異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 ミリスさんに、西の森の拠点に死霊術で操った魔物を置くことで、壁外区北口を出てすぐの狩場に影響を及ぼすことについて聞いてみた。

「特に問題ありませんよ。壁外区の安全度が増すことは冒険者ギルドとしても歓迎するところですし。
 魔物を狩りたいのであれば南の森に行けばよいのです。
 それにツトムさんが作られたという拠点があるのは西の森の北部(崖上)です。
 西の森の南部(崖下)ではこれまで通りの狩りが行えるかと思います」

 西の森の崖下のところは拠点を作った際に狩場にしようとしていた場所だ。
 その後すぐに飛行魔法を覚えたので、狩場としては1度も使わなかったという経緯がある。
 それにしても、西の森や南の森を狩場として使えるのは中堅クラスの冒険者だ。
 俺が気にしているのは初級クラスの冒険者の狩場なんだけど……

「私共(=冒険者ギルド)よりも、お城からのほうが歓迎されるのでは?
 定期的に掃討作戦を行っている騎士団の負担が減りますので」

 駆け出し冒険者の狩場とかあまり気にしてなさそうだな。
 ミリスさん個人というよりギルド全体の方針のようだ。
 正確な数字を知ってるわけではないが、毎年成人して冒険者になる人数分だけ引退者や死亡者が存在することになる。
 これが軍隊だったら、減った人数分だけ新規の入隊者を増減させて調整することが可能だが、登録制の冒険者だとそうはいかない。
 
 無限に依頼があるわけではないし、新人冒険者の誰もがパーティーを組めるわけでもない。
 依頼やパーティーからあぶれた者は冒険者としてやっていけずに辞めていくことになる。
 もっとも五体満足で辞めれた者はまだ幸せと言えるだろう。

 身体に損傷を負って辞める者の後の人生は悲惨だ。
 面倒を見てくれる家族がいる者はまだいい。
 身寄りがない者や家族からも忌避される者は各街にある貧民街へと堕ちていく。
 このバルーカの壁外区にもそういう貧民街はある。
 西にある歓楽街と北西の倉庫区画との間のバラックが密集している区画がそれだ。

「でもよほど自信があるのですね。
 死霊術を習得できるのかわからないのに先に置き場所の心配なんて」

「習得が無理そうならすぐ諦めますよ」

 しまったなぁ。
 自分的には『魔法の才能』頼りの自力での習得もしくは、(スキルに暗く表示されれば)ポイントを使って習得できると安易に考えていた。
 他の人からすれば先走り過ぎてるか、よほど自分の腕を過信している超自信家に見えてしまうか……

「ツトムさんなら大丈夫ですよ!」

 えらく軽い感じで太鼓判を押された。
 これ、ミリスさんが俺に全幅の信頼を寄せているのではなく、単にかけ札で儲けたから機嫌が良いってだけだろ!

「それと魔物を使役する際にはギルドでの登録を忘れないようにしてくださいね。
 未登録の魔物を街中で歩かせると、討伐や処罰の対象になりますから」

 オークキングや黒オーガを討伐できるのならそれはそれで大したものだ。
 もっとも使役した魔物が暴れるのと比例して俺への罪状が増えていくわけだが……

「つまり、死霊術で魔物を使役する際はギルドでやらないとダメってことですよね?」

「そんなことはありませんよ。
 ご自宅とか街の外でしたら職員を派遣して登録しますので」

 職員が来てくれて登録できるのは有り難いな。
 もっとも昨日の感じだと家では無理そうだけど。

「それにしても登録の仕方とかよく知ってますね。
 ひょっとして以前に死霊術士がいたとか?」

「私が知る限りにおいては当ギルドに死霊術士が在籍していたことはありませんね。城内ギルドも同様のはずです。
 手続きに関しては他にも特殊な武器や防具、魔道具、動物なんかも登録が必要ですので知ってるだけでして……」

「動物!?」

 犬とか狼か? 狼がこの世界にいるのかは知らないけど……
 しかし戦力になるのだろうか?
 ゴブリンぐらいならまだしも、オークとかに噛み付いたところで叩き潰されて終わりのような……

 ま、まさか!?
 あの技を使うというのか!!

 伝説の絶……抜刀牙…………

「鳥は飼い慣らすと索敵に最適ですからね。
 ティンクルなんて狩猟も可能ですから人気ありますよ」

 なんだ、鳥かよ……ティンクル?
 さすがに異世界と言えどあの技は存在しないらしい。


 とりあえずは西の森に使役した魔物を置いても問題なさそうだし、次は王都で魔術研究所への立ち入り許可の申請を行う。
 ギルドを出てすぐに王都へ向けて飛び立った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

-ベルガーナ王城の一室にて-

「…………以上がバルーカでの調査結果になります」

 軍務卿並びに、出席している軍幹部への報告を終えて調査官は着席した。

「帝国軍に若干の死傷者が出たようですが、それ以外は特に損害もなく南砦を奪還できたようですな」

「外務卿あたりは頭を痛めてるのではありませんか?」

「帝国軍には十分配慮した上での損害なのですから、あちらも納得する他ありますまい」

「そしてその帝国軍の窮地を救ったというのが……」

「冒険者の魔術士、ツトムですか」

「イリス殿下の配下というのは間違いないのか?」

「複数の証言を得ています。間違いありません」

「姫派はあれほど念入りに解散させたはずだが……」

「切り札を隠していた、ということでは?」

「バカな! 跡目争いに敗れた後で切り札を使うことに何の意味がある?」

「そ、それは……」

「そもそもがだ。
 たかが魔術士1人が切り札足り得るのか?」

「この者が倒したオークジェネラルがオークキング並みの強さだったというのも眉唾ですね」

「しかし……」

 ここでこの部屋にいる軍幹部の視線が軍務卿に集中する。
 コーディ・ルーディック侯爵。51歳。
 ルーディック侯が軍務卿に就任して9年が過ぎていた。
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