猫王様の千年股旅

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猫歴73年~

猫歴74年その2にゃ~

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 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。楽器職人ではない。

「「音が鳴らないでおじゃるぅぅ」」

 楽器職人ではないからだ。

 猫クランに入りたいという曾孫、ナディヂザとグリゴリーは、わしが黒魔鉱で作った龍笛りゅうてきそうの音が鳴らないからってダメ出し。そもそも武器の話をしていたんだから、戦えるように頑丈に作るのは普通じゃろ?

「「おきな~。お願いでごじゃるぅぅ」」

 それでも曾孫がウルウルお願いして来るので、なんとかしてやりたい。わしは双子の訓練はサクラとベティに任せて、日ノ本に飛んだ。

「楽器職人を紹介しろとな? なんじゃまた藪から棒に……」
「にゃんか双子が変にゃことばかり言うんにゃ~」

 斯く斯く云々と玉藻に説明してみたら、やっぱり武器じゃないと言ってくれた。しかし4年間一緒に暮らしたこともあり情が移ったのか、楽器職人を紹介してくれることに。
 ただ、楽器職人といっても楽器事にその道のたくみがいるので、まずは龍笛職人に弟子入りだ。

「上手いもんじゃな……そちは国王ではなかったのか?」
「にゃっ!? 邪魔するにゃらついて来るにゃよ~」

 龍笛職人から渡された木をノミや彫刻刀で削っていたら、気配を消して後ろに立っていた玉藻が声を掛けるもんだから、ビックリして削り過ぎたじゃろうが。せっかく褒められて気分よかったのに……

「昔取った杵柄にゃ。こういう作業は得意なんにゃ」
「しかし、これを武器にするのじゃろ? 木ではすぐ折れてしまうぞ」
「そこは鉄製にアレンジするから大丈夫にゃ。一から作って、音が出るシステムを理解したら、それにゃりの音が出るにゃろ。ま、鉄製にゃから、金管楽器になりそうだけどにゃ~」
「ふむ……わらわも試してみようかのう」
「暇にゃの??」
「そちには言われたくない」

 玉藻まで龍笛を作ると言うのでツッコんでみたけど、わしより仕事はあるらしい。わしだって……負けました……
 とうに引退したクセに本当にわしより仕事をしていたので、すぐに白旗。2人で黙々と木を削って龍笛を作る。ぶっちゃけ、わしたちに掛かれば木なんてプリンみたいな物だから、力加減を気を付けるだけであっという間に形は完成。

 ここからは難しい調整なので、数日掛けて完成させたら2人で吹き比べだ。

「ピボ~♪ むう……変な音が混ざっておるな……」
「穴が微妙に歪んでるんじゃにゃい? わしのは師匠が作ったのと遜色そんしょくないにゃ~。ピヒョ~♪」
「クッ……負けた」

 勝ち負けは関係ないけど、龍笛職人からスカウトされたからちょっとは嬉しい。でも、王様だから働かないと言っておろう。若者のなり手が少ないと言われても知らんがな。そういうことは玉藻に言えよ。


 龍笛職人のことは玉藻に押し付けて数日練習したら、後日やって来たのは箏職人の工房。待ち合わせもしてない玉藻と一緒に弟子入りだ。

「こりゃまた難しいもんじゃな」
「弦楽器だもんにゃ~。音の調整が厄介にゃ」

 箏は琴のような楽器だから形を作るだけなら簡単だが、一弦一弦音を変えないといけないから苦戦中。それに絶対音感なんか持ってないのだから、微調整も師匠頼りなので時間が掛かる。

「フフン♪ 箏は妾のほうがいい音が鳴るのう。どうじゃこの音色は?」
「違いがわからないにゃ~」
「負け惜しみか?」
「負けでいいから、わしのも調整してくれにゃ~」

 玉藻のキツネ耳のほうがわしのネコ耳より音に敏感らしいので、素直に勝ちを譲るとご満悦。別に勝負なんてしてないけど、その勝ち誇った顔はムカつくな。
 ここは我慢して、作業の分担。わしが土台を作って玉藻には調整してもらって練習していたら、筝職人にわしだけスカウトされた。だから誘うなら玉藻を誘えよ。元名代様はおそれ多いって……猫の国の王様は?

