131 / 140
新人魔導師、発表会に参加する
同日、白が去った後
しおりを挟む
天音が現れたことにより、「白の十一天」と、それに味方する魔導師たちの様子が変わった。夏希よりも天音を狙うようになったのだ。
「ねえ、不思議に思わない? 魔法を復活させたいはずの研究員たちが私たちの味方になったこと」
「……所長と副所長を殺すためでしょう!?」
杖を振るい、敵を氷漬けにした天音は、一花を睨んで叫んだ。
「だとしたら、この状況はおかしいんじゃない?」
第1研究所の所長の防御魔導に守られた一花は、クスクスと楽しそうに笑っている。零によく似た容姿だが、浮かべる笑みはまるで違った。どこまでも冷たく、人が傷つくことをなんとも思っていない。人を人として見ていない、そんな笑みだ。
天音は震えながらも一花を睨みつける。だが、それすら愉快なのか、一花の笑みは深まるばかりだった。
「みーんな、貴女を殺そうとしてるわ」
「くっ!」
襲い掛かる攻撃をどうにか避ける。天音が避けきれなかった攻撃は、零と夏希が防いでくれた。
会場の床には、体力を吸いつくされた構成員が転がっている。ただ、由紀奈も魔力が限界に近い。恭平の固有魔導解除のことを考えると、彼女はもう休むべきだ。
怪我人の手当てのため、固有魔導を連続で使用した雅も頭を押さえて蹲っている。
零と夏希、遅れてやって来た天音の3人以外、皆疲弊していた。敵の数が多すぎる。
「魔導考古学省や研究所の偉い方々は、一気に魔法が復活すると困るんですって」
倒れた「白の十一天」の構成員を、ゴミを見るような目で見下しながら、一花は話し続ける。
「何故だと思う?」
「知りませんよ、そんなこと!」
「あらそう。じゃあ教えてあげるわね。自分たちの地位や権力が失われるからよ。魔法が復活してしまえば、研究員なんていらないものね」
「あー、オッサンどもが考えそうな話だな」
綺麗な回し蹴りを決め、夏希は着地する。大量に魔力を使用しているのにもかかわらず、息すらあがっていない。適性値99、膨大な魔力と体力を併せ持つ、オールマイティな彼女だからこそできることだ。
「伊藤天音さん。もし、2度と固有魔導を使わないって約束するなら、私たちの仲間として迎え入れるわ。是非考えてちょうだいね」
「誰がそんなことを!」
「もういい頃合いね。こっちの人数も減ったし、かなりの数の魔導師を暫く動けなくしたし……帰りましょ」
「僕がお前を逃がすわけがないでしょう!」
零が一花に右手を突き付ける。彼女は少しも臆せず、近くに倒れ込んでいた魔導師を踏みつけると、部下に銃を構えさせた。人質を取られては、何もできない。零は仕方なく右手を下ろす。怒りで体が震えていた。
「これはほんの始まりよ。私たちはこれからあらゆる魔導遺跡や研究所、博物館を襲うわ。止められるものなら止めてみなさい。勿論、天音さんと清水夏希を差し出して、そこの男が死ぬなら襲撃はやめるわ。よく考えることね」
それじゃあね。
魔導師の仲間がかけた瞬間移動の術で、一花率いる「白の十一天」は去って行った。
「ちっ!」
夏希が鋭く舌打ちをした。会場には倒された敵が転がっているが、「白の十一天」の総数から考えると大した人数ではない。おまけに、ほとんどが切り捨てられた構成員だ。情報を引き出せそうにない。
「疲れてるトコ悪ぃな。雅、今怪我人はどれくらいいる?」
「重傷者はおらぬが……皆、すぐには動けそうにない」
「そうか。まだ魔力に余裕があるヤツは?」
辺りを見渡すが、零以外誰の手も挙がらない。魔導生成値が高いはるかの手も挙がらなかった。恭平は体力を使い果たし、気絶するように眠っている。
「僕がお送りします」
零が研究所ごとに集まるように言い、どうにか移動させる。気絶している者は浮遊の術で運んだ。瞬間移動の術で送れない遠方の第2、第3、第4研究所は、前日に泊まっていたというホテルに送られた。
「……ひとまず、あたしらも帰んぞ」
「夏希」
疲れきったか細い真子の声が、夏希を呼んだ。
「私は、何があろうと夏希の味方だよ」
「……知ってる」
「それはよかった」
真子は魔導考古学省大臣を一睨みして舌打ちをした。ほとんど何もしなかった彼に移動の術を使わせると決めたらしい。彼女に何を言われたのかは知らないが、大臣は顔を真っ青にしながら魔導文字を書いている。
「こっちが片付き次第、すぐにそっちに行くよ」
「……ごめん」
「ふふ、君がそんな風に謝るのは何年ぶりだろうね」
「うるせぇよ」
「懐かしく思っただけさ。さて、私たちももう行くね」
「あぁ」
魔導考古学省の役人たちが、倒された構成員を捕縛して連れて行った。何人もの職員が「白の十一天」に加担していたとなると、その対応に追われて暫くは忙しくなるはずだ。
会場には、第5研究所の研究員たちだけが残された。窓ガラスや壁の破片を避け、夏希が皆の方へ歩いてくる。
「……あたしらも、帰るか」
「……はい」
まだ魔力に余裕のある零と夏希は、それぞれ瞬間移動の術を発動させた。黒と白の魔力が辺りを包み込む。
「……着いたら、お話したいことがあります」
零は拳を強く握りしめ、震える声でそう言った。
「ねえ、不思議に思わない? 魔法を復活させたいはずの研究員たちが私たちの味方になったこと」
「……所長と副所長を殺すためでしょう!?」
杖を振るい、敵を氷漬けにした天音は、一花を睨んで叫んだ。
「だとしたら、この状況はおかしいんじゃない?」
第1研究所の所長の防御魔導に守られた一花は、クスクスと楽しそうに笑っている。零によく似た容姿だが、浮かべる笑みはまるで違った。どこまでも冷たく、人が傷つくことをなんとも思っていない。人を人として見ていない、そんな笑みだ。
天音は震えながらも一花を睨みつける。だが、それすら愉快なのか、一花の笑みは深まるばかりだった。
「みーんな、貴女を殺そうとしてるわ」
「くっ!」
