死神の館の主様

戦力差

「本当に残念よ……」
「ユリス……か」
「ええ、わざわざ主自らが出歩いてきてやったわ。喜びなさい」
　前からはユリスが現れて、こちらに歩みを進める。
「止まりなさい……それ以上は、駄目です」
「…………へぇ、どうしてかしら？」
「警告です！　ご主人様に近づくことは許しま―――」
「なら、あなたならいいかしら」
「っ！　サンヴァーー」
「かぷっ」
　優奈は距離を詰められ、首筋をユリスに噛まれた。
　反撃しようとしていたが、ユリスの方が早く血を吸われている。
（ブラックホール……発動！）
「あら……いいところだったのに」
「がっ……あっ……！！」
　真上に重力を作り出し、ユリスのみを持ち上げた。
　その場で崩れ落ちる優奈を千坂が引き寄せて、治療を試みるが……。
「駄目。やっぱり、傷が治せない」
「あっ……あっ……」
　やはり、治すことができなかった。
　どうやら、吸血鬼から受けた傷を千坂は治すことができないみたいだ。
（何かしらの対策を取られたか……）
　追い詰めたと思ったら、追い詰められていた。
　笑えない話だ。
　現状、こっちは僕と優奈は戦うことができなくなかった。
　アリスも執事を相手に苦戦し、負傷し続けている。
　戦力は千坂のみ……。
　絶体絶命の中で、僕は一体……何ができるだろうか？