猫王様の千年股旅

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猫歴50年~72年

猫歴69年にゃ~

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 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。マネーゲームは嫌い。

 世界金融会議での為替導入決議は全会一致となったので、あとは実務者レベルでの話し合いに移行。為替組合という各国のお金の価値を決める機関と、為替管理組合というチェック機関も作られる。
 このふたつの組織は各国から資金と人を出し合い、為替の動向を全員で見張ることに決定している。長くやると派閥なんか作られそうなので、任期は3年から5年で入れ替える予定だ。

 ここで一番儲かるのは、各種システムを担当している猫の国。なので資金は多く出して、レートの決定とチェックは辞退することになっている。
 これなら猫の国を為替から半分以上追い出せているので、各国の面子が立つんだとか。キンペイ首相は何か言いたそうだったけど、あの恐怖体験が忘れられないから直接文句は言わない。陰口叩いてるのは知ってるぞ?

 為替機関等はもう数年掛かるだろうから、今日は久し振りにウロとランチ。今年から小学校に入ったからぜんぜん遊んでくれないので、隔週で会っているのだ。

「また面白いことを始めましたね」
「にゃ? ……為替のことかにゃ??」
「ええ。ニュースや新聞を見させていただきましたよ。まさか外的要因を全て排除した為替機関を作るなんて、さすがシラタマ王です」
「やめてくれにゃ~」

 久し振りにベタ褒めされたから、わしも鼻高々。しかしこういう時は、誰かが伸びた鼻を折りに来るので辺りの警戒はおろそかにできない。鼻もそこそこだ。

「しかし、あの顔はなんだったのですか? 東の国の女王様にマイクを奪われた時、してやられたって顔をしていましたよね?」
「あぁ~。アレは台本と違うことをやられたからにゃ~」

 愚痴はそこそこでは終われない。猫の国というかわしを魔王か何かに仕立てあげようとしていたのだからな!

「でも、これはシラタマ王の大勝利ですよね?」
「さすがは天皇陛下にゃ。よくわかってらっしゃるにゃ~」
「同じ世界から来ましたからね。為替は各国の思惑が渦巻くし、個人でやっている者も破産するなんてよく聞く話です」
「まぁ資本主義に制約を掛けすぎにゃと思うけど、ギャンブルで悲しむ人が減るのはいいことにゃろ」
「おっしゃる通りです」

 わしがマネーゲームを禁じた理由は、そういうこと。胴元しか儲からないようなマネーゲームは極力排除したかったから、アンジェリーヌを説得したのだ。

「ま、その分、株は緩和しようと考えているにゃ」
「そういえばまだ株取り引きはしていませんでしたね。そもそも株式会社はあるのですか?」
「いまのところ、証券の取り引きだけだにゃ。ぶっちゃけ誰かがやり出さないかと見守っているんだけどにゃ~……そのほうが健全にゃろ?」
「ええ。この世界の歴史は、この世界の者が作り出すべきです。まぁ……もうやりすぎていますけどね」
「だよにゃ~。世界中の人を賢くしたら歴史は加速すると思っていたけど、そうは上手くいかないんだよにゃ~」
「第三世界と第四世界では人口が10倍近くも違うのですから、それが原因なのでは?」
「確かににゃ……人口増加も課題だにゃ~」

 やはりウロは相談役には持って来いなので、この日は2人で難しい話ばかりしてしまうのであった。

「あの猫、真面目な話しかしてないわよ?」
「「「「「珍しい……」」」」」

 ベティたちに盗聴器を仕込まれていたとは気付かずに……


 その日から家族がわしのことを変な目で見るようになり、簡単な計算や社会のクイズを出されるワケのわからない日々を過ごしていたら猫歴69年となった。
 相も変わらずわしはダラダラ暮らしていた2月末、アンジェリーヌが訪ねて来た。

