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3話 フーリュのお礼
「これは、どこに向かっているのですか?」
昨日はイヴェエルと自然を見に出かけたが、今日はフーリュと街に出かけている。
「そうだね。エスタレアはフルーツや甘い食べ物が好きだと聞いていたから、フルーツがたくさん乗っているタルトが食べられるお店に行こと思ってたんだけど、それでいいかな?」
「だ、誰がそんなことを言っていたんですか……。まったく、私の周りにはおしゃべりな人が多いですね。とはいえ、フルーツがたくさん乗っているタルトは――、楽しみです!!」
誰が言ったの?
一瞬そう思ったが、その情報をフーリュに伝えてくれたお陰で、おいしい食べ物のお店に連れて行ってもらえると考えると――
文句は言えないよね……
「――あの方って、フーリュ卿では♡」
「いつ見ても、惚れ惚れする高貴なお方ね♡」
「隣の女性は妹さんかしら?」
フーリュと一緒に歩いているだけで、周りがざわつき始めた――
「フーリュは人気者のようですね」
「いえ、伯爵の息子として、物珍しく見ているだけですよ」
「そ、そうですか?」
私にはそうは見えないが――
物腰柔らかなフーリュの性格上、当然、人望もあるのだろう。
「このフルーツタルト、すっごくおいしいです!!」
人目もあるため、これでも控えめに声を出したが、本当はおいしすぎると叫びたかった。
この絶妙に調和のとれたフルーツとタルトの組み合わせは一体なんなのか――
思わず、色々な角度からフルーツタルトを眺めてしまった。
「それは良かったです」
フーリュが私の顔をじっと見ながら微笑んでいる。
「今日、このお店にエスタレアをお連れしたのは、お礼が言いたかったからなんです」
「え? お礼ですか?」
何のお礼だろう?
こんなにおいしいタルトを食べさせてもらえるようなことをした覚えはないのだが――
「イヴェエル兄さんの傷を治してくれて、本当にありがとうございました」
「フーリュからもお礼をしたいだなんて、本当に兄であるイヴェエルのことが好きなんですね」
兄弟だからと言ってしまえば、それまでだが、他にも何か理由がありそうな……
それにしても、兄弟そろってお礼をしたいと考えるなんて――
ダルキス伯爵家はきっと律儀な家族なのだろう。
「はい、本来、伯爵の息子として、領地を護る戦いにはイヴェエル兄さんと私の二人がおもむくべきなのです」
「そうなんですね……」
部下に戦わせる伯爵家もあるとは思うが、そこはフーリュの考え方としてはそうなのだろう――
「ですが、イヴェエル兄さんは、お前は大切な次期伯爵だからと、私を戦地に行かせないように父に進言しているらしいんです。そのため、兄さんの身体に傷が増える度に、私は胸を痛めていました……」
「あの身体中の傷にはそのような理由が――」
「ですから、エスタレアがイヴェエル兄さんの傷を治癒魔法で消してくれた時、私の心の中のモヤモヤも同時にスッと消えたんです」
「そ、そんな大したことはしていません」
「フフ、エスタレアならそう言うと思っていましたが、私は本当に感謝しているんですよ」
ま、まあ、感謝されて悪い気はしないんですけど……
「また、怪我をした時にはすぐに家に来てくださいね。何度でも治癒魔法で治療させていただきますから――」
「それを聞いたら、イヴェエル兄さんも喜ぶと思います。近々、魔獣討伐が行われますので、万が一、怪我をしてしまった時には、また訪問させていただきますね」
「はい、その時は遠慮なく来てください。あ、でも、怪我しないことが一番ですからね。それは忘れないでくださいね――」
「はい、もちろん、それは心得ております」
それにしても、魔獣討伐までしないといけないなんて――
ダルキス伯爵家も領民の生活を護るために陰で苦労してるのね……
フーリュの話を聞きながら、日々の穏やかな暮らしは無条件で手に入れられているわけではなく、ダルキス伯爵家やその騎士団の苦労もあって、暮らしが護られているんだということに私は改めて気づかされた。
昨日はイヴェエルと自然を見に出かけたが、今日はフーリュと街に出かけている。
「そうだね。エスタレアはフルーツや甘い食べ物が好きだと聞いていたから、フルーツがたくさん乗っているタルトが食べられるお店に行こと思ってたんだけど、それでいいかな?」
「だ、誰がそんなことを言っていたんですか……。まったく、私の周りにはおしゃべりな人が多いですね。とはいえ、フルーツがたくさん乗っているタルトは――、楽しみです!!」
誰が言ったの?
