116 / 140
新人魔導師、研究発表会の準備をする
同日、女子会
しおりを挟む
結局、その後にカラオケにも行ってみたものの、天音には歌える曲がほとんどなかったので聞き役に徹していた。後は定期的にタンバリンを叩いていただけである。2、3曲、双子が歌っていたのを思い出して歌ってみたが、さほど高い点数は取れなかった。
17時ごろに研究所に戻ると、由紀奈を始めとする女性陣に引きずられ、1番近いトレーニングルームに連れて行かれた。何故か恭平も別の部屋に連行されていた。
「で、どうだったの? 何したの?」
尋問でも始まったのかと思った。天音は由紀奈、雅、葵、双子に囲まれている。少し離れたところで、夏希が申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「悪ぃ、止められなかった」
止められなかったとは。今のこの状況だろうか。よくはわからないが、由紀奈たちの「答えて」という圧に耐えかねた天音は、素直にゲームセンターとカラオケに行ったことを話した。
「デートプランとしては間違い」
「何普段どおりにしてるの」
双子が何やら怒っているが、天音は楽しかったので問題ないと思う。行ったことのない場所だったので新鮮だった。だが、気になることが1つ。
「デート……なんでしょうか」
「デートじゃろ」
雅が即答した。今朝特に何も言わなかった彼女だが、気になってはいたらしい。普段より前のめりで話を聞いている。
「このぬいぐるみ取ってもらったの? なんだか青春って感じする!」
「リトモリは服とメイク褒めてくれたッスか? え、ノーリアクション? ダメッスねー」
「おい、もうやめてやれよ……」
他の女性陣の勢いに負け、止めようとする夏希が疲れ果てている。魔導や戦闘なら負けなしの彼女にも、苦手なものはあるらしい。
「ドキドキした?」
「恭平のことカッコよく思えた?」
「楽しかったですけど……ドキドキ、というのはよくわからなかったです」
「お前、律儀に答えなくていいんだぞ」
質問に答えていく天音に、夏希が庇うように言った。だが、周りの女子の勢いには敵わなかった。
「また行きたいって思った?」
「手とか繋いだんスか?」
「告白はされたのか?」
「え、ええと……」
また行きたいか。そう問われれば、答えはイエスだと思う。手は繋いでいないし、告白なんてされてもいない。次々に来る質問に、天音は疲れ始めていた。
「リトモリのコト、どー思います? 一応、顔はイケメンだと思うんスけど。才能もあるし、稼ぎもいいッスよ。あーでも、背が自分より低いのがちょっとマイナスッスかねー」
「わ、私よりは高いですし! 問題ないですよ!」
思わず反論してしまった。すると、あちこちから朝のような生温かい視線が向けられる。ニヤニヤと笑って、楽しそうだ。
「ほうほう」
「うんうん」
「そうだね」
「くく、必死じゃな」
「18歳だもんね。まだ伸びるよ」
「お前ら、ホントにもうやめてやれよ……」
確実に面白がっているであろう周囲を、夏希は止めようとしている。普段ならば彼女の言うことを素直に聞く由紀奈たちだが、今日この時ばかりはそうもいかなかった。
「恭平は天音のこと好きだと思う」
「ね。態度に出てるね」
「今日着てたの、前に1番気に入ってるって言ってた服ッスよ」
「なんで知ってんだよ、お前」
もう止めることを諦めた夏希が、怠そうにツッコミを入れていた。
「しかし、帰りが早すぎはしないか?」
「あ、確かに。もっと遅いかと思ってました!」
「初デートだからかの。次はもっと遅くなるじゃろう」
「きゃー!」
何故か由紀奈が楽しそうだ。この場のノリについていけていないのは、天音と夏希だけである。
「あ、あの、次とかはないと思いますよ?」
「いやー、あると思うッスよ? 今頃男子側で反省会してると思うッス」
「反省会?」
「今回のデートの反省ッスよ、もちろん」
「そんなことしてどうするんですか?」
「次回に活かすんじゃろ」
「次は何するのかな? 鉄板なのは映画とか?」
あまりにも周りが盛り上がっていくので、怖くなった天音は助けを求めるように夏希を見た。そっと首を振られる。諦めろ、そう聞こえた気がした。
「次はいつ頃だろう」
「それまでに新しい服を買おう」
「化粧品も買わなきゃですよね! 天音ちゃん、最低限度のものしか持ってなかったから色々買わないと」
「水色の服にしてやろうぞ、あやつの魔力の色じゃ」
「じゃあメイクもそれっぽくしよう」
「恭平をドキドキさせなきゃ」
「いっそカラシに服作らせます? あーでも、他の男から貰った服はダメッスねー」
会話って、こんなに大変だったっけ。天音は宙を見上げた。思考を放棄して今すぐにでも部屋に戻りたいところだ。
(次……あるのかな……)
そう思って、次の瞬間自分自身に驚いた。何を期待しているんだろう。恭平は、天音が仕事ばかりしないように、息抜きとして誘ってくれただけなのに。他の人がデートだなんて言うから、勘違いしてしまった。
「わ、私、部屋に戻りますねっ!」
会話が途切れたタイミングを見計らって、天音はトレーニングルームを飛び出した。仕方ないので解散となった部屋の中で、夏希がほっとしたように息をついていた。
17時ごろに研究所に戻ると、由紀奈を始めとする女性陣に引きずられ、1番近いトレーニングルームに連れて行かれた。何故か恭平も別の部屋に連行されていた。
「で、どうだったの? 何したの?」
尋問でも始まったのかと思った。天音は由紀奈、雅、葵、双子に囲まれている。少し離れたところで、夏希が申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「悪ぃ、止められなかった」
止められなかったとは。今のこの状況だろうか。よくはわからないが、由紀奈たちの「答えて」という圧に耐えかねた天音は、素直にゲームセンターとカラオケに行ったことを話した。
