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新人魔導師、2回目の発掘調査に参加する
魔導考古学省職員の眼差し
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何故夏希は急いでいるのだろう。わからないまま天音は階段を駆け上った。そのまま応接室に滑り込む。
「14時前! セーフ!」
「5分前行動もできないのか、お前は」
応接室にいたのは秋楽だった。先日と同じように、仏頂面で立っている。だから急いでいたのか、と天音は納得した。
「もういいぜ、天音の前では普段どおりで」
「そうか?」
途端に秋楽の表情が柔らかくなる。剣をベルトから外して、勝手に腰かけた。かなりマイペースだ。
「天音、改めて紹介する。コイツは早乙女秋楽。魔導考古学省の役人で、あたしの幼馴染。表向き役人側だけど、実は演技で、本当はあたしたちの味方だ。安心してくれ」
「よろしく」
「は、はぁ……よろしくお願いいたします……」
「すごい丁寧な子だな。礼儀正しい。俺は敬語苦手だぞ」
「胸張って言うなよな」
あのいけ好かない秋楽が、実は味方でしたと言われても信じられない。思わずじろじろと見てしまうが、彼は気にせず、「何かついてるか?」と聞いてきた。思っていた以上に気さくで困る。
「秋楽もお前と同じで、適性より先に固有魔導が発現したんだ。参考になるかもしれねぇぞ」
「とは言っても、俺は変わった力があるって自覚があったしな……」
「ま、それは後にして。天音も座れ。今から大事な話があるんだ」
さらりと文字を書くと、白い魔力と共にカップが3つ現れた。内2つは先ほどの2人のもの、もう1つは来客用のカップだ。秋楽がカップに砂糖を入れているのを見ながら、夏希は話し始めた。
「さっき送ったヤツらは?」
「全員捕らえて尋問中だ。ただ、有力な情報を持っているヤツはほとんどいないな」
「『白の十一天』のボスについて、知ってるヤツは?」
「いるようだが、側近というほど近いわけでもなかったらしい。性別しかわからん」
「へぇ。女か?」
「ああ。『彼女が』と言っていたからな」
「ふぅん」
夏希がニヤリと笑った。いつも思うが、本当に悪役じみている。猫をかぶっているときの可愛らしい笑顔はどこに行ってしまったのだろう。
しかし、そんな夏希の顔を、秋楽はじっと見つめていた。その瞳に、天音は覚えがある。先程の秋楽の眼差しは、零のものにそっくりだった。愛おしいものを見る、何よりも大切なものを見る目だ。夏希は気づいていないようだが、第三者だからこそ天音はわかってしまった。
「な、天音?」
「ひゃいっ!?」
秋楽が秘めているであろう恋心に気づいてしまった天音は、2人の話に集中できていなかった。話を振られたが、なんのことだかわからない。
「お前が早口で話すから聞き取れなかったんじゃないか」
「そうか、悪ぃ。もう一回話すな」
そう言って、ゆっくりと夏希が話し始めたのは、魔導考古学省と第1研究所に「白の十一天」のスパイがいるのではないかという話だった。
「1回目の調査地がバレたコトで、魔導考古学省にスパイがいるのはわかってた。けど、今回の調査で、ソイツが虎太郎よりも上のヤツっぽいコトがわかった」
「あの後、大規模な人事異動が行われたからな。和泉さんやお前に暴言を吐いたヤツらは降格処分にあっている」
「ようするに、あのときいなかったヤツ、でなおかつ情報を入手しやすいヤツだな」
「そして、当てはまるのが、三浦さんより上の人物か……和泉さんに絞られた」
三浦とは誰だろうか。首を傾げていると、夏希が虎太郎のことだと教えてくれた。真子は結婚して和泉姓になったのだという。
「んで、その真子が出張でいないときに、今回の発掘調査が決まった。スパイの罪を着せるためにな」
「ただ、不思議なのは、相手が和泉さんとお前の関係を知っていたことだ」
「おまけに、零の父親の話も知ってたらしい」
「ますます不思議だな」
「だろ? だから第1研究所にもスパイがいるんじゃねぇかって思ったんだよ」
「あ、あの!」
話を遮ってしまうが、天音は大きな声をあげた。2人は驚いたような顔をしたが、話を促すように体を天音へ向ける。
「どうした?」
「その、所長のきょうだいが『白の十一天』にいる、というのはどうでしょう? それなら全部疑問が解決すると思うんです」
「あぁ……その、アイツには双子の妹がいたんだが、父親が殺されたことがショックだったからか、心を病んじまってな。そのまま、11年前に亡くなった」
「す、すみません……」
話を遮ったうえに的外れなことを言い、所長のプライベートなことまで知ってしまった。天音は申し訳なさで俯く。
「まぁでも、確かにきょうだいがいたらってのはなかなかいい線いってんじゃねぇか。零の親戚を探ってみるのも手だな。天音が見たっていうヤツのこともあるし、女の親戚で探してみようぜ」
「ああ、わかった。任せてくれ」
「忙しいトコ悪ぃな」
「いつでも構わんさ……お前、旦那を困らせるんじゃないぞ」
「困らせてねーし!」
「はいはい」
笑みの中に少しの哀しさを残して、秋楽は立ち上がった。
「じゃあな」
「おう」
手を振って彼は部屋を去っていく。その後ろ姿を、天音はじっと見つめていた。哀しげな、何か足りないようなその姿―
