異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

文字の大きさ
418 / 453

415

しおりを挟む
「あの規模の魔物をたった1人で退かせたなんて信じられるかっ!
 しかも王都に現れた異形がいたというのも眉唾まゆつばモノだ!」

 これは自分に好意的でない部隊幹部の意見だ。
 見届け人みたいな人を置いてくれれば証言してくれたのだろうが、部隊の人間を残しておけるような余裕のある状況ではなかったから仕方ない。

「よもや自らの手柄を誇張して報告しているのではあるまいな?!」

「決してそのようなことは…………」

 そんなことをしても俺には何のメリットもない。
 この国の軍人ではないので出世に繋がるわけでもなく、報奨金が出るわけでもないのだ。

「ここで言い合いをしたところでどうしようもなかろう。
 明日にでも要塞から新たな斥候が送られるはずだ。
 事の真偽はその時にわかるだろう」

「むぅ…………」

 仲裁に入ったのは中立的な立ち位置の人だ。
 まぁ厳しく言って来る部隊幹部の気持ちもわからないではない。
 アルタナ軍でも、ましてやアルタナ国民でもない隣国の冒険者に大きな顔をされては、心中穏やかではいられないのだろう。

 ここで収納した4000体を超えるオークの死体を見せれば、ある程度の証明にはなるかもしれない。
 でもそれはしないでおく。没収されるかもしれないし…………
 4000体超と言っても回収することを最優先したので、状態の悪い死体がかなり含まれている。
 仮に買取価格の高い帝都(=グラバラス帝国の首都ラスティヒル)で売ったとしておよそ3000万クルツ、ルクに換算すると3300万ルクぐらいだろうか。
 莫大な金額だが、軍や部隊の予算規模からしたら大した金額ではない。
 兵士1人の給料が年150万ルクだとしたら20人分にしかならないからだ。
 なので没収となる可能性は低いのかもしれないが…………収納に出し入れするのも面倒くさいしな。

「ツムリーソの働きのおかげで犠牲者を出すことなく退却できたことは事実です。
 このことは心に留めておくように」

「「ハッ」」「くっ…………」

「ひとまず解散とします。
 ツムリーソは引き続き残りなさい」

 部隊幹部たちが退出していく。

「お姉様(=イリス・ルガーナ殿下)へのお礼の書状をしたためます。
 しばらく待ちなさい」

「はい…………」

 現在の時刻は15時過ぎ。
 朝一番で出立したおかげで、なんとか夜にはバルーカに帰れそうだ。

 それにしてもお腹空いた…………
 昼食が要塞に退却中のレイシス姫の部隊との合流後に渡された硬いパンだけだったのだ。
 本来はファンタジーの定番、干し肉をスープで柔らかくして食べるはずが、要塞への帰還を優先して行軍中にパンを食べるだけに変更されてしまった。
 自分だけ収納から料理を出して食べるなんて真似ができるはずもなく、仕方なくパンをかじりながら歩いたのだ。
 部隊兵士への夕食は早めに提供されるよう手配したと、さきほどの報告会の議題で出ていたが、俺はどうしたものかな…………
 俺に反感を抱いてる人もいる中で部隊の人と共に食事するのも微妙か。
 全速で帰ってルルカの手料理を食べるほうがいいな!

「異形は…………何か言葉を発していましたか?」

 姫様への書状を書きながらレイシス姫が問いかけてきた。

「わからない言語を使ってました。魔族の言葉みたいですが」

 他はコロセとしか言ってなかったしな。
 アルタナ王都で人間に化けていた時は流暢りゅうちょうに話していたのだから、異形の姿に戻ると発声器官も変化して人語を喋れなくなるってことだろうか?