「そうにゃんだ……辞めちゃうんにゃ」
「はい。今まで支えていただき、ありがとうございました」

 アンジェリーヌはおばちゃんぐらいに見えて今年64歳。今年が引き際だとやりきった顔だ。

「でも、為替はどうするにゃ? 始まるまでまだ2、3年は掛かるにゃろ? 功績ほしかったんにゃろ??」
「この分だとフランシーヌに何も功績が残らないことになりますからね。苦労も功績も半分こです」
「娘のためだったんにゃ~……てっきり退位が近いから焦っているのかと思っていたにゃ~」
「それもありましたけど、私のようになってほしくありませんでしたので。これでまずまずの船出となるでしょ?」
「ロケットスタートだにゃ~」

 一瞬、またしてやられたとは思ったけど、これぐらいはご祝儀。ペトロニーヌ、さっちゃんと功績モリモリの女王の跡を継ぐ者は、それ相応の苦労があったのだろう。
 しばし苦労話を聞いてあげていたけど、途中からアンジェリーヌのおねだりが始まった。

「最後の誕生祭は何かやってくれますよね?」
「うんにゃ。アレから20年ってところにゃ~……前と同じバトルでもいいかにゃ?」
「そうですね……もうちょっと派手にできません??」
「う~ん……玉藻と御老公に頼んでみよっかにゃ?」
「おじ様VS日ノ本2トップですか……うん! いいですね! あとはイサベレの親子喧嘩と、猫クランの仲間割れは見所ありますね~」
「勝手に仲悪いことにしないでくれにゃい?」

 アンジェリーヌはバトルにストーリーを求めるので困ったモノだ。ただし、戦闘狂揃いだからマジ喧嘩になりそうなので、こっちの手綱を握るのは大変そうだ。
 なんだかアンジェリーヌが即興でストーリーを描き出したので話半分で聞いてあげていたら、まだおねだりがあるんだって。

「2年連続にゃ~?」
「娘のために、なんとかなりませんか? 私の時、すっごく盛り下がっていたんですよ~」
「そうはいっても、スペシャル感がなくなるにゃろ?」
「バトルではなく演劇にすれば……いえ、映画なんて面白そう! 脚本と監督なんかはこちらで用意しますので、主演シラタマ王、出演者は猫の国王族でいきましょう! 涙ありバトルあり、恋愛要素も盛り込めば、全世界熱狂するはずです!!」
「だから勝手に盛り上がらないでくれにゃい?」
「娘のためにお願いしますよ~」

 おねだりというかめちゃくちゃモフられたわしは、解放してほしいから首を縦に振ってしまうのであっ……

「ちなみに制作費はどこから出るにゃ?」
「チッ……」
「やっぱナシの方向で……」
「冗談ですがな~~~」

 ギリギリお金の話が抜けていたとわしが気付いたら、アンジェリーヌは舌打ち。だから「やりたくない」と言ったらまた激しくモフられたので「出演の方向で検討する」と言ってしまうのわしであったとさ。


 わしをモフりまくったアンジェリーヌは肌艶はだつやがよくなったら帰ると思っていたのに、今日は泊まるんだとか。猫家のモフモフ組までモフモフしまくり、翌日には若返ったように見える。
 アンジェリーヌは昼飯までたかって、ようやく帰ると言い出したのでわしが送ってやろうとしたその時、わしにも言いたいことがあったと思い出した。

「戴冠式の初日、わしのこと外してくれにゃい?」
「外す? ……あっ! 英雄卿!? またド真ん中に配置するところだった!!」

 わし、ファインプレー。前回はさっちゃんのミスで配置され、関係ないわしが居たたまれなくなってカメラマンをやり出したから、さっちゃんも笑いそうになっていた。
 そのことはさっちゃんから聞いていたのかと思ったけど、アンジェリーヌも笑いそうになってたんだって。