一瞬そう思ったが、その情報をフーリュに伝えてくれたお陰で、おいしい食べ物のお店に連れて行ってもらえると考えると――
文句は言えないよね……
「――あの方って、フーリュ卿では♡」
「いつ見ても、惚れ惚れする高貴なお方ね♡」
「隣の女性は妹さんかしら?」
フーリュと一緒に歩いているだけで、周りがざわつき始めた――
「フーリュは人気者のようですね」
「いえ、伯爵の息子として、物珍しく見ているだけですよ」
「そ、そうですか?」
私にはそうは見えないが――
物腰柔らかなフーリュの性格上、当然、人望もあるのだろう。
「このフルーツタルト、すっごくおいしいです!!」
人目もあるため、これでも控えめに声を出したが、本当はおいしすぎると叫びたかった。
この絶妙に調和のとれたフルーツとタルトの組み合わせは一体なんなのか――
思わず、色々な角度からフルーツタルトを眺めてしまった。
「それは良かったです」
フーリュが私の顔をじっと見ながら微笑んでいる。
「今日、このお店にエスタレアをお連れしたのは、お礼が言いたかったからなんです」
「え? お礼ですか?」
何のお礼だろう?
こんなにおいしいタルトを食べさせてもらえるようなことをした覚えはないのだが――
「イヴェエル兄さんの傷を治してくれて、本当にありがとうございました」
「フーリュからもお礼をしたいだなんて、本当に兄であるイヴェエルのことが好きなんですね」
兄弟だからと言ってしまえば、それまでだが、他にも何か理由がありそうな……
それにしても、兄弟そろってお礼をしたいと考えるなんて――
ダルキス伯爵家はきっと律儀な家族なのだろう。
「はい、本来、伯爵の息子として、領地を護る戦いにはイヴェエル兄さんと私の二人がおもむくべきなのです」
「そうなんですね……」
部下に戦わせる伯爵家もあるとは思うが、そこはフーリュの考え方としてはそうなのだろう――
「ですが、イヴェエル兄さんは、お前は大切な次期伯爵だからと、私を戦地に行かせないように父に進言しているらしいんです。そのため、兄さんの身体に傷が増える度に、私は胸を痛めていました……」
「あの身体中の傷にはそのような理由が――」
「ですから、エスタレアがイヴェエル兄さんの傷を治癒魔法で消してくれた時、私の心の中のモヤモヤも同時にスッと消えたんです」
「そ、そんな大したことはしていません」
「フフ、エスタレアならそう言うと思っていましたが、私は本当に感謝しているんですよ」
ま、まあ、感謝されて悪い気はしないんですけど……
「また、怪我をした時にはすぐに家に来てくださいね。何度でも治癒魔法で治療させていただきますから――」
「それを聞いたら、イヴェエル兄さんも喜ぶと思います。近々、魔獣討伐が行われますので、万が一、怪我をしてしまった時には、また訪問させていただきますね」
「はい、その時は遠慮なく来てください。あ、でも、怪我しないことが一番ですからね。それは忘れないでくださいね――」
「はい、もちろん、それは心得ております」
それにしても、魔獣討伐までしないといけないなんて――
ダルキス伯爵家も領民の生活を護るために陰で苦労してるのね……
フーリュの話を聞きながら、日々の穏やかな暮らしは無条件で手に入れられているわけではなく、ダルキス伯爵家やその騎士団の苦労もあって、暮らしが護られているんだということに私は改めて気づかされた。
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