「捕獲できればこれまで未知の存在だった魔族のことを知る手掛かりとなり得るのですが…………
 捕まえられそうですか?」

「どうでしょう…………それほど強くない個体と思われますので、状況さえ整えば捕縛する機会はあるかと」

 今日対峙してみても強者特有のプレッシャーのようなものは感じられなかった。
 異形単体であれば3等級パーティーあたりでも十分捕まえられると思う。

「ただ、今回のようにワイバーンが上空に待機していて特殊個体が降下してくるとなると、自分以外では厳しいかもしれません」

 ちなみに死霊術のことは報告していない。
 黒オーガたちを冒険者ギルドで登録しているので隠す意味はあまりないのだが、アルタナ王国は一応他国なので言わなかっただけだ。

「我が国には獣人の精鋭が揃っています。
 こと強さに関しては決してツムリーソにも引けは取りません」

 いくら獣人が身体能力に優れていても、特殊個体相手に求められるのはあの硬い肌を抜く圧倒的な攻撃力だからなぁ。

「アルタナ王都での異形騒ぎの際に、共にいたランテスという獣人の2等級冒険者を覚えておられますか?」

「ええ、もちろんです」

「武闘大会では準決勝まで進んだ猛者なのですが、そのランテスをしても特殊個体相手には攻撃が通じないのです」

「…………特殊個体に関してはベルガーナとコートダールから報告を受けています。
 ですが、軍内部では我が国の精鋭なら討伐可能と楽観視する声も多いのです」

 そうか。
 今日もそうだが、前のレグの街救援の際も俺がいち早く特殊個体を討ち取ってしまったから、この国は未だに特殊個体との交戦経験がないのか。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき
ファンタジー
無能テイマーとしてSランクパーティをクビになったオース。 モフモフテイマーという、モフモフモンスター専門のテイマーであった彼は、すぐに最強モンスター『マーナガルム』をテイムするが……。 実はオースこそが、Sランクパーティを支える最強メンバーだったのだ。 あらゆるモンスターへの深い知識。 様々なクラスを持つことによる、並外れた器用さ。 自由になったオースは、知識の力で最高の冒険者へと成り上がっていく。 降って湧いた凶悪な依頼の数々。 オースはこれを次々に解決する。 誰もがオースを最高の冒険者だと認めるようになっていく。 さらに、新たなモフモフモンスターが現れて、仲間も増えて……。 やがて、世界を巻き込む陰謀にオースは関わっていくのだ。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

ゴミ扱いされた俺、再利用率が見えるので異世界で工房を始めます 〜村から始まる職人成り上がり〜

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
目を覚ますと、そこは異世界のゴミ捨て場だった。 元町工場作業員のレントが手に入れたのは、 「素材の再利用効率が見える」という不思議な力。 壊れた農具、捨てられた鉄屑、使い物にならない廃材。 誰も価値を見出さないそれらを修復し、作り替えていくことで、 村の生活は少しずつ変わり始める。 やがて噂は町へ、商人へ、そして貴族へ。 これは、ゴミと呼ばれた素材から始まる、 小さな工房の成り上がりと産業革命の物語。 【更新予定】 現在ストックがありますので、しばらくの間は毎日20時更新予定です。 応援いただけると更新ペースが上がるかも?笑

前世で過労死し、宿屋のモブ女子に転生。失感情なばかりに完璧な接客で最強の女たちをダメにする――「お客様、添い寝はオプション料金になりますが

駄駄駄(ダダダ)
ファンタジー
前世で部下のミスを被り、不眠不休で働いた末に過労死した伝説のマネージャー・清水(28歳)。彼女が転生したのは、人気RPG『アステリア・ファンタジア』の世界。それも、名前も出ない宿屋のモブ店主、シエル(18歳・小柄)だった。 前世で感情を使い果たして「失感情症」気味になったシエルは決意する。「今世は、自分の手の届く範囲だけを、完璧に『おもてなし』して静かに暮らそう」 そんなある日。宿の前に、かつての自分と同じように使い潰され、泥の中に捨てられた一人の「ゴミ」がいた。それは、クズ勇者に「壊れた盾」と罵られ、解雇された最強の聖騎士・アルテミス。 泥まみれの彼女を、シエルは淡々と「収容」し、プロの技術で洗浄し、栄養満点のスープを差し出す。「お客様。当宿のサービスに『絶望』は含まれておりません。オプションで『安眠』ならございますが?」 勇者への復讐? 世界平和? そんなもの、宿屋の仕事には関係ない。だが、完璧な接客(隠れママ力)で心身を解されたアルテミスは、いつしかシエルなしでは眠れない体になってしまい――。 さらには後悔して戻ってきた天才魔術師までが、シエルの「膝」を奪い合う抗争を始め……。これは、失感情症な少女が、無自覚に最強の女たちを「わからせて」しまう、癒やしと執着の宿屋経営録。

処理中です...