【完結】国立第5魔導研究所の研究日誌

九条美香

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新人魔導師、発表会に参加する

同日、白が去った後

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 天音が現れたことにより、「白の十一天」と、それに味方する魔導師たちの様子が変わった。夏希よりも天音を狙うようになったのだ。

「ねえ、不思議に思わない? 魔法を復活させたいはずの研究員たちが私たちの味方になったこと」
「……所長と副所長を殺すためでしょう!?」

 杖を振るい、敵を氷漬けにした天音は、一花を睨んで叫んだ。

「だとしたら、この状況はおかしいんじゃない?」

 第1研究所の所長の防御魔導に守られた一花は、クスクスと楽しそうに笑っている。零によく似た容姿だが、浮かべる笑みはまるで違った。どこまでも冷たく、人が傷つくことをなんとも思っていない。人を人として見ていない、そんな笑みだ。

 天音は震えながらも一花を睨みつける。だが、それすら愉快なのか、一花の笑みは深まるばかりだった。

「みーんな、貴女を殺そうとしてるわ」
「くっ!」

 襲い掛かる攻撃をどうにか避ける。天音が避けきれなかった攻撃は、零と夏希が防いでくれた。

 会場の床には、体力を吸いつくされた構成員が転がっている。ただ、由紀奈も魔力が限界に近い。恭平の固有魔導解除のことを考えると、彼女はもう休むべきだ。

 怪我人の手当てのため、固有魔導を連続で使用した雅も頭を押さえて蹲っている。

 零と夏希、遅れてやって来た天音の3人以外、皆疲弊していた。敵の数が多すぎる。

「魔導考古学省や研究所の偉い方々は、一気に魔法が復活すると困るんですって」

 倒れた「白の十一天」の構成員を、ゴミを見るような目で見下しながら、一花は話し続ける。

「何故だと思う?」
「知りませんよ、そんなこと!」
「あらそう。じゃあ教えてあげるわね。自分たちの地位や権力が失われるからよ。魔法が復活してしまえば、研究員なんていらないものね」
「あー、オッサンどもが考えそうな話だな」

 綺麗な回し蹴りを決め、夏希は着地する。大量に魔力を使用しているのにもかかわらず、息すらあがっていない。適性値99、膨大な魔力と体力を併せ持つ、オールマイティな彼女だからこそできることだ。

「伊藤天音さん。もし、2度と固有魔導を使わないって約束するなら、私たちの仲間として迎え入れるわ。是非考えてちょうだいね」
「誰がそんなことを!」
「もういい頃合いね。こっちの人数も減ったし、かなりの数の魔導師を暫く動けなくしたし……帰りましょ」
「僕がお前を逃がすわけがないでしょう!」

 零が一花に右手を突き付ける。彼女は少しも臆せず、近くに倒れ込んでいた魔導師を踏みつけると、部下に銃を構えさせた。人質を取られては、何もできない。零は仕方なく右手を下ろす。怒りで体が震えていた。

「これはほんの始まりよ。私たちはこれからあらゆる魔導遺跡や研究所、博物館を襲うわ。止められるものなら止めてみなさい。勿論、天音さんと清水夏希を差し出して、そこの男が死ぬなら襲撃はやめるわ。よく考えることね」

 それじゃあね。
 魔導師の仲間がかけた瞬間移動の術で、一花率いる「白の十一天」は去って行った。

「ちっ!」

 夏希が鋭く舌打ちをした。会場には倒された敵が転がっているが、「白の十一天」の総数から考えると大した人数ではない。おまけに、ほとんどが切り捨てられた構成員だ。情報を引き出せそうにない。

「疲れてるトコ悪ぃな。雅、今怪我人はどれくらいいる?」
「重傷者はおらぬが……皆、すぐには動けそうにない」
「そうか。まだ魔力に余裕があるヤツは?」

 辺りを見渡すが、零以外誰の手も挙がらない。魔導生成値が高いはるかの手も挙がらなかった。恭平は体力を使い果たし、気絶するように眠っている。

「僕がお送りします」

 零が研究所ごとに集まるように言い、どうにか移動させる。気絶している者は浮遊の術で運んだ。瞬間移動の術で送れない遠方の第2、第3、第4研究所は、前日に泊まっていたというホテルに送られた。

「……ひとまず、あたしらも帰んぞ」
「夏希」

 疲れきったか細い真子の声が、夏希を呼んだ。

「私は、何があろうと夏希の味方だよ」
「……知ってる」
「それはよかった」

 真子は魔導考古学省大臣を一睨みして舌打ちをした。ほとんど何もしなかった彼に移動の術を使わせると決めたらしい。彼女に何を言われたのかは知らないが、大臣は顔を真っ青にしながら魔導文字を書いている。

「こっちが片付き次第、すぐにそっちに行くよ」
「……ごめん」
「ふふ、君がそんな風に謝るのは何年ぶりだろうね」
「うるせぇよ」
「懐かしく思っただけさ。さて、私たちももう行くね」
「あぁ」

 魔導考古学省の役人たちが、倒された構成員を捕縛して連れて行った。何人もの職員が「白の十一天」に加担していたとなると、その対応に追われて暫くは忙しくなるはずだ。

 会場には、第5研究所の研究員たちだけが残された。窓ガラスや壁の破片を避け、夏希が皆の方へ歩いてくる。

「……あたしらも、帰るか」
「……はい」

 まだ魔力に余裕のある零と夏希は、それぞれ瞬間移動の術を発動させた。黒と白の魔力が辺りを包み込む。

「……着いたら、お話したいことがあります」

 零は拳を強く握りしめ、震える声でそう言った。
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