猫王様の千年股旅

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猫歴50年~72年

猫歴68年その2にゃ~

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 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。いい加減にしてくれ。

 世界金融会議の場でキンペイ首相が粗相をしてしまったので、わしは非情にも【殺気の剣】まで使って追い出してやった。リータたちにはキンペイ首相の奥さんと秘書を連れて来てもらって、3人は強制送還。
 帰宅用の三ツ鳥居から、イサベレに連れて帰ってもらう。そのままキャットタワーの一室に軟禁だ。

 わしはというと、キッチンに案内してもらって各種手配。次元倉庫から最高級の肉を大量に出して、イスキアワインを木箱ごと積み上げる。
 スタッフはヨダレを垂らして見ていたので「これは王族用」と脅しておいた。全部持って行かれそうなんだもん。

 ちなみにイスキアワインとは、ハイエルフ族が作りし幻のワイン。信じられないぐらい旨いワインだけど、アイツらぜんぜん仕事しないし自分たちでほとんど飲んでしまうから、市場にはわずかしか出回らないから幻で恐ろしく高いのだ。
  そんなワインを何故わしが大量に持っているかというと、趣味で自分で作っているから。といっても、一からではない。

 東の国のワインの蔵元や、猫の国のウィスキーの蔵元から最高級の品を毎年樽ごと買って、魔力濃度の高い猫帝国の地下室で寝かせるだけ。10年も放置しておけば、イスキアワインに匹敵する。30年物なんて目じゃない旨さだ。
 わしの好みはウィスキーだけど、さっちゃんたちのような王族はワインが好みだから、接待用に作ってるんだよ。

 スタッフは目に見えてやる気が落ちていたので、別口に人数分出してからキッチンを去るわしであった。

 誰かもう口に入れたヤツがいるな……

 後方から断末魔のような悲鳴が聞こえていたので、仕事になるか心配になるわしであったとさ。


 パーティー会場に駆け足で戻れば、途中だった記念撮影。邪魔する者がいないので、すぐに終わってしばしご歓談。
 その後、偽造イスキアワインや最高級のステーキが運ばれて来たら、王族たちは阿鼻叫喚の騒ぎ。美味しさのあまり倒れる者もいる。

「ねえねえ? まさかあのお肉出したの??」

 その騒ぎはベティも既視感があるらしく、ワイン片手にわしの下へ寄って来た。

「まぁ……あんにゃこともあったしにゃ……」
「白銀の獣肉なんて、死人が出るかもしれないって言ったでしょ!?」
「高級食材を食べ慣れている高貴な人にゃから、記憶障害だけでにゃんとかにゃるかと……」
「ないわ~。これ、ある意味、暗殺だわ~。ないわ~」

 そう。わしが持つ最高級の肉とは、500年物の白銀狼さんのお肉。ハイエルフ族を探している時に、死闘の末倒していたのだ。
 わしが1人で倒したのだから、一緒にパーティを組んでいた玉藻と家康には取り分はなし。でも、初めて上位種である白銀の獣を倒したのだから記念にその場で焼いて一緒に食べたら、旨すぎて3分の1ぐらい食っちゃったのだ。

 普段そこまで食い意地の張っていないわしがそうなったのだから、家族には数量限定で振る舞ってみた。そしたら、猫クランメンバーが「もっと寄越せ」とわしに襲い掛かって来たの。
 バーサク効果があるというより、これはただ単に大量摂取したいだけの怒り。わしの不安は的中したので落ち着くように説得していたら、猫クランメンバー以外の家族がピクピク痙攣けいれんしていた。

 何事かと聞いたら、こっちは美味しすぎて気絶し掛かったんだって。高級肉に慣れている猫ファミリーでこれなのだから、猫家の食卓を守っているエミリとベティはコックストップを掛けたのだ。

「まぁワインを先に飲めば、ちょっとは衝撃は緩和されたみたいだにゃ」
「それなんだけどさ~……こんなに美味しいワイン、どこに隠してたの!? あたしにもちょうだいよ~」
「別に隠してないにゃ~」

 ベティもわしがお酒を保管していることは知っていたけど、数年寝かせていたから忘れていた模様。今度、全部味見させろとか日本酒や焼酎、熟成させる食材でも試してみようとか、料理人心に火がついたのであったとさ。


