異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 翌日城に行き、南砦から城に送った時に荷物を運んだレイシス姫の部屋で木箱や布袋を大量に収納に入れる。
 とても個人の手荷物とは思えないほどの量なのだが、中身に関する説明は何もなかった。ここに来る時にアルタナ王国から大量の贈り物を持って来て、その返礼にベルガーナ王国からも大量の贈り物を持たされたのだろう、と自分で推測してみる。

 今日のレイシス姫の格好は南砦にいた時のような普段着ではなく、豪華な装飾が施された軍服姿だ。将官用か王族仕様なのかはわからないが、偉い人感マシマシな見た目だ。
 今回もレイシス姫は体をロープで繋ぐことを拒否してきたが、今日は長時間飛ぶことを理由に繋ぐのを了承させる。
 昨日の件を引きずっているのかレイシス姫との会話はこれと最初の挨拶の2度だけだった。



 2時間ほど飛んだだろうか。
 全速ではなく巡行速度で飛んでいるのでアルタナ王都まではまだ道半ばと思われる。
 バルーカアルタナ王都間は以前救援に赴いた際の帰りに1度飛んだだけなので、実はまだ道筋?(飛行経路のほうが正しいか?)がよくわかってなかったりする。
 多少時間がかかってもバルーカから西に飛んでルミナス大要塞で北上、レグの街を経由してアルタナ王都に行くルートを選ぶべきだったか。今更悔やんでも遅いけど……

 森林地帯を過ぎて荒れた土地に着地する。

「ここで休憩しましょう」

「不要です」

 土魔法で休憩用の小屋を作る。
 ルルカと旅する時にイチャイチャするのにたくさん利用した小屋だ。
 窓際にあるベッドに見立てた台の上に布団を敷き、

「まだ先は長いです。
 どうぞこちらでお休みください」

 氷入りの果汁水をお出しして、表に椅子を作って待機する。
 レイシス姫は軍服を脱いで横になられるようだ。
 もちろん覗いたわけではなく、中から聞こえる音や雰囲気で察したのである。

 10分……

 20分……

 40分……

「……ツムリーソ」

 休憩に入って1時間になろうとした頃、小屋の中から呼ばれた。

「お呼びでしょうか?」

 レイシス姫は布団の中で上半身を起こした状態で、軍服は脱いでおりシャツに近い白の肌着っぽいお姿で艶っぽさ全開だ。アルタナに送ることに対するご褒美だろうか?

「昨日から考えておりましたが、そなたの要望を変えるつもりはありませんか?」

 要望というのは奴隷達と共に奉仕するという条件のことだ。

「申し訳ありません。変えるつもりはありません。
 自分や嫁いでくる女性の一生に関わることなので……」

「昨日も少し申しましたが、冒険者に嫁がせるというだけで難儀なのです。その上そなたの要望を条件とするなら間違いなく候補は誰もいなくなるでしょう」

「そのことなのですが、私との婚儀はアルタナ王国にとっては魔術士強化の側面があるとはいえ、元々はレイシス様の私への感謝のお気持ちからの御発案のはず」

「そう……ですが……」

「なのにそのことで他者を不幸にするのではせっかくのお気持ちも無駄となってしまいます」

「つまり別の形で謝意を示せと申すのですね」

「御意」

「ではツムリーソ、何か望みはありますか?」

 うまく婚儀をなかった形にしたのはいいけど別な難題が……

「こうしてレイシス様とお話しできる機会を賜りし事こそが何よりの褒美と受け止めております」

「そのようなことでは謝意を示せたとは到底申せませぬ。
 ツムリーソ、望みを言いなさい」

「では……、金銭で……」

「そなたの能力ちからであれば金銭などいくらでも稼げよう。
 わざわざ望みを使ってまで得るものでもありますまい」

 お金欲しいけどなぁ。
 もっとも稼ぎたいのなら真面目に狩りやギルドの依頼をこなすべきなのだろう。

「…………」

「どうしました?」

 本来であればエロいことを要求したいとこだけど、イリス姫様の御親友にそのようなことは畏れ多い……
 いや、無理と判断するのは早計か? イケるんじゃないのか?
 エロい望みを言うのは簡単だが、外交問題になりはしないか?
 ここは自重すべきだろう。

「叶うならば次にレイシス様にお会いできる機会を頂きたいのと、改めて私の望みはその時に……」

「わかりました。そのように致しましょう」

 ザ・先送りである。

「ツムリーソ、休憩はもう十分です。
 アルタナへ急ぎますよ」

 先ほどより幾分か元気になられたレイシス姫は既にベッドから出て軍服を着ようとしている。
 その様子をジィーと眺めている訳にもいかず、再び表に出て待機する。




……

…………


 レイシス姫を抱えて再び飛び上がった俺は一路アルタナ王都を目指した。
 休憩前よりも幾分かレイシス姫の俺を抱き締める力が強いような気がする。
 この様子ならもう少し飛行スピードを上げても大丈夫だろうと判断して速度を上げる。
 アルタナ王都には昼過ぎに到着した。

 約1月ぶりに訪れたアルタナ王都は、魔物の軍勢の有無を除けば前回と特に変わった様子はない。
 王都の北側の区画にある王城の前に降りた。

「ついてきなさい」

 とっとと王城の中に入っていくレイシス姫の後を慌ててついていく。
 衛兵のいる扉のとこはさすが姫様、顔パスだ。
 俺も続こうとしたところでバッっと槍で行く手を塞がれた!

「その者は私の従者です」

「ハッ!」

 うん。俺を顔パスで通す理由はないわな。


 王城の中をレイシス姫に続いて歩いて行く。
 高級な石材を使っているだろう床は明らかにこんな庶民靴で歩いていい場所ではない。

 ここがこの国の権力の中枢……

 緊張しまくりで手と足が同時に連動してしまいそうだ。
 ベルガーナ王国の王都で魔術研究所に入る為に王城に赴いた際には、許可を扱っている軍務部は城の外の塔のようなところにあって王城の中には入っていない。
 他国とはいえ、これが初めての王城探検なのである。

 俺のドキドキ☆初体験な心情に構うことなく歩いていたレイシス姫が急に立ち止まった。

「おぉ、レイシスではないか!
 ベルガーナからいつ戻ったのだ?」

「たった今です、兄上」

 あ、兄? ということは王子様ってことなん?
 俺は慌てて端に移動して片膝を着く。

 30代後半のちょっと小太りで背丈も俺より少し高いだけでレイシス姫よりも低いこの男が王子……
 商人と言われたほうがよほどしっくりと来る。服装も地味で頭に乗せているティアラみたいな装飾が唯一王族ぽさをアピールしている。
 別に王族だからといって美丈夫・偉丈夫でなければならないなんて法則はないのだろうけど。
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