異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 今日はディアが久々に実戦に復帰する。
 魔物との戦闘は実に3年ぶりらしいのだが、ディアの表情は普段と変わりないように見える。ガチガチに緊張してるとかでなくて一安心だが…………

 狩場はバルーカ南の大森林にするつもりだ。
 少し前まで二本角の黒オーガが暴れていたので、低等級の冒険者は森への立ち入りが禁止(実際はギルドによる指導)されていた。
 俺とランテスが二本角を討ち取ったことで脅威を排除できたはずだが、相変わらず冒険者ギルドに足繫く通わない俺には、立ち入り禁止の措置が解除されたかどうかの最新情報を知る術はない。
 もっとも俺は低等級ではないし、二本角を倒した本人でもあるので、禁止措置に関係なく大手を振って森で活動できるのだ。


「ツ、ツトム! こんなことを頼んでいいのかわからないのだが…………」

「どうしたんだ?」

「盾を用意してくれないか?」

 盾?
 ディアは俺と奴隷商で対戦した時もロザリナとの訓練の時も盾は使ってなかったが。

「久しぶりの戦闘だから慎重に戦いたいのだ」

「そういうことなら防具屋に寄ってから行こう」

「頼む」

 ディアは元居た村では子供に剣術を教えていたのだっけ。
 その関係で盾も一通り使えるのだろう。

 防具屋ではとりあえず鉄製の安めの盾を購入した。
 今後戦闘スタイルを盾持ちで固定するなら、もっと高価な盾を買わなければならないだろう。

 しかし、この盾を買うぐらいのお金はディアにも持たせてたはずだが…………
 まさかもう使い切ったとかか?
 一体何に…………って、ディアのことだから食い物一択か。
 小言を言いたくなるのをここは懸命に抑える。
 好きに使っていいとお金を渡したのは俺自身だし、細かいことを指摘すると器の小さな男と侮られることにもなるだろう。

「どうした? 行かないのか?」

 ディアを抱えて南へと飛び立った。



「最初魔法で数を減らすから残りを倒すように」

「わかった!」

 ディアの装備はさきほど買った盾に防具は革鎧を着ている。
 剣はロザリナが持つ剣と同等のそれなりの値段のする物だが、革鎧はディアがウチに来た当初に買った間に合わせ的な物だ。
 護衛としての戦闘機会が全くないのでついつい忘れがちになってしまうが、装備をきちんと整えなかったのは俺の落ち度だろうな。

 革鎧の下は普通の服なので、見ていてあまりエロくないなぁと残念がっていたら、もう1つ忘れてたことを思い出した。
 メルク(=バルーカの東にある街)を拠点にしている4等級冒険者のフライヤさんが鎧の下に着ていた水着みたいな衣装のことだ。
 フライヤさん自身はかなり困った性格をしているが、着ている衣装に罪はない。てかあのお尻はエロい。
 問題はその衣装の名称が不明なことなのだが…………知ってそうなロザリナに聞くのも呆れられそうだし、知り合いにも聞きにくい。これでもバルーカトップ冒険者(暫定だけど)としての外聞がある。
 いっそメルクで直接情報収集するか。あそこのギルド職員のニナさんには貸しもあることだし。

「何をニヤニヤしてるんだ?」

「い、いや、別に何でも…………」

 地図スキルに敵反応が表示される。

「来るぞ! 4体だ!」

「むっ?!」

 初戦は倒すのに手頃なゴブリンあたりだといいのだが。
 しかし、現れたのはオークだった。
 こん棒持ちで特に装備が充実しているわけではない。
 高技量型でないことを確認して、風刃でサクっと3体の首を落とす。

「後は任せた!」

 後ろに下がりディアとオークの戦闘を見守る。

 ディアはオークのこん棒による打撃を一旦盾で受けてから剣で斬り付けるという、極めてオーソドックスな戦いを展開した。
 本来のディアの剣技はかなり独自性の強いものだ。ヘクツゥーム族に代々受け継がれている剣術と思われる。
 今回は久々の実戦ということで、慎重に防御主体で戦っているのだろう。

 複数の斬られた箇所からの出血で動きの鈍ったオークに、ディアは致命の一撃を叩き込み倒した。

「やったな! ディア!」

「ああ! 思ったより楽に倒せた」

 ロザリナみたいに二太刀で倒すといった圧倒感はなかったが、安心して見ていられる戦いだった。
 倒した4体のオークを収納にしまった。




……

…………


 その後ディアは3体のオークを倒した。
 俺が魔法で倒した分も合わせると9体になる。

「そろそろ2体同時に戦ってみるか?」

「問題ないぞ」

 少し移動するとすぐ反応があった。だが、地図スキルの赤点は一つだけだった。

「1体だけだな。他行くか」

「…………ツトム、あれはなんだ?」

 スキルで表示された方向に奴はいた。

 ズズズ…………ズズズ…………ズズズ…………

「あれはビッグキャタピラーだ。
 素材が高く売れるみたいだが、見習いでも倒せるぐらい弱いらしい」

 前回遭遇したのと同じぐらいの大きさの個体だ。

「無視して先に…………」

「高値で売れるなら倒してしまおう!」

「オ、オイっ」

 倒す気満々のディアがビッグキャタピラーに近付いて行く。

 剣が届く位置まで後数歩のところで、突如ビッグキャタピラーがディアに襲い掛かった!
 それまでの緩慢な動きとは打って変わった突進攻撃で、とっさに盾で防いだディアを吹き飛ばす。

「大丈夫かっ?」

「少し油断しただけだ!」

 追撃してくるビッグキャタピラーに対して、起き上がったディアは腰を落としてガッチリと盾で受け止める。
 今度は吹き飛ばされずに両者拮抗している。
 しかしディアは剣を持つ右手でも盾を支えているので攻撃に転じることができない。

「ツトム! この魔物本当に弱いのか? オークより強敵なんだがっ!」

「あー、たぶん横に避けて倒すんじゃないか?
 前進以外は苦手そうだし」

「わかった!」

 今日のディアの一旦盾で受け止める防御主体の戦い方との相性がとても悪い相手だ。
 もっとも不意を突かれた1度目はともかく、2度目の突進までもバカ正直に盾で受けるディアもどうかと思うが…………

 一度下がって距離を取ったディアは、三度突進してくるビッグキャタピラーを左に避けて剣を突き立てて倒した。

「「あっ!?」」

 プシューーーーー!

 傷口から噴出する緑色の体液を盛大に浴びてドロドロになるディア。

「ツ、ツトムぅ~」

 エッチの時以外でディアのこんな弱々しい声は初めて聞いた。
 毒とかはないみたいなので、汚れるだけで済んだのなら良しとすべきだろう。
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