第三世界では、こんな学級崩壊みたいになってたんだよ?」
「うんにゃ。これより酷かったかもにゃ~」
「これよりもなんて、どうやって国政するんだよ」
「そこは優秀にゃ官僚がいてにゃ。政治家をあの手この手で操りながら国を回してたんにゃ」
「それって政治家必要なんだよ??」
必要っちゃ必要だけど、仕事を何ひとつしないから必要ない。だから第三世界に行った時にわしが発破を掛けたと説明してあげたら、なんだか信じられない目を向けられた。
「にゃにその目?」
「こっちこそ大事なんだよ。マスターが何もしないから、学級崩壊になってるんだよ~」
「いや、いまは実験をだにゃ。政治家とは、どうして志を無くして怠惰に変わって行くかの推移を見てるんにゃ~」
「ぜんぜん足を運ばないのにだよ? 政治家より断然マスターのほうが怠惰なんだよ~」
「ネ、ネットで見てにゃすから……」
苦し紛れの言い訳は不発。猫会放送もうたた寝しながらだから、ノルンに簡単に論破されてしまうわしであった……
ノルンにまで叱られてしまったので、さすがにバツが悪い。マスターの威厳を見せなくては!
「なに写真撮ってるんだよ?」
でも、議員をスマホで激写してるだけなので威厳はさらにマイナスだ。
「う~ん……ぜんぜん気付かないにゃ。フラッシュでも使ってみるにゃ~」
「だから何してるんだよ。王様が猫会を乱してどうするんだよ~」
それでも続けるので、ノルンが常識的なことを言って止めて来る。いまは忙しいからブンブン飛ぶな。
ノルンをハエでも払うかのように手を振り、写真を撮り続けていたら、やっと議員たちはわしを見て指を差した。ここで、真下にいる議長からわしへ向けて語られる。
『猫陛下……何をされているのですか? 写真は控えて欲しいのですが……』
やんわりとだが議長に注意されたわしは、音声拡張魔道具を使って返す。
『いや~。久し振りに来たから記念撮影してたんにゃ~』
『妨害行為は、強制的に退廷することになっているのですが……』
『あ、もう充分撮れ高あるから撮らないにゃ。でも、ちょっと言いたいことあるから、少しだけ時間をくれにゃ』
『はあ……』
王様のお願いなのだから議長も反対し辛いらしく時間をくれたので、その場で喋る。
『わしは久し振りに来て驚いたにゃ~。居眠り、スマホ、ヤジ……これらの行為をしてるヤツがおよそ半分もいるんだからにゃ。怒りを通り越して呆れてるにゃ~』
わしのセリフに、心当たりある議員は一斉に下を向いた。
『今ごろ顔を伏せても遅いにゃよ? さっき写真に撮ったんだからにゃ』
このセリフには議員たちはあたふたし始めたので、わしは2階から飛び下りて中央にて着地。全員驚いてるけど、なんでじゃろ?
『正直言って、わしの感想はこれにゃ……ふざけるにゃよ!!』
わしの怒鳴り声で、議会場に静寂が訪れた。
『お前たちの仕事はなんにゃ? 国をよくする仕事にゃろ?? お前たちを選んだのは誰にゃ? 国民にゃろ?? それが寝てる、喋ってる、スマホしてるって……お前たちは血税でおまんま食ってる自覚ないにゃ??』
問い掛けても誰も目を合わせてくれない。
『首相や議長も同罪にゃよ? にゃんで注意しないにゃ? これ、テレビとネットで生放送してるんにゃよ? こんにゃ恥ずかしい大人の姿、子供に見せられないにゃ~』
首相も議長も何も返してくれないので、わしも困っちゃう。
『もういいにゃ。寝てたヤツ、スマホしてたヤツ、ヤジでうるさいヤツ、王様権限で全員クビにゃ~』
「「「「「なっ……」」」」」
クビと聞いてはさすがに焦ったのか、議会は紛糾した。最初からこれぐらい反論してくれたらこんなこと言わなかったのに……
うるさいので、ひとまず議長を使って黙らせてから1人のオッサン議員に発言させる。
『んで、にゃにを言いたいんにゃ?』
『たまたま寝ていただけで、クビは酷すぎます。昨夜は夜遅くまで仕事をしていたから、数分落ちていただけなんです!』
『ふ~ん……それが事実にゃら、やりすぎだにゃ。嘘偽りないにゃ?』
『はいっ!』
『ノルンちゃん……』
議員は自信満々に返事したけど、わしはノルンを呼んで頭に乗せる。
『たまに傍聴してたよにゃ? こいつって、いつもどうしてたにゃ??』
『この人はほとんど寝てるんだよ。ノルンちゃんが来た日で起きてたのは、3回だけなんだよ~』
『さっそく嘘つかれたにゃ~』
『う、嘘ではありません! その日もたまたま疲れて数分落ちてたんです!!』
『嘘なんだよ。最初から最後までぐっすりだったんだよ』
『嘘ついてるのはそっちだろ!』
議員はこんなに小さいノルンを怒鳴るので、わしはひと睨み。それで怯んだ。
『ノルンちゃんはよく嘘をつくけど、記憶力は抜群なんにゃ。だから、わしはノルンちゃんを信じるにゃ~』
『ですから、その日は議員の仕事で徹夜していたから落ちてしまってですね』
『まだ嘘に嘘を重ねるにゃ~?』
『事実なんです!』
