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新人魔導師、研究発表会の準備をする

同日、女子会

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 結局、その後にカラオケにも行ってみたものの、天音には歌える曲がほとんどなかったので聞き役に徹していた。後は定期的にタンバリンを叩いていただけである。2、3曲、双子が歌っていたのを思い出して歌ってみたが、さほど高い点数は取れなかった。

 17時ごろに研究所に戻ると、由紀奈を始めとする女性陣に引きずられ、1番近いトレーニングルームに連れて行かれた。何故か恭平も別の部屋に連行されていた。

「で、どうだったの? 何したの?」

 尋問でも始まったのかと思った。天音は由紀奈、雅、葵、双子に囲まれている。少し離れたところで、夏希が申し訳なさそうにこちらを見ていた。

「悪ぃ、止められなかった」

 止められなかったとは。今のこの状況だろうか。よくはわからないが、由紀奈たちの「答えて」という圧に耐えかねた天音は、素直にゲームセンターとカラオケに行ったことを話した。

「デートプランとしては間違い」
「何普段どおりにしてるの」

 双子が何やら怒っているが、天音は楽しかったので問題ないと思う。行ったことのない場所だったので新鮮だった。だが、気になることが1つ。

「デート……なんでしょうか」
「デートじゃろ」

 雅が即答した。今朝特に何も言わなかった彼女だが、気になってはいたらしい。普段より前のめりで話を聞いている。

「このぬいぐるみ取ってもらったの? なんだか青春って感じする!」
「リトモリは服とメイク褒めてくれたッスか? え、ノーリアクション? ダメッスねー」
「おい、もうやめてやれよ……」

 他の女性陣の勢いに負け、止めようとする夏希が疲れ果てている。魔導や戦闘なら負けなしの彼女にも、苦手なものはあるらしい。

「ドキドキした?」
「恭平のことカッコよく思えた?」
「楽しかったですけど……ドキドキ、というのはよくわからなかったです」
「お前、律儀に答えなくていいんだぞ」

 質問に答えていく天音に、夏希が庇うように言った。だが、周りの女子の勢いには敵わなかった。

「また行きたいって思った?」
「手とか繋いだんスか?」
「告白はされたのか?」
「え、ええと……」

 また行きたいか。そう問われれば、答えはイエスだと思う。手は繋いでいないし、告白なんてされてもいない。次々に来る質問に、天音は疲れ始めていた。

「リトモリのコト、どー思います? 一応、顔はイケメンだと思うんスけど。才能もあるし、稼ぎもいいッスよ。あーでも、背が自分より低いのがちょっとマイナスッスかねー」
「わ、私よりは高いですし! 問題ないですよ!」

 思わず反論してしまった。すると、あちこちから朝のような生温かい視線が向けられる。ニヤニヤと笑って、楽しそうだ。

「ほうほう」
「うんうん」
「そうだね」
「くく、必死じゃな」
「18歳だもんね。まだ伸びるよ」
「お前ら、ホントにもうやめてやれよ……」

 確実に面白がっているであろう周囲を、夏希は止めようとしている。普段ならば彼女の言うことを素直に聞く由紀奈たちだが、今日この時ばかりはそうもいかなかった。

「恭平は天音のこと好きだと思う」
「ね。態度に出てるね」
「今日着てたの、前に1番気に入ってるって言ってた服ッスよ」
「なんで知ってんだよ、お前」

 もう止めることを諦めた夏希が、怠そうにツッコミを入れていた。

「しかし、帰りが早すぎはしないか?」
「あ、確かに。もっと遅いかと思ってました!」
「初デートだからかの。次はもっと遅くなるじゃろう」
「きゃー!」

 何故か由紀奈が楽しそうだ。この場のノリについていけていないのは、天音と夏希だけである。

「あ、あの、次とかはないと思いますよ?」
「いやー、あると思うッスよ? 今頃男子側で反省会してると思うッス」
「反省会?」
「今回のデートの反省ッスよ、もちろん」
「そんなことしてどうするんですか?」
「次回に活かすんじゃろ」
「次は何するのかな? 鉄板なのは映画とか?」

 あまりにも周りが盛り上がっていくので、怖くなった天音は助けを求めるように夏希を見た。そっと首を振られる。諦めろ、そう聞こえた気がした。

「次はいつ頃だろう」
「それまでに新しい服を買おう」
「化粧品も買わなきゃですよね! 天音ちゃん、最低限度のものしか持ってなかったから色々買わないと」
「水色の服にしてやろうぞ、あやつの魔力の色じゃ」
「じゃあメイクもそれっぽくしよう」
「恭平をドキドキさせなきゃ」
「いっそカラシに服作らせます? あーでも、他の男から貰った服はダメッスねー」

 会話って、こんなに大変だったっけ。天音は宙を見上げた。思考を放棄して今すぐにでも部屋に戻りたいところだ。

(次……あるのかな……)

 そう思って、次の瞬間自分自身に驚いた。何を期待しているんだろう。恭平は、天音が仕事ばかりしないように、息抜きとして誘ってくれただけなのに。他の人がデートだなんて言うから、勘違いしてしまった。

「わ、私、部屋に戻りますねっ!」

 会話が途切れたタイミングを見計らって、天音はトレーニングルームを飛び出した。仕方ないので解散となった部屋の中で、夏希がほっとしたように息をついていた。
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