連載未満詰め合わせ集

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Fantasy and combat Story

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・ゲームトリップ系恋愛ファンタジー
・あらすじと0話プロローグ




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あらすじ


『Fantasy and combat Story』
どハマりしていたMMORPGが終わった。
そろそろVR筐体が各家庭に普及できそうなくらい安定した価格になってきている昨今、パソコンゲームのFACSは運営を保てるほどユーザーがいなくなってしまったらしい。世知辛い。

「ゲーム内にトリップしちゃえばまだやれるのに」なんて少しでも思ったけども。

目が覚めて辺りを見渡せばどうみてもリアルに感じる見慣れたあのゲームの世界……。
どうやらフラグを立てていたらしい。
いやでもよく考えてよ、ああいうのって普通VRMMOじゃない……?
私のやっていたゲーム普通にパソコンの前に座ってキーボードやコントローラー操作でやってたMMOであってVRじゃないんですけど……。


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0話*プロローグ




「あーあ。ついに『FACS』終わっちゃったぁ……。面白かったのになぁ……。
 まぁ仕方ないか……そろそろVRのゴーグルも各家庭に普及できそうな金額まで落ちてきたって話題になってたもんなぁ。
 今更ただのパソゲーに人が増えることもないだろうし、どんどん減るだけだったんだろうなぁ。うん……仕方ないよなぁ。
 ……でも寂しい。」

 ギシっと軋んだ音を立てるパソコン用の回転椅子の背もたれにだらりとよっかかり独言ひとりごちる。無造作に伸ばされたままの髪の毛がすれすれのところで箒のように床を掃いているけれどそんなことは御構いなしでだらけた体勢のままくるくると回る。


 日付の変わった瞬間サーバーが閉じ、数秒暗転したあとデスクトップの画面になった。それにより12年間という長い時間を費やした、βテストからひたすらやり続け青春を捧げてきたゲームが終わったことを嫌でも実感してしまい、すぐに動く気にも、髪の毛をどうにかしようという気持ちにもならなかった。

Fantasy and combat Story幻想と戦闘の物語』……略してFACSエフエーシーエスPC・・専用のMMORPGだ。
 VR技術が着々と進んでいき、最近では【ラノベやネット小説等でよく題材に上がる、あの! VRMMOに手が届くっ!】という広告をよく見るようになった。
 そんな世の中から隔離されたように旧時代に片足を突っ込んでいるようなパソコン用ご長寿MMOがFACSだった。

 ネット小説でよくあるデスゲームとかいうものが起こるかもしれないVRゲームよりも安心安全の腕を動かすだけでゲームを楽しめるパソコンゲームのほうがいいじゃないか……。まぁそんな簡単にデスゲームがおこったらたまったもんじゃないけどさ……はぁ……。


 これはもういい歳だしこの機会にオンラインゲームを卒業しろということなんだろうか……。

 この春大学3年になった私は現在21歳。
 9歳のときから12年間暇さえあればFACSをプレイし続けるという暴挙を果たして今に至る……というのも両親共にゲーム好きなうえに一人娘である私に甘いもんだから一緒にやりたいなってお願いしたら普通にやらせてくれてどハマりしてしまったのだ。
 最初は両親どちらかのパソコンを借りてやっていたけれど、中学の入学祝いにはマイパソコンもお祝いに買ってもらえた。お受験じゃないよ? 普通に進学しただけだよ。
 たぶん自分たちがやりたいときに出来なくて邪魔だったんだろうなと少ししてから気付いた。気持ちは分からんでもない。

 それにしても今考えると子供の吸収力はすごいよなぁ。
 スポンジが水を吸うように操作を覚えていって一年もしないうちに『神操作の廃プレイヤー』って有名になってた。当時はまだ10才の子供。だから学校から帰ってきてから夕方ご飯の時間になるまででプレイ時間は終了。なのに『あの廃プレイヤーは夜の仕事をしているから落ちるのが早い』という謎の噂があった。お子ちゃまだったから長時間やらしてもらえなかっただけなんだけどね。

 最後の方はほぼ固定でギルメンとパーティーを組んでいたから便利だしということで皆はボイスチャットをしていた。ボイスチャットお断り派だった私だけは意思疎通が一人だけ取れなくても困るので聞き専での参加だったけど。
 でもヘッドホンで音楽を聴きながら会話を聞いていたから、歌いながらだと会話が耳に入らずに「あ。」ってなった事は数知れず。周りにしょっちゃう怒られてたのも今はイイ思い出、特にアニキ。そんなに怒ってると血管切れちゃうよ。

 ちなみにキャラクターの性別はちゃんと女の子だったはずなのに、簡潔で淡々とした文だったからなのかなんなのかネカマだと周りに思われていた。最初は否定していたんだけど何故か幼馴染以外誰も信じてくれなかった。
 まぁネカマだと思われても特に困らないことに気付いてからは適当に流して否定をしなくなったのもネカマ説の後押しになった感は拭えない。

 ていうか夜の商売の人でネカマとか設定盛りすぎじゃない?
 とか、今考えてみるとゲームばかりしてバイトもせずにお小遣いもらって(基本的には月額課金くらいでほとんど貯金してたけど。)親の脛かじって実家暮らしって……夜の商売の人たちだって立派にお仕事してるんだから比べたら失礼ってもんだよね。
 ……うん、ダメ人間ですまんパパン、ママン。
 明日からはゲームがなくなっちゃったしもう少しマシになれるのではないかと思います。ゲームがなくなったから、っていうのがまたダメ人間だけども。






 うだうだといろいろ考えていたけれどまだ椅子の上なのにうとうとしてきたから着ていた服を脱ぎながら布団に入る。もうお風呂は朝でいいや。
 バフンっと音を立てて布団に入ると同時にギシリと軋んだ音がベッドから聞こえる。
 さっきまではFACS最終日だから着替える時間も勿体ないと思って外着のままでゲームをしていたけれど、やっぱり部屋にいるのにジーパンってのは窮屈だわと思いつつヨレヨレになった部屋着を芋虫のように寝転がったままうごうごと着ていく。
 

 「んーっと、明日は……二限からかー。」
 ふと思い立ち、首を少しあげてパソコンの横あたりに置いてあるカレンダーにメモをしてある大学のスケジュールを見てみれば明日は二限から。二限の日は朝が早くないから夜更かしをしていた。ああ、いつもならあと2時間はやってから寝てたのになぁ……。
 もうどうせ終わっちゃうなら小説とかの物語みたいにゲーム世界に取り込まれちゃったりしたらずっとプレイできるのになー、なんて思っちゃうよなぁー。
 まぁ本当にそうなったら焦るけどさ。デスゲームもやだし何より生きていける気がしないよね。

 まぁ、そういうのはVRMMOって相場が決まってるからクリアするまで脱出不可能のデスゲームだったりトリップなんかはVRゲームをやる予定のない私が参加することはないだろうなぁー……ってだめだ、もう寝落ちしそうー……スー……。











 ーー対象の睡眠を確認

 ーー魂のコピー分離開始……分離中……分離成功……

 ーー現実世界からログアウトされました。

 ーー移動開始……移動中……移動成功……

 ーーFantasy and combat Storyの世界にログインされました。



 ーーようこそFantasy and combat Story幻想と戦闘の世界

 詳しくはメニュー画面からヘルプを参照確認または従魔サポーターからの説明をお聞きいただくようお願いいたします。

 新しい人生を存分にお楽しみくださいませ。




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