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帝都の奴隷商でディアを購入して間もない頃、ミリスさんに頼まれてオーク集落討伐に参加した際に戦ったのが、両手にトンファーブレードを持つ二本角の黒オーガだった。
グリードさんと共に戦い辛くも撃退した、ということになってはいるが、実際は黒オーガのほうが退いてくれたというだけだ。
一昨日コートダールのレグザール砦で討ち取った2体の黒オーガ。同じ二本角ではあるが、その2体よりも強力な個体であることは間違いない。
「相手があの特殊個体だとすると、自分1人で討伐するのは難しい…………いや、はっきり言って無理ですね」
「ツトムさんでも無理ですか」
せめてグリードさんがいれば…………、確実に倒すならグリードさんクラスが3~4人は欲しい。
ロイター子爵に頼んでみるかなぁ。
軍にも腕の立つ人はたくさんいるだろうし。
姫様を西の森の拠点にお連れした際に、護衛として同行していた人も強そうだった。
確か伯爵(=バルーカ領主であるエルスト・グレドール伯爵)の家臣だったっけ。
でもなぁ…………
いくら軍が冒険者ギルドとの関係を重視してると言っても、直接的に戦力を出すような類の関係性ではない。
それに軍の使命はバルーカと南砦を守ることだ。
黒オーガが南の森で暴れてる程度では動くことはできないだろう。
他には、東の街メルクの冒険者ギルドに依頼を出すという手がある。
3等級昇格試験の対戦相手だった3等級パーティーの武烈、そのリーダーのヘンダークと重戦士のグラハムならその実力は申し分ない。
しかもメルクには武烈以外にも3等級パーティーがいる。彼らの中にも実力者はいるはずだ。
もっとも、2組のパーティーが都合よくメルクに滞在していて、そのどちらも手が空いてるなんて幸運はまずないと思う。
それ以前に黒オーガとは必ずしも遭遇するとは限らないわけで、他ギルドのトップパーティーに参戦を求めるのは現実的に無理だな。
「今回はタークさん達の護衛に専念することにします。
ミリスさんも余計な期待はしないでくださいね」
「わ、わかりましたよぅ…………
タークさんには明日とお伝えしてよろしいですか?」
「構いませんよ。朝、東門の外に集合で」
「ツトム様、私も明日はお供します!」
「明日は依頼を受けたわけでもないから報酬もないし、ロザリナは無理して付き合わなくても…………」
というのは建前で、本当は黒オーガと交戦の可能性のある場に、ロザリナを連れて行きたくないだけだ。
ロザリナも決して弱くはないのだが、というよりむしろ奴隷落ちしたことで冒険者活動を停止し、剣の修練に専念できたことで以前よりも強くなってさえいる。
しかしながら、それでも黒オーガと戦えるような強さではない。
「報酬などいらないです。是非ともお傍に!」
「わ、わかった。特殊個体とは戦わずにすぐに退避するように」
「ありがとうございます!」
くそっ、押し切られてしまった?!
常日頃ロザリナからの特訓をしませんか? アピールを却下してるだけに、こういったお願いを断り辛くなってしまっている。
まぁ敵感知や地図(強化型)スキルがあるから奇襲は防げるし、即退避するという言い付けさえ守ってくれればそれほど危険ではないだろう。
ミリスさんの要件も済んでしまい、壁外ギルドを出たところで思案する。
てっきり浄化魔法の指名依頼とばかり思っていたので、まだ午前中なのに一気に暇になってしまった。
まいったなぁ…………
このままだと本当に午後はロザリナとの特訓コースになってしまう。
本来美女と身体を動かすのは楽しいことのはずなのだが、お色気シーンというかサービスショット的なモノが一切ないのだ。
運動する際に薄手のユニフォーム的な格好をするのは現代的な感覚らしく、過去に一度だけ『汗もかいてきたし上に着てるのを脱いだらどうだ?』と言ってみたら、その時一緒に身体を動かしていたルルカと共に心底蔑んだような目で見られてしまった。
この世界では外で肌を晒すという風習自体がないみたいだし、南部三国と言っても熱帯な気候ではなく、むしろ国自体が高地にあるため涼しかったりする。過ごしやすくはあるのだが。
それにしても何か適当な用事はないものか。
…………あっ!?
丁度いい。この機会にアレをやってみよう!
「ロザリナ、一旦家に帰るぞ」
「どうかされましたか?」
「ルルカ達にも話さないといけないからな」
…
……
…………
「ただいま~」
「「お帰りなさいませ」」
なんかこうして出迎えられるのにも慣れてきた感じがする。
「こんなに早くお帰りになられるなんて珍しいですね。
何かありましたか?」
「実は今晩バーベキューをしようと思ってな。
3人には準備を手伝ってもらいたいんだ」
「バ? キュ?」
「??」
「よくわからないが、そこはかとなく美味しそうな気配がするな!」
ディアはさすがだな。語感だけで食事関連だと嗅ぎ付けたか。
それにしても、ルルカが『キュ?』とか言って小首をかしげる仕草は意外に可愛い。今後は萌え系を習得させる方向もアリか?
