5 / 10
5話 ギルドで初仕事(中編)
しおりを挟む
「ウヒョヒョヒョヒョ、私が商団代表の行商人ムランドフでございます」
うわーーーー!!
見るからに怪しそうな行商人が来たーーーー!!
今日のギルドの依頼は、商団の警護。
出発前に商団の代表が挨拶に来てくれた。
「初めまして……、私の名前はイラです」
「……イラ?」
え?
何だろう、その反応――
魔王としてのイラという名前は一般には公開されていないはずなんだけど……
各魔王の名前は魔族間でしか共有されていない。
私の場合、人間社会では憤怒の魔王という呼び方が通称だ。
「いえ、何でもありません。今回は私どもの依頼を受けていただき、たいへん感謝しております」
「こちらこそ仕事をいただき、ありがとうございます」
感謝されるとは思わなかったので、こちらも謝意を伝えた。
「ムヒャヒャヒャヒャ、何だか、あなたとは長い付き合いになりそうな気がします」
「そ、そうですか……」
今のところ、私はあまり仲良くなりたいとは思わないのだが……
「それでは今回の依頼内容を再確認させていただきますが、私達が隣の王国の国境にたどり着くまでの警護をお願いしたいと思っております」
「はい、そのように聞いています。――ですが、依頼内容に対して、報酬が多額過ぎるのが少し気にはなってはいます」
ギルドへの依頼の報酬はその仕事の難易度に見合った額が支払われるのが普通だ。
難易度は、S・A・B・C・D・Eランクと分けられているが、今回はCランクの依頼内容にも関わらず、何故かAランク相当の報酬が貰えることになっている。
報酬が高すぎると、依頼を達成した後に、難癖をつけられて報酬を減らされるのではないかと心配になる――
「そのように思われて当然な報酬額なのはわかっております……。しかし、近頃、この辺りを通る商団を炎竜が襲うという事件が起こっておりますので、私達の命の保険として、報酬を増していると思っていただければと思います」
そうは言っても、火山地帯や洞窟に住んでいることが多い炎竜に遭遇する可能性なんて滅多にないんだけど――
「まあ、そう言っていただけるのであれば、報酬は多いに越したことはありませんので……」
楽な仕事になりそうだが、今は資金が乏しいので、報酬は多ければ多いほどありがたい。
「ムヒョヒョヒョ、ありがとうございます」
それにしても、その不気味な笑い方はどうにかならないものだろうか……
「早くモンスター出てこねーかな。久しぶりに暴れたいぜ!」
道中でオムガがそうボヤいた。
いや、何も出て来ない方がいいのだが……
オムガは好戦的な性格で、根っからの戦い好きだ。
剣技の実力は戦仲間の中で一番なので、戦闘不足のオムガ自身のストレス発散も兼ねて、エンと私の剣の訓練をしてくれている。
「あーあ、炎竜出て来ねーのかなぁ」
やめて、フラグが立っちゃうから――
噂をすれば影が射すっていうことわざもあるし……
「グオォォォォォォ!」
「…………」
気のせい、気のせい……
獣の唸り声なんて、よくあるよくある。
「グオォォォォォォォォォ!!」
「………………」
さっきよりも、大きくて長い唸り声。
「グアァァァァァァァァァァァァ!!」
「あー、これは来ちゃったね……」
ズドーーーーーーーーーーン!!!
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! 炎竜だーーーーーー!!」」」
商団の人達が炎竜を見て逃げ惑う。
全身が炎のように赤い鱗で覆われたドラゴン――
まさに、炎竜という呼び名に相応しい出で立ちだ。
鱗の隙間から溢れ出す炎が辺りを明るく照らす。
その姿が、私には美しくも見えた。
「――っと、感心している場合じゃない。対策を打たないと……」
「キタキタキターーーーーーーーーー!! 俺に戦わせろーーーーーーーーーー!!」
オムガが、何も考えずに突っ込んで行った。
おーーーーーーい、オムガ!!
死ぬぞーーーーーーーーーー!!
さすがに体格差が違い過ぎる。
勝てるはずがない……
「狂戦士!!」
そう叫ぶと、オムガの身体が赤い光背に包まれた。
「|身体強化《フィジカル・リィーインフォースメント)!!」
同時に、ユーリスが補助魔法でオムガの身体能力を強化する。
「グオォォォォォォォ!」
炎竜が、オムガを引き裂こうと右腕を振り下ろした。
「爆風!!」
オムガが火属性の魔法を唱え、爆風に乗って跳躍する。
ズシャッ!!
オムガは攻撃をかわしながら、大剣で炎竜の腕を切り裂いた。
「凄い!!」
私は二人の戦闘能力に素直に感心してしまった。
「でも、炎竜の鱗は物凄く強固だって、ドラグラは言ってなかった?」
「はい、ですから、オムガの大剣には、私の古代魔法で魔法付与がしてあります」
……何気に凄いこと言っていない?
ドラグラは古代魔法も使えるの?
オムガの狂戦士モードと火属性の魔法。
そして、ユーリスの補助魔法とドラグラの古代魔法。
今更ながら、このメンバーって、なかなかな強者ぞろいだよね――
幻獣達が仲間として残ってくれたことに、私は心から感謝した。
うわーーーー!!
見るからに怪しそうな行商人が来たーーーー!!
今日のギルドの依頼は、商団の警護。
出発前に商団の代表が挨拶に来てくれた。
「初めまして……、私の名前はイラです」
「……イラ?」
え?