 またなり手不足の話をされても知らんがな。龍笛も箏もそれなりの物が作れるようになったら、もう用済み。礼も言わずに猫の国へ逃げ帰るわしであった。

 スカウトの話しかしないんだもん!


 修行も終わって本格的に武器製造に取り掛かろうと思ったけど、わし1人では心許ない。玉藻に「音の調整おねげぇしますだ~」とお願いしてみたら、袖の下も受け取らずにこころよく受けてくれた。
 何か裏がありそうで怖いけど、わしたちは猫帝国の地下にある防音施設にこもって作業。2人でああだこうだ言いながら、夜になったらキャットタワーに帰る毎日。

 王妃様方から浮気を疑われるなか、ついに双子専用の最高の武器が完成した。完成まで秘密にしていたから、あんな辺鄙な場所で作業してたんだよ?
 今日は双子専用武器の進呈の日。皆も興味津々で集まって来た。玉藻はいつになったら帰るんじゃろう……

「まずはグリ君にゃ。この龍笛を授けるにゃ~」
「は、はは~」

 龍笛の素材は、圧縮なしの白魔鉱。普段は猫クラン加入者には黒魔鉱で様子を見るのだが、中が空洞なので強度面が心配だから一足飛びで白魔鉱にしたのだ。
 ただし、鉄で作った横笛なので、龍笛のような音はまったく出ない。いいとこフルートみたいな音になっちゃった。

「ナディちゃんには、この箏を授けるにゃ~」
「は、はは~」

 箏の素材も、白魔鉱。鈍器に盾にと使えるように、取っ手も複数付けて使用方法別に持てるようになっている。
 弦にも白魔鉱を使おうと思ったけど、硬すぎて音が箏から離れて過ぎてしまったので、豪勢に江戸湾の守護神、白クジラのぶっといヒゲをわしが細く切った物。

 白クジラとはマブダチなので「切っていい?」ってお願いしたら「おけまる」ってさ。
 これならばちょっとやそっとでは切れないし、音も段違いに良くなったから、白クジラには感謝しかない。なので20メートルオーバーの白い魚を丸々献上しました。

「これで武器の問題は解決ってことでいいかにゃ?」

 職人に弟子入りするところから武器作りが始まったのだから、完成までにおよそ2ヶ月。双子も嬉しそうな顔をしているから、文句なしだろう。

「音も確認していいでごじゃるか?」
「うんにゃ。玉藻のお墨付きにゃから、文句があるにゃら玉藻に言ってにゃ~?」
「それは楽しみでごじゃる」

 責任を玉藻に押し付けたら睨まれたけど、双子が目配せして演奏を始めると、誰もがその音色に釘付けとなる。なんなら、天女が舞い下りて歌っているような幻覚も見えてるよ。

「凄いでおじゃる!」
「これは正に国宝級の楽器と言っても過言ではないでおじゃる!」

 演奏を終えた双子は大興奮。褒められて嬉しいけど、さっき見た幻覚で呆気に取られていたのでちょっと待って。わしは頬をつねってこちらに戻って来た。

「んじゃ、武器はこれでいいってことだにゃ? 明日はそれを持って実地研修するにゃ~」
「よくないでおじゃる! こんな素晴らしい楽器では戦えないでごじゃる!!」
「楽器は音を奏でる物でごじゃる~~~!!」
「それ、わしが最初に言ったと思うんにゃけど……」

 わしが凝りに凝って頑張った結果、国宝級の楽器を生み出しちゃったので、この2ヶ月の苦労が無駄。楽器では戦えないと新しい武器を所望されるわしであった。

「日ノ本の楽団にも作ってくれんか?」
「それが狙いにゃったのか~~~!!」

 玉藻までご所望。楽団が使う楽器全てを白猫製にしろと無茶を言われるのであったとさ。


 楽器の件は、一旦保留。双子の武器はどうしようかと本人に聞いたところ、もうしゃく(細長い薄板)でいいとのこと。いまさら自分たちも楽器はおかしいと気付いたみたい。
 そんな棒に毛が生えた程度の物ならすぐに作れるので、2倍圧縮した黒魔鉱製のしゃくを作ったら、実地研修だ。