 美味しいお酒とお肉にうるさかった王族は、今度はもっと寄越せとうるさくなっていたので「それしか手持ちがない」と言ったら静まり返る。もったいぶってチビチビやり出したからだ。
 そんな中、日ノ本からの出席者はもう無くなったのか、ベティと喋っているわしの下までやって来た。

「シラタマ王。たいそうな馳走、誠に旨かったぞ」
「にゃにその喋り方……普通にしてくれにゃ~」
「まったく……其方そなたは変わらんな」

 この偉そうなじいさんは、悠方ひさかた天皇、御年74歳。昔はわしと子供みたいなケンカしていたのに、いつの頃からか気持ち悪い喋り方をし出したヤツだ。

「てか、もうお肉とかないにゃよ?」
「メシをたかりに来たわけではない。首相とやらを倒した技のことを、この2人が聞きたいらしいのだ」
「そっちにゃ~……玉藻前は、まぁわからないかにゃ? 将軍にゃらわかるにゃろ?」

 悠方天皇のお供は、玉藻の娘と家康の息子、秀忠。京と江戸の実務ナンバーワンを引き連れているとは、豪華な面々だ。

「ああ。天下無双宮本武史の剣だな。封印したと言って死んだから、失伝したのだと思っていたぞ」
「こっちではけっこう使っていたから、盗ませてもらったんにゃ。ま、使い手はわしを含めても両手で数える程度だけどにゃ」
「その剣、是非とも教えていただきたい」
「私も! 私もお願いします!!」

 玉藻前まで遅れまいと立候補したけど、これは一朝一夕では難しいので実演だけ。やりたそうなメイバイとリータに任せてみた。

「腕が!? え? 付いてる……」
「死っ!? 穴が……ない……」

 その結果、玉藻前はメイバイに左腕を切り落とされて、秀忠はリータにお腹に大穴を開けられたっぽい。【殺気の剣】だから、全て錯覚だから傷ひとつないよ。

「リータはやりすぎにゃ~。せめて肩を狙ってやれにゃ~」
「えへへ。最近できるようになりましたから、ちょっと調子に乗りました。秀忠様、すみませんでした」
「私はどうだったニャー?」
「たぶん上手くいったんじゃにゃい?」

 錯覚を起こす技なのだから、感想を聞かれても困る。リータの失敗を注意するしかできないよ。秀忠が凄い顔してるもん。
 ちなみにリータは戦闘方法が格闘なので、刀を使う修羅の剣をマスターできないと嘆いていたからわしがアレンジしてあげたのだ。名前も修羅の拳とちょっともじって教えたら、わしのは修羅のネコパンチとか呼ばれてる……

 ただし、修羅の拳は修羅の剣よりエグイ流派。リータはわしのように手加減ができないから、喰らった人は「頭が飛んで行った」とか「頭が破裂した」とか、恐ろしい感想を抱く。
 インホワが喰らってしばらくトラウマになっていたから、わしが「せめて体を狙ってやれ」と言ったことが今回守られたっぽい。それでもエグイけどね。

 こんな技を見せられたのだから、玉藻前も秀忠も興味津々。ただ、リータたちもマスターするには多大な時間が掛かったし、最低でも獣を殺しまくらないといけないから、2人もボチボチやっていくことで納得してもらった。

「てか、あの2人の実力を測っていたんにゃろ?」
「バレましたか。昔は勝てるワケがないと思っていましたので……まぁ秀忠様には1人でも確実に勝てそうですね」
「玉藻前さんは苦戦するけど、負けることはないと思うニャー」

 リータとメイバイに念話を繋いでみたら、この始末。玉藻前たちがいくら生活環境が悪いといっても、2人が長年生きた白い獣の戦闘力を追い抜いていたことにはビックリだ。

「にゃったく……あまり2人をナメすぎないほうがいいにゃよ? 特に玉藻前は、多くの魔法を使えるはずにゃ。それを出されたら厳しい戦いになるにゃ」
「それは盲点でした。その対策も考えておかないと……」
「私なら素早さで攪乱してニャー……」
「今日は楽しいパーティーにゃんだから、物騒なこと考えないでくれにゃい?」