何だろう、その反応――
魔王としてのイラという名前は一般には公開されていないはずなんだけど……
各魔王の名前は魔族間でしか共有されていない。
私の場合、人間社会では憤怒の魔王という呼び方が通称だ。
「いえ、何でもありません。今回は私どもの依頼を受けていただき、たいへん感謝しております」
「こちらこそ仕事をいただき、ありがとうございます」
感謝されるとは思わなかったので、こちらも謝意を伝えた。
「ムヒャヒャヒャヒャ、何だか、あなたとは長い付き合いになりそうな気がします」
「そ、そうですか……」
今のところ、私はあまり仲良くなりたいとは思わないのだが……
「それでは今回の依頼内容を再確認させていただきますが、私達が隣の王国の国境にたどり着くまでの警護をお願いしたいと思っております」
「はい、そのように聞いています。――ですが、依頼内容に対して、報酬が多額過ぎるのが少し気にはなってはいます」
ギルドへの依頼の報酬はその仕事の難易度に見合った額が支払われるのが普通だ。
難易度は、S・A・B・C・D・Eランクと分けられているが、今回はCランクの依頼内容にも関わらず、何故かAランク相当の報酬が貰えることになっている。
報酬が高すぎると、依頼を達成した後に、難癖をつけられて報酬を減らされるのではないかと心配になる――
「そのように思われて当然な報酬額なのはわかっております……。しかし、近頃、この辺りを通る商団を炎竜が襲うという事件が起こっておりますので、私達の命の保険として、報酬を増していると思っていただければと思います」
そうは言っても、火山地帯や洞窟に住んでいることが多い炎竜に遭遇する可能性なんて滅多にないんだけど――
「まあ、そう言っていただけるのであれば、報酬は多いに越したことはありませんので……」
楽な仕事になりそうだが、今は資金が乏しいので、報酬は多ければ多いほどありがたい。
「ムヒョヒョヒョ、ありがとうございます」
それにしても、その不気味な笑い方はどうにかならないものだろうか……
「早くモンスター出てこねーかな。久しぶりに暴れたいぜ!」
道中でオムガがそうボヤいた。
いや、何も出て来ない方がいいのだが……
オムガは好戦的な性格で、根っからの戦い好きだ。
剣技の実力は戦仲間の中で一番なので、戦闘不足のオムガ自身のストレス発散も兼ねて、エンと私の剣の訓練をしてくれている。
「あーあ、炎竜出て来ねーのかなぁ」
やめて、フラグが立っちゃうから――
噂をすれば影が射すっていうことわざもあるし……
「グオォォォォォォ!」
「…………」
気のせい、気のせい……
獣の唸り声なんて、よくあるよくある。
「グオォォォォォォォォォ!!」
「………………」
さっきよりも、大きくて長い唸り声。
「グアァァァァァァァァァァァァ!!」
「あー、これは来ちゃったね……」
ズドーーーーーーーーーーン!!!
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! 炎竜だーーーーーー!!」」」
商団の人達が炎竜を見て逃げ惑う。
全身が炎のように赤い鱗で覆われたドラゴン――
まさに、炎竜という呼び名に相応しい出で立ちだ。
鱗の隙間から溢れ出す炎が辺りを明るく照らす。
その姿が、私には美しくも見えた。
「――っと、感心している場合じゃない。対策を打たないと……」
「キタキタキターーーーーーーーーー!! 俺に戦わせろーーーーーーーーーー!!」
オムガが、何も考えずに突っ込んで行った。
おーーーーーーい、オムガ!!
死ぬぞーーーーーーーーーー!!
さすがに体格差が違い過ぎる。
勝てるはずがない……
「狂戦士!!」
そう叫ぶと、オムガの身体が赤い光背に包まれた。
「|身体強化《フィジカル・リィーインフォースメント)!!」
同時に、ユーリスが補助魔法でオムガの身体能力を強化する。
「グオォォォォォォォ!」
炎竜が、オムガを引き裂こうと右腕を振り下ろした。
「爆風!!」
オムガが火属性の魔法を唱え、爆風に乗って跳躍する。
ズシャッ!!
オムガは攻撃をかわしながら、大剣で炎竜の腕を切り裂いた。
「凄い!!」
私は二人の戦闘能力に素直に感心してしまった。
「でも、炎竜の鱗は物凄く強固だって、ドラグラは言ってなかった?」
「はい、ですから、オムガの大剣には、私の古代魔法で魔法付与がしてあります」
……何気に凄いこと言っていない?
ドラグラは古代魔法も使えるの?
オムガの狂戦士モードと火属性の魔法。
そして、ユーリスの補助魔法とドラグラの古代魔法。
今更ながら、このメンバーって、なかなかな強者ぞろいだよね――
幻獣達が仲間として残ってくれたことに、私は心から感謝した。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
悪役令嬢は廃墟農園で異世界婚活中!~離婚したら最強農業スキルで貴族たちが求婚してきますが、元夫が邪魔で困ってます~
黒崎隼人
ファンタジー
「君との婚約を破棄し、離婚を宣言する!」
皇太子である夫から突きつけられた突然の別れ。
悪役令嬢の濡れ衣を着せられ追放された先は、誰も寄りつかない最果ての荒れ地だった。
――最高の農業パラダイスじゃない!
前世の知識を活かし、リネットの農業革命が今、始まる!
美味しい作物で村を潤し、国を救い、気づけば各国の貴族から求婚の嵐!?
なのに、なぜか私を捨てたはずの元夫が、いつも邪魔ばかりしてくるんですけど!
「離婚から始まる、最高に輝く人生!」
農業スキル全開で国を救い、不器用な元夫を振り回す、痛快!逆転ラブコメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる