異世界保育士さん

なの

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2. 異世界召喚

6 侵入 - 3

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 3重目の解除はまず先に隠してある魔道具を退かすことにしたらしい。
 振動がいかないように魔道具全体を風魔法で薄く覆い外界と遮断してから回収をして太一くんの収納にしまう。
 コードみたいなので繋がったりしてないからこそ出来る方法だ。
 独立した形になってる魔道具を作ったことを嘆くといいよ。

 収納と亜空間は私と太一くんの2人だけが使えるスキルだ。
 他の2人は使えないらしい。
 太一くんは魔法使いだから使えるのは分かるけど、なんで佑太郎くんじゃなくて私が使えるんだろう?

 試しに部屋にあるもの全部入れてってみたんだけど、触れて収納することをイメージするとどんな重いものでも勝手に吸い込まれたように消えていくうえにめっちゃいっぱい入るようでまだまだ余裕だった。
 というか亜空間は限界が見えなかった。
 収納は感覚的にちょっと圧迫感が出たと思ったら入れたものがすり抜けてしまったらしいので亜空間が上位互換だろうと予想。

 魔道具さえなくなればあとはすぐに解除出来るらしく、触れたら鎌鼬が飛んでくるなら触れなければいいと言いながら今までと同じくアッサリと解除して緑の光が出たと思ったら消えていく。
 解除出来たらあとは進入するだけ、と思うと少しドキドキしてきた。

 既に犯罪的なことをやってるのに今更ドキドキしても、って自分で思うけど。

「ん、終わったからこれで入れるよ。」

「お疲れ様っ!
 ありがとうね、私だけじゃ入ることは出来なかったから本当に感謝してるよ!」

「いや……俺たちだけだったら読めなかったから……冴木さんがいて良かった。
 よし、じゃあ入ろう。」

 軽く微笑んでくれる太一くんのイケメンスマイルプラス台詞にノックアウトされつつも中に入っていく。
 結界が解除されてるとはいえちょっと不安でビクビクしながら入っていくけれど、古い本の匂いがスッと鼻にはいってきて緊張もほぐれていく。

 本の匂いは結構好きであの独特の匂いで昔からなんか落ち着く。

 内部をぐるっと眺めて見ると思っていたよりも狭いうえに壁一面にある昨日まで見ていた本棚に比べて本の数は20冊程度と明らかに少なくスカスカだった。
 禁書ってあんまりないんだなぁ。

 とりあえず端から読もうと手にとってタイトルを見てみると古代文字で『建築技術』と書いてあったので関係ないかなと思いつつもパラパラめくってみる。
 うん、わからん。
 とりあえず普通に建築のことが書いてあった。
 図面とか見てもなにやらさっぱりよ。

 本を戻して次の本を取る。
『動物と仲良くなる方法  イヌ科』『動物と仲良くなる方法  ネコ科』『料理のさしすせそ』……

「なんか、この辺全然禁書っぽくないのばっかなんだけど。」

「俺には倉橋先輩のミミズ語と同じに見えるよ……」

「あー、そうだったね。
 そういえば観月ちゃんのミミズ語は読めなかったなー。
 言語全翻訳でも読めない文字ってすごいね。

 なんかねー、建築技術とか料理のさしすせそとか、動物と仲良くなるための本とかーだよ。」

「なんだそれ、本当に禁書っぽくないな。」

「なんなんだろうねぇ?」

 話しながらも次に進んでいくと、どうでも良い本ばっかり。
『水道技術』、『禁忌魔法』……って禁忌魔法とか。
 これはどうでもよくなくないから避けとこう。

「うーん、禁忌魔法の本があったよ。
 これくらいかなぁ、意味のありそうな本は。

 ……ってあれ?
 あっちの本棚の上にもう一冊あるね。
 端っこすぎて気付かなかっ……太一くん、届かない……。」

 視界にたまたま入った本棚の上にある本を取ろうと手を伸ばしたら背伸びをしても届く距離じゃなくて。
 振り向いて太一くんに助けを求めてみればキョトンとしたあとに納得したように苦笑しながら手を伸ばしてアッサリと本を取ってくれた。
 太一くんって身長高いんだなぁ、見て分かってはいたけどこういう時に実感するよね。
 180センチくらいありそう。
 私158センチで平均的なのにちっちゃく見えるもんなぁ。
 バスケとか、ダンクシュート出来るのかな……

「ねぇ太一くんって背高いけどダンクシュートとか出来るの?」

「あー、怪我する前は出来たけど今は出来ないかなぁー……っ!? こ、これ……」

 無表情に戻っていた太一くんの顔が手にとった本の表紙を見た途端驚愕の色に染まる。
 私の位置からだとなんの本が見えないけど、装丁があまり綺麗でないそれは本というか古ぼけたノートみたいな雰囲気がある。
 色も褪せていてかなり古いことが分かる。

 太一くんの読める字で書いてある本だったのかな?
 なんて思いながら太一くんの手をクイクイと引っ張り見せろとアピールすると、ハッとしたように本を渡してくれた。

 本を受け取って視線を表紙に向けると今度は私が驚く番になる。

 表紙にタイトルはなくて。
 右下に四文字、たった四つの字が書いてあって、それを見て私は驚いてしまったし太一くんも同じだった。

 そこには

「神崎 貴樹」

 と私たちに馴染み深い日本語・・・で書いてあったから。





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