 リータたちは魔法攻略法を考え出してしまったので、わしはバレないように悠方天皇たちと話し込むのであった。


 日ノ本組と喋っていたら、超超美味しい物をチビチビやっていた王族たちは食べきったらしく、再びわしの下へ押し寄せて来た。何か恵まないことにはこの騒ぎは落ち着きそうにないので、お酒なら多少は余裕があるから譲ることに。
 年に一本を目処に、手持ちが尽きそうになったら数年から十年待ちの予約を取り付けて、レセプションパーティーは終わりを告げるのであった……


 パーティーが終わっても、わしにはまだやることがある。猫の国組に用意されたVIPルームで少し休憩したら、キャットタワーに転移してキンペイ首相たちが軟禁されている部屋に入った。

「そう怯えるにゃ」

 わしの顔を見た3人は、ガクブル。錯覚でも真っ二つにされた上に軟禁されているのだから、殺されるのではないかと怯えて口も開けないみたいだ。
 そんな3人を他所に、わしは近くにあったイスを移動させてそこに座った。

「わし……をわきまえろと言ったよにゃ? にゃんであんにゃことしでかしたにゃ??」
「そ、それは……皆さんからないがしろにされたから……」
「お前、にゃ~んか勘違いしてにゃい? あの場にいたヤツら、お前と同じ人間じゃないにゃよ??」
「人間じゃない? そんなワケはありませんよね??」

 わしが教えてあげたのに、やっぱりキンペイ首相はわかっていなかった。

「そういうことにゃ~……」
「ど、どういうことですか??」
「うちは貴族が1人もいないからにゃ。その考え方がうといんにゃ。普通、貴族でも失礼を働けば簡単に平民は殺されることもあるにゃ。ましては王族にゃんて雲の上の人にゃ。アイツらの一言ですぐに首が飛ぶんにゃ。小学校でも中学校でも、このことは習ったはずにゃろ?」
「はい……」

 猫の国はいちおう王族はいるけど、完全な民主国家。他国に遊びに行って、貴族文化に触れる機会もあるから、道徳のついでに「貴族には失礼を働くな」と念の為教えていたのだ。

「お前、首相になって、偉いと勘違いしていたんだにゃ」
「か、勘違いではございません……国民に選ばれましたから……」
「だから勘違いしてるんにゃ。王族ってのは、血が全てにゃ。高貴にゃ血が入っていない者は、人とも思っていないにゃ。お前、わしが手を出さなかったら、あの場で殺されてたんにゃよ? そういう危険にゃ行為をしたということを、今後忘れるにゃ。わかったにゃ?」
「はい……」

 キンペイ首相は頷いてはいるが、その表情はまだわかっていない顔をしている。

「そもそもにゃよ? 首相にゃんてぜんぜん偉くないにゃよ??」
「え??」
「ただの官職のひとつにゃ。国民のために働くだけの人にゃ。偉そうにしていては国民はついて来ないにゃ。国民から敬われる人間になれにゃ。敬われても謙虚であれにゃ。この言葉、絶対に忘れるにゃ」
「はい」
「……もう帰っていいにゃ」

 ちょっとはいいことを言ったつもりだったが、キンペイ首相の心に響いたかはいまいちわからない。頭を下げて帰って行くキンペイ首相を見送っていたら、いつの間にかイサベレが隣に立っていたのでギョッとしたよ。

「あの人、首相にしておいて大丈夫?」
「どうだろうにゃ~……ま、任期が終わるまで外に出さなきゃ大丈夫にゃろ」
「再選なんてことになったら?」
「わしに一回殺されたんにゃから、もう立候補する気も起きないんじゃにゃい?」
「そういえば……あの時どこを切ったの?」
「頭から真っ二つにゃけど……」
「酷い……あの人、よく生きてたね……」
「もうちょっと声張って言ってくれにゃい? じゃにゃいと、わしが本当に殺そうとしてるように聞こえるにゃ~」

 感情をあまり表に出さないイサベレに深刻そう言われると、めちゃくちゃ悪いことをしたように聞こえる。あの場を丸く収めるにはアレしかなかったと言い訳しつつ、イサベレと一緒に転移してVIPルームに戻るわしであった……
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