「では、カメラマンとして英雄卿を配置しておきますね」
「そういうことじゃないんにゃ~~~」

 最初からカメラマンなら、笑うことはないらしい。結局アンジェリーヌは安いアルバイト代の話だけして帰って行ったのであったとさ。


 その翌日は、さっちゃんと遊ぶ予定だったので東の国に出向き、さっちゃんと猫兄弟を拾って猫の国にトンボ返り。車を運転して猫市のゴルフ場にやって来た。

「ニャイスショット」
「う~ん……ちょっとブレたかしら」

 数年前からさっちゃんの健康を気遣って、わしもゴルフに付き合っている。ただし、わしが本気を出すとさっちゃんが不機嫌になるので、パーセーブ、もしくはさっちゃんと同じスコアで回っているのだ。
 ちなみにエリザベスとルシウスは、護衛もせずにキャットタワーでお昼寝していると思われる。白猫騎士団の団長と副団長って聞いたんだけどな~?

「よっと……よしにゃ。ダブルボギーにゃ~」
「よく決めたわね。ナイスパット」

 わしが長いパットを沈めたら、さっちゃんも拍手。いまのところ、のどかな時間が流れている。

「手加減させてゴメンね」
「にゃに急に……手加減しなかったら怒るにゃろ?」
「そうだけど……シラタマちゃんが窮屈してるように見えちゃって」
「そんにゃことないにゃ。これはこれで手加減の練習に役立つからにゃ。リータたちはこういう練習をしないから、やりすぎてしまうことしばしばにゃ」
「それだといいんだけど……」
「また弱気になってるにゃ~? そんにゃ顔してたら、完膚無きまでに叩きのめすにゃよ??」

 さっちゃんは歳も歳なので時々元気がないから、わしもちょっとだけ本気出す。

「ちょっ! 飛ばしすぎよ! いまのOBでしょ!?」
「ちゃんとグリーンに乗ってるにゃ~」
「私ルールでワンオンはOBってなってま~す。はい、ペナルティ~」
「そのルールはパースリーでは厳しいからって、こにゃいだ改正してくれたにゃろ~」
「ここはパーフォーで~す。シラタマちゃん、ボケたんじゃな~い?」
「ボケてないにゃ~~~」

 でも、すぐに元気。まだまだ口喧嘩が達者なさっちゃんであった。


 ゴルフはハーフを回ったところでお昼休憩。さっちゃんをおんぶしてクラブハウスに戻ったら、適当な料理をモグモグ世間話だ。

「またアンジェにねだられたみたいで悪かったわね」
「まぁあの程度にゃら……」
「なに? もっと酷いおねだりでもされたの??」
「いや、アンちゃんを送り込んで来たの、さっちゃんだよにゃ? わしの休みの日、東の国にはさっちゃんにしか言ってないにゃ~」

 さっちゃんはてへぺろしてるから、それが答えみたい。ババアのてへぺろはムカつく顔だな。

「あの子が自分の口で伝えたいと言うからね。ちょうど休みが重なっていたから、その足で行ったのよ」
「他ににゃんか助言はしてないにゃ? 例えば戴冠式の立ち位置とかにゃ」
「アハハ。バレたらしいわね。アンジェが気付いてないから、ドッキリ仕掛けようと思ってたのに~」
「勘弁してくれにゃ~。わしも英雄卿で呼び出されたくないんにゃ~」
「そこは末永く宜しくしてほしいわ」

 さっちゃんがわしをあの場に立たせようとしているのは、東の国とわし個人のため。わしが友好的だと貴族に見せ付けるために、わざとド真ん中に置いたらしい。

「それってペトさんもにゃ?」
「お母様は何も言わなかったけど、たぶん同じ考えだと思うわよ」
「あの当時はカメラマンやらされただけにゃったようにゃ……」
「さてと、もうそろそろ行きましょうか」
「あ、待ってにゃ~」

 真偽のほどはわからず仕舞。ただ、ペトロニーヌならあとからこの方法は使えると思い、さっちゃんが気付くかどうかを試したのではないかと考えるわしであった……
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