「ほう。ちょっと見ぬ間に、恐ろしく強くなっておるのう」

 玉藻まで狩場について来たので、わしと一緒に双子の戦闘を腕を組んで見てる。

「玉藻が式神を教えてくれてたんだってにゃ。そのおかげで訓練が楽だったにゃ」
「妾は基礎を教えただけじゃ。あの式神はオニヒメのじゃろ?」
「サクラがオニヒメから習っていたからにゃ。オニヒメの式神が孫に引き継がれることになったんにゃ」
「うむ。オニヒメそっくりじゃのう」

 わしたちはオニヒメを思い出し、華麗に魔法で戦う双子の雄姿を涙ながらに見たかったけど、オニタが大泣きして見てるからイマイチ感情移入できない。話も変わってしまった。

「やはりシラタマの戦闘教育は素晴らしいな。あの弱々しかったわっぱが、こうも立派に戦えるようになるとはのう」
「にゃ? 残っていたの、双子の戦闘を見るためにゃ??」
「うむ。妾が育てたのだから、孫と言っても過言ではないからのう」
「過言にゃ! たった4年でババア面するにゃ!!」
「誰がババアじゃ!!」

 大切な曾孫を奪おうとする輩には、わしも口が悪くなっちゃった。でも、自分でも孫と言ってるんだから、ババアで合ってると思うんじゃけどな~?
 そう思っていたわしだが、ババアと呼ばれた玉藻はキレてしまい、この場で大喧嘩したモノだから獲物が近付いて来なくなって、猫クランからも「ケンカすな」と怒られたわしたちであった。


 双子のデビュー戦はわしと玉藻のせいで途中終了となってしまったが、戦闘じたいは何度かしていたので帰ってから総括。
 獣を殺すことも特に気にしている素振りもなかったので、もう何度か実地研修をすれば猫クランに正式加入してもいいだろう。
 この日はいちおう初めての狩りだったので、総括も終わればお疲れ様パーティーだ。お腹もいっぱいになれば、双子の演奏に酔い痴れる。

「やはりこの音色はいいのう。酒もいらんぐらいじゃ」
「てか、いつになったら帰るにゃ?」
「そのように寂しいことを言うな。たまにはシラタマと遊びたくなったんじゃ」
「ひょっとして……楽器作りについて来てたのも、遊びのつもりにゃ?」
「当たり前じゃろ。この歳になって、まさか妾が楽器を作るとは思いもよらなかったがのう。ま、なかなか楽しかったがな」
「わしのは仕事の延長にゃ~」

 まさか玉藻がわしとの思い出作りをしていたとはビックリ。もしかしたら寿命が近いのかと勘繰ってしまうが、コンコン笑いながらわしの作った楽器を褒めまくるから別の勘繰りがしたくなった。

「褒めてもわしは作らんにゃよ?」
「なんで言いたいことがわかったんじゃ?」
「このタイミングで褒められたら誰だってわかるにゃ~。素材もわかってるんにゃから、玉藻が作ればいいだけにゃろ~」
「チッ……リータたちに頼むか」
「リータたちだって、わしにそんにゃ変な仕事させないにゃ~」

 わしの仕事はハンター。猫クランの移動係で荷物持ちなんだから、外されるわけがない。言ってて悲しくなるな……

「金額も高いですし、いいんじゃないですか?」
「だニャ。こんなに貰えるなら貸し出しを許可するニャー」

 でも、リータとメイバイはあっさり了承。

「にゃ、にゃんで……」
「にゃんでって……シラタマさん、週に2、3日しか働かないじゃないですか?」
「せっかく玉藻さんが仕事をくれるって言ってるのに、その顔はなんニャー!」

 そりゃそうだ。猫クランの活動頻度は低いんだから、迷惑掛からない程度なら2人が許可するに決まってる。

「わしはハンターであって、楽器職人じゃないんにゃ~~~」
「「「「「王様じゃなかったにゃ?」」」」」

 ツッコミ方を間違えたわしは皆から総ツッコミされて「とにかくなんでもいいから仕事をしろ」と楽器作りは決定してしまうのであったとさ。
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