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ドアを開けると、
「ツトム様でいらっしゃいますね?」
「え、ええ…………」
壁外ギルドの受付嬢だった。
最近はずっと担当のミリスさんが固定だったが、それまで何度か対応してもらったことがある。
20代で凄くグラマーな体型をしている女性だ。
「緊急で要請が来ました! すぐに城内ギルドに行ってください!」
「要請? 緊急招集のことですか?」
でも緊急招集なら街中に鐘の音が鳴り響くので違うか。
「緊急招集ではありません。
内容は知らされてませんので、とにかく城内ギルドに急いでください!」
「わかりました」
こういう呼び出しは今までミリスさんが来ていたのだが、今日は休みか別件で手が離せなかったとかかな。
「ツトムさん…………」
「聞いての通りだ。
遅くなるかもしれないので、夕食は先に食べるように」
「「「いってらっしゃいませ」」っ」
3人に見送られて再び家を出る。
緊急とのことなので飛行許可証を取り出して飛んで行くことにした。
城内ギルドに入ると、待ち構えていた職員に1階の奥へと連れ込まれた。
「来てくれたか」
このバルーカ冒険者ギルドのマスターであるレドリッチが待っていた。
「緊急ということですが、用件はなんで…………」
「こっちだ」
俺が言い終わるのを遮って近くの小部屋に連れ込まれた。
「君を呼び出したのは、重症者の治療をしてもらうためだ。
今日4つのパーティーが合同で南の森へと入ったのだが、特殊個体の襲撃を受けて敗走、少し前にギルドに戻ってきた」
間違いなく奴(=両手にトンファーブレードを持つ二本角の黒オーガ)の仕業だろうな。
「死者4名、負傷者多数。
君に治療をお願いしたいのは、ギルドの回復術士では対応できない5人の重症患者についてだ」
「わかりました」
死者4人か…………
この前6人殺されたと聞いたので、奴に既に10人も殺されてることになる。
ひょっとしたら俺が知らない、ギルドすら把握してない犠牲者が他にいるのかもしれない。
犠牲者は冒険者だけとは限らないわけで、例えばバルーカとメルクの間を徒歩移動してる人が襲われたとしたら、被害を正確に把握するのはまず無理に違いない。
コンコン。
「準備が整いました」
ドアを閉めたままで外から声を掛けられた。
レドリッチと共に少し大きめの部屋に移動する。
中には人が5人、ベッドではなく床に寝かされており、顔には白い布がそれぞれに被されている。
見た瞬間は死体にしか見えなかったが、5人共ちゃんと息をしていた。
どうやら一連の少しおかしな対応は、俺の回復魔法を秘匿するためのギルド側の配慮のようだ。
確か城内ギルドにはヤバいケガ人がいたら治療する、ぐらいのことしかミリスさん経由で伝えてないので、レドリッチがきちんと対応したってことなのだろう。
5人はいずれも深く斬られており、その内2人は手足が切断されていた。
重そうな状態の人から回復魔法を掛けていく。
範囲回復で一気に治さないのは、切断された手足を繋ぎ合わせながら回復魔法をしないとくっつかないのと、繋がらないままだと範囲回復で傷口が塞がってしまって、再び切って新たな切断面を作らなくてはならないからである。
治療が無事終わり、建物3階にあるレドリッチの執務室へと場所を移した。
「ご苦労だった。これが報酬…………いや、謝礼金だ」
50万ルクがテーブルに置かれた。
1人につき10万ルクということらしい。
それに…………
「謝礼金ですか?」
「そうだ。報酬として渡すとこちらも活動内容を記録に残さないといけないからな。
この方法であれば君の回復魔法のことを伏せることができる」
使途不明金のようなものかな?
「そういうことであれば遠慮なく頂きます」
「確認するが、君の働きそのものもカウントされないが、構わないのだな?」
「もちろんです。別に自分に不都合はありませんので」
確か昇格試験を受ける際に、それまでの功績や働きによっては試験を受けられないこともあるらしい。
南砦にいた時に絡んできた4等級パーティーも、ギルドの承認が得られずに3等級昇格試験を受けられずにいた。
もっともこれ以上等級を上げるつもりのない俺には、まったく関係ないことなので何の支障もない。
「しかし頭の痛いことだ。
これだけの犠牲者を出してるのに、討伐の目途も立たないとは…………」
レドリッチがこめかみをグリグリしている。
相当お疲れのようだ。
まぁ自惚れるわけではないが、俺でさえ二本角の黒オーガを確実に討ち取ることができない以上、ここのギルド連中ではどうにもならないだろう。
「南の森に立ち入るのを全面的に禁止とするのはどうでしょう?」
「そんな権限は冒険者ギルドにはないな」
「あれ? 確か既に6等級以下の森での活動を禁止とする布告を出されてますよね?」
「あぁ、そのことか。
冒険者にはそう説明しているが、実際にそれは命令ではなく指導だ。もし破ったとしても何も罰則はない。
指導員から注意ぐらいはされるだろうがな」
確かに、人の行き来に制限を加えるなんて冒険者ギルドには大き過ぎる権限ではある。
そういった権限は軍とか領政府? 自治体? が握ってないといけないモノだよな。
「冒険者の活動は基本自己責任だ。
ギルドがある国や場所によって多少の違いこそあるが…………」