『じゃあ、ハッキリさせようにゃ。いまからお前に契約魔法を掛けるにゃ。嘘偽りないにゃら、掛けてもいいんだよにゃ?』
『そ、それは……』
『ダメなんにゃ~……』
もう聞くまでもなく結果は見えているけど、面白そうなので契約魔法で縛って洗い浚い吐かせてやった。
『いや~……にゃはは。まさかそんにゃに女癖が悪いとはにゃ~……ゴメンにゃさい』
その結果、わしも同情して謝罪。奥さんがいるのに、毎晩支持者とクラブに行ったり、権力をひけらかして女性をお持ち帰りしていたとは思ってなかったの。
それを生放送で言わせてしまったのだから、全員ドン引き。もちろんわしもドン引きです。
『ん、んん! まぁにゃんだ。クビは言い過ぎにゃから、お前は半年間、給料20%引きで許してやるにゃ。わしに嘘ばっかりついたんにゃから妥当な罰にゃろ。あと、女遊びはホドホドにするんにゃよ~?』
社会的に死んだ上に給料を減らされるのだから、かなり重い罰だな。しかし、首の皮一枚繋がってるんだから、皆さんそんな目で見ないでください。
『残りは連帯責任で、3ヶ月間10%カットにゃ。こんにゃに好き放題しておいて、誰もおかしいと言い出さないのが悪いんだからにゃ? 反対の人は、契約魔法掛けてから反対の理由を聞くにゃ~』
脅しているのだから、もちろん全員賛成。ろくな議員がいないのかな?
『そんじゃあ今日やることが終わったらでいいから、減給と居眠りとかの罰則を盛り込んだ法案を自分たちで作れにゃ。甘い法案にゃら、わしがガッチガチに作り直すからにゃ~』
これにてわしの出番は終了。特別観覧場に飛び乗って、お通夜みたいになった猫会議を傍聴してやるのであった。
それから居眠り法案は、たった1日で法案が作られて猫会議の場へ。居眠りとスマホは1日に2回注意されたら10万ネコの罰金。3回目や連日となると、百万ネコに増える。
ヤジも似たような感じだが、金額が1万ネコと10万ネコで安い。これはいちおう話は聞いてるってことで落ち着いていた。減給に関しては、即日決まったよ。
そのやり取りはわしが傍聴しているので、議員はちょくちょく「これでどうですか~?」って目を向けて来たので、罰が軽い場合は首を横に振り、妥当な場合は縦に振っていたから、わしが作ったとも言えるかも?
それから数日、わしは狩りのない日は猫会を見に行っていたので、議員は背筋を正して議論をしている。わしが怖いんだろうね。
そうしていたら週末になったので、わしはウロを誘ってランチをしている。
「シラタマ王の大岡裁き、見ていてスカッとしました」
わしのことはニュースで連日やっていたので、ウロもベタ褒め。今回の件は国民の受けもよかったから当然だ。
「元の世界でも、政治家を叱れる人が必要だったのかもしれませんね」
「確かににゃ~……昭和天皇が人間宣言した辺りから、政治家が調子に乗り出した気がするもんにゃ」
「それは……本当に申し訳ありません」
「いや、ウロ君が謝ることじゃないにゃ。明治政府もGHQも悪いし、その当時の軍も政治家もマスコミも悪いにゃ~」
政治家を叱れるなんて天皇陛下ぐらいしか日本には存在していなかったので、ウロが謝るからわしはあたふた言い訳。空気を変えようと話題も変える。
「しっかし、モラルの問題をわざわざ法律にする日が来るとは思わなかったにゃ~」
「ですよね。ですが、政治家なんて自分を縛る法律なんて作りたがらないのですから、私はこれでよかったと思いますよ」
「わしとしては、あまり出しゃばりたくなかったんだけどにゃ~」
「たまにはいいのではないですか? 形だけですが、政治家自身にやらせたのですから、反感はないでしょう。さすがシラタマ王です」
「そうかにゃ~?」
尊敬する天皇陛下にこうも褒められまくるとわしも鼻高々。まだまだ褒めてくれるので、伸びすぎて重さで折れそうだ。
そこにいつの間にかリータとメイバイがやって来て、わしの伸びた鼻を握った。
「シラタマさんをそんなに褒めないでください」
「居眠り禁止とか言いながら、自分は猫会で寝てたニャー!」
「にゃ、にゃんで知ってるにゃ……」
「「ノルンちゃんから聞いたにゃ~」」
2人は完全にわしの鼻を折りに掛かってるので、めっちゃ怖い。
「寝ていた? テレビではちゃんと座ってましたよ??」
しかしウロは気付いてなかったので、できることなら喋らないでください。
「シラタマさんはこのぬいぐるみをイスに置いて、映像をごまかしていたのです」
「床にクッションを置いてぐっすりって聞いたニャー。まったく悪知恵ばっかり働く猫ニャー」
「それなのに居眠り禁止法案ですか……王様を縛る法律も必要ですね。フフフフ」
「その笑い方、怖いんにゃけど~~~?」
わしの伸びた鼻は陥没。リータとメイバイに加えて、元天皇陛下にもこっぴどく怒られたわしはどんどん小さくなるのであったとさ。
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