…………いや、不意にやるから可愛いと思えるのであって、普段からやられるとそれはそれで痛々しいか。
「ツトムさん?」
「あ、ああ。コホン。バーベキューとは…………」
当然のことながら、この世界にレジャー目的なキャンプなどという概念は存在しない。
しかし旅をする者にとっては、目的地への途中で野営するのは当たり前のことだ。
他に軍隊や冒険者も野営する機会は多い。
野営する際の食事は携帯食が主で、収納持ちの魔術士がいたとしても出来合いの食事を出すのが普通だ。
まぁ狩った獲物をその場で捌き、焼いて食べることぐらいは普通に行われてるだろうが、機材や食材を準備しての本格的なバーベキューは俺達がこの世界で初めてなはずだ。
グリードさんと共に戦い辛くも撃退した、ということになってはいるが、実際は黒オーガのほうが退いてくれたというだけだ。
一昨日コートダールのレグザール砦で討ち取った2体の黒オーガ。同じ二本角ではあるが、その2体よりも強力な個体であることは間違いない。
「相手があの特殊個体だとすると、自分1人で討伐するのは難しい…………いや、はっきり言って無理ですね」
「ツトムさんでも無理ですか」
せめてグリードさんがいれば…………、確実に倒すならグリードさんクラスが3~4人は欲しい。
ロイター子爵に頼んでみるかなぁ。
軍にも腕の立つ人はたくさんいるだろうし。
姫様を西の森の拠点にお連れした際に、護衛として同行していた人も強そうだった。
確か伯爵(=バルーカ領主であるエルスト・グレドール伯爵)の家臣だったっけ。
でもなぁ…………
いくら軍が冒険者ギルドとの関係を重視してると言っても、直接的に戦力を出すような類の関係性ではない。
それに軍の使命はバルーカと南砦を守ることだ。
黒オーガが南の森で暴れてる程度では動くことはできないだろう。
他には、東の街メルクの冒険者ギルドに依頼を出すという手がある。
3等級昇格試験の対戦相手だった3等級パーティーの武烈、そのリーダーのヘンダークと重戦士のグラハムならその実力は申し分ない。
しかもメルクには武烈以外にも3等級パーティーがいる。彼らの中にも実力者はいるはずだ。
もっとも、2組のパーティーが都合よくメルクに滞在していて、そのどちらも手が空いてるなんて幸運はまずないと思う。
それ以前に黒オーガとは必ずしも遭遇するとは限らないわけで、他ギルドのトップパーティーに参戦を求めるのは現実的に無理だな。
「今回はタークさん達の護衛に専念することにします。
ミリスさんも余計な期待はしないでくださいね」
「わ、わかりましたよぅ…………
タークさんには明日とお伝えしてよろしいですか?」
「構いませんよ。朝、東門の外に集合で」
「ツトム様、私も明日はお供します!」
「明日は依頼を受けたわけでもないから報酬もないし、ロザリナは無理して付き合わなくても…………」
というのは建前で、本当は黒オーガと交戦の可能性のある場に、ロザリナを連れて行きたくないだけだ。
ロザリナも決して弱くはないのだが、というよりむしろ奴隷落ちしたことで冒険者活動を停止し、剣の修練に専念できたことで以前よりも強くなってさえいる。
しかしながら、それでも黒オーガと戦えるような強さではない。
「報酬などいらないです。是非ともお傍に!」
「わ、わかった。特殊個体とは戦わずにすぐに退避するように」
「ありがとうございます!」
くそっ、押し切られてしまった?!
常日頃ロザリナからの特訓をしませんか? アピールを却下してるだけに、こういったお願いを断り辛くなってしまっている。
まぁ敵感知や地図(強化型)スキルがあるから奇襲は防げるし、即退避するという言い付けさえ守ってくれればそれほど危険ではないだろう。
ミリスさんの要件も済んでしまい、壁外ギルドを出たところで思案する。
てっきり浄化魔法の指名依頼とばかり思っていたので、まだ午前中なのに一気に暇になってしまった。
まいったなぁ…………
このままだと本当に午後はロザリナとの特訓コースになってしまう。
本来美女と身体を動かすのは楽しいことのはずなのだが、お色気シーンというかサービスショット的なモノが一切ないのだ。
運動する際に薄手のユニフォーム的な格好をするのは現代的な感覚らしく、過去に一度だけ『汗もかいてきたし上に着てるのを脱いだらどうだ?』と言ってみたら、その時一緒に身体を動かしていたルルカと共に心底蔑んだような目で見られてしまった。
この世界では外で肌を晒すという風習自体がないみたいだし、南部三国と言っても熱帯な気候ではなく、むしろ国自体が高地にあるため涼しかったりする。過ごしやすくはあるのだが。
それにしても何か適当な用事はないものか。
…………あっ!?
丁度いい。この機会にアレをやってみよう!
「ロザリナ、一旦家に帰るぞ」
「どうかされましたか?」
「ルルカ達にも話さないといけないからな」
…
……
…………
「ただいま~」
「「お帰りなさいませ」」
なんかこうして出迎えられるのにも慣れてきた感じがする。
「こんなに早くお帰りになられるなんて珍しいですね。
何かありましたか?」
「実は今晩バーベキューをしようと思ってな。
3人には準備を手伝ってもらいたいんだ」
「バ? キュ?」
「??」
「よくわからないが、そこはかとなく美味しそうな気配がするな!」
ディアはさすがだな。語感だけで食事関連だと嗅ぎ付けたか。
それにしても、ルルカが『キュ?』とか言って小首をかしげる仕草は意外に可愛い。今後は萌え系を習得させる方向もアリか?
…………いや、不意にやるから可愛いと思えるのであって、普段からやられるとそれはそれで痛々しいか。
「ツトムさん?」
「あ、ああ。コホン。バーベキューとは…………」
当然のことながら、この世界にレジャー目的なキャンプなどという概念は存在しない。
しかし旅をする者にとっては、目的地への途中で野営するのは当たり前のことだ。
他に軍隊や冒険者も野営する機会は多い。
野営する際の食事は携帯食が主で、収納持ちの魔術士がいたとしても出来合いの食事を出すのが普通だ。
まぁ狩った獲物をその場で捌き、焼いて食べることぐらいは普通に行われてるだろうが、機材や食材を準備しての本格的なバーベキューは俺達がこの世界で初めてなはずだ。
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