死神の館の主様

黒 ②

「そうだ。何もかもを黒く染めてしまえばいいんだ」
　その力の使い方を僕は知っている。
　ブラックパペットと共通しているため、使いこなすことができる。
　だけど――――。
（本当にそれでいいのだろうか？）
　僕はあと一歩、踏み出そうとしたところで立ち止まった。
　何か嫌な予感がする。それだけで、僕は一歩を踏み出すことができない。

　――我らに逆らえるとでも？

「ぐっ！？」
　喉元を押さえつけられるような感覚がした。
　息苦しくなり、どうにか逃れようにも振り払うどころか触ることすらできない。

　――人の分際で意見するとは煩わしい。消し去ってしまおうか。

　強大な何かが遠くの方で光っているのがわかる。
　避けなければ終わる。
（ブラックホール……発動！）
　頭の中でいつものように唱える……が、出てくる気配はない。
（ブラックホール発動！　発動！！　……発動！！）
　最大出力を意識して、やみくもに力を使うが効果は発揮されなかった。
　しかし、効果は発揮されているようで妙な倦怠感だけが体に残った。

　――消えろ。マガイモノ。

（ここまで……か）
　何がどうなってこうなったかわからないけど、あの攻撃を避けるのは無理だ。
　そういえば、こうなった原因は千坂の中の奴だったけど……。