「おいお前剣忘れてるぞ! 大事なモンだろ!?」
「あ」
秋楽は間の抜けた声を上げて戻って来た。先程までの哀しげな姿はどこへ行ってしまったのだろう。慣れた様子で忘れ物を渡す夏希は、呆れたような顔をしながらも笑っていた。
「14時前! セーフ!」
「5分前行動もできないのか、お前は」
応接室にいたのは秋楽だった。先日と同じように、仏頂面で立っている。だから急いでいたのか、と天音は納得した。
「もういいぜ、天音の前では普段どおりで」
「そうか?」
途端に秋楽の表情が柔らかくなる。剣をベルトから外して、勝手に腰かけた。かなりマイペースだ。
「天音、改めて紹介する。コイツは早乙女秋楽。魔導考古学省の役人で、あたしの幼馴染。表向き役人側だけど、実は演技で、本当はあたしたちの味方だ。安心してくれ」
「よろしく」
「は、はぁ……よろしくお願いいたします……」
「すごい丁寧な子だな。礼儀正しい。俺は敬語苦手だぞ」
「胸張って言うなよな」
あのいけ好かない秋楽が、実は味方でしたと言われても信じられない。思わずじろじろと見てしまうが、彼は気にせず、「何かついてるか?」と聞いてきた。思っていた以上に気さくで困る。
「秋楽もお前と同じで、適性より先に固有魔導が発現したんだ。参考になるかもしれねぇぞ」
「とは言っても、俺は変わった力があるって自覚があったしな……」
「ま、それは後にして。天音も座れ。今から大事な話があるんだ」
さらりと文字を書くと、白い魔力と共にカップが3つ現れた。内2つは先ほどの2人のもの、もう1つは来客用のカップだ。秋楽がカップに砂糖を入れているのを見ながら、夏希は話し始めた。
「さっき送ったヤツらは?」
「全員捕らえて尋問中だ。ただ、有力な情報を持っているヤツはほとんどいないな」
「『白の十一天』のボスについて、知ってるヤツは?」
「いるようだが、側近というほど近いわけでもなかったらしい。性別しかわからん」
「へぇ。女か?」
「ああ。『彼女が』と言っていたからな」
「ふぅん」
夏希がニヤリと笑った。いつも思うが、本当に悪役じみている。猫をかぶっているときの可愛らしい笑顔はどこに行ってしまったのだろう。
しかし、そんな夏希の顔を、秋楽はじっと見つめていた。その瞳に、天音は覚えがある。先程の秋楽の眼差しは、零のものにそっくりだった。愛おしいものを見る、何よりも大切なものを見る目だ。夏希は気づいていないようだが、第三者だからこそ天音はわかってしまった。
「な、天音?」
「ひゃいっ!?」
秋楽が秘めているであろう恋心に気づいてしまった天音は、2人の話に集中できていなかった。話を振られたが、なんのことだかわからない。
「お前が早口で話すから聞き取れなかったんじゃないか」
「そうか、悪ぃ。もう一回話すな」
そう言って、ゆっくりと夏希が話し始めたのは、魔導考古学省と第1研究所に「白の十一天」のスパイがいるのではないかという話だった。
「1回目の調査地がバレたコトで、魔導考古学省にスパイがいるのはわかってた。けど、今回の調査で、ソイツが虎太郎よりも上のヤツっぽいコトがわかった」
「あの後、大規模な人事異動が行われたからな。和泉さんやお前に暴言を吐いたヤツらは降格処分にあっている」
「ようするに、あのときいなかったヤツ、でなおかつ情報を入手しやすいヤツだな」
「そして、当てはまるのが、三浦さんより上の人物か……和泉さんに絞られた」
三浦とは誰だろうか。首を傾げていると、夏希が虎太郎のことだと教えてくれた。真子は結婚して和泉姓になったのだという。
「んで、その真子が出張でいないときに、今回の発掘調査が決まった。スパイの罪を着せるためにな」
「ただ、不思議なのは、相手が和泉さんとお前の関係を知っていたことだ」
「おまけに、零の父親の話も知ってたらしい」
「ますます不思議だな」
「だろ? だから第1研究所にもスパイがいるんじゃねぇかって思ったんだよ」
「あ、あの!」
話を遮ってしまうが、天音は大きな声をあげた。2人は驚いたような顔をしたが、話を促すように体を天音へ向ける。
「どうした?」
「その、所長のきょうだいが『白の十一天』にいる、というのはどうでしょう? それなら全部疑問が解決すると思うんです」
「あぁ……その、アイツには双子の妹がいたんだが、父親が殺されたことがショックだったからか、心を病んじまってな。そのまま、11年前に亡くなった」
「す、すみません……」
話を遮ったうえに的外れなことを言い、所長のプライベートなことまで知ってしまった。天音は申し訳なさで俯く。
「まぁでも、確かにきょうだいがいたらってのはなかなかいい線いってんじゃねぇか。零の親戚を探ってみるのも手だな。天音が見たっていうヤツのこともあるし、女の親戚で探してみようぜ」
「ああ、わかった。任せてくれ」
「忙しいトコ悪ぃな」
「いつでも構わんさ……お前、旦那を困らせるんじゃないぞ」
「困らせてねーし!」
「はいはい」
笑みの中に少しの哀しさを残して、秋楽は立ち上がった。
「じゃあな」
「おう」
手を振って彼は部屋を去っていく。その後ろ姿を、天音はじっと見つめていた。哀しげな、何か足りないようなその姿―
「おいお前剣忘れてるぞ! 大事なモンだろ!?」
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