「デートプランとしては間違い」
「何普段どおりにしてるの」
双子が何やら怒っているが、天音は楽しかったので問題ないと思う。行ったことのない場所だったので新鮮だった。だが、気になることが1つ。
「デート……なんでしょうか」
「デートじゃろ」
雅が即答した。今朝特に何も言わなかった彼女だが、気になってはいたらしい。普段より前のめりで話を聞いている。
「このぬいぐるみ取ってもらったの? なんだか青春って感じする!」
「リトモリは服とメイク褒めてくれたッスか? え、ノーリアクション? ダメッスねー」
「おい、もうやめてやれよ……」
他の女性陣の勢いに負け、止めようとする夏希が疲れ果てている。魔導や戦闘なら負けなしの彼女にも、苦手なものはあるらしい。
「ドキドキした?」
「恭平のことカッコよく思えた?」
「楽しかったですけど……ドキドキ、というのはよくわからなかったです」
「お前、律儀に答えなくていいんだぞ」
質問に答えていく天音に、夏希が庇うように言った。だが、周りの女子の勢いには敵わなかった。
「また行きたいって思った?」
「手とか繋いだんスか?」
「告白はされたのか?」
「え、ええと……」
また行きたいか。そう問われれば、答えはイエスだと思う。手は繋いでいないし、告白なんてされてもいない。次々に来る質問に、天音は疲れ始めていた。
「リトモリのコト、どー思います? 一応、顔はイケメンだと思うんスけど。才能もあるし、稼ぎもいいッスよ。あーでも、背が自分より低いのがちょっとマイナスッスかねー」
「わ、私よりは高いですし! 問題ないですよ!」
思わず反論してしまった。すると、あちこちから朝のような生温かい視線が向けられる。ニヤニヤと笑って、楽しそうだ。
「ほうほう」
「うんうん」
「そうだね」
「くく、必死じゃな」
「18歳だもんね。まだ伸びるよ」
「お前ら、ホントにもうやめてやれよ……」
確実に面白がっているであろう周囲を、夏希は止めようとしている。普段ならば彼女の言うことを素直に聞く由紀奈たちだが、今日この時ばかりはそうもいかなかった。
「恭平は天音のこと好きだと思う」
「ね。態度に出てるね」
「今日着てたの、前に1番気に入ってるって言ってた服ッスよ」
「なんで知ってんだよ、お前」
もう止めることを諦めた夏希が、怠そうにツッコミを入れていた。
「しかし、帰りが早すぎはしないか?」
「あ、確かに。もっと遅いかと思ってました!」
「初デートだからかの。次はもっと遅くなるじゃろう」
「きゃー!」
何故か由紀奈が楽しそうだ。この場のノリについていけていないのは、天音と夏希だけである。
「あ、あの、次とかはないと思いますよ?」
「いやー、あると思うッスよ? 今頃男子側で反省会してると思うッス」
「反省会?」
「今回のデートの反省ッスよ、もちろん」
「そんなことしてどうするんですか?」
「次回に活かすんじゃろ」
「次は何するのかな? 鉄板なのは映画とか?」
あまりにも周りが盛り上がっていくので、怖くなった天音は助けを求めるように夏希を見た。そっと首を振られる。諦めろ、そう聞こえた気がした。
「次はいつ頃だろう」
「それまでに新しい服を買おう」
「化粧品も買わなきゃですよね! 天音ちゃん、最低限度のものしか持ってなかったから色々買わないと」
「水色の服にしてやろうぞ、あやつの魔力の色じゃ」
「じゃあメイクもそれっぽくしよう」
「恭平をドキドキさせなきゃ」
「いっそカラシに服作らせます? あーでも、他の男から貰った服はダメッスねー」
会話って、こんなに大変だったっけ。天音は宙を見上げた。思考を放棄して今すぐにでも部屋に戻りたいところだ。
(次……あるのかな……)
そう思って、次の瞬間自分自身に驚いた。何を期待しているんだろう。恭平は、天音が仕事ばかりしないように、息抜きとして誘ってくれただけなのに。他の人がデートだなんて言うから、勘違いしてしまった。
「わ、私、部屋に戻りますねっ!」
会話が途切れたタイミングを見計らって、天音はトレーニングルームを飛び出した。仕方ないので解散となった部屋の中で、夏希がほっとしたように息をついていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~
namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。
かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。
海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。
そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。
それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。
そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。
対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。
「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」
アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。
ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。
やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。
揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる