異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
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 ロイター子爵の執務室を後にする。
 すぐにもコートダールの商都へ飛んで行くべきなんだが……
 問題はこの状況をルルカに伝えるかどうかだ。
 教えたところでルルカが何かできるわけではないので、余計な心配をさせるだけだ。
 だが、コートダールの危機は数日後には(民衆レベルでも)ここバルーカに届くだろう。
 秘密にしたところで、『どうして教えてくれなかったんですかっ?!』と、問い詰められるのは必至だ。
 あるいは、『これはキツいお仕置きが必要かしら』なんてことになってしまうかも……
 …………うん。報告は大事なことだな。


 家に降りて玄関を開けると、

「うっ!?」

 3人が待ち構えていた。さすがに出て間もないので『おかえりなさいませ』はないようだ。
 ついさっき大げさに別れを惜しんだばかりなのですごく気まずい。

「どうかされましたか?」

 既に着替えてる3人を代表してやはりルルカが聞いて来る。

「状況が変わった。アルタナ王国ではなくコートダールが魔物に攻められている」

「っ?!」

「今からコートダールの様子を見に行ってくる。必要なら支援も行ってくる。
 だからルルカ」

「は、はい……」

「ワナークは大丈夫だから心配しなくていいからな」

 安易な物言いだっただろうか? 最悪な状況だったとしてもワナークだけは死守するつもりではあるけど……

 アルタナ王国が攻められた際には、レイシス姫の守るレグの街を守ることができた。
 しかしあの時は突破されたとはいえ南のルミナス大要塞が健在で、国内に流入する魔物を減らしていたことも大きい。決して俺1人の力で守れたわけではないのだ。

 だが今回は1度でも守りを突破されてしまうと国内は魔物によって蹂躙じゅうりんされ、最悪コートダールは滅亡するかもしれない。少なくともロイター子爵はそのように分析している。

 アルタナ王国との違いはイズフール川沿いの防御線の長さだ。
 執務室で見た地図を思い浮かべる。
 イズフール川は商都の南西の山脈を源流として、緩やかにカーブしながら東へと伸びていき海へと続いている。
 途中幾つかの支流と合流して大河を形成するが、渡河とかが可能な上流域に防衛線を構築している。河川全体の6分の1ぐらいの長さだ。あくまで地図上ではあるが。
 グラバラス帝国からの援軍が見込めない中では、突破された防御陣を手当てする戦力がコートダールにはない。
 冒険者ギルドも緊急招集を発動するだろうが果たして……

「ツトムさん、私がロクダーリアで暮らしていた時から何度もコートダールは魔物に攻められていました。両親がワナークに移住して以降もです。
 なのできっと大丈夫だと…………思います」

 大丈夫なわけがない。今回はこれまでとは状況が異なるのだ。
 でもさすがにこれは言う必要はないな。

「俺も行くしな! 安心して待っててくれ」

「……はい」

「ロザリナとディアも後は頼むな」

「もちろんです」「任せろ!」

「それじゃあ行ってくる!!」

 なるべく明るい感じで家を出て、コートダールの商都目指して朝日が昇る中を全速力で飛んだ。



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-バルーカ壁外区ツトム宅にて-

「ルルカさんワナークは大丈夫ですよ、ツトム様は凄くお強いですから」

「……そうね」

 私はツトムの実戦は王都から乗合馬車でバルーカに初めて来た時の1度しか見ていない。
 剣と槍で不格好に戦っていた姿はまるで初心者だった。
 武闘大会でもそれほど強そうには見えなかった。炎の鳥はすごく綺麗だったけど。

「帝国からも援軍が送られるはずだぞ」

 そういえば1度ロザリナと一緒にツトムの攻撃魔法を見せられたことがあったわね。
 その後意見を求められて何か言ったような気がするけど…………覚えてないわ。

「それでルルカさん、そのぉ…………」

「どうしたの? ディア」

「ツトムが朝食を出さずに出て行ってしまったので、改めて作るべきだと思うのだが……」

 そうだった!? 我が家では夕食を多めに作って4人分の朝食をツトムの収納に入れて置き、翌朝食べるのだ。
 今朝はバタバタしていてすっかり忘れてしまっていた。

「残っている材料で軽く作りましょう。ロザリナ、ディア、手伝ってね」

「はい」「もちろんだ!」

 ディアはまったく……

 先ほどのツトムの様子が少しおかしかったのが気になる。

 これまではコートダールが攻められたのを知った時点で事態は終息していた。実際に起きたことと、その知らせが私の耳に届くまで時間差が生じていたせいだ。
 そのおかげで両親や祖父母の身を案じる必要はほとんどなかった。
 しかし今回は時間差なく今実際に起きてることを知ることができている。
 ツトムがお城の方々と懇意にしているおかげだ。
 今まさに家族に危機が迫っている状況なのに私にできることはない。せいぜい祈りを捧げることぐらいだ。
 ルミカは取り乱してないだろうか、両親や祖父母を助けることができているだろうか、と心配は尽きない。
 ツトムのことだってすごく心配なのに……

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 コートダールの商都は南面に立派な城壁が築かれていて防御を固めているが、東西と北は塀と商都の北を流れるライン川から水を引き込んでいる用水路で区切られているだけだ。
 商都にはバルーカの内城、王都における王城といったいわゆる権力の象徴としての城が存在しない。
 この国が王制ではなく有力者による合議制で国政を執り行っているからだ。

 そんな商都にこれまでで最速で辿り着いた。
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