「ツトム様でいらっしゃいますね?」
「え、ええ…………」
壁外ギルドの受付嬢だった。
最近はずっと担当のミリスさんが固定だったが、それまで何度か対応してもらったことがある。
20代で凄くグラマーな体型をしている女性だ。
「緊急で要請が来ました! すぐに城内ギルドに行ってください!」
「要請? 緊急招集のことですか?」
でも緊急招集なら街中に鐘の音が鳴り響くので違うか。
「緊急招集ではありません。
内容は知らされてませんので、とにかく城内ギルドに急いでください!」
「わかりました」
こういう呼び出しは今までミリスさんが来ていたのだが、今日は休みか別件で手が離せなかったとかかな。
「ツトムさん…………」
「聞いての通りだ。
遅くなるかもしれないので、夕食は先に食べるように」
「「「いってらっしゃいませ」」っ」
3人に見送られて再び家を出る。
緊急とのことなので飛行許可証を取り出して飛んで行くことにした。
城内ギルドに入ると、待ち構えていた職員に1階の奥へと連れ込まれた。
「来てくれたか」
このバルーカ冒険者ギルドのマスターであるレドリッチが待っていた。
「緊急ということですが、用件はなんで…………」
「こっちだ」
俺が言い終わるのを遮って近くの小部屋に連れ込まれた。
「君を呼び出したのは、重症者の治療をしてもらうためだ。
今日4つのパーティーが合同で南の森へと入ったのだが、特殊個体の襲撃を受けて敗走、少し前にギルドに戻ってきた」
間違いなく奴(=両手にトンファーブレードを持つ二本角の黒オーガ)の仕業だろうな。
「死者4名、負傷者多数。
君に治療をお願いしたいのは、ギルドの回復術士では対応できない5人の重症患者についてだ」
「わかりました」
死者4人か…………
この前6人殺されたと聞いたので、奴に既に10人も殺されてることになる。
ひょっとしたら俺が知らない、ギルドすら把握してない犠牲者が他にいるのかもしれない。
犠牲者は冒険者だけとは限らないわけで、例えばバルーカとメルクの間を徒歩移動してる人が襲われたとしたら、被害を正確に把握するのはまず無理に違いない。
コンコン。
「準備が整いました」
ドアを閉めたままで外から声を掛けられた。
レドリッチと共に少し大きめの部屋に移動する。
中には人が5人、ベッドではなく床に寝かされており、顔には白い布がそれぞれに被されている。
見た瞬間は死体にしか見えなかったが、5人共ちゃんと息をしていた。
どうやら一連の少しおかしな対応は、俺の回復魔法を秘匿するためのギルド側の配慮のようだ。
確か城内ギルドにはヤバいケガ人がいたら治療する、ぐらいのことしかミリスさん経由で伝えてないので、レドリッチがきちんと対応したってことなのだろう。
5人はいずれも深く斬られており、その内2人は手足が切断されていた。
重そうな状態の人から回復魔法を掛けていく。
範囲回復で一気に治さないのは、切断された手足を繋ぎ合わせながら回復魔法をしないとくっつかないのと、繋がらないままだと範囲回復で傷口が塞がってしまって、再び切って新たな切断面を作らなくてはならないからである。
治療が無事終わり、建物3階にあるレドリッチの執務室へと場所を移した。
「ご苦労だった。これが報酬…………いや、謝礼金だ」
50万ルクがテーブルに置かれた。
1人につき10万ルクということらしい。
それに…………
「謝礼金ですか?」
「そうだ。報酬として渡すとこちらも活動内容を記録に残さないといけないからな。
この方法であれば君の回復魔法のことを伏せることができる」
使途不明金のようなものかな?
「そういうことであれば遠慮なく頂きます」
「確認するが、君の働きそのものもカウントされないが、構わないのだな?」
「もちろんです。別に自分に不都合はありませんので」
確か昇格試験を受ける際に、それまでの功績や働きによっては試験を受けられないこともあるらしい。
南砦にいた時に絡んできた4等級パーティーも、ギルドの承認が得られずに3等級昇格試験を受けられずにいた。
もっともこれ以上等級を上げるつもりのない俺には、まったく関係ないことなので何の支障もない。
「しかし頭の痛いことだ。
これだけの犠牲者を出してるのに、討伐の目途も立たないとは…………」
レドリッチがこめかみをグリグリしている。
相当お疲れのようだ。
まぁ自惚れるわけではないが、俺でさえ二本角の黒オーガを確実に討ち取ることができない以上、ここのギルド連中ではどうにもならないだろう。
「南の森に立ち入るのを全面的に禁止とするのはどうでしょう?」
「そんな権限は冒険者ギルドにはないな」
「あれ? 確か既に6等級以下の森での活動を禁止とする布告を出されてますよね?」
「あぁ、そのことか。
冒険者にはそう説明しているが、実際にそれは命令ではなく指導だ。もし破ったとしても何も罰則はない。
指導員から注意ぐらいはされるだろうがな」
確かに、人の行き来に制限を加えるなんて冒険者ギルドには大き過ぎる権限ではある。
そういった権限は軍とか領政府? 自治体? が握ってないといけないモノだよな。
「冒険者の活動は基本自己責任だ。
ギルドがある国や場所によって多少の違いこそあるが…………」
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