襲い掛かる攻撃をどうにか避ける。天音が避けきれなかった攻撃は、零と夏希が防いでくれた。
会場の床には、体力を吸いつくされた構成員が転がっている。ただ、由紀奈も魔力が限界に近い。恭平の固有魔導解除のことを考えると、彼女はもう休むべきだ。
怪我人の手当てのため、固有魔導を連続で使用した雅も頭を押さえて蹲っている。
零と夏希、遅れてやって来た天音の3人以外、皆疲弊していた。敵の数が多すぎる。
「魔導考古学省や研究所の偉い方々は、一気に魔法が復活すると困るんですって」
倒れた「白の十一天」の構成員を、ゴミを見るような目で見下しながら、一花は話し続ける。
「何故だと思う?」
「知りませんよ、そんなこと!」
「あらそう。じゃあ教えてあげるわね。自分たちの地位や権力が失われるからよ。魔法が復活してしまえば、研究員なんていらないものね」
「あー、オッサンどもが考えそうな話だな」
綺麗な回し蹴りを決め、夏希は着地する。大量に魔力を使用しているのにもかかわらず、息すらあがっていない。適性値99、膨大な魔力と体力を併せ持つ、オールマイティな彼女だからこそできることだ。
「伊藤天音さん。もし、2度と固有魔導を使わないって約束するなら、私たちの仲間として迎え入れるわ。是非考えてちょうだいね」
「誰がそんなことを!」
「もういい頃合いね。こっちの人数も減ったし、かなりの数の魔導師を暫く動けなくしたし……帰りましょ」
「僕がお前を逃がすわけがないでしょう!」
零が一花に右手を突き付ける。彼女は少しも臆せず、近くに倒れ込んでいた魔導師を踏みつけると、部下に銃を構えさせた。人質を取られては、何もできない。零は仕方なく右手を下ろす。怒りで体が震えていた。
「これはほんの始まりよ。私たちはこれからあらゆる魔導遺跡や研究所、博物館を襲うわ。止められるものなら止めてみなさい。勿論、天音さんと清水夏希を差し出して、そこの男が死ぬなら襲撃はやめるわ。よく考えることね」
それじゃあね。
魔導師の仲間がかけた瞬間移動の術で、一花率いる「白の十一天」は去って行った。
「ちっ!」
夏希が鋭く舌打ちをした。会場には倒された敵が転がっているが、「白の十一天」の総数から考えると大した人数ではない。おまけに、ほとんどが切り捨てられた構成員だ。情報を引き出せそうにない。
「疲れてるトコ悪ぃな。雅、今怪我人はどれくらいいる?」
「重傷者はおらぬが……皆、すぐには動けそうにない」
「そうか。まだ魔力に余裕があるヤツは?」
辺りを見渡すが、零以外誰の手も挙がらない。魔導生成値が高いはるかの手も挙がらなかった。恭平は体力を使い果たし、気絶するように眠っている。
「僕がお送りします」
零が研究所ごとに集まるように言い、どうにか移動させる。気絶している者は浮遊の術で運んだ。瞬間移動の術で送れない遠方の第2、第3、第4研究所は、前日に泊まっていたというホテルに送られた。
「……ひとまず、あたしらも帰んぞ」
「夏希」
疲れきったか細い真子の声が、夏希を呼んだ。
「私は、何があろうと夏希の味方だよ」
「……知ってる」
「それはよかった」
真子は魔導考古学省大臣を一睨みして舌打ちをした。ほとんど何もしなかった彼に移動の術を使わせると決めたらしい。彼女に何を言われたのかは知らないが、大臣は顔を真っ青にしながら魔導文字を書いている。
「こっちが片付き次第、すぐにそっちに行くよ」
「……ごめん」
「ふふ、君がそんな風に謝るのは何年ぶりだろうね」
「うるせぇよ」
「懐かしく思っただけさ。さて、私たちももう行くね」
「あぁ」
魔導考古学省の役人たちが、倒された構成員を捕縛して連れて行った。何人もの職員が「白の十一天」に加担していたとなると、その対応に追われて暫くは忙しくなるはずだ。
会場には、第5研究所の研究員たちだけが残された。窓ガラスや壁の破片を避け、夏希が皆の方へ歩いてくる。
「……あたしらも、帰るか」
「……はい」
まだ魔力に余裕のある零と夏希は、それぞれ瞬間移動の術を発動させた。黒と白の魔力が辺りを包み込む。
「……着いたら、お話したいことがあります」
零は拳を強く握りしめ、震える声でそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~
namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。
かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。
海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。
そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。
それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。
そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。
対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。
「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」
アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。
ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。
やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。
揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる